StudyMed医師国家試験

白くなる指先、治らない傷―強皮症は「血管の病気」から始まる

第101回医師国家試験 F問題 第68問

国試問題にチャレンジ

第101回 F問題 第68問

全身性強皮症〉でみられるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.環状紅斑
  2. b.光線過敏
  3. c.指尖部潰瘍
  4. d.口腔内びらん
  5. e.Raynaud症状

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は全身性強皮症でみられる症候を選ぶ問題だ。選択肢には膠原病でみられる皮膚粘膜症状が並んでいるけれど、それぞれ「どの膠原病の顔なのか」を見分けることがポイントになる。まず、強皮症と聞いて真っ先に何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
名前の通り、皮膚が硬くなる病気というイメージです。手指から硬くなっていくと講義で習いました。
ドクタードクター
そうだね。ただ、強皮症の病態は皮膚硬化だけではないんだ。皮膚や内臓の線維化、微小血管の障害、そして自己抗体が出る自己免疫、この3つが柱になる。中でも一番早く現れることが多いのが血管障害なんだよ。
医学生医学生
血管障害というと、寒いときに指の色が変わるRaynaud症状ですか。
ドクタードクター
その通り。寒冷や緊張をきっかけに手指の小動脈が発作的に縮んで、指が白、紫、赤と色を変える。強皮症では90%以上にみられて、皮膚硬化より先に出る初発症状であることが多いんだ。
医学生医学生
Raynaud症状はSLEや混合性結合組織病でもみられると聞きましたが、強皮症に特別多いんですね。
ドクタードクター
ほかの膠原病でもみられるけれど、頻度は強皮症で最も高い。しかも強皮症では単なる血管の攣縮だけでなく、小動脈の内膜が厚くなって内腔が狭くなる器質的な変化が加わるから、症状が強くなりやすい。では、その血流不全が慢性化すると指先はどうなると思う?
医学生医学生
酸素が足りなくなって、組織が傷んでしまう……潰瘍ができるということでしょうか。
ドクタードクター
まさにそれが指尖部潰瘍だ。治った後には指先が小さくへこんだ陥凹性瘢痕、いわゆるpitting scarが残り、指腹がやせることもある。指尖部潰瘍や陥凹性瘢痕は厚生労働省の診断基準の小項目にも入っていて、重症例では壊疽に至ることもある。だから正解はRaynaud症状と指尖部潰瘍の2つだね。
医学生医学生
どちらも血管障害という一本の線でつながっているんですね。では、光線過敏はどうでしょう。日光で悪化する膠原病が多い印象があって迷いました。
ドクタードクター
光線過敏はSLEの代表的な皮膚症状で、分類基準の項目にも含まれているね。皮膚筋炎でも日光曝露部の皮疹が悪化することがある。でも強皮症の特徴ではないんだ。
医学生医学生
口腔内びらんもSLEの分類基準で見た気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。SLEの口腔潰瘍は痛みが少ないのが特徴だ。もう一つ、痛みの強い再発性のアフタはBehçet病の主症状だね。強皮症の口の所見は、皮膚が硬くなって口が開きにくくなる開口障害、舌小帯の短縮、口の周りの放射状のしわ、それに口腔乾燥などで、びらんは特徴的ではない。
医学生医学生
環状紅斑はリウマチ熱の輪状紅斑と混同しそうです。
ドクタードクター
そこは要注意。ここでいう環状紅斑は、中心が退色して辺縁が堤防状に盛り上がる輪っか状の紅斑で、Sjögren症候群や、SLEの亜型の亜急性皮膚エリテマトーデスでみられる。どちらも抗SS-A抗体との関連が強いんだ。リウマチ熱の輪状紅斑とは別物として覚えておこう。
医学生医学生
光線過敏と口腔潰瘍はSLE、環状紅斑はSjögren症候群、そしてRaynaud症状と指尖部潰瘍は強皮症、と整理できました。
ドクタードクター
いい整理だ。発展として、強皮症の他の臓器病変も押さえておこう。食道下部の蠕動低下による逆流性食道炎、間質性肺疾患、そして死因として重要な肺動脈性肺高血圧症。さらに、急激な高血圧と腎機能低下をきたす強皮症腎クリーゼもあって、こちらはACE阻害薬が治療の中心になる。
医学生医学生
自己抗体も病型と関係していましたよね。CBTの勉強で抗Scl-70抗体と抗セントロメア抗体をセットで覚えました。
ドクタードクター
そう、抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体はびまん皮膚硬化型や間質性肺疾患と、抗セントロメア抗体は限局皮膚硬化型や肺高血圧症と関連する。抗RNAポリメラーゼIII抗体は急速な皮膚硬化や腎クリーゼと関連するから要注意だ。臨床では、Raynaud症状だけを訴える患者さんでも、爪の根元の毛細血管の異常や自己抗体を調べることで、強皮症を早く見つけられることがある。指先の小さな傷も見逃さないようにしたいね。

まとめ

全身性強皮症は、線維化・微小血管障害・自己免疫の3つを柱とする膠原病で、なかでも血管障害は早期から現れます。Raynaud症状はほぼ全例にみられて初発症状となることが多く、慢性的な虚血の結果として指尖部潰瘍や陥凹性瘢痕が生じ、これらは診断基準の小項目にも含まれます。一方、光線過敏や口腔潰瘍はSLE、環状紅斑はSjögren症候群(抗SS-A抗体)、有痛性の口腔内アフタはBehçet病に特徴的な所見です。強皮症では間質性肺疾患、肺動脈性肺高血圧症、強皮症腎クリーゼなどの内臓病変も重要で、自己抗体の種類が病型や合併症の予測に役立ちます。膠原病ごとの皮膚粘膜所見を病態と結びつけて整理しておくことは、早期診断と鑑別の大きな助けになります。

解答・解説

正解はc, eです

全身性強皮症(全身性硬化症、systemic sclerosis:SSc)の皮膚・末梢循環にかかわる症候を問う問題である。 SScは、①皮膚や内臓の線維化(コラーゲンの過剰沈着)、②微小血管の障害、③自己免疫(抗核抗体などの自己抗体の出現)の3つを病態の柱とする膠原病である。このうち微小血管障害が最も早くから現れ、寒冷刺激で手指の色が変わるRaynaud(レイノー)現象がほぼ全例にみられ、しばしば初発症状となる。血流不全が慢性化すると、指先の組織が虚血に陥り、指尖部の潰瘍や陥凹性瘢痕(pitting scar)が生じる。 一方、選択肢には全身性エリテマトーデス(SLE)、Sjögren症候群、Behçet病などに特徴的な皮膚粘膜症状が並んでいる。膠原病ごとの代表的な皮膚粘膜所見を整理しておけば、SScの「血管障害」を反映する所見を2つ選ぶことは難しくない。

選択肢考察

  1. ×a.  環状紅斑

    環状紅斑は、中心が退色し辺縁が堤防状に盛り上がる輪のような紅斑で、Sjögren症候群や、SLEの亜型である亜急性皮膚エリテマトーデスでみられる。いずれも抗SS-A(Ro)抗体との関連が強い。SScに特徴的な皮膚所見ではない。なお、リウマチ熱でみられる輪状紅斑(erythema marginatum)とは別の所見である。

  2. ×b.  光線過敏

    日光(主に紫外線)を浴びた部位に紅斑などが出現する光線過敏は、SLEの代表的な皮膚症状で、米国リウマチ学会(ACR)の分類基準の項目にも含まれる。皮膚筋炎でも日光曝露部の皮疹が悪化することがある。SScの特徴的な症候ではない。

  3. ○c.  指尖部潰瘍

    SScでは指の小動脈の内膜が肥厚して内腔が狭くなり、さらにRaynaud現象による血管攣縮が重なるため、指先の組織が慢性的な虚血状態となる。その結果、指尖部に潰瘍や、潰瘍が治った後の陥凹性瘢痕(pitting scar)、指腹の萎縮が生じる。指尖部潰瘍・陥凹性瘢痕は厚生労働省のSSc診断基準の小項目の一つであり、SScに特徴的な所見である。重症例では壊疽に至ることもある。

  4. ×d.  口腔内びらん

    口腔内のびらん・潰瘍は、SLE(通常は無痛性の口腔潰瘍で、分類基準の項目)やBehçet病(有痛性の再発性アフタ性潰瘍で、ほぼ必発の主症状)でみられる所見である。SScでは皮膚硬化による開口障害や舌小帯の短縮、口腔乾燥などはみられるが、口腔内びらんは特徴的所見ではない。

  5. ○e.  Raynaud症状

    Raynaud症状(Raynaud現象)は、寒冷や精神的緊張をきっかけに手指の小動脈が発作的に収縮し、指が白→紫(チアノーゼ)→赤と色調変化する現象である。SScでは90%以上の症例にみられ、皮膚硬化に先行する初発症状であることが多い。SScでは単なる機能的な血管攣縮に加え、微小血管の器質的な狭窄を伴うため症状が強く、指尖部潰瘍の原因にもなる。SLEや混合性結合組織病(MCTD)などでもみられるが、SScで最も高頻度である。

全身性強皮症(SSc)の概要

中年女性に多い膠原病で、皮膚硬化は手指から始まり体幹に向かって広がる(求心性)。皮膚硬化が肘・膝より遠位にとどまる限局皮膚硬化型(lcSSc)と、それより近位や体幹に及ぶびまん皮膚硬化型(dcSSc)に分けられる。

主な症候

・血管障害:Raynaud現象、指尖部潰瘍・陥凹性瘢痕、爪郭部毛細血管の異常(拡張・出血・脱落)、毛細血管拡張 ・皮膚:手指の浮腫性腫脹→硬化(強指症)、仮面様顔貌、口周囲の放射状のしわ、舌小帯の短縮、色素沈着と色素脱失の混在、皮下石灰沈着 ・消化管:食道下部の蠕動低下による逆流性食道炎・嚥下障害、腸管運動低下 ・肺:間質性肺疾患、肺動脈性肺高血圧症(死因として重要) ・腎:強皮症腎クリーゼ(急激な高血圧と腎機能低下。ACE阻害薬が治療の中心)

自己抗体

抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体:びまん型、間質性肺疾患と関連 抗セントロメア抗体:限局型、肺高血圧症と関連 抗RNAポリメラーゼIII抗体:急速な皮膚硬化、腎クリーゼと関連

厚生労働省の診断基準(概要)

大項目:両側手指を超えて近位に及ぶ皮膚硬化 小項目:手指に限局する皮膚硬化、爪郭部毛細血管異常、手指尖端の陥凹性瘢痕または指尖潰瘍、両側下肺野の間質影、上記3種の自己抗体のいずれかが陽性

他の膠原病の皮膚粘膜症状との対比

SLE:蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏、無痛性口腔潰瘍、脱毛 Sjögren症候群:環状紅斑、口腔・眼の乾燥 皮膚筋炎:ヘリオトロープ疹、Gottron徴候、機械工の手 Behçet病:有痛性口腔内アフタ、結節性紅斑、陰部潰瘍、ぶどう膜炎

POINT

・SScは線維化・微小血管障害・自己免疫の3要素からなる。 ・Raynaud現象はSScのほぼ全例にみられ、初発症状となることが多い。 ・血流障害の結果として指尖部潰瘍・陥凹性瘢痕が生じ、診断基準の小項目となっている。 ・光線過敏・口腔潰瘍はSLE、環状紅斑はSjögren症候群(抗SS-A抗体)、有痛性口腔内アフタはBehçet病と対応づけて覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。