StudyMed医師国家試験

光は見えなくても瞳は縮む―対光反射が外側膝状体を素通りする理由

第99回医師国家試験 D問題 第40問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第40問

対光反射に関与しないのはどれか。

  1. a.視神経
  2. b.視交叉
  3. c.外側膝状体
  4. d.Edinger-Westphal核
  5. e.毛様体神経節

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、対光反射の反射弓をたどって、その経路に入らない構造を選ぶ問題だ。ポイントは「ものを見る経路(視覚路)」と「瞳孔を縮める経路(対光反射路)」がどこまで共通で、どこで分かれるかを区別できるかどうか。まずは反射弓の全体像を描いてみよう。
医学生医学生
神経解剖の講義で、受容器、求心路、中枢、遠心路、効果器の5つに分けて考えるように習いました。受容器は網膜ですよね。
ドクタードクター
その通り。網膜の視細胞に加えて、メラノプシンをもつ内因性光感受性網膜神経節細胞も光の明るさを伝える役割を担っている。求心路はどうなるかな。
医学生医学生
視神経から視交叉、視索へ行って、外側膝状体を経て…と、視覚路と同じ順番で覚えていました。
ドクタードクター
そこがまさにこの問題の落とし穴だね。視索までは視覚路と共通なんだけれど、対光反射の線維は外側膝状体に入る手前で分かれて、上丘腕を通って中脳の視蓋前核へ向かう。外側膝状体は視床の中継核で、視放線を経て後頭葉の一次視覚野へ情報を送る、つまり「見る」ための中継点なんだ。
医学生医学生
ということは、外側膝状体は視覚路だけに属していて、対光反射には関与しないんですね。
ドクタードクター
正解。では残りの構造も確認しよう。視神経と視交叉は求心路そのもので、どちらも関与する。視交叉では網膜の鼻側半に由来する線維が反対側へ交叉するから、片眼からの入力が左右両側の視索に分かれて届くんだ。
医学生医学生
視神経から直接Edinger-Westphal核にシナプスするのかと思っていました。
ドクタードクター
よくある誤解だね。視索の線維はまず視蓋前核でシナプスをつくり、視蓋前核のニューロンが同側と、後交連を通って反対側のEdinger-Westphal核の両方に投射する。この核は動眼神経副核とも呼ばれる副交感性の節前ニューロンの核で、遠心路の出発点になる。
医学生医学生
そこから動眼神経に乗って毛様体神経節でニューロンを乗り換え、短毛様体神経で瞳孔括約筋に届く、という流れですね。
ドクタードクター
そう。毛様体神経節は眼窩内の副交感神経節で、遠心路の一部だから当然関与する。ちなみに片眼に光を当てて両眼が縮むのはなぜだと思う?
医学生医学生
視交叉での交叉と、視蓋前核から両側のEdinger-Westphal核への投射の2段階で、入力が左右に分配されるからですか。
ドクタードクター
その理解で完璧だ。これが直接反射と間接反射がそろう理由だね。臨床的に大事なのは、外側膝状体より後ろ、つまり視放線や後頭葉の病変では、皮質盲になっても対光反射は保たれるという点だ。
医学生医学生
脳神経内科の実習で、両側後頭葉梗塞の患者さんが「見えない」のに瞳孔反応は正常で驚いたことがあります。
ドクタードクター
まさにそれが病変部位を推定する手がかりになる。部位ごとの瞳孔異常も整理しておこう。視神経の障害では交互対光反射試験で相対的求心性瞳孔障害、いわゆるMarcus Gunn瞳孔が出る。視蓋前域の障害ではArgyll Robertson瞳孔で、対光反射は消えるが近見反応は保たれる。
医学生医学生
神経梅毒で有名なやつですね。近見反応は皮質を経由する経路が関わるから解離が起きる、と国試対策の講義で聞きました。
ドクタードクター
その通り。そして毛様体神経節やその節後線維の障害ではAdie瞳孔になる。散瞳して対光反射が消失または緩徐になり、近見反応はゆっくり保たれる。深部腱反射の消失を伴えばHolmes-Adie症候群だ。
医学生医学生
動眼神経麻痺で散瞳が目立つのは、瞳孔線維が神経の表層を走っているからでしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。内頸動脈-後交通動脈分岐部の動脈瘤による圧迫では早期から散瞳が出やすいので、眼瞼下垂や眼球運動障害に散瞳を伴うときは緊急性が高いと考えたい。反射弓を正確に描ければ、瞳孔所見から病変の場所を逆算できるようになるよ。

まとめ

対光反射は、網膜から視神経・視交叉・視索を経て中脳の視蓋前核に至り、両側のEdinger-Westphal核から動眼神経、毛様体神経節、短毛様体神経を経て瞳孔括約筋を収縮させる反射です。視索までは視覚路と共通ですが、反射の線維は外側膝状体の手前で分かれるため、外側膝状体は対光反射に関与しません。そのため視放線や後頭葉の病変では皮質盲でも対光反射が保たれ、病変部位推定の手がかりになります。視神経障害ではRAPD、視蓋前域ではArgyll Robertson瞳孔、毛様体神経節ではAdie瞳孔と、部位ごとの瞳孔異常も対応づけて覚えておきましょう。反射弓を正確に理解することは、瞳孔所見から神経障害の局在を読み解く臨床力の土台になります。

解答・解説

正解はcです

対光反射(pupillary light reflex)は、片眼に光を入れると両眼の瞳孔が縮む反射である。光を当てた側の縮瞳を直接反射、反対側の縮瞳を間接反射(共感性反射)とよぶ。本問は、この反射の経路に含まれない構造を一つ選ぶ問題である。

反射弓の全体像

・受容器:網膜の視細胞と、メラノプシンを含む網膜神経節細胞(ipRGC:内因性光感受性網膜神経節細胞) ・求心路:視神経 → 視交叉(鼻側半の線維が交叉)→ 視索 ・中枢:視索の線維の一部が外側膝状体へ入らずに分かれ、上丘腕を通って中脳の視蓋前域にある視蓋前核(pretectal nucleus)でシナプスを作る。視蓋前核のニューロンは同側と、後交連を通って反対側の Edinger-Westphal 核(E-W核)の両方に投射する。 ・遠心路:E-W核(動眼神経副核、副交感性の節前ニューロン)→ 動眼神経 → 毛様体神経節(ここで節後ニューロンに乗り換え)→ 短毛様体神経 → 瞳孔括約筋

解き方の考え方

視覚(ものを見る感覚)の経路は「視神経 → 視交叉 → 視索 → 外側膝状体 → 視放線 → 後頭葉の一次視覚野」である。対光反射の経路は、視索までは視覚路と共通だが、外側膝状体の手前で枝分かれして中脳へ向かう。したがって、視覚路にのみ属し、対光反射の経路には入らない外側膝状体が正解となる。 なお、視交叉で線維が左右に分かれること、さらに視蓋前核が両側のE-W核に投射することの二段階で入力が両側に分配されるため、片眼の刺激で両眼が縮瞳する(直接反射と間接反射がそろう)。

選択肢考察

  1. ×a.  視神経

    視神経は網膜神経節細胞の軸索の束で、光の情報を中枢へ伝える対光反射の求心路そのものである。したがって対光反射に関与する。視神経が障害されると、障害側の眼に光を入れても両眼とも縮瞳が弱く(あるいは起こらず)、健側に光を入れると両眼とも正常に縮瞳する。この左右差を交互対光反射試験(swinging flashlight test)で調べたものが相対的求心性瞳孔障害(RAPD、Marcus Gunn瞳孔)であり、視神経炎などの診断に用いられる。

  2. ×b.  視交叉

    視交叉は左右の視神経が合流し、網膜の鼻側半に由来する線維が反対側へ交叉する部位である。対光反射の求心性線維もここを通って視索へ入るため、対光反射に関与する。視交叉で片眼からの入力が左右両側の視索に分配されることは、間接反射が成立する理由の一つである(もう一つは視蓋前核から両側のE-W核への投射)。

  3. ○c.  外側膝状体

    外側膝状体は視床にある中継核で、視索の線維を受けて視放線を介して後頭葉の一次視覚野へ送る。つまり、ものを見るための視覚路の中継点である。対光反射の求心性線維は外側膝状体に入る手前で視索から分かれ、上丘腕を経て中脳の視蓋前核へ向かうので、外側膝状体を通らない。このため外側膝状体より後方(視放線や後頭葉)の病変では視野欠損や皮質盲が起きても、対光反射は保たれる。以上から、対光反射に関与しないのは外側膝状体である。

  4. ×d.  Edinger-Westphal核

    Edinger-Westphal核(E-W核、動眼神経副核)は中脳にある副交感性の節前ニューロンの核で、対光反射の遠心路の出発点である。両側の視蓋前核から入力を受け、その軸索は動眼神経に含まれて眼窩内の毛様体神経節へ向かう。求心性の視神経線維が直接E-W核にシナプスを作るのではなく、間に視蓋前核が入る点に注意する。E-W核は対光反射に関与する。

  5. ×e.  毛様体神経節

    毛様体神経節は眼窩内にある副交感神経節で、E-W核から動眼神経を通って来た節前線維がここで節後ニューロンにシナプスを作る。節後線維は短毛様体神経として眼球に入り、瞳孔括約筋を収縮させて縮瞳を起こす(毛様体筋にも分布し、調節にも関わる)。したがって対光反射の遠心路の一部であり、関与する。毛様体神経節やその節後線維の障害では、対光反射が消失あるいは極めて緩徐になり、近見反応での縮瞳は比較的保たれる瞳孔緊張症(Adie瞳孔)を呈する。

対光反射の経路のまとめ

網膜 → 視神経 → 視交叉 → 視索 → (上丘腕)→ 視蓋前核 → 両側のE-W核 → 動眼神経(副交感性節前線維)→ 毛様体神経節 → 短毛様体神経(節後線維)→ 瞳孔括約筋 → 縮瞳

視覚路との比較

視覚路:網膜 → 視神経 → 視交叉 → 視索 → 外側膝状体 → 視放線 → 後頭葉一次視覚野(鳥距溝周囲) 両者は視索までを共有し、その先で分岐する。このため、 ・視神経〜視索の障害:視覚障害とともに対光反射も障害されうる ・外側膝状体・視放線・後頭葉の障害:視野障害や皮質盲があっても対光反射は正常 という違いが生じる。皮質盲の患者で対光反射が保たれることは、病変部位を推定する手がかりになる。

瞳孔を支配する自律神経

・縮瞳:副交感神経(E-W核 → 動眼神経 → 毛様体神経節 → 瞳孔括約筋) ・散瞳:交感神経(視床下部 → 脳幹・頸髄を下行 → 毛様脊髄中枢(C8〜T2)→ 上頸神経節 → 内頸動脈に沿って上行 → 瞳孔散大筋)。この経路の障害でHorner症候群(縮瞳、眼瞼下垂、同側顔面の発汗低下)が生じる。

部位別の代表的な瞳孔異常

・視神経:相対的求心性瞳孔障害(RAPD、Marcus Gunn瞳孔) ・視蓋前域(中脳背側):Argyll Robertson瞳孔。縮瞳した瞳孔で、対光反射は消失するが輻湊(近見)反応は保たれる(light-near dissociation)。神経梅毒で有名で、糖尿病などでもみられる。 ・動眼神経:散瞳と対光反射消失に、眼瞼下垂や眼球運動障害を伴う。瞳孔線維は動眼神経の表層を走るため、内頸動脈-後交通動脈分岐部の動脈瘤などによる圧迫では早期から散瞳が出やすい。 ・毛様体神経節:Adie瞳孔(瞳孔緊張症)。散瞳、対光反射の消失または緩徐化、近見反応はゆっくり保たれる。深部腱反射消失を伴うものはHolmes-Adie症候群とよぶ。

近見反応との違い

近見反応(輻湊・調節・縮瞳)は後頭葉など大脳皮質を経由する経路が関与するとされ、視蓋前核を経由する対光反射とは経路が一部異なる。これがArgyll Robertson瞳孔で対光反射と近見反応が解離する理由である。

POINT

・対光反射の求心路:視神経 → 視交叉 → 視索 → 視蓋前核 ・対光反射の遠心路:E-W核 → 動眼神経 → 毛様体神経節 → 短毛様体神経 → 瞳孔括約筋 ・外側膝状体・視放線・後頭葉は視覚路であり、対光反射の経路には含まれない(皮質盲でも対光反射は保たれる) ・視交叉での交叉と、視蓋前核から両側E-W核への投射により、片眼への光刺激で両眼が縮瞳する ・部位と瞳孔異常の対応:視神経=RAPD、視蓋前域=Argyll Robertson瞳孔、毛様体神経節=Adie瞳孔

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。