StudyMed医師国家試験

呼吸数20は「落ち着いている」のか?―新生児のバイタルは大人の物差しで測らない

第101回医師国家試験 H問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第101回 H問題 第34問

生後5日の新生児。在胎39週,体重3,300gで出生した。Apgarスコアは1分8点,5分10点であった。母乳栄養で哺乳は1日7,8回。溢乳がみられるが哺乳力は良好である。排便は黄色泥状便を1日に3,4回認める。体動は活発で啼泣時に口唇のチアノーゼを認める。  この児に認められないのはどれか。

  1. a.体温37.5℃
  2. b.呼吸数20/分
  3. c.脈拍120/分
  4. d.Moro反射
  5. e.背反射

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、生後5日の新生児で正常なら見られるはずの所見と、見られないはずの所見を見分ける問題だ。ポイントは2つ。まず問題文の情報からこの子が健康か病的かを判断すること、そして新生児のバイタルサインと原始反射の正常像を知っていること。まず、この子の全体像をどう捉えるかな。
医学生医学生
啼泣時に口唇チアノーゼが出ているのが気になります。先天性心疾患を考えたほうがいいでしょうか。
ドクタードクター
そこで引っかかるのは良い感覚だけど、今回は「啼泣時」に限っている点が大事だね。激しく泣くと一過性に口唇が紫っぽくなることは新生児ではよくあって、安静時に消えてほかに異常がなければ病的意義は乏しい。体動が活発で哺乳力も良好、黄色泥状便は母乳栄養児として典型的。溢乳も、新生児は噴門の締まりが弱く胃が縦型だから生理的によく起こる。
医学生医学生
Apgarスコアも1分8点、5分10点で、出生時の適応も問題なかったわけですね。つまり、この子は健康な正期産児として考えればいいと。
ドクタードクター
その通り。だから設問は「健康な新生児に当てはまらない数値・反射はどれか」と読み替えられる。では体温37.5℃はどうだろう。
医学生医学生
大人なら微熱っぽいですが……新生児だと高めでも正常なんでしたっけ。
ドクタードクター
そう。新生児の腋窩温はおよそ36.5〜37.5℃が正常範囲で、成人よりやや高め。体表面積が大きく体温調節も未熟だから、着せすぎや室温でも簡単に変動する。37.5℃は範囲内で、元気な本児にあって矛盾しない。
医学生医学生
脈拍120/分は、大人なら頻脈ですけど、新生児ならむしろ普通ですよね。
ドクタードクター
正解。新生児の心拍数はおよそ120〜160/分。眠っているとやや下がり、泣けば180/分前後まで上がることもある。体重あたりの代謝が大きいぶん、呼吸も循環も大人の2倍以上のペースで回っているイメージだ。
医学生医学生
そうすると呼吸数20/分は、大人なら正常でも新生児には少なすぎますね。小児科の講義で新生児は40〜60/分と習いました。
ドクタードクター
まさにそこが答え。呼吸数20/分は新生児では明らかな徐呼吸で、母体への薬剤投与による呼吸抑制、頭蓋内出血、低体温などによる呼吸中枢の抑制や、無呼吸発作を疑う所見だ。活発で哺乳良好な健康新生児には認められない。逆に60/分を超える多呼吸も、新生児一過性多呼吸や呼吸窮迫症候群を考えるサインになる。
医学生医学生
大人の物差しで見ると見逃してしまう落とし穴ですね。残りの2つは原始反射ですが、Moro反射は新生児なら出ていて当然ですよね。
ドクタードクター
そう。仰臥位で頭部を急に後屈させたり大きな音を立てたりすると、両腕を伸ばして開き、続いて抱きつくように閉じる反射だ。生後4か月頃までに消える。新生児期に出ないとか左右差がある場合は、中枢神経障害、分娩麻痺、鎖骨骨折などを疑う。
医学生医学生
臨床実習のNICUで、左右差を見るのが大事だと教わりました。背反射はGalant反射のことですよね。
ドクタードクター
そう。腹臥位に保持して脊柱の外側の皮膚を上から下へこすると、刺激した側へ体幹が弯曲する。これも新生児期に出現し、生後4〜6か月頃までに消える正常な原始反射だ。
医学生医学生
原始反射は「あるべき時期にない」のも「消えるべき時期に残る」のも異常、という理解でいいですか。
ドクタードクター
その通り。原始反射は脳幹・脊髄レベルの反射で、大脳が成熟すると抑制されて消えていく。だから出現と消失のタイミングそのものが神経発達の指標になる。発展として、年齢別のバイタルの目安も整理しておこう。呼吸数は乳児30〜40、幼児20〜30、学童18〜20/分、心拍数は乳児100〜140、幼児90〜120/分程度と、成長とともに下がっていく。成書で多少数値は違うけれど、流れで覚えるといい。
医学生医学生
小児科外来で、熱で呼吸が速いのか呼吸器疾患なのか迷ったときも、まず年齢の基準を思い出すべきですね。
ドクタードクター
そうだね。もう一つ、生後5日頃は生理的体重減少や生理的黄疸の時期でもある。出生体重の5〜10%程度減って1〜2週で戻るのは正常範囲だ。「生理的」と「病的」の境目を知っておくことが、新生児を診るうえでの土台になる。

まとめ

新生児は体重あたりの代謝が大きく、呼吸数はおよそ40〜60/分、心拍数は120〜160/分、腋窩温は36.5〜37.5℃前後が正常の目安です。そのため呼吸数20/分は成人なら正常でも新生児では明らかな徐呼吸で、薬剤による呼吸抑制や頭蓋内出血、無呼吸発作などを疑う異常所見となります。一方、Moro反射(生後4か月頃まで)や背反射(Galant反射、生後4〜6か月頃まで)は新生児期にあるべき原始反射で、欠如や左右差、消失時期を過ぎた残存は中枢神経系の異常を示唆します。溢乳、母乳栄養児の黄色泥状便、啼泣時の一過性口唇チアノーゼなども生理的範囲の所見として押さえておきましょう。年齢ごとの基準値と生理的変化を知ることが、小児の異常を見逃さない第一歩です。

解答・解説

正解はbです

所見の整理

・在胎39週(正期産)、出生体重3,300g(適正体重)、Apgarスコア1分8点・5分10点で、出生時の適応は良好である。Apgarスコアは心拍数、呼吸、筋緊張、反射、皮膚色の5項目を各0〜2点で評価し、7点以上が正常とされる。 ・生後5日の時点で母乳を1日7〜8回飲み、哺乳力は良好。溢乳(哺乳後に少量の乳が口から溢れること)は、新生児では胃の噴門部の締まりが弱く胃が縦型であるためにしばしばみられる生理的現象である。 ・黄色泥状便を1日3〜4回。母乳栄養児として典型的な便である。 ・体動は活発。啼泣時の口唇チアノーゼは、激しく泣いた際に一過性に生じるものであり、安静時に消失し、ほかに異常がなければ病的意義は乏しい。 以上から、本児は健康な正期産の新生児と判断できる。

設問の考え方

「認められないのはどれか」なので、正常新生児のバイタルサインや神経反射として当てはまらないものを選ぶ。新生児は体重あたりの代謝が大きく、呼吸数・心拍数はいずれも成人のおよそ2倍以上である。新生児の基準値(呼吸数40〜60/分、心拍数120〜160/分、体温36.5〜37.5℃前後)と、新生児期に存在すべき原始反射を知っていれば判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  体温37.5℃

    新生児の体温は成人よりやや高めで、腋窩温でおよそ36.5〜37.5℃が正常範囲である。新生児は体表面積が大きく体温調節機能も未熟なため、環境温や着衣の影響を受けやすい。37.5℃は正常範囲内であり、元気で哺乳良好な本児に認められて矛盾しない。

  2. ○b.  呼吸数20/分

    新生児の正常呼吸数は40〜60/分程度で、成人(12〜20/分)より多い。呼吸数20/分は新生児としては明らかに少なく、呼吸中枢の抑制(母体への薬剤投与の影響、頭蓋内出血、低体温など)や無呼吸発作を疑う異常所見である。活発に動き哺乳も良好な健康新生児には認められない。なお、60/分を超える多呼吸も一過性多呼吸や呼吸窮迫症候群などを考える異常所見である。

  3. ×c.  脈拍120/分

    新生児の心拍数(脈拍)の正常範囲はおよそ120〜160/分であり、120/分は正常範囲内である。睡眠中はこれよりやや少なく、啼泣時には180/分前後まで増加することもある。

  4. ×d.  Moro反射

    Moro反射は、仰臥位で頭部を急に後屈させたり大きな音を立てたりすると、両上肢を伸展・外転して開き、続いて抱きつくように内転・屈曲させる原始反射である。新生児期に出現し、生後4か月頃までに消失する。生後5日の正常新生児では認められるのが当然で、むしろ欠如や左右差があれば中枢神経障害、分娩麻痺、鎖骨骨折などを疑う。

  5. ×e.  背反射

    背反射(Galant反射)は、児を腹臥位に保持して脊柱の外側の背部皮膚を上から下へこすると、刺激した側に体幹が弯曲する原始反射である。新生児期に出現し、生後4〜6か月頃までに消失する。正常新生児で認められる所見である。

年齢別のバイタルサインの目安

・新生児: 呼吸数40〜60/分、心拍数120〜160/分 ・乳児: 呼吸数30〜40/分、心拍数100〜140/分 ・幼児: 呼吸数20〜30/分、心拍数90〜120/分 ・学童: 呼吸数18〜20/分、心拍数80〜90/分 ・成人: 呼吸数12〜20/分、心拍数60〜100/分 (数値は成書によって多少異なる)

主な原始反射と消失時期の目安

・吸啜反射、探索反射: 生後4〜6か月頃 ・Moro反射: 生後4か月頃 ・手掌把握反射: 生後3〜4か月頃 ・足底把握反射: 生後9〜10か月頃 ・背反射(Galant反射): 生後4〜6か月頃 ・非対称性緊張性頸反射(ATNR): 生後4〜6か月頃 ・自動歩行: 生後1〜2か月頃 原始反射は脳幹・脊髄レベルの反射で、大脳の成熟に伴い抑制されて消失する。新生児期に欠如・左右差があれば、また消失すべき時期を過ぎても残存していれば、中枢神経系の異常を考える。

正常新生児にみられる生理的所見

・溢乳、生理的体重減少(生後3〜5日に出生体重の5〜10%程度減少し、1〜2週で回復)、生理的黄疸、末梢性チアノーゼ(手足)、啼泣時の一過性チアノーゼ、新生児落屑など。 ・母乳栄養児の便は黄色で泥状〜軟便、回数が多い。

POINT

・新生児の呼吸数は40〜60/分、心拍数は120〜160/分。呼吸数20/分は異常(少なすぎる)。 ・新生児の体温は36.5〜37.5℃程度で、37.5℃は正常範囲。 ・Moro反射(〜4か月)、背反射(〜4〜6か月)は新生児期に存在すべき原始反射で、欠如は異常。 ・溢乳、母乳栄養児の黄色泥状便、啼泣時の一過性チアノーゼは生理的範囲の所見。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。