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房水はどこから来てどこへ行く?―後房から隅角への一方通行をたどる

第110回医師国家試験 B問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第3問

毛様体上皮で産生された房水の流出経路はどれか。

  1. a.前房 → 隅角 → 後房 → 瞳孔
  2. b.前房 → 後房 → 瞳孔 → 隅角
  3. c.瞳孔 → 後房 → 隅角 → 前房
  4. d.後房 → 瞳孔 → 前房 → 隅角
  5. e.後房 → 瞳孔 → 隅角 → 前房

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は眼科の基本中の基本、房水の流れを問う問題だ。ポイントは「どこで作られるか」と「どこから出ていくか」の2点。この2つの位置関係さえ頭に描ければ、順序は自然に決まるよ。まず、房水を作る毛様体は眼のどのあたりにあるか思い浮かぶかな。
医学生医学生
解剖の講義で習った気がしますが、虹彩の根元あたりでしょうか。前か後ろかがあいまいです。
ドクタードクター
虹彩の根元の後ろ側だね。角膜と虹彩の間の空間を前房、虹彩の後ろで水晶体と毛様体に囲まれた狭いすき間を後房という。毛様体は後房に面しているから、房水はまず後房に分泌されるんだ。正確には毛様体突起の2層の上皮のうち、内側の無色素上皮が作っている。
医学生医学生
じゃあスタートは後房ですね。前房から始まる選択肢は、その時点で外せるということですか。
ドクタードクター
その通り。前房から始まるものはいずれも、産生部位の位置関係と合わない。では後房に出た房水は、次にどこを通って前房へ行くと思う?
医学生医学生
虹彩が壁になっているので……真ん中の穴、つまり瞳孔を通るしかないですね。
ドクタードクター
そう。虹彩の裏面と水晶体の前面のすき間を通り、瞳孔から前房へ流れ出る。瞳孔は後房と前房をつなぐ通路にすぎないから、房水の出発点にはならない。瞳孔から始まる選択肢が誤りなのはそのためだ。
医学生医学生
瞳孔を出たら前房、そこから隅角へ、ですよね。でも「後房→瞳孔→隅角→前房」の選択肢を見て、一瞬迷いました。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。隅角というのは、前房の周辺部で角膜と虹彩の根元が接する角の部分で、前房の一部なんだ。ここに線維柱帯とSchlemm管という房水の出口がある。だから隅角は最後の排出口であって、隅角を通ったあとに前房へ戻ることはない。同じ理由で、隅角から後房へ逆流するような順序もありえない。
医学生医学生
なるほど、隅角は「前房の中の出口」なんですね。だから正解は、後房、瞳孔、前房、隅角の順になる。
ドクタードクター
正解。隅角からは線維柱帯、Schlemm管、集合管、房水静脈を経て上強膜静脈へ流れ出る。これが主経路だ。ほかに、隅角から毛様体筋のすき間を抜けて上脈絡膜腔へ吸収される、ぶどう膜強膜流出路という副経路もある。
医学生医学生
そもそも房水って何のために流れているんでしょう。ただの水というイメージでした。
ドクタードクター
大事な疑問だね。角膜や水晶体には血管がないから、房水が栄養や酸素を届け、代謝産物を運び去っている。そして産生と排出のバランスで眼圧が保たれ、眼球の形が維持される。正常眼圧はおおむね10〜21 mmHgだ。
医学生医学生
薬理の講義で緑内障の点眼薬をたくさん覚えさせられたのですが、この流れに沿って整理できそうです。
ドクタードクター
ぜひそうしよう。産生を抑えるのがβ遮断薬のチモロールや、炭酸脱水酵素阻害薬のアセタゾラミド・ドルゾラミド。副経路の流出を増やすのがプロスタグランジン関連薬のラタノプロスト。主経路の流出を促すのが、毛様体筋を収縮させて線維柱帯を広げるピロカルピンや、Rhoキナーゼ阻害薬だ。
医学生医学生
作る量を減らすか、出口を広げるか、ということですね。閉塞隅角緑内障もこの流れで説明できますか。
ドクタードクター
できるよ。水晶体と虹彩が密着して後房から前房への流れが妨げられると、これを瞳孔ブロックというけれど、後房の圧が上がって虹彩が前に押し出され、隅角がふさがる。出口が閉じるから眼圧が急上昇し、急性発作では眼痛や頭痛、嘔気、視力低下、充血、角膜浮腫、散瞳などが出る。だからレーザー虹彩切開術で後房と前房の間に別の通り道を作るんだ。
医学生医学生
臨床実習で、頭痛と嘔吐で救急に来た人が実は緑内障発作だった、という話を聞きました。流れがわかると治療の意味まで納得できます。
ドクタードクター
そう、頭痛と嘔気が前面に出ると眼の病気と気づかれにくいことがあるから要注意だ。一方、開放隅角緑内障は隅角が開いているのに線維柱帯からSchlemm管での流出抵抗が増えるタイプで、眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障もここに含まれる。房水の流れを一本の道として描けるようにしておくと、病態も治療も一気につながるよ。

まとめ

房水は毛様体突起の無色素上皮で産生されて後房に分泌され、瞳孔を通って前房へ流れ、前房周辺の隅角から線維柱帯・Schlemm管を経て上強膜静脈へ排出されます。産生部位が後房側にあり、排出口の隅角が前房の一部であることを押さえれば、「後房→瞳孔→前房→隅角」という順序は自然に導けます。主経路のほかにぶどう膜強膜流出路という副経路があり、β遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬は産生を抑え、プロスタグランジン関連薬は副経路の流出を、ピロカルピンやRhoキナーゼ阻害薬は主経路の流出を促して眼圧を下げます。瞳孔ブロックで隅角が閉じれば閉塞隅角緑内障の急性発作となり、レーザー虹彩切開術で新たな通路を作ります。房水の流れを正確に描けることは、緑内障の病態と治療薬を理解する土台になります。

解答・解説

正解はdです

房水(眼球の前方を満たす透明な液体)が「どこで作られ、どの順に流れ、どこから眼外へ出るか」を問う基本問題である。眼球の前部の構造を思い浮かべながら考えるとよい。

前眼部の構造

・虹彩を境に、角膜と虹彩の間の空間を前房、虹彩の後ろで水晶体・毛様体に囲まれた狭い空間を後房という。 ・前房と後房は、虹彩の中央の穴である瞳孔でつながっている。 ・隅角は、前房の周辺部で角膜と虹彩の根元が接する角の部分であり、ここに房水の出口(線維柱帯とSchlemm管)がある。

房水の流れ

毛様体は虹彩の根元の後方にあり、後房に面している。房水は毛様体突起の上皮(無色素上皮)から後房へ分泌される。その後、虹彩と水晶体の間を通って瞳孔から前房へ流れ出し、前房の周辺にある隅角へ向かう。隅角では線維柱帯を通ってSchlemm管に入り、集合管・房水静脈を経て上強膜静脈へ流出する。 したがって、流れの順序は「毛様体(産生)→ 後房 → 瞳孔 → 前房 → 隅角(排出)」となる。産生部位(毛様体)が後房側にあること、排出口(隅角)が前房の周辺にあることの2点を押さえれば、順序は自然に決まる。

選択肢考察

  1. ×a.  前房 → 隅角 → 後房 → 瞳孔

    毛様体は虹彩の後方に位置し、房水は最初に後房へ分泌される。前房から始まる点がまず誤りである。また、隅角は房水の最終的な排出口であり、隅角から後房へ戻る流れも存在しない。

  2. ×b.  前房 → 後房 → 瞳孔 → 隅角

    房水は前房ではなく後房から始まる。また、前房から後房へ逆向きに流れることはなく、瞳孔を通って前房に出たあとに隅角へ向かうため、瞳孔の次に直接隅角が来る点も実際の解剖と合わない。

  3. ×c.  瞳孔 → 後房 → 隅角 → 前房

    毛様体上皮で産生された房水が最初に入るのは後房であり、瞳孔ではない。瞳孔は後房と前房をつなぐ通路である。また、隅角は前房の周辺部にある排出口なので、隅角を通ったあとに前房へ戻ることはない。

  4. ○d.  後房 → 瞳孔 → 前房 → 隅角

    毛様体突起の上皮から分泌された房水は後房に入り、虹彩の裏面と水晶体前面の間を通って瞳孔から前房へ流れ出る。前房内を周辺へ向かい、隅角の線維柱帯からSchlemm管へ入って眼外の静脈系に排出される。解剖学的な位置関係に沿った正しい順序である。

  5. ×e.  後房 → 瞳孔 → 隅角 → 前房

    後房から瞳孔までの流れは正しい。しかし、瞳孔を出た房水はまず前房に入り、その周辺にある隅角から排出される。隅角は前房の一部である周辺の角にあたり、房水の出口であるため、隅角の後に前房が来ることはない。

房水の役割

・角膜や水晶体には血管がないため、房水がこれらに栄養や酸素を供給し、代謝産物を運び去る。 ・房水の産生と排出のバランスによって眼圧が保たれ、眼球の形が維持される。正常眼圧はおおむね10〜21 mmHgである。

房水の産生

・毛様体突起の上皮(2層のうち内側の無色素上皮)から、能動輸送と限外濾過などにより産生される。 ・産生には炭酸脱水酵素が関与し、交感神経のβ受容体刺激で産生が促される。このため、炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラミド、ドルゾラミドなど)やβ遮断薬(チモロールなど)は房水産生を抑えて眼圧を下げる。

房水の流出経路

・主経路(線維柱帯経路、経典的経路):隅角の線維柱帯 → Schlemm管 → 集合管 → 房水静脈 → 上強膜静脈。房水流出の大部分を占める。 ・副経路(ぶどう膜強膜流出路):隅角から毛様体筋の間を通って上脈絡膜腔へ抜け、強膜外へ吸収される経路。プロスタグランジン関連薬(ラタノプロストなど)はこの経路の流出を増やして眼圧を下げる。 ・ピロカルピンは毛様体筋を収縮させて線維柱帯を広げ、主経路の流出を促す。Rhoキナーゼ(ROCK)阻害薬も線維柱帯からの流出を促進する。

流出障害と緑内障

・原発閉塞隅角緑内障:水晶体と虹彩が密着して後房から前房への流れが妨げられる(瞳孔ブロック)と、後房の圧が高まり虹彩が前方へ押されて隅角が閉じる。房水の出口がふさがれて眼圧が急上昇し、急性発作では眼痛・頭痛・嘔気・視力低下・充血・角膜浮腫・散瞳などを呈する。治療としてレーザー虹彩切開術などで後房と前房の間に別の通路を作る。 ・原発開放隅角緑内障:隅角は開いているが、線維柱帯〜Schlemm管での流出抵抗が増して眼圧が上がる(眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障も含まれる)。

POINT

・房水は毛様体上皮(無色素上皮)で産生される。 ・流れ:後房 → 瞳孔 → 前房 → 隅角(線維柱帯 → Schlemm管 → 上強膜静脈)。 ・副経路としてぶどう膜強膜流出路がある。 ・β遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬は産生を抑え、プロスタグランジン関連薬はぶどう膜強膜流出を増やす。 ・瞳孔ブロックや隅角の閉塞で流出が妨げられると眼圧が上がり、閉塞隅角緑内障となる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。