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血管の「太さ」で症状が読める―血管炎の組合せ問題を一網打尽

第101回医師国家試験 F問題 第69問

国試問題にチャレンジ

第101回 F問題 第69問

疾患と症候の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.結節性多発動脈炎 ―― 黄疸
  2. b.Behçet病 ―― 結節性紅斑
  3. c.多発血管炎性肉芽腫症〈Wegener肉芽腫症〉 ―― 点状出血
  4. d.高安動脈炎〈大動脈炎症候群〉 ―― 紫斑
  5. e.過敏性血管炎 ―― 血圧の左右差

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は血管炎を中心に、疾患と症候の正しい組合せを選ぶ問題だ。一見すると暗記勝負に見えるけれど、「どの太さの血管が侵されるか」という軸を持つと、症状はほぼ予想できるようになる。血管炎の分類で習ったものを覚えているかな。
医学生医学生
Chapel Hill分類ですね。大型・中型・小型の血管炎に分けると講義で習いました。
ドクタードクター
そう。大型血管炎は大動脈とその主要な枝が侵される。中型は臓器へ向かう中くらいの動脈、小型は細動脈・毛細血管・細静脈だ。では、大動脈の枝が狭くなったらどんな症状が出ると思う?
医学生医学生
腕に行く血流が減るので、脈が弱くなったり、血圧に左右差が出たりしそうです。
ドクタードクター
その通り。それが大型血管炎の代表である高安動脈炎の特徴だ。若い女性に多く、上肢の脈拍が触れにくくなる「脈なし病」、血圧の左右差、頸部の血管雑音などが出る。一方、小型血管炎では皮膚の細い血管が壊れて、触れることのできる紫斑や点状出血が出る。
医学生医学生
ということは、高安動脈炎と紫斑の組合せは逆ですね。血圧の左右差のほうが高安動脈炎に合います。
ドクタードクター
いい気づきだね。そして過敏性血管炎と血圧の左右差の組合せも同じように入れ替わっている。過敏性血管炎は薬剤や感染に対する過敏反応で起こる小型血管炎で、今でいう皮膚白血球破砕性血管炎にあたる。主に下肢の触知可能な紫斑として出てくるもので、大血管を狭くはしないから血圧の左右差は起きない。
医学生医学生
多発血管炎性肉芽腫症も小型血管炎なので、点状出血が出てもおかしくない気がしますが……。
ドクタードクター
鋭い疑問だ。確かに経過中に紫斑などの皮膚病変がみられることはある。ただ、多発血管炎性肉芽腫症の顔は別のところにあるんだ。PR3-ANCAと関連して、上気道、肺、腎の3つが侵される。何て覚えたかな。
医学生医学生
ELKですね。鼻や副鼻腔の壊死性肉芽腫で鞍鼻になったり、肺に空洞ができたり、半月体形成性糸球体腎炎を起こしたりします。
ドクタードクター
完璧だ。点状出血や紫斑を代表的な症候とするのは、IgA血管炎などのほうだね。だから多発血管炎性肉芽腫症と点状出血の組合せは正しいとはいえない。では結節性多発動脈炎と黄疸はどうだろう。
医学生医学生
中型血管炎なので、臓器の梗塞や動脈瘤が起きるイメージです。肝臓の動脈がやられたら黄疸もありうるのかなと迷いました。
ドクタードクター
肝動脈に病変が及ぶことはあるけれど、黄疸は代表的な症候ではなく、まれなんだ。結節性多発動脈炎で押さえるべきなのは、発熱や体重減少に加えて、腎梗塞や腎血管性高血圧、多発単神経炎、皮下結節や網状皮斑、腸間膜動脈の病変による腹痛、精巣痛といった症状だね。B型肝炎ウイルスとの関連も知られているけれど、黄疸が特徴になるわけではない。
医学生医学生
残るのがBehçet病と結節性紅斑ですね。皮膚科の実習で、下腿に圧痛のある赤いしこりの患者さんを見せてもらいました。
ドクタードクター
それが結節性紅斑様皮疹だ。Behçet病はいろいろな太さの血管を侵す血管炎に位置づけられていて、口腔内の再発性アフタ、皮膚症状、外陰部潰瘍、ぶどう膜炎などの眼症状が4主症状。皮膚症状には結節性紅斑様皮疹のほか、毛嚢炎様皮疹や皮下の血栓性静脈炎も含まれる。だからこの組合せが正解だ。
医学生医学生
血管の太さで症状を考えて、合わない組合せを外していけば、自然とBehçet病が残るんですね。
ドクタードクター
その通り。発展知識として、Behçet病では針を刺した部位に膿疱ができる針反応や、HLA-B51との関連も重要だ。腸管型、血管型、神経型といった特殊病型は重症化しうるので、臨床では腹痛や神経症状にも注意が必要になる。また、結節性紅斑はBehçet病だけでなく、サルコイドーシスやCrohn病、溶連菌感染症、結核、薬剤でも出るから、見つけたら背景疾患を幅広く考えることが大切だよ。
医学生医学生
旧称と新しい名前の対応も混乱しやすいです。
ドクタードクター
そこも整理しておこう。Wegener肉芽腫症は多発血管炎性肉芽腫症に、Schönlein-Henoch紫斑病はIgA血管炎に、過敏性血管炎は皮膚白血球破砕性血管炎に対応する。試験でも臨床でも両方の名前が出てくるから、セットで覚えておくと安心だね。

まとめ

血管炎はChapel Hill分類に基づき、侵される血管の太さで整理すると症候を理解しやすくなります。大型血管炎の高安動脈炎では脈拍の減弱や血圧の左右差、中型血管炎の結節性多発動脈炎では腎梗塞・多発単神経炎・皮下結節、小型血管炎のIgA血管炎や皮膚白血球破砕性血管炎(旧称:過敏性血管炎)では触知可能な紫斑が特徴で、多発血管炎性肉芽腫症は上気道・肺・腎の病変(ELK)とPR3-ANCAが代表的です。Behçet病は多様な太さの血管を侵す血管炎で、口腔内アフタ、結節性紅斑様皮疹などの皮膚症状、外陰部潰瘍、眼症状を4主症状とし、針反応やHLA-B51との関連も知られています。結節性紅斑はサルコイドーシスやCrohn病などでも生じるため、背景疾患の検索が重要です。「血管の太さ→症候」という考え方を身につければ、組合せ問題にも臨床での鑑別にも応用できます。

解答・解説

正解はbです

血管炎を中心とした膠原病類縁疾患と、その特徴的な症候の対応を問う問題である。 血管炎は、障害される血管の太さによって分類すると整理しやすい(Chapel Hill分類、2012年改訂)。 ・大型血管炎:大動脈とその主要分枝が侵される(高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)。血管の狭窄・閉塞による脈拍の減弱や血圧の左右差、血管雑音が特徴である。 ・中型血管炎:臓器に向かう中等大の動脈が侵される(結節性多発動脈炎、川崎病)。動脈瘤や梗塞による臓器障害、皮下結節、多発単神経炎などが出る。 ・小型血管炎:細動脈・毛細血管・細静脈が侵される(ANCA関連血管炎、IgA血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎など)。皮膚では触知可能な紫斑(palpable purpura)や点状出血が典型的である。 Behçet病はChapel Hill分類で「さまざまな太さの血管を侵す血管炎(variable vessel vasculitis)」に位置づけられ、口腔内アフタ、皮膚症状(結節性紅斑、毛嚢炎様皮疹)、外陰部潰瘍、眼症状(ぶどう膜炎)を4主症状とする。 この枠組みで各組合せを確認すると、血圧の左右差は大型血管炎の高安動脈炎、紫斑・点状出血は小型血管炎の症候であり、選択肢c〜eでは疾患と症候が入れ替わっている。疾患と症候が正しく対応しているのは、Behçet病と結節性紅斑の組合せである。

選択肢考察

  1. ×a.  結節性多発動脈炎 ―― 黄疸

    結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)は中型動脈の壊死性血管炎で、発熱・体重減少などの全身症状に加え、腎梗塞・腎血管性高血圧、多発単神経炎、皮下結節・網状皮斑、腹部臓器の虚血(腸間膜動脈病変による腹痛)、精巣痛などをきたす。肝動脈に病変が及ぶこともあるが、黄疸は代表的な症候ではなく、まれである。なお、B型肝炎ウイルス感染に関連したPANが知られているが、これも黄疸を特徴とするものではない。

  2. ○b.  Behçet病 ―― 結節性紅斑

    Behçet病の皮膚症状の代表は、下腿などに生じる圧痛を伴う皮下の紅斑(結節性紅斑様皮疹)と、毛嚢炎様皮疹(痤瘡様皮疹)である。皮膚症状は口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、眼症状とともに4主症状の一つに数えられる。このほか、針を刺した部位に膿疱ができる針反応や、表在性血栓性静脈炎もみられる。したがってこの組合せは正しい。

  3. ×c.  多発血管炎性肉芽腫症〈Wegener肉芽腫症〉 ―― 点状出血

    多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)は、PR3-ANCA(プロテイナーゼ3に対する抗好中球細胞質抗体)と関連する小型血管炎で、上気道(E:鼻・副鼻腔・中耳の壊死性肉芽腫性炎、鞍鼻)、肺(L:結節・空洞)、腎(K:壊死性半月体形成性糸球体腎炎)の3領域の病変(ELK)が特徴である。経過中に紫斑などの皮膚病変がみられることはあるが、初発時の頻度は1割前後と低く、代表的な症候とはいえない。点状出血・紫斑を代表的症候とするのはIgA血管炎(Schönlein-Henoch紫斑病)などである。旧称のWegener肉芽腫症は、国際会議(2012年Chapel Hill会議)で現在の病名に改められた。

  4. ×d.  高安動脈炎〈大動脈炎症候群〉 ―― 紫斑

    高安動脈炎は若年女性に多い大型血管炎で、大動脈弓とその分枝(鎖骨下動脈、頸動脈など)の狭窄・閉塞により、上肢の脈拍減弱・消失(脈なし病)、血圧の左右差、頸部の血管雑音、めまい・失神、上肢の易疲労感などをきたす。大動脈弁閉鎖不全症や大動脈瘤を合併することもある。紫斑は細い血管が侵される小型血管炎の症候であり、高安動脈炎の特徴ではない。

  5. ×e.  過敏性血管炎 ―― 血圧の左右差

    過敏性血管炎は、薬剤や感染症などに対する過敏反応として起こる小型血管炎で、現在の分類では皮膚白血球破砕性血管炎(cutaneous leukocytoclastic angiitis)にあたる。主に下肢の触知可能な紫斑として現れ、病変は皮膚の細小血管に限られることが多い。大血管の狭窄を起こさないため、血圧の左右差は生じない。血圧の左右差は高安動脈炎の特徴的な所見である。

Chapel Hill分類(2012年)による主な血管炎

・大型血管炎:高安動脈炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎) ・中型血管炎:結節性多発動脈炎、川崎病 ・小型血管炎  ANCA関連:顕微鏡的多発血管炎(MPO-ANCA)、多発血管炎性肉芽腫症(PR3-ANCA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧Churg-Strauss症候群)  免疫複合体性:IgA血管炎(旧Schönlein-Henoch紫斑病)、クリオグロブリン血症性血管炎、抗GBM病など ・多様な血管を侵す血管炎:Behçet病、Cogan症候群 ・単一臓器の血管炎:皮膚白血球破砕性血管炎(旧称の過敏性血管炎を含む)など

Behçet病の診断に用いる症状(厚生労働省基準)

主症状:①口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、②皮膚症状(結節性紅斑様皮疹、皮下の血栓性静脈炎、毛嚢炎様皮疹・痤瘡様皮疹)、③眼症状(虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎)、④外陰部潰瘍 副症状:関節炎、副睾丸炎、消化器病変(回盲部潰瘍)、血管病変、中枢神経病変 特殊病型:腸管型、血管型、神経型 検査では針反応陽性、HLA-B51との関連がよく知られる。

結節性紅斑を生じる代表的な病態

Behçet病、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(特にCrohn病)、溶連菌感染症、結核、薬剤など。

症候から疾患を想起するコツ

血圧の左右差・脈拍消失→高安動脈炎 触知可能な紫斑→小型血管炎(IgA血管炎、ANCA関連血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎) 多発単神経炎・皮下結節・腎梗塞→結節性多発動脈炎 鞍鼻・肺空洞・腎炎→多発血管炎性肉芽腫症

POINT

・Behçet病の皮膚症状は結節性紅斑(様皮疹)と毛嚢炎様皮疹が代表で、4主症状の一つである。 ・血圧の左右差・脈なしは大型血管炎である高安動脈炎の特徴である。 ・紫斑・点状出血は小型血管炎(IgA血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎など)の特徴である。 ・血管炎は侵される血管の太さで分類して症候を整理する。 ・旧称:Wegener肉芽腫症→多発血管炎性肉芽腫症、Schönlein-Henoch紫斑病→IgA血管炎、過敏性血管炎→皮膚白血球破砕性血管炎。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。