StudyMed医師国家試験

体重を支える関節は消耗しやすい―人工関節置換術の二大舞台、膝と股関節

第102回医師国家試験 G問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第102回 G問題 第30問

人工関節置換術がよく行われるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.肩関節
  2. b.肘関節
  3. c.股関節
  4. d.膝関節
  5. e.足関節

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、人工関節置換術がよく行われる関節を選ぶ問題だ。考え方のカギは「どの関節に、手術が必要なほど進行した病気の患者が多いか」。人工関節がその関節に存在するかどうかではなく、実際の件数で考えることが大切だよ。まず、人工関節置換術とはどんな手術か説明できるかな。
医学生医学生
傷んだ関節の表面を切除して、金属やポリエチレンでできた人工の関節に置き換える手術ですよね。整形外科の講義で実物の模型を触りました。
ドクタードクター
その通り。目的は痛みをとって関節機能と歩行能力を取り戻すこと。保存療法や関節を温存する手術では対応できない、末期の関節疾患が主な適応になる。では代表的な適応疾患は何だろう。
医学生医学生
変形性関節症と関節リウマチでしょうか。
ドクタードクター
いいね。それに大腿骨頭壊死症のような骨壊死も加わる。特に変形性関節症は、体重がかかる下肢の大関節に起こりやすい。だから膝関節と股関節の手術件数が突出して多いんだ。
医学生医学生
臨床実習で整形外科を回ったとき、手術予定表がほとんどTKAとTHAで埋まっていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが現場の実感だね。膝から見ていこう。変形性膝関節症は変形性関節症の中で最も頻度が高く、高齢になるほど増える。内反変形が進んで高度の痛みが出た末期例に人工膝関節全置換術を行う。わが国で最も件数の多い人工関節手術だ。内側の関節面だけを置き換える単顆置換術もあるよ。
医学生医学生
股関節は、日本だと臼蓋形成不全が背景になることが多いんでしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。わが国の変形性股関節症の多くは臼蓋形成不全による二次性だ。そこに関節リウマチや大腿骨頭壊死症も加わって、人工股関節全置換術は膝と並ぶ代表的な手術になっている。さらに高齢者の転位型大腿骨頸部骨折では、骨頭だけを置き換える人工骨頭置換術が頻繁に行われる。
医学生医学生
肩にもリバース型人工肩関節というのがあると聞きました。肩もよく行われるのではないでしょうか。
ドクタードクター
そこは迷いやすいところだね。確かにリバース型人工肩関節は腱板断裂性関節症に対して普及してきて、件数は増えつつある。でも適応疾患の頻度そのものが膝や股関節に比べて低いから、件数ははるかに少ない。
医学生医学生
肘は非荷重関節なので、変形性関節症で人工関節が必要になる人は少なそうですね。
ドクタードクター
その推論で合っている。人工肘関節は主に関節リウマチによる肘関節の破壊が対象で、ほかに外傷後の関節症や高齢者の粉砕骨折に使われる程度だ。では足関節は?荷重関節だけど。
医学生医学生
荷重関節なら膝や股関節と同じように多くなりそうな気もしますが……。
ドクタードクター
そこが落とし穴だ。人工足関節は緩みや沈み込みの問題があって、長期成績が膝や股関節ほど安定していない。だから末期の足関節症では関節固定術が選ばれることが多いんだ。
医学生医学生
患者数だけでなく、成績や代わりの手術があるかどうかでも件数が決まるんですね。
ドクタードクター
その通り。発展知識として、適応年齢も押さえておこう。人工関節には摩耗や緩みによる耐用年数があるから、再置換の可能性が低い高齢者がよい適応だ。若年者では、股関節なら寛骨臼回転骨切り術、内側型の変形性膝関節症なら高位脛骨骨切り術のような関節温存手術がまず検討される。
医学生医学生
術後の合併症で注意すべきものは何でしょうか。
ドクタードクター
まず術後感染。重篤になると人工関節を抜去せざるを得ないこともある。次に深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症で、下肢の人工関節術後はリスクが高いから、早期離床、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法、抗凝固薬で予防する。そして人工股関節では脱臼が問題になり、後方アプローチなら股関節の深い屈曲・内転・内旋を避けるよう指導する。長期的には緩みや摩耗、人工関節周囲の骨折にも注意が必要だ。
医学生医学生
看護師さんが術後の患者さんに「脚を組まないで」と説明していたのは、脱臼予防だったんですね。
ドクタードクター
そういうことだね。手術そのものだけでなく、術後の生活指導まで含めて人工関節の治療だと覚えておこう。

まとめ

人工関節置換術は、末期の変形性関節症、関節リウマチ、骨壊死などで破壊された関節を人工物に置き換え、除痛と機能回復を図る手術です。患者数の多い荷重関節である膝関節と股関節で圧倒的に多く行われ、日本では臼蓋形成不全に伴う変形性股関節症や、高齢者の転位型大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭置換術も重要です。肩・肘・足関節にも人工関節はありますが、適応疾患が少ないことや長期成績の問題があり、特に足関節では関節固定術が選ばれることが多くなります。耐用年数を考えて高齢者がよい適応とされ、術後の感染、深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症、股関節の脱臼への対策まで理解しておくことが、周術期管理や患者指導の基礎になります。

解答・解説

正解はc, dです

人工関節置換術は、変形や破壊が高度に進んだ関節の表面(軟骨と骨の一部)を切除し、金属・ポリエチレン・セラミックなどでできた人工の関節に置き換える手術である。疼痛の除去と関節機能・歩行能力の回復を目的とし、保存療法や関節温存手術では対応できない末期の関節疾患が主な適応となる。 代表的な適応疾患は、末期の変形性関節症(OA:osteoarthritis)、関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis)による関節破壊、骨壊死(大腿骨頭壊死症など)である。これらは体重を支える下肢の大関節、とりわけ膝関節と股関節に多く、患者数も多い。そのためわが国でも年間の手術件数は人工膝関節置換術と人工股関節置換術が突出して多く、他の関節の件数を大きく上回る。 肩・肘・足関節でも人工関節は存在し適応疾患もあるが、対象となる患者が少ないことや、長期成績・代替手術(関節固定術など)の選択肢の関係から、実施件数は膝・股関節に比べてはるかに少ない。したがって「よく行われる」ものとしては股関節と膝関節の2つを選ぶ。

選択肢考察

  1. ×a.  肩関節

    人工肩関節置換術(人工骨頭置換術を含む)は、変形性肩関節症、関節リウマチ、上腕骨頭壊死、上腕骨近位端の粉砕骨折などで行われる。近年は腱板断裂を伴う肩関節症(腱板断裂性関節症)に対するリバース型人工肩関節の普及により件数は増えつつあるが、膝・股関節と比べれば適応疾患の頻度自体が低く、実施件数は少ない。

  2. ×b.  肘関節

    人工肘関節置換術は主に関節リウマチによる肘関節の破壊に対して行われ、ほかに外傷後の関節症や高齢者の粉砕骨折が適応となることがある。肘は非荷重関節であり変形性肘関節症で人工関節が必要になる例は多くないため、全体としての実施頻度は低い。

  3. ○c.  股関節

    人工股関節全置換術(THA:total hip arthroplasty)は、臼蓋形成不全を背景とする変形性股関節症(わが国の股関節症の多くを占める)、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症などで広く行われ、人工膝関節と並んで最も件数の多い人工関節手術である。また高齢者の大腿骨頸部骨折(転位型)では、大腿骨頭のみを人工物に替える人工骨頭置換術が頻繁に行われる。股関節は人工関節置換術が「よく行われる」部位であり正しい。

  4. ○d.  膝関節

    変形性膝関節症は変形性関節症の中で最も頻度が高く、高齢化とともに患者数が多い。進行して内反変形や高度の疼痛をきたした末期例や、関節リウマチによる膝関節破壊に対して人工膝関節全置換術(TKA:total knee arthroplasty)が行われ、わが国では人工関節手術の中で最も件数が多い。内側の関節面のみを置換する単顆置換術(UKA)も行われる。したがって正しい。

  5. ×e.  足関節

    人工足関節置換術は関節リウマチや末期の変形性足関節症で行われることがあるが、人工関節の緩みや沈み込みなどの問題から長期成績が膝・股関節ほど安定していない。そのため末期足関節症では関節固定術が選択されることが多く、人工関節置換術の実施件数は少ない。

人工関節置換術の概要

・目的:除痛、可動域・支持性の回復、日常生活動作(ADL)の改善。 ・主な適応:末期変形性関節症、関節リウマチ、骨壊死、一部の高齢者骨折。感染性関節炎が活動性にある関節は禁忌である。 ・年齢:人工関節には摩耗・緩みによる耐用年数の問題があるため、再置換の可能性が低い高齢者(おおむね60歳以上)がよい適応とされる。若年者では骨切り術など関節温存手術がまず検討される。

固定方法

・セメント固定:骨セメント(ポリメチルメタクリレート)で人工関節を固定する。術直後から安定した固定が得られ、骨の脆弱な高齢者や骨粗鬆症例に適する。 ・セメントレス固定:人工関節表面に骨が入り込むことで固定される。骨質の良好な例で選択されることが多い。

主な合併症

・術後感染:重篤で、人工関節の抜去が必要になることもある。 ・深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症:下肢の人工関節術後は発症リスクが高く、早期離床、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法、抗凝固薬などで予防する。 ・脱臼:特に人工股関節で問題となり、術後は脱臼しやすい肢位(後方アプローチでは股関節の深い屈曲・内転・内旋)を避けるよう指導する。 ・人工関節の緩み・摩耗、周囲骨折。

関節ごとの代替手術

足関節や手関節、脊椎などでは関節固定術が標準的な選択肢となることが多い。股関節では若年の臼蓋形成不全に寛骨臼回転骨切り術、膝関節では内側型の変形性膝関節症に高位脛骨骨切り術などの関節温存手術がある。

POINT

・人工関節置換術が最も多いのは膝関節と股関節(荷重関節で、変形性関節症・RAの患者が多い) ・主な適応:末期変形性関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症 ・高齢者の転位型大腿骨頸部骨折では人工骨頭置換術 ・足関節の末期関節症では関節固定術が選ばれることが多い ・合併症:感染、DVT・肺血栓塞栓症、脱臼(特に股関節)、緩み

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。