StudyMed医師国家試験

「高齢者のよろず相談窓口」は何をする?―地域包括支援センターの守備範囲を見極める

第119回医師国家試験 F問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第119回 F問題 第27問

地域包括支援センターの業務はどれか。

  1. a.高齢者虐待の防止
  2. b.発達障害児の相談
  3. c.地域住民のがん検診
  4. d.へき地医療対策の企画
  5. e.通所リハビリテーションの提供

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、地域包括支援センターがどんな業務を担う機関かを問う問題だ。ポイントは「誰を対象にしているか」と「自分でサービスを提供するのか、それとも相談・調整役なのか」の2つ。まずは、この機関にどんなイメージを持っているか聞いてみようかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で「地域包括ケアシステムの中核」と習った記憶はあるんですが、保健所や保健センターとの違いがあいまいです。
ドクタードクター
そこは混同しやすいところだね。地域包括支援センターは介護保険法に基づいて市町村が設置する機関で、2006年度から設置が始まった。社会福祉法人などに運営を委託している市町村も多い。対象は高齢者で、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援をつなぐ役割を担う。一方、保健所は都道府県や政令市などが置く、感染症対策や食品衛生などの専門的・広域的な機関で、市町村保健センターは母子保健や健診など住民に身近な保健サービスの拠点だ。
医学生医学生
対象が高齢者に絞られている、というのがまず大きな違いなんですね。
ドクタードクター
そう。そして業務の中身は4つの基本業務で覚えるといい。介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援だ。加えて、要支援者の介護予防ケアプランの作成も行う。
医学生医学生
権利擁護というのは、具体的にはどんなことをするんですか。
ドクタードクター
代表が高齢者虐待の防止と早期発見・対応だね。ほかに成年後見制度の活用支援、悪質商法などの消費者被害の防止、困難事例への対応も含まれる。高齢者虐待防止法では通報や相談の窓口は市町村とされているけれど、市町村はその事務をセンターに委託できるので、実際にはセンターが通報の受付や事実確認、養護者への支援を担うことが多いんだ。
医学生医学生
ということは、高齢者虐待の防止が正解ですね。臨床実習で総合診療科を回ったとき、独居の認知症の患者さんについて指導医が「包括に連絡しておいて」と言っていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさに現場でよくある場面だね。では、ほかの選択肢がなぜ違うかも確認しよう。発達障害児の相談はどうかな。
医学生医学生
相談業務ではあるので、総合相談支援に含まれそうな気もしてしまいます。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。「相談」という言葉に引っ張られず、対象を見よう。発達障害児・者の相談は、発達障害者支援法に基づいて都道府県・指定都市が設置する発達障害者支援センターが中心となり、市町村の担当課や児童発達支援センター、児童相談所なども関わる。高齢者のための機関である地域包括支援センターの守備範囲ではないんだ。
医学生医学生
がん検診は、市町村がやっているイメージがあります。
ドクタードクター
その通り。住民のがん検診は健康増進法に基づく健康増進事業として市町村が実施していて、実際の検診は医療機関や検診機関に委託されることが多い。センターが検診を行うわけではないね。では、へき地医療対策の企画は?
医学生医学生
医療計画の5疾病6事業に入っていたはずなので、都道府県の仕事でしょうか。
ドクタードクター
正解。へき地医療は医療法に基づく医療計画の一項目として都道府県が企画・実施し、へき地医療支援機構による代診医の派遣調整や、へき地医療拠点病院の整備などを行う。市町村の高齢者支援機関が担う業務ではない。
医学生医学生
通所リハビリテーションは介護保険のサービスなので、一番迷いました。
ドクタードクター
介護保険つながりで紛らわしいよね。でも通所リハビリテーション、いわゆるデイケアは、介護老人保健施設や介護医療院、病院・診療所といった事業所が提供する居宅サービスだ。センターはサービスを直接提供せず、要支援者のケアプラン作成や関係機関との調整を行う立場にある。「提供する機関」ではなく「つなぐ機関」と覚えておくといい。
医学生医学生
対象は高齢者、役割は相談・権利擁護・調整で、サービスの実施や行政の企画はしない、という整理ですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として職員配置も押さえておこう。保健師(または地域ケアの経験のある看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種がチームで動くのが原則で、おおまかには保健師が介護予防ケアマネジメント、社会福祉士が総合相談と権利擁護、主任ケアマネジャーが地域のケアマネジャーへの助言・支援を担当する。また、個別事例の検討から地域課題を見つけて地域づくりにつなげる地域ケア会議の開催も、センターの大切な役割だ。
医学生医学生
病棟で退院支援をするときにも関わってきそうですね。
ドクタードクター
そうなんだ。介護保険の申請前の人や要支援程度の人、虐待やセルフネグレクトが疑われる人の退院では、医療ソーシャルワーカーを通じてセンターと連携することがよくある。医師として「この患者さんを地域の誰につなげばよいか」を考えられることは、高齢化が進むなかでますます重要になるよ。

まとめ

地域包括支援センターは、介護保険法に基づき市町村が設置する、高齢者の地域生活を支える総合相談・支援機関であり、地域包括ケアシステムの中核を担います。基本業務は介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援の4つで、高齢者虐待の防止・早期対応は権利擁護業務に含まれます。保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種がチームで対応し、介護サービスを自ら提供するのではなく、関係機関をつなぐ調整役である点が特徴です。発達障害の相談は発達障害者支援センター、がん検診は市町村、へき地医療対策は都道府県、通所リハビリテーションは介護事業所が担うというように、「対象」と「実施主体」で機関を区別することが正答への近道です。この整理は、退院支援や虐待が疑われる高齢者への対応など、実際の臨床で適切な連携先を選ぶ力にも直結します。

解答・解説

正解はaです

問われていること

地域包括支援センターがどのような業務を担う機関かを問う問題である。

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターは、2005年の介護保険法改正により創設され、2006年度から設置が始まった機関である。設置主体は市町村で、市町村が直接運営するほか、社会福祉法人などに委託して運営される場合も多い。高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の中核機関と位置づけられている。保健師(または地域ケアの経験のある看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の3職種を配置し、チームで業務にあたるのが原則である。

主な業務

介護保険法の地域支援事業(包括的支援事業)として、(1)介護予防ケアマネジメント、(2)総合相談支援、(3)権利擁護、(4)包括的・継続的ケアマネジメント支援を担う。加えて、要支援者の予防給付に関するケアマネジメント(指定介護予防支援)も行う。

解き方

対象が「高齢者」であり、相談・権利擁護・ケアマネジメント支援といった「調整・支援」の機関であることを押さえれば、高齢者虐待の防止(権利擁護業務の一部)が該当すると判断できる。小児(発達障害児)を対象とする業務、市町村本体や都道府県が担う行政業務、介護サービスそのものの提供は、地域包括支援センターの業務ではない。

選択肢考察

  1. ○a.  高齢者虐待の防止

    地域包括支援センターの4つの基本業務の一つである権利擁護業務に、高齢者虐待の防止と早期発見・対応が含まれる。高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)では虐待の通報・相談の窓口は市町村とされているが、市町村はその事務を地域包括支援センターに委託でき、実際にはセンターが通報の受付や事実確認、養護者への支援を担うことが多い。権利擁護業務には、このほか成年後見制度の活用支援、悪質商法などの消費者被害の防止、老人福祉施設への措置の支援なども含まれる。

  2. ×b.  発達障害児の相談

    発達障害児・者の相談は、発達障害者支援法に基づき都道府県・指定都市が設置する発達障害者支援センターが中心的に担い、ほかに市町村の担当課、児童発達支援センター、児童相談所、保健所・保健センター、精神保健福祉センターなども対応する。地域包括支援センターは高齢者を対象とする機関であり、小児の発達相談はその業務ではない。

  3. ×c.  地域住民のがん検診

    住民を対象とするがん検診は、健康増進法に基づく健康増進事業として市町村が実施する(実際の検診は医療機関や検診機関に委託されることが多い)。地域包括支援センターは検診を実施する機関ではない。

  4. ×d.  へき地医療対策の企画

    へき地医療対策は、医療法に基づく医療計画の一項目(いわゆる5疾病6事業の一つ)として都道府県が企画・実施する。都道府県は、へき地医療支援機構を設けて代診医の派遣調整などを行い、へき地医療拠点病院やへき地診療所を整備する。市町村の高齢者支援機関である地域包括支援センターの業務ではない。

  5. ×e.  通所リハビリテーションの提供

    通所リハビリテーション(デイケア)は、介護保険の居宅サービスの一つで、介護老人保健施設、介護医療院、病院、診療所に通って理学療法・作業療法などを受けるものである。サービスを実際に提供するのはこれらの事業所であり、地域包括支援センターはサービスを直接提供せず、要支援者の介護予防ケアプランの作成や関係機関との調整を行う立場である。

地域包括支援センターの業務(介護保険法)

・介護予防ケアマネジメント:要支援者や、基本チェックリストで事業対象者とされた高齢者に対し、介護予防・日常生活支援総合事業のサービスが適切に提供されるよう支援する。 ・総合相談支援:高齢者や家族からの介護・福祉・医療・生活に関する相談をワンストップで受け、実態を把握して適切な機関や制度につなぐ。地域の関係者とのネットワークづくりも含む。 ・権利擁護:高齢者虐待の防止・早期発見と対応、成年後見制度の活用促進、消費者被害の防止、判断能力が低下した人への支援、困難事例への対応。 ・包括的・継続的ケアマネジメント支援:地域の介護支援専門員(ケアマネジャー)への助言・指導、困難事例への支援、医療機関などとの連携体制の整備。 ・指定介護予防支援:要支援1・2の人の予防給付に関するケアプラン作成など。 ・地域ケア会議の開催:個別事例の検討を通じて地域課題を把握し、地域づくりや政策形成につなげる。

配置職種と主な役割

・保健師等:介護予防ケアマネジメント ・社会福祉士:総合相談支援、権利擁護 ・主任介護支援専門員:包括的・継続的ケアマネジメント支援

似た名称の機関との区別

・保健所:都道府県・政令市などが設置。感染症対策、食品衛生、精神保健など専門的・広域的な業務。 ・市町村保健センター:住民に身近な母子保健、健康診査、健康相談、保健指導など。 ・居宅介護支援事業所:要介護者のケアプランを作成する介護支援専門員が所属する事業所。 ・発達障害者支援センター:発達障害児・者とその家族への相談・支援。

POINT

・地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が設置する、高齢者の地域生活を支える総合相談・支援機関である(地域包括ケアシステムの中核)。 ・4つの基本業務:介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待防止を含む)、包括的・継続的ケアマネジメント支援。加えて要支援者の介護予防支援。 ・配置職種は保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種。 ・介護サービスを直接提供する機関ではない。がん検診は市町村、へき地医療対策は都道府県、発達障害の相談は発達障害者支援センターなどが担う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。