StudyMed医師国家試験

「これは頭痛なんでしょうか」―言葉にならない痛みの答えは、患者の語りの中にある

第101回医師国家試験 D問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第101回 D問題 第3問

46歳の女性。「頭の右側が痛い」という訴えで来院した。医師と患者との会話を以下に示す。 医師 「どんな感じがするのか,詳しく教えていただけますか」 患者 「どんな感じかと言われても,なかなかお伝えしにくいです」 医師 「では,以前に経験した頭痛とは,どのように違うか教えてください」 患者 「そうですね。今回の痛みは,以前に経験した頭痛とは違います。そうとしか言いようがありません。とにかく痛くて,夜も眠れません」 医師 「眠れないほどひどい頭痛なんですね」 患者 「そうです。ひどい痛みです。でも,これは頭痛なんでしょうか。実は,別の病院でCTも受けたのですが,心配ないと言われました。皆さんは,普通の頭痛だと言いますが,私は,自分でこの痛みが頭痛かどうか,わからなくなってきました。ズキズキするとか,締め付けられるようだとかいった痛みとは違うのです…」 これに続く対応として適切なのはどれか。

  1. a.家族歴を聴取する。
  2. b.頭部MRIを勧める。
  3. c.精神科受診を勧める。
  4. d.さえぎらないようにして引き続き患者の話を聞く。
  5. e.訴えをよく整理してから翌日来院するように指示する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接の問題だ。テーマは、症状をうまく言葉にできず戸惑っている患者に、次に医師がどう関わるか。注目してほしいのは、患者の最後の発言が「…」で終わっていること、そして他院で「普通の頭痛」と言われて納得できていないことの2点だよ。
医学生医学生
夜も眠れないほどの痛みで「今までと違う」と言っているなら、二次性頭痛を考えてMRIを勧めるべきだと思いました。
ドクタードクター
「今までに経験したことのない頭痛」は確かに二次性頭痛の警告徴候のひとつだから、その発想自体は大切だ。ただ、ここで考えてほしいのは「今この瞬間に何をすべきか」なんだ。痛みの性状はまだ何もわかっていないよね。
医学生医学生
確かに、ズキズキでも締め付けでもない、ということしかわかっていません。
ドクタードクター
そう。頭痛の診断は問診が最も重要で、部位・性状・持続時間・誘因・随伴症状がわかれば多くの場合に見当がつく。この患者さんは典型的な片頭痛や緊張型頭痛の表現に当てはまらないと自分で言っている。ということは、実は頭痛ではない別の病態かもしれない。
医学生医学生
たとえば三叉神経痛や後頭神経痛のような、電気が走るような痛みでしょうか。
ドクタードクター
いい発想だね。ほかにも、皮疹が出る前の帯状疱疹、皮膚の感覚異常、副鼻腔や歯・顎関節に由来する痛みなども考えられる。そして、それらを見分ける手がかりは、患者さん自身の自由な言葉の中に含まれていることが多いんだ。だから正解は、さえぎらずに引き続き話を聴くこと。
医学生医学生
患者さんはまさに説明しようとしている途中なんですね。でも、家族歴を聴くのもいずれは必要な項目ですよね。
ドクタードクター
もちろん家族歴は大事だし、片頭痛のように家族内で集積しやすい頭痛もある。でも、現病歴を語っている最中に話題を変えると語りが途切れて、最も大切な痛みの性質についての情報を取り逃してしまう。既往歴や家族歴は現病歴を聴き終えてからで十分だよ。
医学生医学生
MRIも同じ理屈で、今はまだ早い、ということですね。
ドクタードクター
その通り。すでにCTで異常なしとされていて、何を疑うかも定まっていない。検査は十分な病歴聴取と神経学的診察を踏まえて選ぶもの。それに、話の途中で検査に話題を移すと「検査で片付けようとしている」と受け取られかねない。
医学生医学生
精神科受診はどうでしょう。表現が曖昧でCTも正常なら、心因性の可能性もあるのかなと少し考えてしまいました。
ドクタードクター
そこは要注意だね。身体的な評価も十分でない段階で精神科を勧めると、器質的疾患を見逃すおそれがあるし、患者さんは「気のせいだと言われた」と受け取って信頼関係が大きく損なわれる。心理的要因が関わっているとしても、訴えを十分に聴いて身体的評価をした後、本人の理解を得ながら検討するものなんだ。
医学生医学生
翌日に整理してから来てもらうのは、さすがに冷たい気がします。
ドクタードクター
その感覚は正しい。訴えを整理する手助けこそ医師の役割で、それを患者さんに任せて帰すのは責任の放棄に近い。夜も眠れない痛みを評価しないまま帰せば、重大な疾患を見逃す危険もある。
医学生医学生
OSCEの医療面接で、開かれた質問から始めて、閉じられた質問は後で確認に使うと習いました。今回はまさにその開かれた段階なんですね。
ドクタードクター
よく覚えているね。開かれた質問から徐々に焦点を絞る流れは、open-to-closed coneとも呼ばれる。最初から閉じられた質問を重ねると、医師の思い込みに沿って答えを誘導してしまう。聴き続けるときは、うなずきや相づち、「それで?」「もう少し教えてください」といった促し、患者さんの言葉の繰り返し、考えをまとめるのを待つ沈黙などを使うといい。
医学生医学生
問題文の「眠れないほどひどい頭痛なんですね」も繰り返しの技法ですね。
ドクタードクター
その通り。もうひとつ臨床で大事なのが解釈モデル、つまり患者さんが自分の病気をどう理解し、何を心配し、何を期待しているかだ。他院で説明を受けても納得できていない人ほど、ここを把握しないとどんな説明も届かない。「つらい思いをされてきたのですね」と気持ちを受け止める共感的な一言も、語りを引き出す大きな力になるよ。
医学生医学生
焦って検査や紹介に進む前に、まず聴く。それが診断にも信頼関係にもつながるんですね。
ドクタードクター
そういうことだ。聴くことは受け身の作業ではなく、最も情報量の多い診察手技だと覚えておいてほしい。

まとめ

患者が症状をうまく言葉にできずに戸惑いながらも自分で説明しようとしている場面では、さえぎらずに話を聴き続けることが最も適切な対応です。頭痛の診断では問診が最も重要であり、典型的な片頭痛や緊張型頭痛に当てはまらない痛みの場合、神経痛や発疹前の帯状疱疹など別の病態の手がかりが患者自身の語りの中に含まれていることがあります。家族歴の聴取や検査、精神科紹介は、現病歴を十分に聴いて身体的評価を行った後に判断すべきで、訴えの整理を患者任せにして帰すことも不適切です。医療面接は開かれた質問から始めて閉じられた質問へ進めるのが原則で、促し・繰り返し・沈黙・共感といった技法や解釈モデルの把握が、正確な診断と信頼関係の構築の両方を支えます。

解答・解説

正解はdです

医療面接の進め方、とくに患者が症状をうまく言葉にできずに戸惑っている場面での対応を問う問題である。

会話から読み取れること

・主訴は右側の頭部の痛みで、夜も眠れないほど強い。 ・痛みの性質を尋ねても「伝えにくい」と答え、以前の頭痛とは「違う」としか言えない。 ・他院でCT(コンピュータ断層撮影)を受けて「心配ない」「普通の頭痛」と言われたが、本人は納得できていない。 ・ズキズキする(拍動性)痛みでも締め付けられる痛みでもないと述べ、自分でも「これは頭痛なのか」とわからなくなっている。 患者はまさに今、自分の言葉で症状を説明しようとしている途中である。最後の発言が「…」で終わっていることからも、まだ話が続くことがうかがえる。また「誰にもわかってもらえない」という不安や不満も語られ始めている。

診断の面から

頭痛の診断は問診(病歴聴取)が最も重要で、痛みの部位・性状・持続時間・誘因・随伴症状などがわかれば多くの場合で見当がつく。本例では、典型的な片頭痛(拍動性)や緊張型頭痛(締め付けられる感じ)の表現に当てはまらないと本人が述べている。このような場合は、実は頭痛ではなく、神経痛(三叉神経痛や後頭神経痛のような電撃痛・刺すような痛み)、皮疹が出る前の帯状疱疹、皮膚の感覚異常、副鼻腔や歯・顎関節の病変に由来する痛みなど、別の病態である可能性も考えられる。それを見分ける手がかりは、患者自身の言葉による自由な描写の中に含まれていることが多い。

面接技法の面から

この段階で医師が主導して「はい・いいえ」で答える質問(閉じられた質問)を重ねたり、検査や他科受診に話を移したりすると、患者の語りが途切れ、重要な情報を得損なう。さらに「また聞いてもらえなかった」という不信感を生み、医師‐患者関係も損なわれる。患者が自発的に話している間はさえぎらず、うなずきや相づち、「それで?」「もう少し教えてください」といった促しを用いて語りを引き出すのが適切である。したがって、次の対応として最も適切なのは、患者の話をさえぎらずに引き続き聴くことである。

選択肢考察

  1. ×a.  家族歴を聴取する。

    不適切。家族歴は医療面接で聴取すべき項目の一つであり、片頭痛のように家族内で集積しやすい頭痛もあるため、いずれは確認する。しかし、患者が現病歴である痛みの性質を自分の言葉で説明しようとしている最中に話題を変えると、語りが中断され、診断に最も重要な痛みの性状についての情報が得られなくなる。また、訴えを十分に聴いてもらえないという印象を患者に与えてしまう。家族歴や既往歴は、現病歴を十分に聴き終えてから尋ねればよい。

  2. ×b.  頭部MRIを勧める。

    不適切。「今までと違う頭痛」は二次性頭痛(脳腫瘍やくも膜下出血などの原因疾患がある頭痛)を疑う警告徴候の一つであり、経過によってはMRI(磁気共鳴画像)による精査が必要になることもある。しかし、本例はすでにCTで異常がないとされており、痛みの性状もまだ明らかになっていない。何を疑ってどの検査を行うかは十分な病歴聴取と神経学的診察を踏まえて判断すべきで、この時点で検査を勧めるのは早すぎる。また、話の途中で検査に話題を移すことは、患者の訴えを受け止めずに検査で片付けようとする姿勢と受け取られかねない。

  3. ×c.  精神科受診を勧める。

    不適切。痛みの表現が曖昧で、CTで異常がないというだけで精神的な問題によると決めつけるのは早計である。身体疾患の検討も十分に行われていない段階で精神科を勧めると、器質的疾患を見逃すおそれがあるうえ、「気のせいだと言われた」と患者が受け取り、信頼関係を大きく損なう。心理的要因が関与している可能性があるとしても、まず訴えを十分に聴き、身体的評価を行ったうえで、必要に応じて患者の理解を得ながら紹介を検討するのが適切である。

  4. ○d.  さえぎらないようにして引き続き患者の話を聞く。

    適切。患者は痛みをうまく表現できずに戸惑いながらも、自分の言葉で説明しようとしている途中である。ここで話をさえぎらずに聴き続けることで、痛みの性質(電撃痛か、焼けるような痛みか、触れると痛むのかなど)、出現の仕方、誘因、随伴症状など、診断の手がかりとなる情報が得られる可能性が高い。また、医師が関心をもって耳を傾ける姿勢は、他院で「普通の頭痛」とされて納得できずにいる患者の不安を和らげ、信頼関係(ラポール)の形成にもつながる。うなずき・相づち・促しの言葉などを用いて、患者が話しやすい雰囲気をつくりながら聴くことが大切である。

  5. ×e.  訴えをよく整理してから翌日来院するように指示する。

    不適切。症状をうまく言葉にできない患者を助け、訴えを整理するのは医師の役割であり、それを患者に委ねて診察を打ち切るのは責任の放棄に等しい。夜も眠れないほどの痛みがある患者を十分に評価しないまま帰すことは、重大な疾患を見逃す危険もある。さらに、患者は突き放されたと感じ、医師への不信感を強めることになる。

医療面接の基本的な流れ

1. 挨拶・自己紹介・本人確認 2. 開かれた質問(open-ended question)で主訴と現病歴を自由に語ってもらう 3. 中立的・焦点を絞った質問で詳細を明らかにする 4. 閉じられた質問(closed question:はい・いいえで答える質問)で確認する 5. 既往歴・家族歴・生活歴などを聴取する 6. 要約して確認し、患者の解釈・心配・期待を尋ねる このように、開かれた質問から始めて徐々に焦点を絞っていく方法を「開かれた質問から閉じられた質問へ(open-to-closed cone)」という。最初から閉じられた質問を多用すると、医師の思い込みに沿った答えを誘導してしまい、診断を誤る原因となる。

患者の語りを促す技法

・促し(facilitation):うなずき、相づち、「それで?」「もう少し詳しく」など ・繰り返し:患者の言葉をそのまま返す(本例の「眠れないほどひどい頭痛なんですね」もその一つ) ・沈黙:患者が考えをまとめるのを待つ ・要約:聴いた内容をまとめて確認する ・共感的態度:患者の感情を言葉にして受け止める(「つらい思いをされてきたのですね」など)

解釈モデル

患者が自分の病気をどのように理解し、何を心配し、医療に何を期待しているかを「解釈モデル」という。本例のように他院で説明を受けても納得していない患者では、解釈モデルを把握することが医師‐患者関係の構築と適切な説明のために特に重要である。

二次性頭痛を疑う警告徴候(例)

突然発症の激しい頭痛、今までに経験したことのない頭痛、頻度や程度が増していく頭痛、50歳以降の初発、発熱・項部硬直・神経脱落症状を伴う頭痛、がんや免疫不全の既往がある患者の頭痛など。これらは詳しい病歴聴取によってはじめて明らかになる。

POINT

・患者が自発的に話している間はさえぎらずに聴く(促し・繰り返し・沈黙を活用) ・医療面接は開かれた質問から始め、閉じられた質問は後で確認に用いる ・頭痛の診断は問診が最も重要。検査や他科紹介は十分な病歴聴取の後に判断する ・訴えが曖昧でも安易に心因性と決めつけない。訴えの整理を患者任せにしない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。