StudyMed医師国家試験

両手ではさんで「見る」骨盤内―双合診の手順と正常所見を押さえる

第102回医師国家試験 F問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第102回 F問題 第7問

婦人科診察時の双合診で正しいのはどれか。

  1. a.腟鏡診の前に行う。
  2. b.膀胱を充満して行う。
  3. c.正常な卵管は管状に触れる。
  4. d.正常な子宮は手拳大に触れる。
  5. e.内診指と腹壁上の外診手とで触診する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は婦人科診察の基本手技、双合診についての問題だ。診察の順番、事前の準備、正常で触れるもの・触れないもの、そして手技そのもの、という4つの観点から整理していこう。まず、双合診ってどんな手技か説明できるかな。
医学生医学生
腟に指を入れて子宮を触る診察、という理解です。
ドクタードクター
半分正解だね。名前の「双」がヒントで、両手を使うんだ。一方の手の示指と中指を腟内に入れて内診指とし、もう一方の手を下腹部の腹壁上に置いて外診手とする。内診指で子宮を下から押し上げ、外診手で上から迎えるようにして、子宮や付属器を両手の間にはさみ込んで触れる。これが正解の記述だ。
医学生医学生
片手だけだと奥にある臓器の輪郭がつかめないから、上下からはさむわけですね。
ドクタードクター
そう。そうすることで、子宮の位置、大きさ、硬さ、表面の凹凸、可動性、圧痛、付属器の腫大、ダグラス窩の抵抗や圧痛まで立体的に評価できる。では順番について。双合診と腟鏡診、どちらを先にやると思う?
医学生医学生
まず触って全体像をつかんでから、腟鏡で見るほうが自然な気がします。
ドクタードクター
そこが落とし穴なんだ。先に指を入れると潤滑剤が付いたり、帯下の性状が変わったり、子宮腟部を擦って出血させたりしてしまう。そうなると腟壁や子宮腟部の観察が不正確になり、子宮頸部細胞診や腟分泌物の検体もきちんと採れない。だから視診、腟鏡診、双合診の順が原則だよ。
医学生医学生
確かに、OSCEの練習でも検体採取は「汚さないうちに」が基本でした。膀胱は満たしておくほうがいいんでしたっけ。超音波では膀胱に尿をためると習った気がします。
ドクタードクター
それは経腹超音波の話だね。経腹超音波では、尿で満たした膀胱を超音波の通り道、つまり音響窓として使い、腸管ガスを押しのけて子宮や卵巣を描出しやすくする。でも双合診では逆で、事前に排尿してもらう。膀胱がいっぱいだと子宮や付属器が押し上げられて触れにくいし、膀胱そのものを腫瘤と勘違いするおそれもある。何より患者さんがつらいんだ。
医学生医学生
経腟超音波も膀胱を空にして行うんですよね。触診と経腟は空、経腹だけ充満、と覚えておきます。
ドクタードクター
完璧だ。次は正常所見。正常な卵管は双合診で触れるかな?
医学生医学生
解剖実習で見た卵管はかなり細くて柔らかかったので、触れないと思います。
ドクタードクター
その通り。正常な卵管は細く柔らかいので通常は触れない。索状や腫瘤状に触れたら、卵管留水腫や卵管留膿腫、卵管妊娠などを考える。ちなみに正常な卵巣は母指頭大くらいで、やせた人では触れることもあるよ。
医学生医学生
正常な子宮の大きさは鶏卵大でしたよね。手拳大というのは大きすぎる気がします。
ドクタードクター
正解。非妊時の成人の子宮は長さ7〜8cmほどの鶏卵大だ。手拳大に触れたら、子宮筋腫や子宮腺筋症による腫大、あるいは妊娠2〜3か月ごろの妊娠子宮などを考えなければいけない。妊娠反応の確認は忘れないようにね。
医学生医学生
診察順、膀胱、正常所見、手技と、どれも理由を考えると自然に覚えられますね。
ドクタードクター
そうだね。最後に臨床での注意点を。双合診では子宮頸部移動痛、つまり子宮腟部を動かしたときの痛みも大事な所見で、骨盤内炎症性疾患や異所性妊娠の破裂などで認める。子宮内膜症ではダグラス窩に硬結や圧痛を触れることがある。また、性交経験のない女性では、腟の代わりに直腸から診察する直腸診を選ぶこともある。そして診察前には目的と手順を説明し、同意を得て、羞恥心に十分配慮することが欠かせない。
医学生医学生
産婦人科の実習で、先生が必ず声をかけながら診察していたのが印象的でした。手技だけでなく、そういう配慮も含めて身につけたいです。

まとめ

双合診は、腟内に挿入した内診指と腹壁上に置いた外診手で子宮や付属器をはさみ込み、大きさ・硬さ・可動性・圧痛などを立体的に評価する婦人科の基本手技です。診察は視診、腟鏡診、双合診の順に行い、先に指を入れて腟内の観察や細胞診の検体を損なわないようにします。双合診や経腟超音波の前には排尿させて膀胱を空にし、膀胱を充満させるのは経腹超音波の場合に限られます。正常な子宮は鶏卵大で、正常な卵管は細く柔らかいため触れず、手拳大の子宮や索状に触れる卵管は筋腫、妊娠、卵管留水腫などの病的状態を示唆します。手技の手順と正常所見を理由とともに理解しておくことは、子宮頸部移動痛などの異常所見を見逃さない診察力の土台になります。

解答・解説

正解はeです

婦人科の診察は、一般に問診 → 外陰部の視診 → 腟鏡診 → 双合診(内診)の順で進める。双合診とは、一方の手の示指と中指(または示指のみ)を腟内に挿入し(内診指)、もう一方の手を下腹部の腹壁上に置いて(外診手)、両手の間に子宮や付属器(卵巣・卵管)をはさみ込むようにして触診する方法である。これにより、子宮の位置(前傾前屈か後傾後屈か)、大きさ、硬さ、表面の性状、可動性、圧痛の有無、さらに付属器の腫大や圧痛、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)の抵抗・圧痛などを評価する。 本問では、双合診を行う順序(腟鏡診との前後関係)、診察前の準備(膀胱の状態)、正常所見(卵管は触れるか、子宮の大きさ)、手技そのものを整理しておけば正解を導ける。

選択肢考察

  1. ×a.  腟鏡診の前に行う。

    腟鏡診は双合診より先に行う。先に指を腟内に入れると、潤滑剤が付着したり、分泌物の性状が変わったり、子宮腟部を擦って出血させたりするため、腟壁・子宮腟部・帯下の観察が不正確になり、子宮頸部細胞診や腟分泌物検査の検体も適切に採取できなくなる。そのため、腟鏡で視診と検体採取を済ませてから双合診に移るのが原則である。

  2. ×b.  膀胱を充満して行う。

    双合診の前には排尿させ、膀胱を空にしておく。膀胱に尿が充満していると、子宮や付属器が押し上げられて触れにくくなるうえ、充満した膀胱そのものを腫瘤と誤認するおそれがあり、患者の苦痛も大きくなる。経腟超音波検査も同様に膀胱を空にして行う。膀胱を充満させるのは経腹超音波検査の場合で、尿で満たした膀胱を音響窓(超音波の通り道)として利用し、腸管ガスを押しのけて子宮・卵巣を描出しやすくするためである。

  3. ×c.  正常な卵管は管状に触れる。

    正常な卵管は細く柔らかいため、双合診では通常触れない。卵管を索状・腫瘤状に触れる場合は、卵管留水腫や卵管留膿腫、異所性妊娠(卵管妊娠)などの病的状態を考える。なお、正常な卵巣は母指頭大程度で、やせた人では触れることがある。

  4. ×d.  正常な子宮は手拳大に触れる。

    非妊娠時の成人女性の正常な子宮は鶏卵大(長さおよそ7〜8cm)である。手拳大に触れる場合は、子宮筋腫や子宮腺筋症による腫大、あるいは妊娠(妊娠2〜3か月ごろ)などを考える必要がある。

  5. ○e.  内診指と腹壁上の外診手とで触診する。

    双合診は、腟内に入れた内診指で子宮腟部や子宮を下から押し上げ、腹壁上に置いた外診手で上から迎えるようにして、子宮や付属器を両手の間にはさんで触知する手技である。片手だけでは把握しにくい骨盤内臓器の大きさ・形・硬さ・可動性・圧痛を立体的に評価できる。本選択肢は双合診の手技を正しく述べている。

婦人科診察の一般的な流れ

1. 問診(月経歴、妊娠・分娩歴、性交渉歴、主訴など) 2. 排尿を済ませてもらい、砕石位(仰向けで両膝を立てて開いた姿勢)をとる 3. 外陰部の視診 4. 腟鏡診:腟壁、子宮腟部、帯下(おりもの)の性状を観察し、必要に応じて子宮頸部細胞診や腟分泌物の検査を行う 5. 双合診(内診):子宮・付属器・ダグラス窩を評価 6. 必要に応じて直腸診(直腸と腟の間の病変や子宮の後方、子宮傍組織の評価。性交経験のない女性では腟の代わりに直腸から診察することもある)

双合診で評価する項目

・子宮:位置(前傾前屈が多い)、大きさ(正常は鶏卵大)、硬さ、表面の性状(凹凸の有無)、可動性、圧痛 ・付属器:卵巣の腫大の有無、圧痛。正常な卵管は触れない ・ダグラス窩:抵抗、圧痛、硬結(子宮内膜症では硬結や圧痛を触れることがある) ・子宮頸部移動痛:子宮腟部を動かしたときの痛みで、骨盤内炎症性疾患や異所性妊娠の破裂などで認める

膀胱の状態と検査の対応

・膀胱を空にする:双合診、経腟超音波検査 ・膀胱を充満させる:経腹超音波検査

POINT

・婦人科診察は視診 → 腟鏡診 → 双合診の順で行う(腟鏡診が先)。 ・双合診の前には排尿させて膀胱を空にする(膀胱を満たすのは経腹超音波検査)。 ・双合診は、腟内の内診指と腹壁上の外診手で臓器をはさんで触診する。 ・正常な子宮は鶏卵大で、正常な卵管は触れない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。