砕いた石はどこへ行く?―ESWL翌日の側腹部痛が示す破砕結石の尿管嵌頓
第101回医師国家試験 H問題 第50問
国試問題にチャレンジ
32歳の男性。左側腹部痛,微熱および肉眼的血尿を主訴に来院した。前日,直径2cmの左腎結石に対して,体外衝撃波結石破砕術〈ESWL〉を行った。 最も考えられるのはどれか。
- a.腎破裂
- b.腎動静脈瘻
- c.腎盂腎炎
- d.尿管損傷
- e.破砕結石尿管嵌頓
対話形式の解説
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ドクターまとめ
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)の後は、砕かれた結石の破片が尿管の生理的狭窄部に詰まる破砕結石尿管嵌頓が最も多い短期合併症であり、尿路閉塞による側腹部痛、破片による粘膜損傷や衝撃波に伴う血尿、微熱がみられます。特に2cm程度の大きな結石では破片が多く、ストーンストリートも起こりやすいため、事前の尿管ステント留置が検討されます。腎盂腎炎は悪寒戦慄を伴う高熱が主体で、腎破裂は極めてまれ、腎動静脈瘻は腎生検など、尿管損傷は尿管鏡など内視鏡手術に伴うものです。診断は超音波で水腎症を確認し、KUBやCTで結石片を同定し、発熱を伴う閉塞では閉塞性腎盂腎炎として速やかなドレナージが必要です。処置の仕組みから合併症を予測する考え方は、さまざまな医原性トラブルを見抜く力の基礎になります。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
・32歳男性。前日に直径2cmの左腎結石に対して体外衝撃波結石破砕術(ESWL:体の外から衝撃波を結石に集中させて細かく砕き、尿とともに自然に排出させる治療)を受けている。 ・左側腹部痛、微熱、肉眼的血尿が出現した。
診断へのプロセス
ESWL翌日という時間経過から、まず処置に伴う合併症を考える。ESWLで砕かれた結石の破片は尿管を通って排出されるが、その途中で尿管に詰まる(嵌頓する)と、尿の流れが妨げられて腎盂内圧が上がり、疝痛発作と同様の側腹部痛をきたす。破片による尿路粘膜の損傷や衝撃波の影響で肉眼的血尿も生じ、軽度の炎症反応による微熱を伴うこともある。特に本例のように2cmと大きな結石を砕いた場合は破片の量が多く、尿管内に破片が列をなして詰まる状態(ストーンストリート)も起こりやすい。 以上から、ESWL後の最も頻度の高い短期合併症である破砕結石の尿管嵌頓が最も考えやすい。
鑑別のポイント
・腎盂腎炎:ESWL後にも起こりうるが、通常は悪寒戦慄を伴う高熱が主体となる。 ・腎損傷:ESWLで起こりうるのは主に腎被膜下血腫であり、腎破裂のような高度の損傷はまれである。 ・腎動静脈瘻:主に腎生検や穿通性外傷後にみられ、ESWL後に起こることはまれである。 ・尿管損傷:尿管鏡などを尿管内に挿入する内視鏡手術に伴うものであり、体外からのESWLでは考えにくい。 確定には腹部超音波検査で水腎症の有無を、単純X線(KUB)やCTで尿管内の結石片を確認する。
選択肢考察
- ×a. 腎破裂
腎破裂は交通事故や転落、スポーツ中の打撲など強い外力による高度の腎外傷であり、大量の出血によるショックや腹部・側腹部の腫脹を伴う。ESWLによる腎への影響は腎被膜下血腫や腎周囲血腫が主で、その頻度も低く、腎破裂に至ることは極めてまれである。本例の比較的軽い症状とも合わない。
- ×b. 腎動静脈瘻
腎動静脈瘻は腎動脈と腎静脈が異常につながった状態で、多くは腎生検や経皮的腎手術、穿通性外傷などの後に生じる。ESWL後の報告はまれであり、ESWL翌日に側腹部痛と微熱を伴って現れる病態として最も考えやすいものではない。
- ×c. 腎盂腎炎
感染を伴う結石を砕いた場合や、破片による尿路閉塞に感染が加わった場合、ESWL後に腎盂腎炎を起こすことはある。しかし腎盂腎炎は通常、悪寒戦慄を伴う38℃以上の高熱と肋骨脊柱角の叩打痛が中心となり、微熱にとどまる本例とは合わない。ただし破砕結石の嵌頓に感染が加わると閉塞性腎盂腎炎となり、敗血症に進むおそれがあるため、発熱の推移には注意が必要である。
- ×d. 尿管損傷
医原性の尿管損傷は、経尿道的尿管結石破砕術(TUL)など尿管内に内視鏡や器具を挿入する処置、あるいは婦人科・大腸の骨盤内手術で起こることが多い。ESWLは体外から衝撃波を当てるだけで尿管に器具を入れないため、尿管損傷の原因とは考えにくい。
- ○e. 破砕結石尿管嵌頓
砕かれた結石の破片が尿管の生理的狭窄部(腎盂尿管移行部、総腸骨動脈との交差部、尿管膀胱移行部)などに詰まると、上部尿路の閉塞によって腎盂内圧が上昇し、側腹部痛が生じる。破片による粘膜損傷で肉眼的血尿も起こり、微熱を伴うこともある。ESWL後の短期合併症として最も頻度が高く、特に2cm程度の大きな結石では破片が多いため起こりやすい。そのため大きな結石では、あらかじめ尿管ステント(ダブルJステント)を留置して閉塞を防ぐことがある。本例のESWL翌日の左側腹部痛・微熱・肉眼的血尿の組み合わせに最もよく合う。
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)の概要
・体外で発生させた衝撃波をX線や超音波で位置を確認した結石に集中させ、結石を細かく砕いて自然排石を促す非侵襲的な治療である。麻酔を要しないか軽い鎮痛で行えることが多い。 ・腎結石では主に20mm未満の結石がよい適応とされる。20mm以上の大きな腎結石やサンゴ状結石では、経皮的腎結石破砕術(PNL)や経尿道的腎尿管結石破砕術(TUL)が優先されることが多い。 ・禁忌:妊娠、治療部位の周辺にある動脈瘤、是正されていない出血傾向(抗凝固薬内服中など)、結石より下流の尿路閉塞、コントロールされていない尿路感染症など。
ESWLの主な合併症
・血尿:ほぼ全例で一過性にみられる。 ・破砕結石の尿管嵌頓・ストーンストリート:最も問題となる短期合併症。疝痛、水腎症をきたす。 ・尿路感染症・腎盂腎炎:感染結石や閉塞を伴う場合に起こり、敗血症に進むことがある。 ・腎被膜下血腫・腎周囲血腫:頻度は低いが、出血傾向や高血圧がある例で起こりやすい。 ・皮膚の点状出血、周辺臓器(腸管など)の損傷はまれ。
破砕結石嵌頓への対応
・鎮痛薬(NSAIDsなど)による疼痛管理と、α1遮断薬などによる排石促進。 ・閉塞が持続する場合や感染を伴う場合は、尿管ステント留置や腎瘻造設でドレナージを行い、残った破片はTULなどで除去する。特に発熱を伴う閉塞性腎盂腎炎は緊急のドレナージが必要である。
POINT
・ESWL後の短期合併症として最も多いのは、破砕結石の尿管嵌頓(ストーンストリートを含む)と一過性の血尿。 ・ESWL後の側腹部痛+血尿 → 破砕結石の嵌頓をまず考え、超音波で水腎症の有無を確認する。 ・高熱を伴えば閉塞性腎盂腎炎を疑い、速やかにドレナージを行う。 ・大きな結石(約2cm以上)の破砕では、尿管ステントを事前に留置して嵌頓を予防することがある。 ・ESWLは体外からの治療であり、尿管損傷は尿管鏡など内視鏡手術の合併症である。
