家族がいても要介護度は変わらない―要介護認定の一次判定が見ているもの
第117回医師国家試験 C問題 第22問
国試問題にチャレンジ
介護保険の要介護認定の一次判定で調査する項目でないのはどれか。
- a.家族構成
- b.生活機能
- c.認知機能
- d.社会的行動
- e.基本動作機能
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
要介護認定は、申請後の認定調査と主治医意見書をもとにコンピュータで一次判定を行い、介護認定審査会の二次判定を経て市町村が認定するしくみです。一次判定の基本調査は、身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応の5群と、過去14日間の特別な医療から構成されます。要介護度は本人の心身状態に基づく「介護の手間」で決まり、「介護の社会化」という理念から家族構成や介護者の有無は判定に用いられません(概況調査の家族状況はケアプランの参考情報にとどまります)。第2号被保険者は16の特定疾病による場合に限られることも併せて覚えておきましょう。主治医意見書は医師が必ず関わる書類であり、制度の流れを理解しておくことは臨床現場で役に立ちます。
解答・解説
正解はaです
テーマ
介護保険のサービスを利用するには、市町村(特別区を含む)に申請して要介護認定(要支援認定を含む)を受ける必要がある。認定は次の流れで行われる。 1. 申請:本人・家族、または地域包括支援センターや居宅介護支援事業者などが代行して市町村に申請する。 2. 認定調査:市町村職員(または市町村から委託を受けた介護支援専門員〈ケアマネジャー〉など)が自宅や施設を訪問し、全国共通の認定調査票を用いて心身の状況を調査する。 3. 主治医意見書:市町村が申請者の主治医に作成を依頼する。 4. 一次判定:認定調査の結果(と主治医意見書の一部)をコンピュータに入力し、介護に要する手間を時間に換算した「要介護認定等基準時間」を推計して、要介護度の一次判定を行う。 5. 二次判定:保健・医療・福祉の学識経験者で構成される介護認定審査会が、一次判定結果、認定調査の特記事項、主治医意見書をもとに審査・判定する。 6. 認定・通知:市町村が要支援1・2、要介護1〜5、非該当(自立)のいずれかを認定し、申請者に通知する。
正解を導く考え方
一次判定で用いる認定調査の基本調査項目は、本人の心身の状態と介護の必要性(介護の手間)を把握するためのもので、次の5つの群と「特別な医療」から構成される。 ・第1群:身体機能・起居動作(選択肢の「基本動作機能」に相当) ・第2群:生活機能 ・第3群:認知機能 ・第4群:精神・行動障害 ・第5群:社会生活への適応(選択肢の「社会的行動」に相当) ・特別な医療:過去14日間に受けた医療 要介護度は本人の状態に基づいて判定されるものであり、同居家族の有無や家族構成によって変わるものではない。したがって家族構成は一次判定の調査項目に含まれない。
選択肢考察
- ○a. 家族構成
一次判定の調査項目ではない。要介護認定は、本人の心身の状態からどれだけの介護の手間が必要かを客観的に評価するしくみであり、介護してくれる家族がいるかどうかで要介護度が変わることはない。介護保険制度は、家族による介護に依存していた従来のあり方から、社会全体で介護を支える(介護の社会化)ことを理念として創設されたため、家族の状況を要介護度の判定に反映させない。なお、認定調査票の概況調査欄には家族状況や住環境などを記入する欄があるが、これはサービス計画の参考情報であり、一次判定のコンピュータ判定には用いられない。
- ×b. 生活機能
一次判定の調査項目である(第2群)。移乗、移動、嚥下、食事摂取、排尿、排便、口腔清潔、洗顔、整髪、上衣の着脱、ズボン等の着脱、外出頻度などを含み、日常生活動作がどの程度介助を要するか(介助されていない、見守り等、一部介助、全介助など)で評価する。
- ×c. 認知機能
一次判定の調査項目である(第3群)。意思の伝達、毎日の日課の理解、生年月日や年齢を言えるか、短期記憶、自分の名前を言えるか、今の季節の理解、場所の理解、常時の徘徊、外出すると戻れない、などを含み、「できる・できない」「ある・ない」などで評価する。
- ×d. 社会的行動
一次判定の調査項目である(第5群「社会生活への適応」に相当)。薬の内服、金銭の管理、日常の意思決定、集団への不適応、買い物、簡単な調理などを含み、介助の程度などで評価する。なお、これとは別に第4群「精神・行動障害」として、被害的になる、作話、昼夜逆転、大声を出す、介護に抵抗するなどの行動の有無・頻度も調査される。
- ×e. 基本動作機能
一次判定の調査項目である(第1群「身体機能・起居動作」に相当)。麻痺や関節拘縮の有無、寝返り、起き上がり、座位保持、両足での立位保持、歩行、立ち上がり、片足での立位、洗身、つめ切り、視力、聴力などを含み、「できる」「何かにつかまればできる」「できない」などで評価する。
介護保険の被保険者
・第1号被保険者:65歳以上。原因を問わず、要介護・要支援状態と認定されればサービスを利用できる。 ・第2号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者。加齢に伴う16の特定疾病が原因で要介護・要支援状態となった場合に限りサービスを利用できる。
特定疾病(16疾病)
がん(医師が回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの、いわゆる末期がん)、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉、後縦靱帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびParkinson病(Parkinson病関連疾患)、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症。
特別な医療(過去14日間)
点滴の管理、中心静脈栄養、透析、ストーマ(人工肛門)の処置、酸素療法、レスピレーター(人工呼吸器)、気管切開の処置、疼痛の看護、経管栄養、モニター測定、褥瘡の処置、カテーテル(尿道カテーテル等)の12項目があり、医療的な処置に伴う介護の手間として一次判定に反映される。
主治医意見書
傷病名、症状の安定性、特別な医療、心身の状態(障害高齢者の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度、認知症の中核症状・周辺症状など)、生活機能とサービスに関する意見などを記載する。認知症高齢者の日常生活自立度などは一次判定にも用いられ、全体は二次判定の重要な資料となる。
POINT
・要介護認定の流れ:申請 → 認定調査+主治医意見書 → 一次判定(コンピュータ) → 二次判定(介護認定審査会) → 市町村が認定。 ・一次判定の調査項目:身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応の5群と、過去14日間の特別な医療。 ・要介護度は本人の心身状態に基づく「介護の手間」で決まり、家族構成や介護者の有無には左右されない。 ・第2号被保険者(40〜64歳)は16の特定疾病によるものに限り給付対象。
