StudyMed医師国家試験

「人数」に惑わされるな―割合・差・比・NNTで測る本当の治療効果

第102回医師国家試験 B問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第102回 B問題 第17問

疾病と治療の5つの組合せについて,報告された治療群と対照群との改善者数は表のようであった。  疾病と治療の  組合せ 治療群 対照群 人数 改善者数 人数 改善者数 ①   200  100   200    80  ②   400  120   400   100  ③   500  300   500   200  ④  1,000  600  1,000   500  ⑤  2,000  800  2,000   600  治療によって最も改善するのはどれか。

  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、治療群と対照群の結果から治療効果の大きさを比べる問題だ。組合せごとに対象の人数がバラバラなのがポイント。数字をそのまま比べるのではなく、何に直してから比べるべきかを考えてみよう。
医学生医学生
パッと見ると、改善者数の差が一番大きいのは最後の組合せですね。800人と600人で200人も違います。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴なんだ。その組合せは各群2,000人もいるから、実数の差が大きくなるのは当然とも言える。人数の異なる集団を比べるときは、まず改善者数を人数で割って改善率に直すのが鉄則だよ。
医学生医学生
公衆衛生学の講義で、粗死亡率を比べるときも人口で割ると習いました。同じ発想ですね。
ドクタードクター
そう。では改善率を出してみよう。最後の組合せは治療群40%、対照群30%。一方、500人ずつの組合せは治療群60%、対照群40%になる。
医学生医学生
差をとると、500人ずつの組合せは20ポイント、2,000人ずつのほうは10ポイントですね。逆転しました。
ドクタードクター
その差は寄与改善度、つまり絶対的な効果を表す指標だ。残りも計算すると、200人ずつは10ポイント、400人ずつは5ポイント、1,000人ずつは10ポイント。差で見ると500人ずつの組合せが最大だね。
医学生医学生
1,000人ずつの組合せも治療群の改善率は60%で同じなのに、効果は半分なんですね。
ドクタードクター
鋭いね。対照群も50%と高いから、治療で上乗せされた分は10ポイントしかない。治療群の数字だけ見て「よく効く」と判断してはいけない、という典型例だ。対照群があって初めて治療の効果がわかるんだよ。
医学生医学生
差ではなく比で見たら結論が変わることはないですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。比、つまり相対改善度を出すと、500人ずつの組合せが1.5倍で最大、2,000人ずつが約1.33倍、200人ずつが1.25倍、400人ずつと1,000人ずつが1.2倍。比でも答えは同じになる。
医学生医学生
臨床実習で論文抄読会があったとき、NNTという指標が出てきて先生に説明を求められ、うまく答えられませんでした。
ドクタードクター
ちょうどいい機会だから整理しよう。臨床疫学では「好ましくない事象」、ここでは改善しなかったことを事象と考える。対照群の事象率をCER、治療群をEERとすると、絶対リスク減少ARRはCERからEERを引いたもの、相対リスク減少RRRはARRをCERで割ったもの、そしてNNTは1をARRで割ったものだ。
医学生医学生
500人ずつの組合せだと、非改善率が60%から40%に下がるので、ARRは0.2、RRRは約33%、NNTは5ですね。
ドクタードクター
その通り。5人治療すれば、対照に比べて1人多く改善が得られるという意味だ。ほかの組合せはNNTが10か20だから、ここでも500人ずつの組合せが最も効果的になる。NNTは小さいほど効果が大きいと覚えておこう。
医学生医学生
差でも比でもNNTでも同じ組合せが一番、だから自信をもって選べるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。ただし実際の研究では、指標によって印象が変わることも多い。特に注意したいのがRRRだ。事象率が20%から10%に下がる場合と、0.2%から0.1%に下がる場合、RRRはどちらも50%だけど、ARRは10%と0.1%、NNTは10と1,000で大違いになる。
医学生医学生
製薬会社のパンフレットで「リスクが半分に」と書かれていたら、元のリスクがどれくらいかを確認しないといけないということですね。
ドクタードクター
まさに。RRRは効果を大きく印象づけやすいから、ARRやNNTも必ず合わせて確認する習慣をつけよう。ちなみにコホート研究の相対危険と寄与危険も同じ発想で、比は関連の強さ、差は集団への影響の大きさを表す。有害事象側の指標にはNNHもあるよ。
医学生医学生
結局、治療を選ぶときは効果の大きさだけでなく、副作用や費用も考える必要がありますよね。
ドクタードクター
その通り。実際には信頼区間や統計学的有意性、観察期間、有害事象、費用まで総合して治療の価値を判断する。今回の計算はその第一歩だね。

まとめ

治療効果を比較するときは、改善者の実数ではなく各群の改善率に直してから比べることが出発点です。本問では、改善率の差(寄与改善度・ARR)、比(相対改善度・RRR)、治療必要数(NNT)のいずれで評価しても、治療群60%・対照群40%の組合せが最も効果が大きく、NNTは5と最小になります。実数の差が最大でも対象人数が多いだけの組合せや、治療群の改善率が高くても対照群も高い組合せは、効果が大きいとは言えません。ARR=CER-EER、RRR=ARR÷CER、NNT=1÷ARRの関係を押さえ、RRRはベースラインリスクを反映しないためARRやNNTと併せて評価することが重要です。これらの指標を正しく読み解く力は、論文やエビデンスを臨床判断に生かすための基本となります。

解答・解説

正解はcです

テーマ

治療群と対照群を比べる介入研究の結果から、治療効果の大きさを評価する問題である。組合せごとに対象人数が異なるため、改善者の「数」ではなく「割合(改善率)」に直してから比較することが出発点となる。

手順1:改善率を求める

改善率=改善者数÷人数 ・①:治療群 100/200=0.50、対照群 80/200=0.40 ・②:治療群 120/400=0.30、対照群 100/400=0.25 ・③:治療群 300/500=0.60、対照群 200/500=0.40 ・④:治療群 600/1,000=0.60、対照群 500/1,000=0.50 ・⑤:治療群 800/2,000=0.40、対照群 600/2,000=0.30

手順2:治療効果の指標を計算する

(1)差でみる指標(寄与改善度・絶対的な効果)=治療群の改善率-対照群の改善率 ①0.10、②0.05、③0.20、④0.10、⑤0.10 (2)比でみる指標(相対改善度)=治療群の改善率÷対照群の改善率 ①1.25、②1.20、③1.50、④1.20、⑤約1.33

手順3:「改善しなかった人」を事象として臨床疫学の指標で確かめる

治療効果の指標は、本来「好ましくない事象(ここでは非改善)」の割合がどれだけ減るかで表すことが多い。非改善率を対照群 CER(control event rate)、治療群 EER(experimental event rate)とすると、 ・絶対リスク減少 ARR(absolute risk reduction)=CER-EER ・相対リスク減少 RRR(relative risk reduction)=(CER-EER)÷CER ・治療必要数 NNT(number needed to treat)=1÷ARR これを当てはめると、 ・①:CER 0.60、EER 0.50 → ARR 0.10、RRR 約17%、NNT 10 ・②:CER 0.75、EER 0.70 → ARR 0.05、RRR 約7%、NNT 20 ・③:CER 0.60、EER 0.40 → ARR 0.20、RRR 約33%、NNT 5 ・④:CER 0.50、EER 0.40 → ARR 0.10、RRR 20%、NNT 10 ・⑤:CER 0.70、EER 0.60 → ARR 0.10、RRR 約14%、NNT 10

結論

差(寄与改善度・ARR)、比(相対改善度・RRR)、NNTのいずれの指標で評価しても③が最も治療効果が大きい。どの指標でも結論が一致するため、③が正解と判断できる。

注意点

改善者の実数の差だけをみると⑤(800-600=200人)が最大に見えるが、これは対象人数が多いためにすぎない。治療効果は必ず割合に換算して比較する。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    改善率は治療群0.50、対照群0.40で、差は0.10、比は1.25である。非改善を事象とするとARR 0.10、RRR約17%、NNT 10となる。いずれの指標でも③(差0.20、比1.50、NNT 5)に及ばない。

  2. ×b.  ②

    改善率は治療群0.30、対照群0.25で、差は0.05、比は1.20にとどまる。ARR 0.05、RRR約7%、NNT 20と、5つの組合せの中で治療効果は最も小さい。1人の改善を上乗せするのに20人を治療する必要がある。

  3. ○c.  ③

    改善率は治療群0.60、対照群0.40で、差は0.20、比は1.50と、どちらも5つの中で最大である。非改善を事象としてもARR 0.20、RRR約33%で最大、NNTは5と最小であり、5人治療すれば対照に比べて1人多く改善が得られる。絶対的な指標・相対的な指標のいずれでみても最も治療効果が大きい。

  4. ×d.  ④

    改善率は治療群0.60で③と同じだが、対照群も0.50と高いため、差は0.10、比は1.20にとどまる。ARR 0.10、RRR 20%、NNT 10である。治療群の改善率だけでなく、対照群との比較で評価しなければならないことを示す例である。

  5. ×e.  ⑤

    改善者数の差は200人と最大だが、各群2,000人と対象が多いためであり、改善率は治療群0.40、対照群0.30で差は0.10、比は約1.33である。ARR 0.10、RRR約14%、NNT 10となり、③より効果は小さい。実数ではなく割合で比較する必要がある。

治療効果の指標

・絶対リスク減少(ARR)=CER-EER:治療によって事象の発生割合が何ポイント下がったか。公衆衛生・臨床上のインパクトを直接表す。 ・相対リスク減少(RRR)=(CER-EER)÷CER=1-相対危険(EER÷CER):対照群に比べて事象が何割減ったか。 ・治療必要数(NNT)=1÷ARR:1人の事象を防ぐ(1人多く改善させる)ために何人を治療する必要があるか。小さいほど効果的である。有害事象についての同様の指標は害必要数(NNH: number needed to harm)という。

ARRとRRRの使い分け

RRRは同じでも、もともとの事象率(ベースラインリスク)が低い集団ではARRは小さくなり、NNTは大きくなる。例えば、事象率が20%から10%に下がる場合と、0.2%から0.1%に下がる場合は、どちらもRRRは50%だが、ARRは10%と0.1%、NNTは10と1,000で大きく異なる。RRRは効果を大きく印象づけやすいため、臨床的・公衆衛生的な意義を判断する際にはARRやNNTも合わせて確認することが重要である。

コホート研究の指標との対応

曝露の影響を評価する相対危険(リスク比)・寄与危険(リスク差)は、介入研究における相対的な効果(RRRや相対改善度)・絶対的な効果(ARRや寄与改善度)とそれぞれ同じ発想の指標である。比は「関連の強さ」、差は「集団への影響の大きさ」を表す。

実際の評価で考慮すること

実際の臨床研究では、効果の点推定値だけでなく信頼区間や統計学的有意性、観察期間の長さ、有害事象、費用なども総合して治療の価値を判断する。

POINT

・治療効果は改善者の実数ではなく、各群の割合に直して比較する。 ・差で評価する指標(寄与改善度、ARR)と比で評価する指標(相対改善度、RRR)がある。 ・ARR=CER-EER、RRR=(CER-EER)÷CER、NNT=1÷ARR。 ・NNTは小さいほど治療効果が大きい。 ・RRRはベースラインリスクの大小を反映しないため、ARR・NNTと併せて評価する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。