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「重力に勝てるか」が分かれ道―徒手筋力テストの境界線はFair

第101回医師国家試験 C問題 第24問

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第101回 C問題 第24問

徒手筋力テストで重力に抗して完全に運動できる最小の段階はどれか。

  1. a.5〈Normal〉
  2. b.4〈Good〉
  3. c.3〈Fair〉
  4. d.2〈Poor〉
  5. e.1〈Trace〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は徒手筋力テスト、いわゆるMMTの段階評価を問う問題だ。0から5までの6段階を丸暗記するより、「重力に抗して動かせるか」と「検者の抵抗に耐えられるか」という2つの基準で整理すると迷わなくなる。今日はこの2つの物差しで考えてみよう。
医学生医学生
OSCEの神経診察で練習しましたが、正直なところ4と5の違いくらいしか意識していませんでした。
ドクタードクター
臨床実習の現場でもそうなりがちだね。でもMMTで一番大事な境界は、実はもっと下のほうにある。まず、そもそもMMTが何をする検査か説明できるかな。
医学生医学生
器具を使わずに、検者が手で抵抗をかけたり重力を利用したりして、筋ごとの筋力を段階で評価する検査ですよね。
ドクタードクター
その通り。ベッドサイドで末梢神経障害や脊髄障害、筋疾患などによる筋力低下の程度や分布をつかむのに使う。では本題。「重力に抗して完全に運動できる最小の段階」と聞いて、どれだと思う?
医学生医学生
「Good」という名前の響きからすると、4くらいないと重力には勝てない気がします。
ドクタードクター
そこが引っかかりやすいポイントだ。正解は3〈Fair〉。3は、検者が抵抗を加えなければ、重力に抗して関節可動域の全範囲を動かせる段階なんだ。ただし、わずかな抵抗でも加わると肢位を保てない。つまり3は「重力には勝てるけれど、それ以上の余力はない」状態だね。
医学生医学生
なるほど、Fairは「なんとか合格」というイメージですね。では4と5は抵抗の強さで分けるんでしょうか。
ドクタードクター
そう。4〈Good〉は重力に抗して全可動域を動かせ、中等度の抵抗までは耐えられるが強い抵抗には負ける段階。5〈Normal〉は強い抵抗にも抗して肢位を保てる、正常の筋力だ。どちらも抗重力運動はできるけれど、抵抗に耐える力がある分だけ3より上位になる。だから「最小」にはあたらないんだ。
医学生医学生
逆に2〈Poor〉は、重力に抗しては動かせないということですか。
ドクタードクター
その理解でいい。2は重力の影響を除いた肢位なら全可動域を動かせる段階だ。たとえば肘の屈曲なら、前腕を机の上の水平面で滑らせるように動かしてもらう。そこでは動かせても、腕を持ち上げることはできない。
医学生医学生
1〈Trace〉はさらに弱くて、関節は動かないんでしたよね。
ドクタードクター
そう。筋の収縮は視診や触診で確認できるけれど、関節運動は生じない段階だ。腱や筋腹がピクッと動くのを触れて判定する。そして収縮すら認めないのが0〈Zero〉。整理すると、3以上が「抗重力運動ができる」グループ、2以下が「できない」グループで、3がちょうど境目になっているわけだ。
医学生医学生
だから3が「重力に勝てる最小の段階」になるんですね。2つの基準を順番に当てはめると、すっきり整理できました。
ドクタードクター
実際の検査の進め方もその順番になっている。まず抗重力位で動かしてもらい、全可動域動かせれば抵抗をかけて4か5かを判定する。動かせなければ重力を除いた肢位に変えて2かどうかをみて、それも無理なら触診で1か0かを確かめる。
医学生医学生
カルテで「4+」や「3−」という記載を見たことがあります。あれは段階をさらに細かくしているんですか。
ドクタードクター
そう、プラスやマイナスを付けて変化を細かく追うこともある。ただ、MMTはあくまで大まかな段階評価で、特に4と5の区別は検者の主観や患者さんの体格に左右されやすい。一方で、3に達しているかどうかは、腕を持ち上げる、椅子から立ち上がるといった日常生活動作を自力でこなせるかの目安として、実用的な意味が大きいんだ。
医学生医学生
リハビリ科の実習で、理学療法士さんが「まず3を目指しましょう」と話していたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにその感覚だね。もう一つ注意点として、脳卒中などの上位運動ニューロン障害で痙縮が強い場合や、痛み・関節拘縮がある場合は正確な評価が難しくなる。数字だけでなく、何が運動を妨げているのかを見極める視点も持っておこう。

まとめ

徒手筋力テスト(MMT)は筋力を0〜5の6段階で評価する方法で、「重力に抗して全可動域を動かせるか」と「検者の抵抗にどの程度耐えられるか」の2つの基準を順に当てはめると整理しやすくなります。抵抗がなければ重力に抗して全可動域を動かせる3〈Fair〉が、抗重力運動ができる最小の段階であり、抗重力運動の可否を分ける境界です。4〈Good〉は中等度、5〈Normal〉は強い抵抗に抗せる段階で、2〈Poor〉は重力を除けば全可動域を動かせる段階、1〈Trace〉は筋収縮のみで関節運動がない段階、0は収縮もない段階です。3に達しているかどうかは日常生活動作が自力でできるかの目安にもなり、痙縮や疼痛、拘縮が評価に影響する点も含めて理解しておくことが、神経診察やリハビリテーションの場面で役立ちます。

解答・解説

正解はcです

徒手筋力テスト(manual muscle testing: MMT)は、検者が手で抵抗を加えたり重力の影響を利用したりしながら、個々の筋(筋群)の筋力を0〜5の6段階で評価する方法である。特別な器具を必要とせず、ベッドサイドで末梢神経障害・脊髄障害・筋疾患などの筋力低下の程度や分布を把握するのに用いられる。 段階を判定する鍵は、次の2つの基準を順にあてはめることである。 1) 重力に抗して関節可動域の全範囲を動かせるか(抗重力運動の可否) 2) 動かせる場合、検者の抵抗にどの程度耐えられるか 重力に抗して全可動域を動かせるが、検者が抵抗を加えると保持できない段階が3〈Fair〉である。これより上の4・5は「抗重力運動が可能なうえに抵抗にも耐えられる」段階、これより下の2・1・0は「抗重力運動ができない」段階である。したがって、重力に抗して完全に運動できる段階のうち最も低いのは3〈Fair〉であり、3が抗重力運動の可否を分ける境界になっている。

選択肢考察

  1. ×a.  5〈Normal〉

    5〈Normal〉は、重力に抗して全可動域を動かせ、さらに検者が加える強い(最大の)抵抗に抗しても肢位を保持できる段階であり、正常筋力に相当する。重力に抗して動かせることは満たすが、抗重力運動が可能な段階の中では最上位であり、「最小の段階」ではない。

  2. ×b.  4〈Good〉

    4〈Good〉は、重力に抗して全可動域を動かせ、中等度の抵抗(ある程度の抵抗)までは耐えられるが、強い抵抗には負けてしまう段階である。抗重力運動は可能だが、抵抗に耐える力も残っている分だけ3より上位であり、最小の段階ではない。

  3. ○c.  3〈Fair〉

    3〈Fair〉は、検者が抵抗を加えなければ重力に抗して関節可動域の全範囲を動かせるが、わずかな抵抗でも加わると運動・肢位を保てない段階である。2以下では重力に抗した全可動域の運動ができないため、重力に抗して完全に運動できる段階のうち最も低いのが3となる。MMTにおける「抗重力運動が可能か否か」の境界がこの段階である。

  4. ×d.  2〈Poor〉

    2〈Poor〉は、重力の影響を取り除いた肢位(例: 肘の屈曲を前腕を水平面上で滑らせるように行わせる)であれば全可動域を動かせるが、重力に抗しては全可動域を動かせない段階である。抗重力運動ができないので、設問の条件を満たさない。

  5. ×e.  1〈Trace〉

    1〈Trace〉は、筋の収縮を視診や触診で確認できる(腱や筋腹がわずかに動く)ものの、関節運動はまったく生じない段階である。重力を除いても関節を動かせないので、抗重力運動は当然不可能である。なお、筋収縮すら認めない段階が0〈Zero〉である。

MMTの6段階(Daniels法に基づく一般的な基準)

5〈Normal〉: 重力と強い(最大)抵抗に抗して全可動域を運動できる。 4〈Good〉: 重力と中等度の抵抗に抗して全可動域を運動できる。 3〈Fair〉: 抵抗がなければ重力に抗して全可動域を運動できる。 2〈Poor〉: 重力を除けば全可動域を運動できる。 1〈Trace〉: 筋収縮は認めるが関節運動は生じない。 0〈Zero〉: 筋収縮を認めない。

検査の進め方

通常はまず抗重力位で運動させ、全可動域を動かせれば抵抗を加えて4・5を判定し、動かせなければ重力を除いた肢位(水平面上の運動)に変えて2を判定し、それも不可なら筋収縮の有無を触診して1・0を判定する。臨床ではさらに「4+」「3−」のように+・−を付けて細かく記載することもある。

臨床的な意味

MMTは筋力の大まかな段階評価であり、特に4と5の区別は検者の主観や患者の体格に左右されやすい。一方、3(抗重力運動が可能)かどうかは、日常生活動作(上肢を持ち上げる、立ち上がる等)が自力で可能かの目安として実用的な意義が大きい。上位運動ニューロン障害で痙縮が強い場合や、疼痛・関節拘縮がある場合は正確な評価が難しい点にも注意する。

POINT

・MMTは0〜5の6段階で評価する。 ・3〈Fair〉=抵抗なしで重力に抗して全可動域を動かせる。抗重力運動が可能な最小段階であり、抗重力運動の可否の境界。 ・2〈Poor〉=重力を除けば全可動域を動かせる。1〈Trace〉=筋収縮のみで関節運動なし。0=筋収縮なし。 ・4〈Good〉は中等度の抵抗、5〈Normal〉は強い抵抗に抗せる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。