StudyMed医師国家試験

心臓をみたら染色体を思え―Down症候群と心内膜床欠損症の深い結びつき

第100回医師国家試験 G問題 第67問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第67問

心奇形の合併頻度が最も高いのはどれか。

  1. a.Down症候群
  2. b.Fanconi症候群
  3. c.Klinefelter症候群
  4. d.Potter症候群
  5. e.Turner症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、小児でよく扱う症候群のうち、心奇形の合併がもっとも多いものを選ぶ問題だ。ポイントは、選択肢を「染色体異常症」と「それ以外」に分けて考えること。そうすると候補が一気に絞れる。
医学生医学生
染色体異常はDown、Turner、Klinefelterの3つですね。FanconiとPotterは腎臓の病気というイメージがあります。
ドクタードクター
その分け方で正しい。Fanconi症候群は近位尿細管での再吸収が全般的に障害される病態で、ブドウ糖、アミノ酸、リン酸、重炭酸などが尿に漏れ出てしまう。近位尿細管性アシドーシスや、低リン血症によるくる病・骨軟化症が問題になるけれど、心奇形は特徴ではない。
医学生医学生
Fanconiと聞くと、母指の異常を伴う貧血も思い浮かんでしまいました。
ドクタードクター
そこは混同しやすいね。母指や橈骨の異常を伴うのはFanconi貧血で、先天性の再生不良性貧血だ。名前は似ているけれど、尿細管のFanconi症候群とはまったく別の病気だよ。Potter症候群はどうかな。
医学生医学生
胎児の腎臓がないせいで羊水が少なくなって、顔つきが特徴的になるものですよね。
ドクタードクター
そう。両側腎無形成などで尿がつくられず、高度の羊水過少になる。子宮壁に圧迫されて眼間開離や耳介低位、小顎といったPotter顔貌や四肢の変形が生じ、羊水が足りないので肺も育たない。典型例は肺低形成による呼吸不全で、出生後まもなく亡くなってしまう。一つの原因から連鎖的に異常が起こるのでPotterシークエンスとも呼ばれる。主役は腎と肺で、心臓ではないんだ。
医学生医学生
Klinefelter症候群は、Y染色体が多いXYYでしたっけ。
ドクタードクター
ここはよく間違えるところ。Klinefelter症候群は47,XXYが基本型で、X染色体が過剰な男性だ。47,XYYは別の染色体異常だよ。小さく硬い精巣、テストステロン低値とゴナドトロピン高値、無精子症による不妊、女性化乳房、高身長などが特徴で、思春期以降に気づかれることが多い。心奇形は特徴ではない。
医学生医学生
残るのはDownとTurnerですね。Turnerにも大動脈縮窄があるので迷います。
ドクタードクター
確かにTurner症候群でも、大動脈二尖弁と大動脈縮窄症は重要な合併症だ。成人期には大動脈拡張や解離のリスクもあるから、長期のフォローが欠かせない。ただ頻度で比べるとDown症候群が上回る。Down症候群では約40〜50%に先天性心疾患を合併するんだ。これが正解になる。
医学生医学生
半分近くですか。小児科の実習で、Down症候群の赤ちゃんが生まれたら早めに心エコーをすると教わったのは、そういう理由なんですね。
ドクタードクター
その通り。代表は心内膜床欠損症、つまり房室中隔欠損症だ。Down症候群の心疾患の中で最も多く、逆に房室中隔欠損症の患児をみると、その多くがDown症候群だ。ほかに心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、Fallot四徴症もみられる。
医学生医学生
発生学の講義で、心内膜床が房室管を左右に分けて、房室弁や中隔の形成にかかわると習いました。そこがうまくできない病気ですね。
ドクタードクター
よく覚えているね。左右短絡で肺血流が増えるうえ、Down症候群では上気道の狭さなども加わって肺高血圧をきたしやすい。だから出生後早期の評価と、適切な時期の治療が大切なんだ。
医学生医学生
心臓以外にも、Down症候群は合併症が多い印象です。CBTの勉強で十二指腸閉鎖の問題を解いた覚えがあります。
ドクタードクター
そうだね。十二指腸閉鎖やHirschsprung病などの消化管奇形、甲状腺機能低下症、急性白血病や新生児期の一過性骨髄異常増殖症、環軸椎不安定性、難聴、若年でのAlzheimer型認知症など、多くの臓器にわたる。だから成長段階に合わせた定期的な健康管理が行われるんだ。
医学生医学生
心奇形と結びつく症候群は、ほかにもまとめて覚えておいたほうがよさそうですね。
ドクタードクター
ぜひそうしよう。18トリソミーや13トリソミーは心疾患の合併がきわめて多いけれど、生命予後が不良だ。22q11.2欠失症候群はFallot四徴症や大動脈弓離断などの円錐動脈幹異常、Williams症候群は大動脈弁上狭窄、Noonan症候群は肺動脈弁狭窄や肥大型心筋症。症候群と特徴的な心疾患をペアで覚えておくと、試験でも臨床でも役に立つよ。
医学生医学生
症候群の名前を見たら、まず染色体異常かどうか、そしてどの心疾患とペアかを思い浮かべるようにします。

まとめ

選択肢の中で心奇形の合併頻度が最も高いのはDown症候群(21トリソミー)で、約40〜50%に先天性心疾患を合併し、代表は心内膜床欠損症(房室中隔欠損症)です。Turner症候群も大動脈二尖弁や大動脈縮窄症を合併しますが頻度はDown症候群ほど高くなく、Klinefelter症候群(47,XXY)、近位尿細管障害であるFanconi症候群、両側腎無形成に伴う羊水過少から肺低形成をきたすPotter症候群では、心奇形は特徴ではありません。Down症候群では肺高血圧をきたしやすいため出生後早期の心評価が重要で、消化管奇形、甲状腺機能低下症、白血病など多臓器の合併症にも注意が必要です。22q11.2欠失症候群、Williams症候群、Noonan症候群なども含め、症候群と特徴的な心疾患をペアで整理しておくことは、先天性心疾患の診療と試験対策の双方に役立ちます。

解答・解説

正解はaです

本問は、小児期に扱う代表的な症候群・疾患について、先天性心疾患(心奇形)をどの程度合併するかを比べる問題である。 選択肢は大きく 2 群に分けて考えるとよい。 1. 染色体異常症:Down 症候群(21 トリソミー)、Turner 症候群(X 染色体モノソミー)、Klinefelter 症候群(47,XXY)。このうち心奇形の合併が臨床上重要なのは Down 症候群と Turner 症候群である。 2. 染色体異常ではない疾患:Fanconi 症候群(近位尿細管の機能障害)と Potter 症候群(両側腎無形成などによる羊水過少の結果として生じる一連の異常)。いずれも心奇形を特徴としない。 残る Down 症候群と Turner 症候群を比べると、Down 症候群では約 40〜50% に先天性心疾患を合併し、染色体異常症の中でも心奇形との結びつきが特に強い。代表は心内膜床欠損症(房室中隔欠損症)で、ほかに心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、Fallot 四徴症などがみられる。Turner 症候群も大動脈二尖弁や大動脈縮窄症を合併するが、頻度は Down 症候群ほど高くない。よって a が正解である。

選択肢考察

  1. ○a.  Down症候群

    Down 症候群は 21 番染色体のトリソミーによる疾患で、出生児約 600〜1,000 人に 1 人と、生産児にみられる染色体異常症として最も頻度が高い。先天性心疾患を約 40〜50% に合併する。最も特徴的なのは心内膜床欠損症(房室中隔欠損症:AVSD)で、Down 症候群の心疾患の中で最も多く、逆に AVSD の患児の多くは Down 症候群である。そのほか心室中隔欠損症(VSD)、心房中隔欠損症(ASD)、動脈管開存症(PDA)、Fallot 四徴症(TOF)もみられる。左右短絡による肺血流増加に加え、上気道の狭さなどもあって肺高血圧をきたしやすいため、出生後早期に心エコーで評価することが勧められる。

  2. ×b.  Fanconi症候群

    誤り。Fanconi 症候群は近位尿細管での再吸収が全般的に障害される病態で、ブドウ糖(血糖正常の腎性糖尿)、アミノ酸、リン酸、重炭酸、尿酸などが尿中に失われる。その結果、近位尿細管性アシドーシス(2 型)、低リン血症によるくる病・骨軟化症、低カリウム血症、多尿などをきたす。原因はシスチン症などの先天代謝異常や、薬剤・重金属などである。心奇形は本症候群の特徴ではない。なお、名称の似た Fanconi 貧血(先天性の再生不良性貧血で、母指・橈骨の異常などを伴う)とは別の疾患であり、混同しないよう注意する。

  3. ×c.  Klinefelter症候群

    誤り。Klinefelter 症候群は X 染色体が 1 本以上過剰な男性の染色体異常で、47,XXY が基本型である。精巣が小さく硬く、原発性性腺機能低下症(テストステロン低値、ゴナドトロピン高値)による無精子症・不妊、女性化乳房、高身長(長い四肢)などを示す。思春期以降に気づかれることが多く、先天性心疾患の合併は本症の特徴ではない。なお 47,XYY は Y 染色体が過剰な別の染色体異常であり、Klinefelter 症候群ではない。

  4. ×d.  Potter症候群

    誤り。Potter 症候群(Potter シークエンス)は、両側腎無形成などで胎児の尿が作られず、高度の羊水過少が生じた結果として起こる一連の異常である。子宮壁による圧迫で Potter 顔貌(眼間開離、鼻の平坦化、耳介の低位・変形、小顎)や四肢の変形が生じ、羊水不足によって肺低形成が起こる。典型的な両側腎無形成例は肺低形成による呼吸不全のため、出生後まもなく死亡する。病態の主体は腎と羊水過少・肺低形成であり、心奇形は特徴的な合併症ではない。

  5. ×e.  Turner症候群

    誤り。Turner 症候群は X 染色体の 1 本が欠失した(45,X が代表で、モザイクや X 構造異常もある)女性の疾患で、低身長、翼状頸、外反肘、原発性無月経を伴う性腺異形成(索状性腺)などを示す。心血管系では大動脈二尖弁と大動脈縮窄症が代表的で、成人期には大動脈拡張・大動脈解離のリスクもある。ほかに馬蹄腎などの腎奇形も多い。心奇形の合併は臨床上重要ではあるものの、その頻度は Down 症候群ほど高くない。

主な染色体異常症と心疾患

・Down 症候群(21 トリソミー):約 40〜50%。心内膜床欠損症(房室中隔欠損症)が最も特徴的で、VSD、ASD、PDA、Fallot 四徴症も多い。 ・18 トリソミー(Edwards 症候群)、13 トリソミー(Patau 症候群):心疾患の合併がきわめて多い(VSD、PDA など)が、生命予後が不良である。 ・Turner 症候群:大動脈二尖弁、大動脈縮窄症。 ・22q11.2 欠失症候群:Fallot 四徴症、大動脈弓離断症、総動脈幹症などの円錐動脈幹異常。 ・Williams 症候群(7q11.23 欠失):大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄。 ・Noonan 症候群:肺動脈弁狭窄、肥大型心筋症(染色体異常ではなく遺伝子変異による)。 ・Marfan 症候群:大動脈基部拡張、僧帽弁逸脱(遺伝子変異による)。

Down 症候群のその他の合併症

十二指腸閉鎖・Hirschsprung 病などの消化管奇形、甲状腺機能低下症、急性白血病(新生児期の一過性骨髄異常増殖症を含む)、環軸椎不安定性、難聴・屈折異常、若年性の Alzheimer 型認知症などがある。

POINT

・Down 症候群は約 40〜50% に先天性心疾患を合併し、代表は心内膜床欠損症(房室中隔欠損症) ・Turner 症候群の心奇形は大動脈二尖弁・大動脈縮窄症(頻度は Down 症候群より低い) ・Klinefelter 症候群は 47,XXY(XYY ではない)で、心奇形は特徴ではない ・Fanconi 症候群は近位尿細管障害で、Fanconi 貧血とは別の疾患 ・Potter 症候群は両側腎無形成→羊水過少→肺低形成・Potter 顔貌

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。