StudyMed医師国家試験

手足の膿疱は扁桃からのサイン―掌蹠膿疱症と病巣感染のつながり

第100回医師国家試験 H問題 第36問

国試問題にチャレンジ

第100回 H問題 第36問

35歳の男性。手足の発疹を主訴に来院した。半年前から,手掌と足蹠とに皮疹が出現した。苛性カリ検鏡法で真菌は陰性である。皮膚生検H-E染色標本を別に示す。 この疾患に合併しやすいのはどれか。

第100回 H問題 第36問の問題画像
  1. a.間質性肺炎
  2. b.慢性扁桃炎
  3. c.慢性肝炎
  4. d.IgA腎症
  5. e.白内障

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、手のひらと足の裏に限られた慢性の皮疹から疾患を診断し、そこに合併しやすいものを答える問題だ。注目点は、皮疹の部位、真菌検査の結果、そして病理での膿疱の形。診断がついたら、この病気が「どこから来るのか」を考えることになる。
医学生医学生
手足の皮疹と聞くと、まず白癬を疑ってしまいます。
ドクタードクター
それが正しい第一歩だよ。手足の皮疹を見たら、まず苛性カリ直接鏡検、いわゆるKOH法で菌糸を探す。今回はそれが陰性だから、汗疱状白癬などはまず否定的と考えられる。
医学生医学生
皮膚科の臨床実習でも、外来で先生が足の皮疹を見るたびに鱗屑を取って顕微鏡をのぞいていました。
ドクタードクター
皮膚科の日常そのものだね。では病理を見てみよう。H-E染色では、表皮内の角層のすぐ下に、好中球がぎっしり詰まった一つの大きな部屋からなる膿疱、つまり単房性の膿疱がみられる。
医学生医学生
膿疱というと細菌感染を考えてしまいますが、違うんですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。この膿疱は細菌培養をしても菌が出ない無菌性膿疱なんだ。手掌・足蹠に限って、紅斑の上に無菌性の小膿疱が次々と生じ、褐色の痂皮や鱗屑になって剥がれる、これを慢性に繰り返すのが掌蹠膿疱症。部位の限局、KOH陰性、表皮内単房性膿疱という組み合わせから診断できる。
医学生医学生
掌蹠膿疱症ですね。では、合併しやすいものとしては何を考えればいいでしょうか。
ドクタードクター
ここで鍵になるのが病巣感染という考え方だ。体の別の場所にある慢性の感染巣が、免疫反応を介して離れた臓器に病変を起こす。掌蹠膿疱症はその代表的な疾患で、病巣として最も重要なのが慢性扁桃炎なんだ。ほかに虫歯や歯周病、根尖病巣といった歯性病巣、副鼻腔炎もある。
医学生医学生
だから答えは慢性扁桃炎なんですね。扁桃炎が悪くなると皮疹も悪化したりするんですか。
ドクタードクター
そういうことがあるし、扁桃摘出術で皮疹や骨関節の症状がよくなる例も少なくない。では他の選択肢も見ていこう。間質性肺炎はどんな皮膚疾患と結びつくかな。
医学生医学生
膠原病内科の講義で、皮膚筋炎、特に抗MDA5抗体陽性例で急速進行性の間質性肺炎が多いと習いました。
ドクタードクター
その通り。全身性強皮症でも間質性肺炎は重要な合併症だ。掌蹠膿疱症との特有の関係はない。慢性肝炎はどうだろう。
医学生医学生
手掌紅斑が出るので、手のひらの皮疹つながりで引っかけかなと思いました。
ドクタードクター
鋭いね。慢性肝疾患では手掌紅斑やくも状血管腫、C型肝炎では扁平苔癬や晩発性皮膚ポルフィリン症、クリオグロブリン血症による紫斑などがみられる。でも膿疱をつくる掌蹠膿疱症とは関係しない。
医学生医学生
IgA腎症も扁桃と関係が深いと腎臓内科で習ったので、正直迷いました。
ドクタードクター
そこが一番の迷いどころだ。IgA腎症は上気道感染のあとに肉眼的血尿が出ることがあり、扁桃摘出が治療の選択肢になる点も共通している。合併例の報告もある。ただ、掌蹠膿疱症に合併しやすい疾患として一般に挙げられるものではなく、直接結びつくのは病巣そのものである慢性扁桃炎のほうだ。
医学生医学生
白内障はアトピー性皮膚炎の合併症でしたよね。
ドクタードクター
そう。顔をこすったり叩いたりすることが関与するとされ、若年で起こることもある。ステロイドの長期使用でも生じるけれど、掌蹠膿疱症とは関連しない。
医学生医学生
部位とKOH陰性と単房性膿疱で診断して、病巣感染という視点から慢性扁桃炎を選ぶ、という流れですね。
ドクタードクター
その通り。臨床的な注意点も押さえておこう。掌蹠膿疱症は喫煙者に多く、喫煙は最大の増悪因子だから禁煙指導は欠かせない。歯科金属などによる金属アレルギーが関与することもあり、パッチテストで確認して原因金属を除去することもある。
医学生医学生
皮膚以外の症状で気をつけることはありますか。
ドクタードクター
一部の患者さんに、前胸部の胸鎖関節や胸肋関節を中心とした痛みや腫れが出る。これを掌蹠膿疱症性骨関節炎といい、SAPHO症候群の一部として扱われることもある。胸の痛みを訴えたら、この合併症を思い出してほしい。治療はステロイドや活性型ビタミンD3の外用が基本で、難治例では紫外線療法や内服薬、生物学的製剤も使われる。
医学生医学生
皮膚だけを見るのではなく、扁桃や歯、喫煙歴、胸の関節まで全身を見渡すことが大事なんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。掌蹠膿疱症は、皮膚の病気を全身の中で捉える練習にぴったりの疾患だよ。

まとめ

手掌・足蹠に限局して無菌性膿疱を繰り返し、KOH直接鏡検で真菌陰性、病理で表皮内の単房性膿疱を認めれば掌蹠膿疱症と診断できます。掌蹠膿疱症は病巣感染の代表的疾患で、慢性扁桃炎が最も重要な病巣であり、ほかに歯性病巣や副鼻腔炎が関与し、扁桃摘出で改善することもあります。喫煙は最大の増悪因子で、金属アレルギーの関与や、胸鎖・胸肋関節を中心とする掌蹠膿疱症性骨関節炎の合併にも注意が必要です。間質性肺炎は皮膚筋炎や強皮症、白内障はアトピー性皮膚炎、手掌紅斑は慢性肝疾患と、皮膚疾患と全身疾患の結びつきを整理しておくことが鑑別力を高めます。皮膚所見から病巣感染や生活習慣まで視野を広げる姿勢は、皮膚科に限らず全身を診る臨床の基本となります。

解答・解説

正解はbです

所見の整理

・35歳の男性で、半年前から手掌と足蹠(足の裏)に限局して皮疹が続いている。慢性の経過である。 ・苛性カリ(KOH)直接鏡検法で真菌が陰性であり、手足の皮疹で最初に鑑別すべき白癬(汗疱状白癬など)は否定的である。 ・皮膚生検H-E染色標本では、表皮内(角層の直下)に好中球が充満した単房性(一つの部屋からなる)の大きな膿疱がみられる。

診断へのプロセス

手掌・足蹠に限って、紅斑の上に無菌性の小膿疱が次々と生じ、やがて褐色の痂皮・鱗屑となって剥がれる、という経過を慢性に繰り返すのが掌蹠膿疱症である。組織学的には表皮内の単房性膿疱が特徴で、膿疱内容は細菌培養で陰性(無菌性膿疱)である。手足の膿疱性病変では白癬(特に足白癬の小水疱型)や汗疱、接触皮膚炎が鑑別になるが、KOH陰性、部位の限局、単房性膿疱の組織像から掌蹠膿疱症と診断できる。

設問の考え方

掌蹠膿疱症は、体のどこか別の場所にある慢性の感染巣(病巣感染)が引き金となって起こる代表的な皮膚疾患である。病巣として最も重要なのが慢性扁桃炎で、ほかに歯性病巣(虫歯、歯周病、根尖病巣)、副鼻腔炎がある。したがって本疾患に合併しやすいものとして慢性扁桃炎を選ぶ。

選択肢考察

  1. ×a.  間質性肺炎

    間質性肺炎を合併しやすい皮膚疾患は皮膚筋炎(特に抗MDA5抗体陽性例の急速進行性間質性肺炎)や全身性強皮症などの膠原病である。掌蹠膿疱症との特有の関連はない。

  2. ○b.  慢性扁桃炎

    掌蹠膿疱症は病巣感染(離れた部位の慢性感染巣が免疫反応を介して他の臓器に病変を起こすこと)の代表的疾患で、その病巣として最も多いのが慢性扁桃炎である。扁桃炎の急性増悪時に皮疹が悪化することがあり、扁桃摘出術によって皮疹や合併する骨関節症状が改善する例が少なくない。

  3. ×c.  慢性肝炎

    慢性肝炎・肝硬変では手掌紅斑、くも状血管腫がみられ、C型肝炎では扁平苔癬、晩発性皮膚ポルフィリン症、クリオグロブリン血症による紫斑などを合併しやすい。掌蹠膿疱症とは関連しない。

  4. ×d.  IgA腎症

    IgA腎症は糸球体のメサンギウム領域にIgAが沈着する原発性糸球体腎炎で、上気道感染(扁桃炎など)の後に肉眼的血尿がみられることがある。慢性扁桃炎を病巣とする点で掌蹠膿疱症と共通点をもち(どちらも扁桃摘出が治療選択肢となる)、両者の合併例の報告もあるが、掌蹠膿疱症に「合併しやすい」疾患として一般に挙げられるものではない。本症と直接結びつくのは病巣そのものである慢性扁桃炎である。

  5. ×e.  白内障

    皮膚疾患に合併する白内障の代表はアトピー性皮膚炎(顔面の搔破・叩打が関与するとされ、若年で発症することがある)である。ほかにステロイドの長期使用でも生じる。掌蹠膿疱症とは関連しない。

掌蹠膿疱症の概要

・30〜50歳代に多く、日本では女性にやや多いとされる。喫煙者に多く、喫煙は最大の増悪因子である。 ・皮疹: 手掌・足蹠に紅斑を伴う無菌性小膿疱が多発し、痂皮化・落屑を繰り返す。手足以外(すね、膝など)に乾癬様の皮疹を伴うこともある。爪の変形を伴うことがある。 ・病理: 表皮内(角層下)の単房性膿疱。膿疱は好中球からなり、細菌・真菌は検出されない。 ・病因・増悪因子: 病巣感染(慢性扁桃炎、歯性病巣、副鼻腔炎)、喫煙、歯科金属などによる金属アレルギー。

合併症: 掌蹠膿疱症性骨関節炎

・患者の一部に、前胸部(胸鎖関節・胸肋関節)を中心とする疼痛・腫脹がみられ、掌蹠膿疱症性骨関節炎と呼ぶ。脊椎や仙腸関節が侵されることもある。 ・骨炎・滑膜炎・痤瘡・膿疱症・骨肥厚をまとめたSAPHO症候群の一部として扱われることもある。

治療

・病巣感染の治療(扁桃摘出術、歯科治療)、禁煙、金属アレルギーがあれば原因金属の除去。 ・外用療法: ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬。 ・難治例: 紫外線療法、エトレチナート内服、シクロスポリン、アプレミラスト、生物学的製剤(抗IL-23抗体のグセルクマブなど)。

手足の皮疹の鑑別

・白癬: KOH直接鏡検で菌糸を確認する。手足の皮疹を見たらまず行う検査である。 ・汗疱(異汗性湿疹): 小水疱が主体で、膿疱は目立たない。 ・膿疱性乾癬: 全身に膿疱が生じ、発熱などの全身症状を伴う。

POINT

・手掌・足蹠に限局した無菌性膿疱、KOH陰性、表皮内単房性膿疱 → 掌蹠膿疱症 ・掌蹠膿疱症は病巣感染(慢性扁桃炎、歯性病巣、副鼻腔炎)と関連し、扁桃摘出で改善することがある ・増悪因子として喫煙と金属アレルギーが重要 ・合併症として胸鎖・胸肋関節を中心とする掌蹠膿疱症性骨関節炎がある ・関連の整理: 間質性肺炎→皮膚筋炎、白内障→アトピー性皮膚炎、手掌紅斑→慢性肝疾患

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。