2人の指定医が「一致」するとき―人権制限の重さで読み解く精神科入院形態
第102回医師国家試験 B問題 第12問
国試問題にチャレンジ
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉で2名以上の精神保健指定医の診察結果の一致を必要とするのはどれか。
- a.任意入院
- b.応急入院
- c.措置入院
- d.緊急措置入院
- e.医療保護入院
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生まとめ
精神科の入院は本人の同意による任意入院が原則で、同意が得られない場合に限り、精神保健指定医の判断による非自発的入院が認められます。入院形態は「自傷他害のおそれの有無(措置系か医療保護系か)」と「緊急性(72時間に限る簡略手続きか)」の2軸で整理でき、都道府県知事の行政処分として最も強い人権制限を伴う措置入院のみが、指定医2名以上の診察結果の一致を要件とします。緊急措置入院・医療保護入院・応急入院は指定医1名で足り、緊急措置入院と応急入院は72時間以内、医療保護入院は家族等(いなければ市町村長)の同意が必要で、旧来の保護者制度は2013年改正で廃止されています。人権制限の重さに応じて手続きの厳格さが変わるという制度の論理を理解しておくことは、試験対策だけでなく、精神科医療に関わる際に患者の権利を守る土台となります。
解答・解説
正解はcです
精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)が定める入院形態の要件を問う問題である。 精神科の入院は、本人の同意による任意入院が原則である。本人の同意が得られない場合に限って、人権を制限する非自発的入院が認められており、その判断を担うのが精神保健指定医(精神科の実務経験と研修を要件に厚生労働大臣が指定する医師、以下「指定医」)である。 非自発的入院の形態は、次の2つの観点で整理すると覚えやすい。 1)入院の理由:自傷他害(自分を傷つけ、または他人に害を及ぼすこと)のおそれがあるか(措置系)、それとも自傷他害のおそれはないが医療と保護のため入院が必要か(医療保護系)。 2)緊急性:正規の手続きを踏む時間があるか、緊急で手続きを簡略化し期間を72時間に限るか。 このうち、都道府県知事の行政処分として強制的に入院させる措置入院は最も強い人権制限を伴うため、2名以上の指定医がそれぞれ診察し、いずれも「精神障害者であり、入院させなければ自傷他害のおそれがある」と判断が一致することが要件とされている。緊急措置入院、医療保護入院、応急入院はいずれも指定医1名の診察で足り、任意入院は指定医の診察を要件としない。
選択肢考察
- ×a. 任意入院
本人の同意に基づく入院であり、精神科病院の管理者は、できるだけこの形態で入院させるよう努めなければならないとされている。入院時に指定医の診察は必要ない。なお、任意入院者から退院の申し出があっても、指定医が診察して医療と保護のため入院継続が必要と認めた場合には、72時間に限り退院を制限できる(緊急その他やむを得ない場合は特定医師の診察により12時間まで)。
- ×b. 応急入院
急速を要し、家族等の同意を得ることができない場合に、指定医1名が診察して、直ちに入院させなければ医療と保護に著しく支障があると判断したとき、本人の同意がなくても72時間に限り入院させる形態である。入院先は都道府県知事が指定した応急入院指定病院に限られる。自傷他害のおそれを要件としない点で措置系と異なる。緊急その他やむを得ない場合は特定医師の診察により12時間に限り入院させることもできる。
- ○c. 措置入院
精神障害のために自傷他害のおそれがある者について、都道府県知事(政令指定都市では市長)が指定医2名以上に診察させ、その結果が一致した場合に、国・都道府県が設置した精神科病院または指定病院に入院させる形態である。本人や家族の同意を必要とせず、行政処分として行われるため、判断の客観性を確保する目的で2名以上の指定医の意見の一致が求められている。警察官などからの通報や申請が契機となることが多く、入院費用は原則として公費で負担される。自傷他害のおそれが消失したと認められれば、直ちに退院させなければならない。
- ×d. 緊急措置入院
自傷他害のおそれが著しく、急速を要するために措置入院の正規の手続き(指定医2名による診察)をとる時間がない場合に、指定医1名の診察で入院させる形態である。人権制限を最小限にするため入院期間は72時間に限られ、その間に改めて措置入院の要否を判断する必要がある。指定医1名で足りる点が措置入院との違いである。
- ×e. 医療保護入院
指定医1名の診察で、精神障害者であり医療と保護のため入院が必要だが、本人がその状態のため任意入院を行える状態にないと判断された場合に、家族等の同意によって入院させる形態である。家族等がいない場合や、家族等が意思を表示できない場合などは市町村長の同意で入院させる。かつては「保護者」の同意が要件であったが、2013年の法改正(2014年施行)で保護者制度が廃止され、家族等のうちいずれかの者の同意に改められた。入院時には10日以内に都道府県知事へ届け出る。緊急その他やむを得ない場合は特定医師の診察で12時間に限り入院させることができる。
精神保健福祉法の入院形態のまとめ
・任意入院:本人の同意/指定医の診察は要件でない/期間の定めなし(退院制限は指定医1名で72時間) ・措置入院:自傷他害のおそれ/指定医2名以上の診察結果の一致/都道府県知事の命令/期間の定めなし(おそれ消失で退院) ・緊急措置入院:自傷他害のおそれが著しく急を要する/指定医1名/都道府県知事の命令/72時間以内 ・医療保護入院:医療と保護のため入院が必要だが任意入院を行える状態にない/指定医1名+家族等(または市町村長)の同意/精神科病院管理者の判断 ・応急入院:急速を要し家族等の同意が得られない/指定医1名/応急入院指定病院/72時間以内
精神保健指定医
一定年数以上の臨床経験と精神科での実務経験、所定の研修の修了などを要件に、厚生労働大臣が指定する医師である。非自発的入院や入院継続の要否、隔離・身体的拘束などの行動制限の必要性を判定する職務を担う。
特定医師
指定医の不在時に、一定の要件を満たす医師が、医療保護入院・応急入院・任意入院者の退院制限を12時間に限り行えるとする特例である(特定病院に限る)。
近年の主な改正
・2013年改正(2014年施行):保護者制度の廃止、医療保護入院の同意者を家族等に変更。 ・2022年改正(2024年施行):医療保護入院に入院期間(更新制)を設け、家族等が意思を表示しない場合も市町村長同意を可能とした。虐待防止措置の義務化、入院者訪問支援事業の創設なども行われた。
POINT
・指定医2名以上の診察結果の一致が必要なのは措置入院のみである。 ・緊急措置入院と応急入院は指定医1名、期間は72時間以内。 ・措置系(措置・緊急措置)は自傷他害のおそれが要件で、都道府県知事が行う。 ・医療保護入院は指定医1名+家族等の同意(保護者制度は廃止済み)。 ・任意入院が原則であり、指定医の診察は要件でない。
