StudyMed医師国家試験

羊水は「飲んで」減る―産生と吸収のバランスで解く羊水過多の原因

第101回医師国家試験 F問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第101回 F問題 第1問

羊水過多症が起こりやすいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.過期妊娠
  2. b.二分脊椎
  3. c.胎児食道閉鎖
  4. d.胎盤機能不全
  5. e.胎児腎低形成

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は羊水量の異常をきたす病態の問題だ。丸暗記で臨むと迷いやすいけれど、羊水がどこで作られ、どこから出ていくのかという流れを押さえれば、選択肢を羊水過多と羊水過少にすっきり振り分けられる。まず、妊娠中期以降の羊水は主に何からできているか知っているかな。
医学生医学生
胎児の尿だと発生学の講義で習いました。羊水の中で胎児がおしっこをしているというのが衝撃でした。
ドクタードクター
その通り。主な供給源は胎児尿で、胎児肺から分泌される肺胞液も加わる。では、出ていくほうの経路は?
医学生医学生
胎児が羊水を飲み込む、嚥下でしょうか。
ドクタードクター
正解。胎児が飲み込んだ羊水は消化管で吸収され、胎盤を介して母体側へ戻る。だから羊水過多は「作りすぎ」か「飲めない・吸収できない」で、羊水過少は「作れない」か「漏れる」で起こる、と整理できるんだ。
医学生医学生
そうすると胎児食道閉鎖は、飲み込んでも胃や腸まで届かないので羊水過多ですね。
ドクタードクター
その通り。除去経路が遮断されるから羊水がたまっていく。超音波では胃泡が小さいか見えないことが手がかりになる。十二指腸閉鎖など他の上部消化管閉鎖でも同じで、十二指腸閉鎖ではdouble bubble signが有名だね。
医学生医学生
小児外科の講義でdouble bubble signの写真を見ました。二分脊椎はどうでしょう。神経の病気なので羊水とは関係なさそうに思えたんですが。
ドクタードクター
そこが引っかかりやすいところだね。脊髄髄膜瘤のような開放性の病変では、露出した神経組織や髄膜から脳脊髄液などの体液が羊水中へ漏れ出して羊水が増える。さらに中枢神経の障害で嚥下が減ることも寄与しうる。同じ神経管閉鎖障害の無脳症は、嚥下障害と体液漏出がより強く、羊水過多の代表的な原因だよ。
医学生医学生
なるほど、二分脊椎も羊水過多側なんですね。では胎児腎低形成は、尿が作れないから羊水過少ですか。
ドクタードクター
その通り。供給源である胎児尿が減るから羊水過少になる。両側腎無形成では高度の羊水過少から肺低形成、特有の顔貌、四肢変形をきたすPotter sequenceを生じる。羊水は胎児の肺の発達にも欠かせないんだ。
医学生医学生
胎盤機能不全と過期妊娠は、胎盤の働きが落ちるという点で似ている気がします。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。どちらも同じ方向の病態だ。胎盤機能が低下すると胎児は低酸素に適応するため、血流を脳や心臓などの重要臓器へ再分配する。その分腎血流が減って尿量が落ち、羊水過少になる。過期妊娠、つまり妊娠42週0日以降では胎盤の老化でこれが起こりやすい。
医学生医学生
羊水過少が胎盤機能不全のサインになるということは、胎児評価にも使われますか。
ドクタードクター
そう。BPS、biophysical profile scoreの評価項目に羊水量が組み込まれているし、胎盤機能不全では胎児発育不全を伴いやすいことも合わせて覚えておこう。
医学生医学生
産婦人科の実習で、AFIを測るのを見学しました。子宮を4分割して測るんでしたよね。
ドクタードクター
そう。各区画の最大羊水深度を合計したのがAFIで、羊水過多はおおむね24〜25cm以上か最大羊水深度8cm以上、羊水過少はAFI 5cm以下か最大羊水深度2cm以下が目安だ。発展として、母体の糖尿病も羊水過多の重要な原因で、胎児の高血糖による浸透圧利尿で尿が増える。双胎間輸血症候群では受血児が多尿で羊水過多、供血児が乏尿で羊水過少になるのも、同じ枠組みで説明できるね。
医学生医学生
母体側の病気も含めて、入る量と出る量で考えればいいんですね。羊水過多になると妊婦さんにはどんな問題がありますか。
ドクタードクター
子宮が過伸展するので切迫早産や前期破水を起こしやすく、破水時に急に子宮内圧が下がると常位胎盤早期剝離や臍帯脱出のリスクがある。分娩後の弛緩出血や母体の呼吸困難にも注意が必要だ。一方、羊水過少は肺低形成や臍帯圧迫による胎児機能不全につながる。また原因が特定できない特発性の羊水過多も少なくないから、所見があれば胎児の形態異常を丁寧に探しつつ、慎重に経過をみていくことが大切だよ。

まとめ

羊水は妊娠中期以降、主に胎児尿で産生され、胎児の嚥下と消化管からの吸収によって除去されるため、そのバランスの崩れで羊水量の異常が生じます。食道閉鎖や十二指腸閉鎖などの上部消化管閉鎖、無脳症や二分脊椎といった神経管閉鎖障害(嚥下障害や体液漏出)、母体糖尿病は羊水過多をきたしやすい代表的な病態です。一方、胎児腎の無形成・低形成や尿路閉塞、胎盤機能不全や過期妊娠による腎血流低下、前期破水は羊水過少の原因となり、高度な場合はPotter sequenceや肺低形成につながります。「入る量と出る量」の枠組みで考えれば、個々の疾患を暗記しなくても羊水量の異常を論理的に予測でき、超音波所見から胎児異常を疑う臨床判断にも役立ちます。

解答・解説

正解はb, cです

【テーマ】羊水量の異常をきたす病態 羊水量は「産生」と「吸収(除去)」のバランスで決まる。妊娠中期以降、羊水の主な供給源は胎児尿であり、そのほか胎児肺から分泌される肺胞液も加わる。一方、主な除去経路は胎児の嚥下であり、飲み込まれた羊水は消化管から吸収されて胎盤を介し母体側へ戻る。 したがって、 ・羊水過多:産生の増加(胎児多尿、神経管開放部からの体液漏出など)または嚥下・吸収の障害(上部消化管閉鎖、中枢神経異常や神経筋疾患による嚥下障害など)で起こる。 ・羊水過少:産生の減少(胎児腎の無形成・低形成、尿路閉塞、胎盤機能不全による胎児腎血流低下)または漏出(前期破水)で起こる。 この「入る量と出る量」の枠組みで各選択肢を分類すると、胎児尿が減る病態は羊水過少、嚥下・吸収が障害される病態や体液が漏れ出す病態は羊水過多と判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  過期妊娠

    過期妊娠(妊娠42週0日以降)では胎盤の老化により胎盤機能が低下しやすい。胎児は低酸素に適応するため血流を脳・心臓などの重要臓器へ再分配し、腎血流が減って尿量が減少する。その結果、羊水過少となる。病態としては選択肢dの胎盤機能不全と同じ方向である。

  2. ○b.  二分脊椎

    二分脊椎は神経管閉鎖障害の一つである。脊髄髄膜瘤のような開放性の病変では、露出した神経組織や髄膜から脳脊髄液などの体液が羊水中へ漏れ出し、羊水量が増える。加えて中枢神経障害に伴い胎児の嚥下が減ることも羊水過多に寄与しうる。同じ神経管閉鎖障害である無脳症は、嚥下障害と体液漏出が強く、羊水過多の代表的原因である。

  3. ○c.  胎児食道閉鎖

    食道が閉鎖していると、胎児が羊水を飲み込んでも胃・腸管まで届かず、消化管からの吸収ができない。羊水の除去経路が遮断されるため羊水過多となる。超音波で胃泡が小さい、または見えないことが手がかりとなる。十二指腸閉鎖など他の上部消化管閉鎖でも同様に羊水過多をきたす(十二指腸閉鎖ではdouble bubble signが特徴)。

  4. ×d.  胎盤機能不全

    胎盤機能不全では胎児への酸素・栄養供給が低下し、胎児発育不全(FGR)を伴いやすい。胎児の血流再分配で腎血流が減り、尿の産生が低下するため羊水過少となる。羊水過少は胎盤機能不全を示唆する所見として胎児評価(BPS:biophysical profile scoreなど)にも組み込まれている。

  5. ×e.  胎児腎低形成

    腎が低形成であれば、羊水の主な供給源である胎児尿の産生が減るため羊水過少となる。両側腎無形成では高度の羊水過少から肺低形成・特有の顔貌・四肢変形をきたすPotter sequence(ポッター連鎖)を生じる。

羊水量の基準(超音波評価)

・羊水過多:羊水量がおおむね800mLを超える状態。超音波ではAFI(amniotic fluid index:子宮を4分割して各区画の最大羊水深度を合計した値)が24〜25cm以上、または最大羊水深度(MVP)が8cm以上を目安とする。 ・羊水過少:羊水量がおおむね100mL未満。AFI 5cm以下、またはMVP 2cm以下を目安とする。

羊水過多の原因

・特発性:原因を特定できないものが少なくない。 ・胎児側:消化管閉鎖(食道閉鎖、十二指腸閉鎖など)、中枢神経系異常(無脳症、二分脊椎)、嚥下障害をきたす神経筋疾患・染色体異常(18トリソミーなど)、胸腔内占拠性病変による食道圧迫(横隔膜ヘルニアなど)、双胎間輸血症候群の受血児(多尿)、胎児水腫など。 ・母体側:糖尿病(胎児の高血糖による浸透圧利尿)。 ・合併症:子宮の過伸展による切迫早産・前期破水、破水時の常位胎盤早期剝離、臍帯脱出、分娩後の弛緩出血、母体の呼吸困難など。

羊水過少の原因

・胎児尿の減少:腎無形成・低形成、多嚢胞性異形成腎、尿路閉塞(後部尿道弁など)、胎盤機能不全、過期妊娠、双胎間輸血症候群の供血児。 ・羊水の漏出:前期破水。 ・薬剤:NSAIDs(胎児腎血流の低下)、ACE阻害薬・ARB(胎児腎障害)。 ・合併症:肺低形成、四肢拘縮、臍帯圧迫による胎児機能不全など。

POINT

・羊水は胎児尿で作られ、胎児の嚥下で除去される。 ・嚥下・吸収の障害(食道閉鎖、十二指腸閉鎖、無脳症など)や体液漏出(開放性神経管閉鎖障害)、母体糖尿病 → 羊水過多。 ・胎児尿の減少(腎無形成・低形成、尿路閉塞、胎盤機能不全、過期妊娠)や前期破水 → 羊水過少。 ・両側腎無形成による高度羊水過少 → Potter sequence(肺低形成)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。