StudyMed医師国家試験

胆汁酸をつくるのは誰か―肝臓の細胞たちの役割分担

第102回医師国家試験 E問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第102回 E問題 第2問

胆汁酸を産生するのはどれか。

  1. a.肝細胞
  2. b.Pit細胞
  3. c.星(状)細胞
  4. d.Kupffer細胞
  5. e.胆管上皮細胞

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、肝臓を構成する細胞の種類とそれぞれの仕事を問う問題だ。肝臓には主役の肝細胞のほかに、類洞のまわりにいろいろな細胞がいる。誰がどんな仕事を担当しているかを整理するのが着眼点だよ。
医学生医学生
胆汁っていうと胆管や胆嚢のイメージが強いので、胆管上皮細胞がつくっているのかと一瞬思いました。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。胆管は胆汁の「通り道」であって、胆汁酸の「工場」ではない。まず肝臓の細胞を大きく分けると、実質細胞である肝細胞と、類洞の壁やその周囲にいる非実質細胞、つまり類洞壁細胞になる。類洞壁細胞は何種類あったかな。
医学生医学生
組織学の実習で習いました。類洞内皮細胞、Kupffer細胞、星細胞、Pit細胞の4種類です。
ドクタードクター
完璧だ。ここに胆管をつくる胆管上皮細胞が加わる。そして胆汁酸の合成、ビリルビンの抱合、アルブミンや凝固因子の合成、アンモニアの尿素への変換、薬物代謝など、いわゆる肝臓の代謝機能はほぼすべて肝細胞が担っている。だから正解は肝細胞だ。
医学生医学生
胆汁酸の原料はコレステロールでしたよね。
ドクタードクター
その通り。肝細胞でコレステロールから一次胆汁酸のコール酸とケノデオキシコール酸がつくられる。律速酵素はコレステロール7α-水酸化酵素だ。これがグリシンやタウリンと抱合されて毛細胆管に分泌される。コレステロールを胆汁酸に変えて捨てることは、体内のコレステロール処理の主要な経路でもあるんだ。
医学生医学生
生化学で、腸内細菌が二次胆汁酸に変えるという話もありました。
ドクタードクター
よく覚えているね。腸管内で細菌によって脱抱合や7α-脱水酸化を受けて、デオキシコール酸やリトコール酸といった二次胆汁酸になる。大部分は回腸末端で再吸収されて門脈から肝細胞に戻り再利用される。これが腸肝循環だ。では、ほかの細胞の役割も確認しよう。Kupffer細胞は?
医学生医学生
類洞にいるマクロファージですよね。ビリルビンをつくる過程に関わると聞いたので、胆汁つながりで少し迷いました。
ドクタードクター
鋭いところに気づいたね。Kupffer細胞は門脈から入ってくる細菌やエンドトキシン、異物、老化赤血球を貪食する常在型マクロファージだ。老化赤血球のヘムを処理してビリルビンを生じる過程には関与するけれど、胆汁酸は合成しない。ビリルビンと胆汁酸は、どちらも胆汁の成分だけど別物だと区別しておこう。
医学生医学生
星細胞は肝硬変の授業で出てきました。線維化の犯人でしたっけ。
ドクタードクター
そう。星細胞は伊藤細胞とも呼ばれ、類洞内皮と肝細胞の間のDisse腔にいる。普段は脂肪滴にビタミンAを貯めているけれど、肝障害が続くと活性化して筋線維芽細胞のように変わり、I型コラーゲンなどをつくって線維化を進める。慢性肝炎から肝硬変へ進む過程の中心的な役者だね。
医学生医学生
Pit細胞はあまり印象がないです。
ドクタードクター
Pit細胞は類洞内にいる肝臓のNK細胞で、顆粒をもつ大型リンパ球だ。ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を傷害する免疫の担い手で、やはり胆汁酸とは無関係だよ。最後に胆管上皮細胞はどうだろう。
医学生医学生
胆汁の量やpHを調節している、という感じでしょうか。
ドクタードクター
その通り。セクレチンなどの刺激で重炭酸イオンと水を分泌して、胆汁を薄めたりアルカリ性にしたりする。でも胆汁酸そのものはつくらない。臨床では、原発性胆汁性胆管炎で小葉間胆管の上皮が、原発性硬化性胆管炎ではより太い胆管の上皮が主な傷害標的になる。
医学生医学生
肝細胞は代謝工場、Kupffer細胞は掃除屋、星細胞は貯蔵庫兼線維化、Pit細胞は警備員、胆管上皮は通り道の調整役、という感じで覚えられそうです。
ドクタードクター
いい整理だね。臨床とのつながりも意識しておこう。肝細胞の機能が落ちると、アルブミン低下、凝固因子低下によるPT延長、高アンモニア血症などが現れる。これらはまさに肝細胞の仕事のリストの裏返しだ。また回腸末端の病変で胆汁酸が戻らなくなると、肝細胞は合成を増やして代償しようとする。細胞の役割分担がわかると、検査値の意味も見えてくるよ。

まとめ

胆汁酸は肝臓の実質細胞である肝細胞で、コレステロールを原料に律速酵素コレステロール7α-水酸化酵素を介して一次胆汁酸として合成され、抱合を受けて毛細胆管へ分泌されます。肝臓の類洞壁細胞には、物質交換を担う類洞内皮細胞、常在型マクロファージのKupffer細胞、Disse腔でビタミンAを貯蔵し活性化すると線維化を進める星(伊藤)細胞、肝臓のNK細胞であるPit細胞の4種類があり、いずれも胆汁酸は合成しません。胆管上皮細胞は重炭酸と水を分泌して胆汁の量やpHを調節しますが、胆汁酸の産生には関わりません。胆汁酸は腸内細菌で二次胆汁酸となり、回腸末端で再吸収されて腸肝循環します。各細胞の役割分担を理解しておくと、肝機能障害時の検査異常や肝線維化、胆管疾患の病態を筋道立てて理解できます。

解答・解説

正解はaです

肝臓を構成する細胞の種類と、それぞれの役割を問う問題である。 肝臓の細胞は大きく、実質細胞である肝細胞(肝臓の細胞数の約6〜7割、容積の約8割を占める)と、類洞(肝細胞索の間を走る毛細血管)の壁やその周囲に位置する非実質細胞(類洞壁細胞)に分けられる。類洞壁細胞には、類洞内皮細胞、Kupffer細胞、星(状)細胞、Pit細胞の4種類がある。これに加えて、胆汁の通り道をつくる胆管上皮細胞(胆管細胞)がある。 胆汁酸の合成、ビリルビンの抱合、糖・脂質・蛋白質代謝、アンモニアの尿素への変換、薬物代謝など、いわゆる「肝臓の代謝機能」はほぼすべて肝細胞が担う。胆汁酸は肝細胞内でコレステロールを原料に合成され、毛細胆管へ分泌される。したがって正解は肝細胞である。

選択肢考察

  1. ○a.  肝細胞

    胆汁酸は肝細胞の滑面小胞体などでコレステロールから合成される。律速酵素はコレステロール7α-水酸化酵素(CYP7A1)であり、これにより一次胆汁酸(コール酸、ケノデオキシコール酸)がつくられる。一次胆汁酸はグリシンやタウリンと抱合されて毛細胆管へ分泌される。コレステロールを胆汁酸に変えて排泄することは、体内のコレステロールを処理する主要な経路でもある。

  2. ×b.  Pit細胞

    Pit細胞は類洞内に存在する肝臓固有のナチュラルキラー(NK)細胞であり、細胞質に顆粒をもつ大型リンパ球である。ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を傷害する免疫機能を担い、胆汁酸の合成には関わらない。

  3. ×c.  星(状)細胞

    星(状)細胞(伊藤細胞、脂肪摂取細胞ともいう)は、類洞内皮細胞と肝細胞の間の隙間であるDisse腔に存在する。平常時は脂肪滴の中にビタミンAを貯蔵しているが、肝障害が続くと活性化して筋線維芽細胞様に変化し、I型コラーゲンなどの細胞外基質を産生して肝線維化・肝硬変の中心的役割を果たす。胆汁酸は産生しない。

  4. ×d.  Kupffer細胞

    Kupffer細胞は類洞内に定着している常在型マクロファージであり、門脈から流入する細菌やエンドトキシン、異物、老化赤血球などを旺盛に貪食する。老化赤血球を処理してヘムからビリルビンを生じる過程には関与するが、胆汁酸の合成は行わない。

  5. ×e.  胆管上皮細胞

    胆管上皮細胞は肝内・肝外胆管の内腔を覆う細胞である。セクレチンなどの刺激によって重炭酸イオン(HCO3-)と水を分泌し、胆汁の量やpHを調節するが、胆汁酸そのものを合成することはない。原発性胆汁性胆管炎(PBC)では小葉間胆管の、原発性硬化性胆管炎(PSC)ではより太い胆管の上皮が主な傷害標的となる。

肝臓を構成する主な細胞

・肝細胞(実質細胞):胆汁酸合成、ビリルビンのグルクロン酸抱合と排泄、アルブミン・凝固因子の合成、糖新生・グリコーゲン貯蔵、脂質代謝、尿素回路によるアンモニア処理、薬物代謝(シトクロムP450)など ・類洞内皮細胞:小孔(fenestra)をもち基底膜を欠く内皮で、血液とDisse腔の物質交換を容易にする ・Kupffer細胞:類洞内の常在型マクロファージ。貪食、サイトカイン産生 ・星(状)細胞(伊藤細胞):Disse腔に位置。ビタミンA貯蔵、活性化で線維化 ・Pit細胞:肝臓のNK細胞 ・胆管上皮細胞:胆管を構成。HCO3-と水の分泌

胆汁酸の合成と腸肝循環

肝細胞でコレステロールから一次胆汁酸(コール酸、ケノデオキシコール酸)が合成され、グリシン・タウリン抱合体として胆汁中に排泄される。腸管内では腸内細菌によって脱抱合・7α-脱水酸化を受け、二次胆汁酸(デオキシコール酸、リトコール酸)となる。胆汁酸の大部分は回腸末端で再吸収され、門脈を通って肝細胞に取り込まれ再利用される(腸肝循環)。胆汁酸は界面活性作用で脂肪をミセル化し、脂肪や脂溶性ビタミンの吸収を助ける。

POINT

・胆汁酸は肝細胞でコレステロールから合成される(律速酵素:コレステロール7α-水酸化酵素)。 ・類洞壁細胞は4種類:類洞内皮細胞、Kupffer細胞(マクロファージ)、星(状)細胞(ビタミンA貯蔵・線維化)、Pit細胞(NK細胞)。 ・胆管上皮細胞は重炭酸と水を分泌するが、胆汁酸は合成しない。 ・肝臓の代謝機能のほとんどは肝細胞が担う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。