白くなる指先、治らない傷―強皮症は「血管の病気」から始まる
第101回医師国家試験 F問題 第68問
国試問題にチャレンジ
全身性強皮症〉でみられるのはどれか。2つ選べ。
- a.環状紅斑
- b.光線過敏
- c.指尖部潰瘍
- d.口腔内びらん
- e.Raynaud症状
対話形式の解説
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ドクターまとめ
全身性強皮症は、線維化・微小血管障害・自己免疫の3つを柱とする膠原病で、なかでも血管障害は早期から現れます。Raynaud症状はほぼ全例にみられて初発症状となることが多く、慢性的な虚血の結果として指尖部潰瘍や陥凹性瘢痕が生じ、これらは診断基準の小項目にも含まれます。一方、光線過敏や口腔潰瘍はSLE、環状紅斑はSjögren症候群(抗SS-A抗体)、有痛性の口腔内アフタはBehçet病に特徴的な所見です。強皮症では間質性肺疾患、肺動脈性肺高血圧症、強皮症腎クリーゼなどの内臓病変も重要で、自己抗体の種類が病型や合併症の予測に役立ちます。膠原病ごとの皮膚粘膜所見を病態と結びつけて整理しておくことは、早期診断と鑑別の大きな助けになります。
解答・解説
正解はc, eです
全身性強皮症(全身性硬化症、systemic sclerosis:SSc)の皮膚・末梢循環にかかわる症候を問う問題である。 SScは、①皮膚や内臓の線維化(コラーゲンの過剰沈着)、②微小血管の障害、③自己免疫(抗核抗体などの自己抗体の出現)の3つを病態の柱とする膠原病である。このうち微小血管障害が最も早くから現れ、寒冷刺激で手指の色が変わるRaynaud(レイノー)現象がほぼ全例にみられ、しばしば初発症状となる。血流不全が慢性化すると、指先の組織が虚血に陥り、指尖部の潰瘍や陥凹性瘢痕(pitting scar)が生じる。 一方、選択肢には全身性エリテマトーデス(SLE)、Sjögren症候群、Behçet病などに特徴的な皮膚粘膜症状が並んでいる。膠原病ごとの代表的な皮膚粘膜所見を整理しておけば、SScの「血管障害」を反映する所見を2つ選ぶことは難しくない。
選択肢考察
- ×a. 環状紅斑
環状紅斑は、中心が退色し辺縁が堤防状に盛り上がる輪のような紅斑で、Sjögren症候群や、SLEの亜型である亜急性皮膚エリテマトーデスでみられる。いずれも抗SS-A(Ro)抗体との関連が強い。SScに特徴的な皮膚所見ではない。なお、リウマチ熱でみられる輪状紅斑(erythema marginatum)とは別の所見である。
- ×b. 光線過敏
日光(主に紫外線)を浴びた部位に紅斑などが出現する光線過敏は、SLEの代表的な皮膚症状で、米国リウマチ学会(ACR)の分類基準の項目にも含まれる。皮膚筋炎でも日光曝露部の皮疹が悪化することがある。SScの特徴的な症候ではない。
- ○c. 指尖部潰瘍
SScでは指の小動脈の内膜が肥厚して内腔が狭くなり、さらにRaynaud現象による血管攣縮が重なるため、指先の組織が慢性的な虚血状態となる。その結果、指尖部に潰瘍や、潰瘍が治った後の陥凹性瘢痕(pitting scar)、指腹の萎縮が生じる。指尖部潰瘍・陥凹性瘢痕は厚生労働省のSSc診断基準の小項目の一つであり、SScに特徴的な所見である。重症例では壊疽に至ることもある。
- ×d. 口腔内びらん
口腔内のびらん・潰瘍は、SLE(通常は無痛性の口腔潰瘍で、分類基準の項目)やBehçet病(有痛性の再発性アフタ性潰瘍で、ほぼ必発の主症状)でみられる所見である。SScでは皮膚硬化による開口障害や舌小帯の短縮、口腔乾燥などはみられるが、口腔内びらんは特徴的所見ではない。
- ○e. Raynaud症状
Raynaud症状(Raynaud現象)は、寒冷や精神的緊張をきっかけに手指の小動脈が発作的に収縮し、指が白→紫(チアノーゼ)→赤と色調変化する現象である。SScでは90%以上の症例にみられ、皮膚硬化に先行する初発症状であることが多い。SScでは単なる機能的な血管攣縮に加え、微小血管の器質的な狭窄を伴うため症状が強く、指尖部潰瘍の原因にもなる。SLEや混合性結合組織病(MCTD)などでもみられるが、SScで最も高頻度である。
全身性強皮症(SSc)の概要
中年女性に多い膠原病で、皮膚硬化は手指から始まり体幹に向かって広がる(求心性)。皮膚硬化が肘・膝より遠位にとどまる限局皮膚硬化型(lcSSc)と、それより近位や体幹に及ぶびまん皮膚硬化型(dcSSc)に分けられる。
主な症候
・血管障害:Raynaud現象、指尖部潰瘍・陥凹性瘢痕、爪郭部毛細血管の異常(拡張・出血・脱落)、毛細血管拡張 ・皮膚:手指の浮腫性腫脹→硬化(強指症)、仮面様顔貌、口周囲の放射状のしわ、舌小帯の短縮、色素沈着と色素脱失の混在、皮下石灰沈着 ・消化管:食道下部の蠕動低下による逆流性食道炎・嚥下障害、腸管運動低下 ・肺:間質性肺疾患、肺動脈性肺高血圧症(死因として重要) ・腎:強皮症腎クリーゼ(急激な高血圧と腎機能低下。ACE阻害薬が治療の中心)
自己抗体
抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体:びまん型、間質性肺疾患と関連 抗セントロメア抗体:限局型、肺高血圧症と関連 抗RNAポリメラーゼIII抗体:急速な皮膚硬化、腎クリーゼと関連
厚生労働省の診断基準(概要)
大項目:両側手指を超えて近位に及ぶ皮膚硬化 小項目:手指に限局する皮膚硬化、爪郭部毛細血管異常、手指尖端の陥凹性瘢痕または指尖潰瘍、両側下肺野の間質影、上記3種の自己抗体のいずれかが陽性
他の膠原病の皮膚粘膜症状との対比
SLE:蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏、無痛性口腔潰瘍、脱毛 Sjögren症候群:環状紅斑、口腔・眼の乾燥 皮膚筋炎:ヘリオトロープ疹、Gottron徴候、機械工の手 Behçet病:有痛性口腔内アフタ、結節性紅斑、陰部潰瘍、ぶどう膜炎
POINT
・SScは線維化・微小血管障害・自己免疫の3要素からなる。 ・Raynaud現象はSScのほぼ全例にみられ、初発症状となることが多い。 ・血流障害の結果として指尖部潰瘍・陥凹性瘢痕が生じ、診断基準の小項目となっている。 ・光線過敏・口腔潰瘍はSLE、環状紅斑はSjögren症候群(抗SS-A抗体)、有痛性口腔内アフタはBehçet病と対応づけて覚える。
