かかとが語る「圧」と「骨」―褥瘡の好発部位は体位で読み解く
第118回医師国家試験 E問題 第1問
国試問題にチャレンジ
褥瘡ができやすい部位はどこか。
- a.耳介
- b.手掌
- c.臍
- d.外陰部
- e.踵部
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
褥瘡は、持続的な圧迫やずれによって皮膚・皮下組織の血流が途絶え、阻血性壊死に陥った状態で、体重がかかり、かつ骨が突出している部位に好発します。仰臥位では仙骨部が最多で、踵部・後頭部・肩甲骨部・肘頭部、側臥位では大転子部・腸骨部・外果部、座位では坐骨結節部が代表的です。手掌・臍・外陰部は荷重部でも骨突出部でもなく、外陰部のただれは多くが失禁関連皮膚炎として褥瘡とは区別されます。リスク評価にはブレーデンスケール、重症度評価にはDESIGN-Rが用いられ、予防の柱は体位変換、体圧分散寝具、ずれ対策、スキンケア、栄養管理です。「圧」と「骨」という仕組みから部位を考える習慣は、病棟で患者さんの皮膚を守る実践的な視点にそのまま結びつきます。
解答・解説
正解はeです
褥瘡(いわゆる床ずれ)は、身体の一部に持続的な圧迫やずれ(剪断力)が加わり、その部分の皮膚・皮下組織の血流が低下して組織が阻血性に壊死した状態である。とくに皮下脂肪や筋肉が薄く、骨が皮膚のすぐ下に張り出している部位(骨突出部)では、体重による圧が骨と寝具などの間で狭い範囲に集中するため、褥瘡が生じやすい。 したがって本問は、「体位をとったときに体重がかかる部位で、かつ骨が突出している部位はどこか」を考えればよい。仰臥位では後頭部、肩甲骨部、肘頭部、仙骨部、踵部が圧迫を受け、なかでも仙骨部と踵部が代表的な好発部位である。選択肢のうちこの条件を満たすのは踵部である。
選択肢考察
- ×a. 耳介
耳介は側臥位をとったときに枕や寝具との間で圧迫されることがあり、長期臥床の患者、とくに頭部を自分で動かせない重症心身障害者などでは、頭部の重さや流涎による湿潤などが加わって褥瘡を生じる例もある。しかし発生頻度は仙骨部・坐骨結節部・踵部などに比べて明らかに低く、一般に「褥瘡の好発部位」として挙げられる部位ではないため、本問の解答としては適切でない。
- ×b. 手掌
臥位や座位で体重がかかる部位ではなく、持続的な圧迫やずれを受けることが少ない。また手掌は皮膚が厚く、骨突出部でもないため、褥瘡の好発部位ではない。
- ×c. 臍
臍は体幹前面の陥凹部であり、通常の仰臥位・側臥位・座位のいずれでも荷重がかからない。骨突出部でもなく、褥瘡はまず生じない。なお腹臥位では前面の骨突出部(前額部、肩峰部、肋骨部、膝部など)が圧迫を受けるが、陥凹した臍は圧が集中しにくい。
- ×d. 外陰部
外陰部は荷重部でも骨突出部でもないため、褥瘡の好発部位ではない。おむつ使用中の失禁などで皮膚が湿潤・汚染されると、失禁関連皮膚炎(IAD:incontinence-associated dermatitis)やびらんを生じることはあるが、これは圧迫による阻血性壊死である褥瘡とは区別される。
- ○e. 踵部
踵部(かかと)は仰臥位で下肢の重みが踵骨の後面という狭い範囲に集中する部位であり、皮下組織が薄く骨(踵骨)が突出しているため、持続的な圧迫とずれを受けやすい。仙骨部に次ぐ頻度の高い褥瘡好発部位であり、下肢の動脈硬化性疾患や糖尿病を合併する患者では血流が乏しくさらに生じやすい。予防として、踵を寝具から浮かせる(下腿全体をクッションで支える)などの除圧が行われる。
褥瘡の発生要因
・局所要因:持続的な圧迫、ずれ(剪断力)、摩擦、皮膚の湿潤(失禁・発汗) ・全身要因:活動性・可動性の低下(寝たきり、麻痺、脊髄損傷、鎮静下など)、知覚障害(脊髄損傷、糖尿病性神経障害など)、低栄養(低アルブミン血症)、るい痩による骨突出、浮腫、高齢など
体位別の好発部位
・仰臥位:仙骨部(最多)、踵部、後頭部、肩甲骨部、肘頭部 ・側臥位:大転子部、腸骨部、肩峰部、膝関節外側部、外果部、耳介 ・座位:坐骨結節部、尾骨部 ・腹臥位:前額部、頬部、肩峰前面、肋骨部、膝蓋部
評価と予防
発生リスクの評価にはブレーデンスケール(知覚、湿潤、活動性、可動性、栄養状態、摩擦とずれの6項目)などが用いられる。褥瘡の重症度・経過評価には日本褥瘡学会のDESIGN-R(深さ、滲出液、大きさ、炎症/感染、肉芽組織、壊死組織、ポケット)が用いられる。予防の基本は、体圧分散寝具の使用、定期的な体位変換、ベッドの頭側挙上を30度以下にとどめるなどのずれ対策、スキンケア、栄養管理である。
POINT
・褥瘡は圧迫・ずれによる阻血性壊死で、骨突出部かつ荷重部に好発する ・最多は仙骨部、次いで踵部・大転子部・坐骨結節部など ・仰臥位:仙骨部・踵部・後頭部・肩甲骨部・肘頭部/側臥位:大転子部・腸骨部・耳介など/座位:坐骨結節部 ・手掌・臍・外陰部は荷重も骨突出もなく、好発部位ではない
