房水はどこから来てどこへ行く?―後房から隅角への一方通行をたどる
第110回医師国家試験 B問題 第3問
国試問題にチャレンジ
毛様体上皮で産生された房水の流出経路はどれか。
- a.前房 → 隅角 → 後房 → 瞳孔
- b.前房 → 後房 → 瞳孔 → 隅角
- c.瞳孔 → 後房 → 隅角 → 前房
- d.後房 → 瞳孔 → 前房 → 隅角
- e.後房 → 瞳孔 → 隅角 → 前房
対話形式の解説
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ドクターまとめ
房水は毛様体突起の無色素上皮で産生されて後房に分泌され、瞳孔を通って前房へ流れ、前房周辺の隅角から線維柱帯・Schlemm管を経て上強膜静脈へ排出されます。産生部位が後房側にあり、排出口の隅角が前房の一部であることを押さえれば、「後房→瞳孔→前房→隅角」という順序は自然に導けます。主経路のほかにぶどう膜強膜流出路という副経路があり、β遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬は産生を抑え、プロスタグランジン関連薬は副経路の流出を、ピロカルピンやRhoキナーゼ阻害薬は主経路の流出を促して眼圧を下げます。瞳孔ブロックで隅角が閉じれば閉塞隅角緑内障の急性発作となり、レーザー虹彩切開術で新たな通路を作ります。房水の流れを正確に描けることは、緑内障の病態と治療薬を理解する土台になります。
解答・解説
正解はdです
房水(眼球の前方を満たす透明な液体)が「どこで作られ、どの順に流れ、どこから眼外へ出るか」を問う基本問題である。眼球の前部の構造を思い浮かべながら考えるとよい。
前眼部の構造
・虹彩を境に、角膜と虹彩の間の空間を前房、虹彩の後ろで水晶体・毛様体に囲まれた狭い空間を後房という。 ・前房と後房は、虹彩の中央の穴である瞳孔でつながっている。 ・隅角は、前房の周辺部で角膜と虹彩の根元が接する角の部分であり、ここに房水の出口(線維柱帯とSchlemm管)がある。
房水の流れ
毛様体は虹彩の根元の後方にあり、後房に面している。房水は毛様体突起の上皮(無色素上皮)から後房へ分泌される。その後、虹彩と水晶体の間を通って瞳孔から前房へ流れ出し、前房の周辺にある隅角へ向かう。隅角では線維柱帯を通ってSchlemm管に入り、集合管・房水静脈を経て上強膜静脈へ流出する。 したがって、流れの順序は「毛様体(産生)→ 後房 → 瞳孔 → 前房 → 隅角(排出)」となる。産生部位(毛様体)が後房側にあること、排出口(隅角)が前房の周辺にあることの2点を押さえれば、順序は自然に決まる。
選択肢考察
- ×a. 前房 → 隅角 → 後房 → 瞳孔
毛様体は虹彩の後方に位置し、房水は最初に後房へ分泌される。前房から始まる点がまず誤りである。また、隅角は房水の最終的な排出口であり、隅角から後房へ戻る流れも存在しない。
- ×b. 前房 → 後房 → 瞳孔 → 隅角
房水は前房ではなく後房から始まる。また、前房から後房へ逆向きに流れることはなく、瞳孔を通って前房に出たあとに隅角へ向かうため、瞳孔の次に直接隅角が来る点も実際の解剖と合わない。
- ×c. 瞳孔 → 後房 → 隅角 → 前房
毛様体上皮で産生された房水が最初に入るのは後房であり、瞳孔ではない。瞳孔は後房と前房をつなぐ通路である。また、隅角は前房の周辺部にある排出口なので、隅角を通ったあとに前房へ戻ることはない。
- ○d. 後房 → 瞳孔 → 前房 → 隅角
毛様体突起の上皮から分泌された房水は後房に入り、虹彩の裏面と水晶体前面の間を通って瞳孔から前房へ流れ出る。前房内を周辺へ向かい、隅角の線維柱帯からSchlemm管へ入って眼外の静脈系に排出される。解剖学的な位置関係に沿った正しい順序である。
- ×e. 後房 → 瞳孔 → 隅角 → 前房
後房から瞳孔までの流れは正しい。しかし、瞳孔を出た房水はまず前房に入り、その周辺にある隅角から排出される。隅角は前房の一部である周辺の角にあたり、房水の出口であるため、隅角の後に前房が来ることはない。
房水の役割
・角膜や水晶体には血管がないため、房水がこれらに栄養や酸素を供給し、代謝産物を運び去る。 ・房水の産生と排出のバランスによって眼圧が保たれ、眼球の形が維持される。正常眼圧はおおむね10〜21 mmHgである。
房水の産生
・毛様体突起の上皮(2層のうち内側の無色素上皮)から、能動輸送と限外濾過などにより産生される。 ・産生には炭酸脱水酵素が関与し、交感神経のβ受容体刺激で産生が促される。このため、炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラミド、ドルゾラミドなど)やβ遮断薬(チモロールなど)は房水産生を抑えて眼圧を下げる。
房水の流出経路
・主経路(線維柱帯経路、経典的経路):隅角の線維柱帯 → Schlemm管 → 集合管 → 房水静脈 → 上強膜静脈。房水流出の大部分を占める。 ・副経路(ぶどう膜強膜流出路):隅角から毛様体筋の間を通って上脈絡膜腔へ抜け、強膜外へ吸収される経路。プロスタグランジン関連薬(ラタノプロストなど)はこの経路の流出を増やして眼圧を下げる。 ・ピロカルピンは毛様体筋を収縮させて線維柱帯を広げ、主経路の流出を促す。Rhoキナーゼ(ROCK)阻害薬も線維柱帯からの流出を促進する。
流出障害と緑内障
・原発閉塞隅角緑内障:水晶体と虹彩が密着して後房から前房への流れが妨げられる(瞳孔ブロック)と、後房の圧が高まり虹彩が前方へ押されて隅角が閉じる。房水の出口がふさがれて眼圧が急上昇し、急性発作では眼痛・頭痛・嘔気・視力低下・充血・角膜浮腫・散瞳などを呈する。治療としてレーザー虹彩切開術などで後房と前房の間に別の通路を作る。 ・原発開放隅角緑内障:隅角は開いているが、線維柱帯〜Schlemm管での流出抵抗が増して眼圧が上がる(眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障も含まれる)。
POINT
・房水は毛様体上皮(無色素上皮)で産生される。 ・流れ:後房 → 瞳孔 → 前房 → 隅角(線維柱帯 → Schlemm管 → 上強膜静脈)。 ・副経路としてぶどう膜強膜流出路がある。 ・β遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬は産生を抑え、プロスタグランジン関連薬はぶどう膜強膜流出を増やす。 ・瞳孔ブロックや隅角の閉塞で流出が妨げられると眼圧が上がり、閉塞隅角緑内障となる。
