腎臓が弱ったら減らす薬、減らさない薬―カギは「どこから出ていくか」
第100回医師国家試験 G問題 第114問
国試問題にチャレンジ
腎不全患者で投与量を減らすのはどれか。
- a.バンコマイシン
- b.リファンピシン
- c.ニフェジピン
- d.フロセミド
- e.リドカイン
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
腎不全で投与量を減らす必要があるのは、未変化体が主に腎臓から排泄される薬です。バンコマイシンは糸球体濾過で排泄される腎排泄型で、蓄積すると腎毒性や聴覚障害を起こすため、CCrやeGFRに応じた減量・投与間隔延長とTDMによる血中濃度管理が必須です。リファンピシン、ニフェジピン、リドカインは主に肝臓で代謝されるため腎不全でも原則として減量は不要で、フロセミドは尿細管腔へ届く量が減るためむしろ増量して用いる点が引っかけになります。アミノグリコシド系、ジゴキシン、炭酸リチウム、メトホルミンなどの腎排泄型の代表薬もあわせて覚えておくと、高齢者や腎機能障害患者での安全な処方設計に直結します。
解答・解説
正解はaです
腎機能が低下した患者に薬を使うときに問題になるのは、その薬が体内からどの経路で取り除かれるかである。主に腎臓から未変化体のまま尿中へ排泄される薬(腎排泄型薬物)は、糸球体濾過量(GFR)が下がると体内に蓄積し、血中濃度が上がって副作用が出やすくなる。そのため、クレアチニンクリアランス(CCr)や推算GFR(eGFR)に応じて1回量を減らす、または投与間隔を延ばす必要がある。 一方、主に肝臓で代謝されて不活化される薬(肝代謝型薬物)は、腎機能が落ちても消失速度があまり変わらないため、原則として通常量で使える。 本問では、5つの薬のうち腎排泄が主な消失経路であり、しかも治療域と中毒域が近く腎障害・聴覚障害を起こしうる薬を選べばよい。グリコペプチド系抗菌薬のバンコマイシンがこれにあたる。 なお、ループ利尿薬のフロセミドは尿中にも排泄されるが、腎不全では効果を得るためにむしろ増量することが多いので、「減量する薬」には当たらない点に注意する。
選択肢考察
- ○a. バンコマイシン
バンコマイシンは点滴静注ではほとんど代謝を受けず、大部分が未変化体として糸球体濾過により尿中へ排泄される。腎機能正常者での血中半減期は4〜6時間程度だが、末期腎不全では数日にまで延長する。蓄積すると腎毒性(急性腎障害)や第8脳神経障害(聴覚障害)の危険が高まるため、腎不全患者ではCCrに応じて投与量を減らすか投与間隔を延ばす。さらに治療薬物モニタリング(TDM:血中濃度を測定して投与量を調整すること)でトラフ値やAUC(血中濃度-時間曲線下面積)を確認しながら用いる。
- ×b. リファンピシン
リファンピシンは抗結核薬の中心的な薬で、主に肝臓で代謝され胆汁中へ排泄される(腸肝循環もある)。尿中への排泄は一部にとどまるため、腎不全でも通常は減量を必要としない。なお抗結核薬の中では、エタンブトールやストレプトマイシンなどのアミノグリコシド系が腎排泄型であり、腎機能低下時に減量や投与間隔の調整が必要となる。リファンピシンはむしろ肝障害や、肝薬物代謝酵素(CYP3Aなど)の誘導による薬物相互作用に注意する薬である。
- ×c. ニフェジピン
ニフェジピンはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬で、主に肝臓のCYP3A4で代謝されて不活性な代謝物になる。代謝物は尿中に出るが、活性をもつ未変化体の腎排泄はごくわずかであるため、腎不全でも減量は通常不要である。カルシウム拮抗薬の多くは肝代謝型であり、腎機能障害を伴う高血圧でも使いやすい降圧薬の一つである。
- ×d. フロセミド
フロセミドはループ利尿薬で、ヘンレ係蹄上行脚の管腔側にあるNa+-K+-2Cl-共輸送体を阻害して効果を発揮する。血中ではアルブミンに結合しており、近位尿細管から分泌されて尿細管腔に到達してはじめて作用する。腎不全では分泌量が減り作用部位に届く薬の量が少なくなるため、利尿効果を得るにはむしろ通常より多い量が必要となる。浮腫や体液過剰を伴う腎不全の治療にも用いられる薬であり、「腎不全だから減量する」薬ではない。ただし大量投与では聴覚障害(耳毒性)に注意する。
- ×e. リドカイン
リドカインは局所麻酔薬であり、クラスIb群の抗不整脈薬として心室性不整脈にも用いられる。大部分が肝臓(CYP1A2、CYP3A4)で代謝されるため、用量調整が問題となるのは肝機能障害や、心不全・ショックで肝血流が減っている場合である。腎不全では通常減量は不要である。ただし代謝物(MEGXなど)が腎機能低下時に蓄積しうるため、長期の持続投与では中枢神経症状に注意する。
腎機能低下時に減量が必要な主な薬
・抗菌薬: バンコマイシン、テイコプラニン、アミノグリコシド系(ゲンタマイシン、アミカシンなど)、多くのβラクタム系(ペニシリン系・セフェム系・カルバペネム系)、ニューキノロン系の多く(レボフロキサシンなど)、ST合剤 ・抗ウイルス薬: アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、オセルタミビル ・抗結核薬: エタンブトール、ストレプトマイシン ・循環器薬: ジゴキシン、ソタロール、シベンゾリン、ダビガトラン ・その他: 炭酸リチウム、メトホルミン(高度腎機能低下では禁忌)、低分子ヘパリン、H2受容体拮抗薬(ファモチジンなど)、アロプリノール
腎機能低下時も比較的通常量で使える主な薬(肝代謝型)
・リファンピシン、イソニアジド、マクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシンは高度低下で調整)、セフトリアキソン、ミノサイクリン ・カルシウム拮抗薬の多く、リドカイン、ワルファリン
腎機能の評価と投与設計
・薬の添付文書や投与設計ではCCr(Cockcroft-Gault式などで推算)やeGFRを用いる。 ・減量の方法には、1回量を減らす方法と、投与間隔を延ばす方法がある。濃度依存性に効く薬(アミノグリコシドなど)では投与間隔の延長が選ばれることが多い。 ・バンコマイシンやアミノグリコシド系はTDMの対象薬であり、血中濃度をみながら調整する。 ・透析で除去される薬かどうか(分子量、タンパク結合率、分布容積で決まる)も、透析患者の投与設計では重要である。
POINT
・腎不全で減量が必要なのは、未変化体が主に腎から排泄される薬である。 ・バンコマイシンは腎排泄型で腎毒性・聴覚障害をもつため、腎機能に応じた減量とTDMが必須である。 ・リファンピシン、ニフェジピン(カルシウム拮抗薬の多く)、リドカインは肝代謝型で、腎不全でも原則減量不要である。 ・フロセミドは腎不全では効きにくくなるため、むしろ増量して用いる。
