消えた後に残る「しみ」が決め手―麻疹の発疹を他のウイルス性発疹症と見分ける
第100回医師国家試験 G問題 第83問
国試問題にチャレンジ
紅斑について正しいのはどれか。
- a.伝染性単核症では顔面に蝶形紅斑が生じる。
- b.突発性発疹では網目レース状になる。
- c.伝染性紅斑では小水疱が混じる。
- d.風疹では融合し大型となる。
- e.麻疹では色素沈着を残す。
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
小児のウイルス性発疹症は、発疹の形・分布・融合の有無・消退後の変化・発熱との時間関係で鑑別します。麻疹は二峰性発熱とKoplik斑を伴い、発疹が融合して大型となり消退後に褐色の色素沈着を残す点が、融合せず約3日で跡を残さず消える風疹との重要な鑑別点です。網目状(レース状)紅斑と頬の平手打ち様紅斑は伝染性紅斑、解熱とともに出る発疹は突発性発疹、水疱の混在は水痘、蝶形紅斑はSLEの特徴であり、伝染性単核球症の発疹は多彩でペニシリン系薬で誘発されやすいことも押さえておきます。先天性風疹症候群や麻疹の亜急性硬化性全脳炎、パルボウイルスB19による胎児水腫など、各ウイルスの合併症まで結びつけて理解することが、診断と予防の両面で役立ちます。
解答・解説
正解はeです
小児期に多いウイルス性発疹症は、発疹の「形」「分布」「融合するかどうか」「消えた後に何が残るか」、そして「発熱との時間関係」で見分けるのが基本である。本問はこれらの特徴を正しく対応づけられるかを問うている。
主な発疹症の特徴の要点
・麻疹(はしか):発熱・カタル症状(咳、鼻汁、結膜充血)が数日続いた後、いったん解熱傾向となり再び高熱が出る時期に、耳後部・顔面から発疹が出て体幹・四肢へ広がる。発疹は次第に融合して大きな斑となり、消退後に褐色の色素沈着を残す。 ・風疹:発熱とほぼ同時に淡い小紅斑が顔面から全身に広がり、約3日で消える。融合は目立たず、色素沈着を残さない。耳後部・後頭部リンパ節腫脹が特徴。 ・突発性発疹:乳児が3〜4日の高熱を出し、解熱と同時に体幹を中心とした小紅斑が出る。色素沈着は残さない。 ・伝染性紅斑(りんご病):頬の「平手打ち様」紅斑に続き、四肢に網目状(レース状)の紅斑が出る。 ・伝染性単核球症:発熱・咽頭扁桃炎・頸部リンパ節腫脹が主症状で、発疹は形も分布も一定しない。 これらを踏まえると、正しい記述は「麻疹では色素沈着を残す」のみである。
選択肢考察
- ×a. 伝染性単核症では顔面に蝶形紅斑が生じる。
顔面の蝶形紅斑(両頬から鼻背にかけて蝶が羽を広げたように広がる紅斑)は、全身性エリテマトーデス(SLE)の代表的な皮膚所見である。伝染性単核球症(主にEpstein-Barr〈EB〉ウイルスの初感染による)の発疹は顔面に限らず全身にみられ、斑状、丘疹状、蕁麻疹様、麻疹様、猩紅熱様など形が多彩で一定しない。特に、細菌性扁桃炎と誤ってアンピシリンやアモキシシリンなどのペニシリン系抗菌薬を投与すると、高頻度に全身性の発疹が出ることが知られている。よって誤りである。
- ×b. 突発性発疹では網目レース状になる。
突発性発疹はヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6、一部は7型)の初感染で、主に生後6か月〜2歳頃の乳幼児にみられる。3〜4日続く高熱が下がる頃に、体幹を中心として顔面・四肢にも、風疹に似た小さな紅斑・丘疹が出現し、数日で跡を残さず消える。網目状・レース状の紅斑は伝染性紅斑の四肢にみられる特徴であり、突発性発疹の所見ではない。よって誤りである。
- ×c. 伝染性紅斑では小水疱が混じる。
伝染性紅斑(りんご病)はヒトパルボウイルスB19の感染症で、学童に多い。両頬に境界明瞭な紅斑(平手打ち様紅斑)が出て、続いて上腕・大腿などの四肢伸側に網目状(レース状)の紅斑が現れる。紅斑は日光や入浴などで再燃することがある。発疹は紅斑が主体であり、小水疱は通常みられない。小水疱を伴う発疹症としては、水痘(紅斑→丘疹→水疱→痂皮が混在)や手足口病などがある。よって誤りである。
- ×d. 風疹では融合し大型となる。
風疹(風疹ウイルスによる)の発疹は淡紅色の小さな紅斑・丘疹で、発熱とほぼ同時に顔面から始まり全身へ広がる。個々の発疹は小型のまま経過することがほとんどで、融合は目立たない(まれに部分的に融合することはある)。発疹は約3日で消え、色素沈着を残さない。発疹が融合して大型の斑になるのは麻疹の特徴である。よって誤りである。
- ○e. 麻疹では色素沈着を残す。
麻疹(麻疹ウイルスによる)では、カタル期(発熱、咳、鼻汁、結膜充血が3〜4日続き、この時期の終わりに頬粘膜にKoplik斑が出現する)の後、いったん熱が下がりかけてから再び高熱となる発疹期に入る。発疹は耳後部・顔面から始まり、体幹、四肢へと広がる。初めは小さな紅斑・丘疹であるが、次第に数を増して融合し、大小不規則な斑となる(融合しても、間に健常な皮膚が残るのが特徴)。回復期には発疹は出現した順に退色し、褐色の色素沈着をしばらく残す。この色素沈着は風疹や突発性発疹との重要な鑑別点である。よって正しい。
主なウイルス性発疹症の比較
・麻疹:麻疹ウイルス。潜伏期10〜12日。二峰性発熱、Koplik斑、発疹は融合し色素沈着を残す。合併症として肺炎、中耳炎、脳炎、数年後の亜急性硬化性全脳炎(SSPE)。 ・風疹:風疹ウイルス。潜伏期2〜3週。発熱と同時に小紅斑、融合せず約3日で消退、色素沈着なし。耳後部・後頭部リンパ節腫脹。妊娠初期の感染で先天性風疹症候群(白内障、先天性心疾患、感音難聴など)。 ・突発性発疹:HHV-6/HHV-7。乳児の高熱が下がると同時に発疹。熱性けいれんの合併がある。 ・伝染性紅斑:ヒトパルボウイルスB19。平手打ち様紅斑と四肢の網目状紅斑。発疹が出た時期には感染力はほぼない。赤芽球系前駆細胞に感染するため、溶血性貧血患者では無形成発作(aplastic crisis)、妊婦では胎児水腫の原因となる。 ・伝染性単核球症:EBウイルス。発熱、咽頭扁桃炎、頸部リンパ節腫脹、肝脾腫、異型リンパ球増加。発疹は多彩で、ペニシリン系薬で誘発されやすい。 ・水痘:水痘・帯状疱疹ウイルス。紅斑、丘疹、水疱、痂皮が同時に混在する。
蝶形紅斑
SLEの皮膚所見として有名で、鼻唇溝を越えないことが多い。伝染性紅斑の頬の紅斑と混同しないよう注意する。
POINT
・麻疹:発疹は融合して大型となり、消退後に色素沈着を残す。Koplik斑、二峰性発熱。 ・風疹:小紅斑で融合しにくく、色素沈着を残さない。 ・網目(レース)状紅斑は伝染性紅斑(パルボウイルスB19)。頬の平手打ち様紅斑も特徴。 ・突発性発疹:解熱とともに発疹が出る。 ・蝶形紅斑はSLE。伝染性単核球症の発疹は多彩(ペニシリン系で誘発)。
