StudyMed医師国家試験

消えた後に残る「しみ」が決め手―麻疹の発疹を他のウイルス性発疹症と見分ける

第100回医師国家試験 G問題 第83問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第83問

紅斑について正しいのはどれか。

  1. a.伝染性単核症では顔面に蝶形紅斑が生じる。
  2. b.突発性発疹では網目レース状になる。
  3. c.伝染性紅斑では小水疱が混じる。
  4. d.風疹では融合し大型となる。
  5. e.麻疹では色素沈着を残す。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、小児に多いウイルス性発疹症の紅斑の特徴を問う問題だ。発疹症は「形」「分布」「融合するか」「消えた後に何が残るか」、そして「発熱との時間関係」の5つの軸で見分けるのが基本。この軸で一つずつ整理していこう。
医学生医学生
発疹症は種類が多くて、CBTのときもどれがどれだか混ざってしまいました。
ドクタードクター
混ざりやすいところだからこそ、軸を決めて比べるのが大事なんだ。まず、伝染性単核球症で顔面に蝶形紅斑が出る、という記述はどうかな。
医学生医学生
蝶形紅斑といえばSLEのイメージです。膠原病内科の講義で、鼻唇溝を越えない頬から鼻背の紅斑と習いました。
ドクタードクター
その通り。蝶形紅斑はSLEの代表的な皮膚所見だ。伝染性単核球症は主にEBウイルスの初感染で、主症状は発熱、咽頭扁桃炎、頸部リンパ節腫脹。発疹は出ることがあっても、斑状、丘疹状、蕁麻疹様などと形も分布も一定しないんだ。
医学生医学生
扁桃炎と間違えてペニシリン系を出すと発疹が出る、という話もありましたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。アンピシリンやアモキシシリンで高頻度に全身性の発疹が誘発される。咽頭痛と発熱の若者に抗菌薬を出す前に、伝染性単核球症の可能性を考える習慣は臨床で役立つよ。次に、突発性発疹で網目レース状になる、はどうだろう。
医学生医学生
網目状というのは、りんご病の腕や脚の発疹だった気がします。
ドクタードクター
正解。網目状・レース状の紅斑は伝染性紅斑の四肢にみられる特徴だ。突発性発疹はHHV-6、一部はHHV-7の初感染で、乳児が3〜4日高熱を出し、熱が下がる頃に体幹中心の小さな紅斑が出て、跡を残さず消える。「解熱とともに発疹」がキーワードだね。
医学生医学生
では伝染性紅斑で小水疱が混じる、というのも違いますか。小児科実習で見た子は頬が真っ赤なだけでした。
ドクタードクター
違うね。伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19の感染症で、頬の平手打ち様紅斑に続いて四肢伸側に網目状の紅斑が出る。紅斑が主体で、小水疱は通常みられない。水疱が混じる発疹症といえば、紅斑・丘疹・水疱・痂皮が混在する水痘や、手足口病だ。
医学生医学生
残るは風疹と麻疹ですね。どちらも全身に紅斑が出るので、融合するかどうかで迷いました。
ドクタードクター
ここが本問の核心だ。風疹の発疹は淡い小さな紅斑で、発熱とほぼ同時に顔から全身へ広がり、約3日で消える。小型のまま経過して融合は目立たず、色素沈着も残さない。耳後部や後頭部のリンパ節腫脹が手がかりだね。
医学生医学生
ということは、融合して大きくなるのは麻疹のほうで、麻疹では色素沈着を残す、が正しいということですか。
ドクタードクター
その通り。麻疹は発熱、咳、鼻汁、結膜充血のカタル期が数日続き、その終わりに頬粘膜にKoplik斑が出る。いったん熱が下がりかけてから再び高熱になる時期に、耳後部・顔面から体幹、四肢へ発疹が広がる。発疹は次第に融合して大小不規則な斑になるけれど、間に健常な皮膚が残るのが特徴だ。そして回復期には出た順に退色し、褐色の色素沈着をしばらく残す。
医学生医学生
二峰性の発熱、Koplik斑、融合、色素沈着、とセットで覚えればよさそうです。
ドクタードクター
いい整理だ。発展知識として、麻疹は肺炎や中耳炎、脳炎を合併しうるし、数年後に亜急性硬化性全脳炎を起こすこともある。風疹は妊娠初期の感染で白内障、先天性心疾患、感音難聴などの先天性風疹症候群を起こす。どちらもワクチンで予防できる病気だから、接種歴の確認は欠かせない。
医学生医学生
パルボウイルスB19も妊婦さんで問題になると聞いたことがあります。
ドクタードクター
そう、赤芽球系の前駆細胞に感染するから、妊婦では胎児水腫の原因になり、遺伝性球状赤血球症のような溶血性貧血の患者では無形成発作を起こしうる。発疹が出た時期には感染力はほぼないことも、学校や園での対応を考えるうえで知っておきたいポイントだね。
医学生医学生
発疹の見た目だけでなく、ウイルスの性質まで結びつけて覚えると、臨床での判断につながるんですね。

まとめ

小児のウイルス性発疹症は、発疹の形・分布・融合の有無・消退後の変化・発熱との時間関係で鑑別します。麻疹は二峰性発熱とKoplik斑を伴い、発疹が融合して大型となり消退後に褐色の色素沈着を残す点が、融合せず約3日で跡を残さず消える風疹との重要な鑑別点です。網目状(レース状)紅斑と頬の平手打ち様紅斑は伝染性紅斑、解熱とともに出る発疹は突発性発疹、水疱の混在は水痘、蝶形紅斑はSLEの特徴であり、伝染性単核球症の発疹は多彩でペニシリン系薬で誘発されやすいことも押さえておきます。先天性風疹症候群や麻疹の亜急性硬化性全脳炎、パルボウイルスB19による胎児水腫など、各ウイルスの合併症まで結びつけて理解することが、診断と予防の両面で役立ちます。

解答・解説

正解はeです

小児期に多いウイルス性発疹症は、発疹の「形」「分布」「融合するかどうか」「消えた後に何が残るか」、そして「発熱との時間関係」で見分けるのが基本である。本問はこれらの特徴を正しく対応づけられるかを問うている。

主な発疹症の特徴の要点

・麻疹(はしか):発熱・カタル症状(咳、鼻汁、結膜充血)が数日続いた後、いったん解熱傾向となり再び高熱が出る時期に、耳後部・顔面から発疹が出て体幹・四肢へ広がる。発疹は次第に融合して大きな斑となり、消退後に褐色の色素沈着を残す。 ・風疹:発熱とほぼ同時に淡い小紅斑が顔面から全身に広がり、約3日で消える。融合は目立たず、色素沈着を残さない。耳後部・後頭部リンパ節腫脹が特徴。 ・突発性発疹:乳児が3〜4日の高熱を出し、解熱と同時に体幹を中心とした小紅斑が出る。色素沈着は残さない。 ・伝染性紅斑(りんご病):頬の「平手打ち様」紅斑に続き、四肢に網目状(レース状)の紅斑が出る。 ・伝染性単核球症:発熱・咽頭扁桃炎・頸部リンパ節腫脹が主症状で、発疹は形も分布も一定しない。 これらを踏まえると、正しい記述は「麻疹では色素沈着を残す」のみである。

選択肢考察

  1. ×a.  伝染性単核症では顔面に蝶形紅斑が生じる。

    顔面の蝶形紅斑(両頬から鼻背にかけて蝶が羽を広げたように広がる紅斑)は、全身性エリテマトーデス(SLE)の代表的な皮膚所見である。伝染性単核球症(主にEpstein-Barr〈EB〉ウイルスの初感染による)の発疹は顔面に限らず全身にみられ、斑状、丘疹状、蕁麻疹様、麻疹様、猩紅熱様など形が多彩で一定しない。特に、細菌性扁桃炎と誤ってアンピシリンやアモキシシリンなどのペニシリン系抗菌薬を投与すると、高頻度に全身性の発疹が出ることが知られている。よって誤りである。

  2. ×b.  突発性発疹では網目レース状になる。

    突発性発疹はヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6、一部は7型)の初感染で、主に生後6か月〜2歳頃の乳幼児にみられる。3〜4日続く高熱が下がる頃に、体幹を中心として顔面・四肢にも、風疹に似た小さな紅斑・丘疹が出現し、数日で跡を残さず消える。網目状・レース状の紅斑は伝染性紅斑の四肢にみられる特徴であり、突発性発疹の所見ではない。よって誤りである。

  3. ×c.  伝染性紅斑では小水疱が混じる。

    伝染性紅斑(りんご病)はヒトパルボウイルスB19の感染症で、学童に多い。両頬に境界明瞭な紅斑(平手打ち様紅斑)が出て、続いて上腕・大腿などの四肢伸側に網目状(レース状)の紅斑が現れる。紅斑は日光や入浴などで再燃することがある。発疹は紅斑が主体であり、小水疱は通常みられない。小水疱を伴う発疹症としては、水痘(紅斑→丘疹→水疱→痂皮が混在)や手足口病などがある。よって誤りである。

  4. ×d.  風疹では融合し大型となる。

    風疹(風疹ウイルスによる)の発疹は淡紅色の小さな紅斑・丘疹で、発熱とほぼ同時に顔面から始まり全身へ広がる。個々の発疹は小型のまま経過することがほとんどで、融合は目立たない(まれに部分的に融合することはある)。発疹は約3日で消え、色素沈着を残さない。発疹が融合して大型の斑になるのは麻疹の特徴である。よって誤りである。

  5. ○e.  麻疹では色素沈着を残す。

    麻疹(麻疹ウイルスによる)では、カタル期(発熱、咳、鼻汁、結膜充血が3〜4日続き、この時期の終わりに頬粘膜にKoplik斑が出現する)の後、いったん熱が下がりかけてから再び高熱となる発疹期に入る。発疹は耳後部・顔面から始まり、体幹、四肢へと広がる。初めは小さな紅斑・丘疹であるが、次第に数を増して融合し、大小不規則な斑となる(融合しても、間に健常な皮膚が残るのが特徴)。回復期には発疹は出現した順に退色し、褐色の色素沈着をしばらく残す。この色素沈着は風疹や突発性発疹との重要な鑑別点である。よって正しい。

主なウイルス性発疹症の比較

・麻疹:麻疹ウイルス。潜伏期10〜12日。二峰性発熱、Koplik斑、発疹は融合し色素沈着を残す。合併症として肺炎、中耳炎、脳炎、数年後の亜急性硬化性全脳炎(SSPE)。 ・風疹:風疹ウイルス。潜伏期2〜3週。発熱と同時に小紅斑、融合せず約3日で消退、色素沈着なし。耳後部・後頭部リンパ節腫脹。妊娠初期の感染で先天性風疹症候群(白内障、先天性心疾患、感音難聴など)。 ・突発性発疹:HHV-6/HHV-7。乳児の高熱が下がると同時に発疹。熱性けいれんの合併がある。 ・伝染性紅斑:ヒトパルボウイルスB19。平手打ち様紅斑と四肢の網目状紅斑。発疹が出た時期には感染力はほぼない。赤芽球系前駆細胞に感染するため、溶血性貧血患者では無形成発作(aplastic crisis)、妊婦では胎児水腫の原因となる。 ・伝染性単核球症:EBウイルス。発熱、咽頭扁桃炎、頸部リンパ節腫脹、肝脾腫、異型リンパ球増加。発疹は多彩で、ペニシリン系薬で誘発されやすい。 ・水痘:水痘・帯状疱疹ウイルス。紅斑、丘疹、水疱、痂皮が同時に混在する。

蝶形紅斑

SLEの皮膚所見として有名で、鼻唇溝を越えないことが多い。伝染性紅斑の頬の紅斑と混同しないよう注意する。

POINT

・麻疹:発疹は融合して大型となり、消退後に色素沈着を残す。Koplik斑、二峰性発熱。 ・風疹:小紅斑で融合しにくく、色素沈着を残さない。 ・網目(レース)状紅斑は伝染性紅斑(パルボウイルスB19)。頬の平手打ち様紅斑も特徴。 ・突発性発疹:解熱とともに発疹が出る。 ・蝶形紅斑はSLE。伝染性単核球症の発疹は多彩(ペニシリン系で誘発)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。