StudyMed医師国家試験

慢性の刺激が胆囊を癌に変える―胆石と膵・胆管合流異常という二大危険因子

第99回医師国家試験 E問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第35問

胆囊癌の発生と関連するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.原発性硬化性胆管炎
  2. b.胆囊腺筋腫症
  3. c.胆囊結石症
  4. d.膵・胆管合流異常症
  5. e.膵石症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胆囊癌の危険因子を選ぶ問題だ。ポイントは、選択肢の病気が「どの臓器の癌」と結びつくのかを整理すること。胆道や膵臓の病気が並んでいるから、臓器を取り違えないように注意しよう。
医学生医学生
胆道系の病気ならどれも胆道の癌につながりそうで、迷ってしまいます。
ドクタードクター
そこで共通の原理を押さえよう。胆囊癌の背景にあるのは「胆囊粘膜が長いあいだ慢性的な刺激や炎症にさらされること」だ。その代表が胆囊結石症と膵・胆管合流異常症の2つになる。
医学生医学生
胆石は結石が粘膜をこすって、慢性胆囊炎が続くイメージでしょうか。
ドクタードクター
その通り。機械的刺激と慢性炎症が長く続くことで、粘膜の化生や異形成を経て癌が生じると考えられている。胆囊癌の患者さんの約40〜70%に胆石が合併しているとされるし、胆囊壁が石灰化した陶器様胆囊はさらにリスクが高い。
医学生医学生
それなら、胆石が見つかった人はみんな胆囊を取ったほうがいいんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。胆石を持っている人全体から見ると、胆囊癌になるのはごく一部なんだ。だから無症状の胆石に対して、予防のために胆囊摘出をするのは一般には勧められていない。「癌の人には胆石が多い」と「胆石の人の多くが癌になる」は別の話だよ。
医学生医学生
もう一つの膵・胆管合流異常症は、解剖の講義で習ったOddi括約筋が関係していたと思います。
ドクタードクター
よく覚えているね。膵管と胆管が十二指腸の壁の外、つまりOddi括約筋の作用が及ばない場所で合流してしまう先天異常だ。膵管のほうが内圧が高いから、膵液が胆道へ逆流する。胆汁の中で活性化した膵酵素などが胆道の上皮を傷め続けて、過形成や異形成を経て癌が生じるんだ。
医学生医学生
胆管も同じように傷むなら、胆管癌も増えそうですね。
ドクタードクター
鋭いね。胆管拡張を伴う型、いわゆる先天性胆道拡張症では胆管癌と胆囊癌の両方が多く、胆管拡張を伴わない型では特に胆囊癌が多い。だから診断がつけば、拡張型では肝外胆管切除と胆道再建の分流手術、非拡張型でも少なくとも予防的な胆囊摘出が勧められる。
医学生医学生
原発性硬化性胆管炎も胆道の慢性炎症なので、胆囊癌の危険因子に入りそうに思えました。
ドクタードクター
そう考えるのも無理はない。ただ、PSCで典型的に問題になるのは胆管癌なんだ。胆管に線維性の狭窄が多発する病気で、潰瘍性大腸炎の合併も多く、そちらに関連した大腸癌にも注意が要る。胆囊ポリープが悪性化しやすいという報告もあるけれど、胆囊癌の危険因子として押さえるのは胆石と合流異常のほうだ。
医学生医学生
胆囊腺筋腫症は、胆囊の壁が厚くなるなら癌と関係ありそうです。
ドクタードクター
胆囊腺筋腫症は、粘膜が筋層に入り込んだRokitansky-Aschoff洞が増えて壁が厚くなる良性の病変だ。超音波で小さな嚢胞像や、壁内結石によるコメット様エコーが見えるのが特徴で、基本は経過観察でよい。それ自体が癌化することはまれで、むしろ壁肥厚が胆囊癌と紛らわしいという「鑑別の相手」として覚えておこう。
医学生医学生
膵石症は膵臓の病気なので、胆囊とは臓器が違いますね。
ドクタードクター
その通り。膵石症は主にアルコール性の慢性膵炎に伴ってみられ、慢性膵炎は膵癌の危険因子だ。胆囊癌とは関係しない。
医学生医学生
臓器ごとにまとめると、胆囊癌は胆石と合流異常、胆管癌はPSCや先天性胆道拡張症、膵癌は慢性膵炎ですね。
ドクタードクター
完璧な整理だ。臨床の話もしておこう。胆囊癌は高齢の女性に多く、早期はほとんど症状がない。黄疸や右季肋部痛、体重減少が出たときには、肝臓やリンパ節に浸潤していることが多く、予後が悪い。
医学生医学生
消化器外科の実習で、胆囊摘出術の術後病理で偶然見つかった胆囊癌の症例がありました。
ドクタードクター
それも大事な経験だね。だからこそ、陶器様胆囊や10mm以上・増大傾向・広基性の胆囊ポリープ、膵・胆管合流異常といったハイリスク所見を画像で見逃さないことが重要なんだ。腫瘍マーカーとしてはCA19-9やCEAが使われるけれど、早期発見には画像のほうが頼りになる。

まとめ

胆囊癌は胆囊粘膜が長期間の慢性刺激・炎症にさらされることで発生し、代表的な危険因子は胆囊結石症と膵・胆管合流異常症です。胆囊癌の多くに胆石が合併し、合流異常では膵液の胆道内逆流が上皮を傷害するため、特に胆管非拡張型で胆囊癌が多く、予防的胆囊摘出が勧められます。一方、原発性硬化性胆管炎は主に胆管癌、膵石症を伴う慢性膵炎は膵癌の背景疾患であり、胆囊腺筋腫症は癌との鑑別対象となる良性病変です。胆囊癌は早期に症状が乏しく予後不良なため、陶器様胆囊や大きな胆囊ポリープなどのハイリスク所見を画像で拾い上げることが臨床上重要です。背景疾患を「どの臓器の癌」と結びつけて整理する習慣は、消化器癌全般の危険因子を理解する土台になります。

解答・解説

正解はc, dです

胆囊癌の危険因子(発癌の背景となる病態)を問う問題である。 胆囊癌は胆囊粘膜から生じる悪性腫瘍で、大部分が腺癌である。60歳以上の高齢者、特に女性に多い。発癌の背景として共通しているのは「胆囊粘膜が長期間にわたって慢性的な刺激・炎症にさらされること」であり、代表的なものが次の2つである。 ・胆囊結石症:結石による機械的刺激と慢性胆囊炎が長く続くことで、粘膜の化生・異形成を経て癌が生じると考えられている。胆囊癌の患者では高率に胆石を合併している。 ・膵・胆管合流異常症:膵管と胆管が十二指腸壁の外(Oddi括約筋の作用が及ばない部位)で合流する先天異常である。膵液が胆道内に逆流して胆汁と混ざり、活性化した膵酵素などが胆道上皮を持続的に傷害するため、胆囊癌・胆管癌が高頻度に発生する。 考え方としては、各選択肢の疾患が「どの臓器の癌」と結びつくかを整理するとよい。原発性硬化性胆管炎は主として胆管癌、膵石症(慢性膵炎)は膵癌の背景疾患であり、胆囊腺筋腫症は胆囊壁が肥厚する良性の過形成性病変である。こうして臓器ごとに危険因子を対応させると、胆囊癌と明確に関連するのは胆囊結石症と膵・胆管合流異常症の2つになる。

選択肢考察

  1. ×a.  原発性硬化性胆管炎

    原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)は、肝内・肝外胆管に原因不明の線維性狭窄が多発する慢性胆汁うっ滞性疾患で、潰瘍性大腸炎の合併が多い。PSCで問題となる悪性腫瘍は主に胆管癌であり、生涯に10%前後が発症するとされる。また合併する潰瘍性大腸炎に関連して大腸癌のリスクも高い。胆囊病変(胆囊ポリープ)が悪性化しやすいとの報告もあるが、典型的な関連として押さえるべきは胆管癌であり、本問の胆囊癌の危険因子としては選ばない。

  2. ×b.  胆囊腺筋腫症

    胆囊腺筋腫症(adenomyomatosis)は、胆囊粘膜上皮が筋層内に陥入してできるRokitansky-Aschoff洞(RAS)の増生と、筋層・上皮の過形成によって胆囊壁が肥厚する良性病変である。分布によって底部型(限局型)、分節型、びまん型に分類される。超音波でRASに一致する小嚢胞像や、壁内結石によるコメット様エコーを認めるのが特徴で、基本的に経過観察でよい。それ自体が癌化することはまれであり、胆囊癌の明確な危険因子とはされていない。ただし壁肥厚を示すため、胆囊癌との鑑別が問題になることがある。

  3. ○c.  胆囊結石症

    胆囊結石症は胆囊癌の最も重要な危険因子の一つである。胆囊癌の症例の約40〜70%に胆囊結石が合併しており、結石による持続的な機械的刺激と慢性胆囊炎が、粘膜の化生・異形成を経た発癌に関与すると考えられている。特に大きな結石や長期の保有例、胆囊壁が石灰化した陶器様胆囊ではリスクが高いとされる。一方で、胆石保有者全体から見ると胆囊癌を発症するのはごく一部であり、無症状胆石に対する予防的胆囊摘出は一般には推奨されない。

  4. ○d.  膵・胆管合流異常症

    膵・胆管合流異常症は、膵管と胆管が十二指腸壁外で合流するため、Oddi括約筋による逆流防止機構が働かなくなる先天性の形成異常である。胆管より膵管の内圧が高いため、膵液が胆道へ逆流し、胆汁中で活性化した膵酵素や胆汁酸の変化によって胆道上皮が慢性的に傷害され、過形成・異形成を経て発癌する。胆管拡張を伴う型(先天性胆道拡張症)では胆管癌と胆囊癌の両方が、胆管拡張を伴わない型では特に胆囊癌が高率に発生する。このため診断されれば、胆管拡張型では肝外胆管切除と胆道再建(分流手術)、非拡張型では少なくとも予防的胆囊摘出が推奨される。

  5. ×e.  膵石症

    膵石症は膵管内に炭酸カルシウムを主成分とする結石が形成される病態で、主に慢性膵炎(特にアルコール性)に伴ってみられる。膵石はCTで膵実質・膵管内の石灰化として描出され、慢性膵炎の確診所見の一つである。慢性膵炎は膵癌の危険因子として知られるが、胆囊癌との関連はない。

胆道癌の分類

胆道癌は、胆管癌(肝内・肝門部・遠位)、胆囊癌、乳頭部癌に分けられる。胆囊癌は高齢女性に多く、早期は無症状のことが多い。進行すると右季肋部痛、黄疸、体重減少などを呈し、早期に肝臓やリンパ節へ浸潤しやすいため予後不良である。腫瘍マーカーとしてCA19-9、CEAが用いられる。

胆囊癌の主な危険因子

・胆囊結石症(慢性胆囊炎) ・膵・胆管合流異常症(特に胆管非拡張型) ・陶器様胆囊(胆囊壁の石灰化) ・大きな胆囊ポリープ(おおむね10mm以上、増大傾向、広基性は癌を疑う)

臓器別に整理する背景疾患

・胆管癌:原発性硬化性胆管炎、膵・胆管合流異常症(先天性胆道拡張症)、肝内結石症、肝吸虫症など ・膵癌:慢性膵炎(膵石症)、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、糖尿病、喫煙、家族歴など ・肝細胞癌:B型・C型慢性肝炎、肝硬変など

膵・胆管合流異常症の病態

合流部がOddi括約筋の外にあるため、膵液と胆汁が相互に逆流する。膵液が胆道へ流入すると胆道癌、胆汁が膵管へ流入すると急性膵炎の原因となりうる。診断にはMRCP、ERCP、超音波内視鏡などで長い共通管や壁外合流を確認し、胆汁中アミラーゼの高値も参考になる。

POINT

・胆囊癌の二大危険因子は胆囊結石症と膵・胆管合流異常症である。 ・胆囊癌の約40〜70%に胆石が合併する。 ・膵・胆管合流異常症は胆管拡張型で胆管癌と胆囊癌、非拡張型で特に胆囊癌が多い。 ・原発性硬化性胆管炎は胆管癌、膵石症(慢性膵炎)は膵癌の背景疾患である。 ・胆囊腺筋腫症は良性の壁肥厚性病変で、胆囊癌との鑑別対象になる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。