慢性の刺激が胆囊を癌に変える―胆石と膵・胆管合流異常という二大危険因子
第99回医師国家試験 E問題 第35問
国試問題にチャレンジ
胆囊癌の発生と関連するのはどれか。2つ選べ。
- a.原発性硬化性胆管炎
- b.胆囊腺筋腫症
- c.胆囊結石症
- d.膵・胆管合流異常症
- e.膵石症
対話形式の解説
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ドクターまとめ
胆囊癌は胆囊粘膜が長期間の慢性刺激・炎症にさらされることで発生し、代表的な危険因子は胆囊結石症と膵・胆管合流異常症です。胆囊癌の多くに胆石が合併し、合流異常では膵液の胆道内逆流が上皮を傷害するため、特に胆管非拡張型で胆囊癌が多く、予防的胆囊摘出が勧められます。一方、原発性硬化性胆管炎は主に胆管癌、膵石症を伴う慢性膵炎は膵癌の背景疾患であり、胆囊腺筋腫症は癌との鑑別対象となる良性病変です。胆囊癌は早期に症状が乏しく予後不良なため、陶器様胆囊や大きな胆囊ポリープなどのハイリスク所見を画像で拾い上げることが臨床上重要です。背景疾患を「どの臓器の癌」と結びつけて整理する習慣は、消化器癌全般の危険因子を理解する土台になります。
解答・解説
正解はc, dです
胆囊癌の危険因子(発癌の背景となる病態)を問う問題である。 胆囊癌は胆囊粘膜から生じる悪性腫瘍で、大部分が腺癌である。60歳以上の高齢者、特に女性に多い。発癌の背景として共通しているのは「胆囊粘膜が長期間にわたって慢性的な刺激・炎症にさらされること」であり、代表的なものが次の2つである。 ・胆囊結石症:結石による機械的刺激と慢性胆囊炎が長く続くことで、粘膜の化生・異形成を経て癌が生じると考えられている。胆囊癌の患者では高率に胆石を合併している。 ・膵・胆管合流異常症:膵管と胆管が十二指腸壁の外(Oddi括約筋の作用が及ばない部位)で合流する先天異常である。膵液が胆道内に逆流して胆汁と混ざり、活性化した膵酵素などが胆道上皮を持続的に傷害するため、胆囊癌・胆管癌が高頻度に発生する。 考え方としては、各選択肢の疾患が「どの臓器の癌」と結びつくかを整理するとよい。原発性硬化性胆管炎は主として胆管癌、膵石症(慢性膵炎)は膵癌の背景疾患であり、胆囊腺筋腫症は胆囊壁が肥厚する良性の過形成性病変である。こうして臓器ごとに危険因子を対応させると、胆囊癌と明確に関連するのは胆囊結石症と膵・胆管合流異常症の2つになる。
選択肢考察
- ×a. 原発性硬化性胆管炎
原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)は、肝内・肝外胆管に原因不明の線維性狭窄が多発する慢性胆汁うっ滞性疾患で、潰瘍性大腸炎の合併が多い。PSCで問題となる悪性腫瘍は主に胆管癌であり、生涯に10%前後が発症するとされる。また合併する潰瘍性大腸炎に関連して大腸癌のリスクも高い。胆囊病変(胆囊ポリープ)が悪性化しやすいとの報告もあるが、典型的な関連として押さえるべきは胆管癌であり、本問の胆囊癌の危険因子としては選ばない。
- ×b. 胆囊腺筋腫症
胆囊腺筋腫症(adenomyomatosis)は、胆囊粘膜上皮が筋層内に陥入してできるRokitansky-Aschoff洞(RAS)の増生と、筋層・上皮の過形成によって胆囊壁が肥厚する良性病変である。分布によって底部型(限局型)、分節型、びまん型に分類される。超音波でRASに一致する小嚢胞像や、壁内結石によるコメット様エコーを認めるのが特徴で、基本的に経過観察でよい。それ自体が癌化することはまれであり、胆囊癌の明確な危険因子とはされていない。ただし壁肥厚を示すため、胆囊癌との鑑別が問題になることがある。
- ○c. 胆囊結石症
胆囊結石症は胆囊癌の最も重要な危険因子の一つである。胆囊癌の症例の約40〜70%に胆囊結石が合併しており、結石による持続的な機械的刺激と慢性胆囊炎が、粘膜の化生・異形成を経た発癌に関与すると考えられている。特に大きな結石や長期の保有例、胆囊壁が石灰化した陶器様胆囊ではリスクが高いとされる。一方で、胆石保有者全体から見ると胆囊癌を発症するのはごく一部であり、無症状胆石に対する予防的胆囊摘出は一般には推奨されない。
- ○d. 膵・胆管合流異常症
膵・胆管合流異常症は、膵管と胆管が十二指腸壁外で合流するため、Oddi括約筋による逆流防止機構が働かなくなる先天性の形成異常である。胆管より膵管の内圧が高いため、膵液が胆道へ逆流し、胆汁中で活性化した膵酵素や胆汁酸の変化によって胆道上皮が慢性的に傷害され、過形成・異形成を経て発癌する。胆管拡張を伴う型(先天性胆道拡張症)では胆管癌と胆囊癌の両方が、胆管拡張を伴わない型では特に胆囊癌が高率に発生する。このため診断されれば、胆管拡張型では肝外胆管切除と胆道再建(分流手術)、非拡張型では少なくとも予防的胆囊摘出が推奨される。
- ×e. 膵石症
膵石症は膵管内に炭酸カルシウムを主成分とする結石が形成される病態で、主に慢性膵炎(特にアルコール性)に伴ってみられる。膵石はCTで膵実質・膵管内の石灰化として描出され、慢性膵炎の確診所見の一つである。慢性膵炎は膵癌の危険因子として知られるが、胆囊癌との関連はない。
胆道癌の分類
胆道癌は、胆管癌(肝内・肝門部・遠位)、胆囊癌、乳頭部癌に分けられる。胆囊癌は高齢女性に多く、早期は無症状のことが多い。進行すると右季肋部痛、黄疸、体重減少などを呈し、早期に肝臓やリンパ節へ浸潤しやすいため予後不良である。腫瘍マーカーとしてCA19-9、CEAが用いられる。
胆囊癌の主な危険因子
・胆囊結石症(慢性胆囊炎) ・膵・胆管合流異常症(特に胆管非拡張型) ・陶器様胆囊(胆囊壁の石灰化) ・大きな胆囊ポリープ(おおむね10mm以上、増大傾向、広基性は癌を疑う)
臓器別に整理する背景疾患
・胆管癌:原発性硬化性胆管炎、膵・胆管合流異常症(先天性胆道拡張症)、肝内結石症、肝吸虫症など ・膵癌:慢性膵炎(膵石症)、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、糖尿病、喫煙、家族歴など ・肝細胞癌:B型・C型慢性肝炎、肝硬変など
膵・胆管合流異常症の病態
合流部がOddi括約筋の外にあるため、膵液と胆汁が相互に逆流する。膵液が胆道へ流入すると胆道癌、胆汁が膵管へ流入すると急性膵炎の原因となりうる。診断にはMRCP、ERCP、超音波内視鏡などで長い共通管や壁外合流を確認し、胆汁中アミラーゼの高値も参考になる。
POINT
・胆囊癌の二大危険因子は胆囊結石症と膵・胆管合流異常症である。 ・胆囊癌の約40〜70%に胆石が合併する。 ・膵・胆管合流異常症は胆管拡張型で胆管癌と胆囊癌、非拡張型で特に胆囊癌が多い。 ・原発性硬化性胆管炎は胆管癌、膵石症(慢性膵炎)は膵癌の背景疾患である。 ・胆囊腺筋腫症は良性の壁肥厚性病変で、胆囊癌との鑑別対象になる。
