性交時の出血、最初の一手は?―「細胞診から始める」子宮頸癌の段階的精査
第100回医師国家試験 G問題 第95問
国試問題にチャレンジ
性交時の性器出血を訴える女性でまず行うのはどれか。
- a.細胞診
- b.組織診
- c.コルポスコピー
- d.ヒステロスコピー
- e.腫瘍マーカー測定
対話形式の解説
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ドクターまとめ
性交時の性器出血は接触出血と呼ばれ、子宮頸管ポリープや腟炎・頸管炎など良性の原因も多いものの、最も見逃してはならないのは子宮頸癌です。そのため最初に行うのは、非侵襲的で外来で簡便に実施でき、悪性細胞を拾い上げられる子宮頸部細胞診で、SCJ付近から細胞を採取します。異常があればコルポスコピーで観察し、最も異常の強い部位から狙い組織診を行って確定診断し、必要に応じて円錐切除術に進みます。子宮鏡は子宮腔内の病変評価に、SCC抗原などの腫瘍マーカーは治療効果判定や再発監視に用いるもので、最初の検査には適しません。「スクリーニングから確定診断へ段階的に進む」という精査の順序を理解することは、婦人科に限らずあらゆる診療の基本となります。
解答・解説
正解はaです
性交時に起こる性器出血は「接触出血」と呼ばれ、子宮腟部(子宮頸部のうち腟内に突出している部分)の表面がもろくなっていることを示すサインである。原因としては、性交による腟・外陰の外傷、腟炎や子宮頸管炎などの炎症、子宮腟部びらん(実際には円柱上皮が腟部に露出した状態であり、真のびらんではない)、子宮頸管ポリープなど良性のものが多い。しかし最も見逃してはならないのは子宮頸癌であり、接触出血は子宮頸癌の代表的な初発症状である。 したがって、診療の第一歩は「悪性腫瘍、特に子宮頸癌を除外すること」である。そのためには、まず患者への負担が小さく、外来で簡便に実施でき、しかも悪性細胞の有無をある程度の精度で拾い上げられる検査を選ぶ。これが子宮頸部細胞診であり、異常があれば次の段階としてコルポスコピー(腟拡大鏡診)とそれに基づく狙い組織診で確定診断に進む。 子宮頸部病変の精査は「細胞診(スクリーニング)→ コルポスコピー+狙い組織診(確定診断)」という段階的な流れで進めるのが原則であり、本問はこの順序を理解しているかを問うている。
選択肢考察
- ○a. 細胞診
子宮頸部細胞診は、ブラシやヘラ、綿棒などで子宮腟部から頸管内(特に扁平上皮と円柱上皮の境界である扁平円柱上皮境界〔SCJ〕付近)を軽くこすって細胞を採取し、スライドに塗抹して顕微鏡で観察する検査である。麻酔は不要で痛みや出血はほとんどなく、短時間で外来施行できる。細胞の形態から、正常・炎症性変化・異形成・癌などを推定でき、悪性の可能性を拾い上げるスクリーニングとして優れている。接触出血を訴える女性では、子宮頸癌の除外のために最初に行うべき検査である。なお細胞診は確定診断ではないため、異常があれば組織診で確認する必要がある。
- ×b. 組織診
組織診は病変部の組織を鉗子などで切り取り、病理組織学的に評価する検査で、子宮頸癌の確定診断には欠かせない。しかし組織を採取する侵襲的な検査であり、疼痛や出血を伴う。また、やみくもに生検するよりも、細胞診で異常を確認したうえでコルポスコピー下に最も異常の強い部位を狙って採取する方が診断精度が高い。そのため最初に行う検査ではない。
- ×c. コルポスコピー
コルポスコピー(腟拡大鏡診)は、子宮腟部を拡大鏡で観察する検査である。酢酸(3〜5%程度)を塗布して白色上皮、モザイク、赤点斑、異型血管域などの異常所見を観察し、最も異常の強い部位から狙い組織診を行う。細胞診で異常が認められた場合の精密検査として位置づけられており、スクリーニングとして最初に行う検査ではない。細胞診の次に行う検査であるため、誤って選びやすい選択肢である。
- ×d. ヒステロスコピー
ヒステロスコピー(子宮鏡検査)は、細径の内視鏡を頸管から子宮腔内に挿入して内膜面を直接観察する検査である。子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫、子宮内膜増殖症・子宮体癌の広がりの評価などに用いられる。接触出血の主な原因は子宮腟部・頸部の病変であり、しかも子宮鏡は子宮内操作を伴う比較的侵襲の大きい検査なので、最初に行うものではない。
- ×e. 腫瘍マーカー測定
腫瘍マーカー(子宮頸部扁平上皮癌ではSCC抗原など)は、早期癌では上昇しないことが多く、また良性疾患でも上昇することがあるため、癌の早期発見や診断には適さない。主に治療効果の判定や再発の早期発見(経過観察)に用いられる。したがって、性交時出血の最初の検査としては不適切である。
接触出血の主な原因
・子宮頸癌(最も重要。必ず除外する) ・子宮頸管ポリープ(頸管から突出する良性の腫瘤で、易出血性) ・子宮腟部びらん(円柱上皮の外反。経口避妊薬使用者や妊婦でもみられる) ・腟炎、子宮頸管炎(クラミジア感染など) ・性交による外傷
子宮頸癌の精査の流れ
1. 子宮頸部細胞診:スクリーニング。結果はベセスダシステムで報告され、NILM(陰性)、ASC-US、ASC-H、LSIL、HSIL、SCC、AGC、腺癌などに分類される。ASC-USの場合はHPV(ヒトパピローマウイルス)検査を併用して方針を決めることがある。 2. コルポスコピー:細胞診異常例で施行し、酢酸加工後に異常所見を観察する。 3. 狙い組織診:コルポスコピーで最も強い異常部位から生検し、CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)や浸潤癌の有無を確定する。 4. 必要に応じて円錐切除術:診断と治療を兼ねる。
子宮頸癌の特徴
・高リスク型HPV(16型、18型など)の持続感染が主な原因である。 ・好発部位はSCJ付近(移行帯)で、組織型は扁平上皮癌が多いが、腺癌も増加している。 ・初期には無症状のことが多く、進行すると接触出血、不正性器出血、帯下の増加がみられる。
子宮体癌との対比
子宮体癌では閉経後の不正性器出血が典型的な症状で、まず子宮内膜細胞診や経腟超音波検査で内膜の状態を評価し、内膜組織診で確定する。子宮鏡は病変の局在や広がりの確認に用いられる。
POINT
・性交時出血(接触出血)では、まず子宮頸癌の除外を考える。 ・最初の検査は非侵襲的な子宮頸部細胞診である。 ・精査の順序は「細胞診 → コルポスコピー+狙い組織診 → 必要に応じて円錐切除」。 ・腫瘍マーカーは早期診断には向かず、治療効果判定や再発の監視に用いる。
