StudyMed医師国家試験

5つの数字から2つを選べ―1秒率の計算は「定義式」が9割

第115回医師国家試験 F問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第115回 F問題 第7問

呼吸機能検査を行ったところ,肺活量4,200mL,1秒量3,200mL,努力性肺活量4,000mL,予測肺活量3,900mL,予測1秒量3,000mLであった。  1秒率(FEV1%)を求めよ。  ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第1位を四捨五入すること。

  1. a.70
  2. b.71
  3. c.80
  4. d.82
  5. e.107

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はスパイロメトリーの数値から1秒率を計算する問題だ。数字が5つも並んでいるけれど、実際に使うのは2つだけ。どれを分子に、どれを分母に置くかを正しく選べるかがポイントになる。まず、1秒率の定義を言えるかな。
医学生医学生
1秒量を肺活量で割って100をかける……でしたっけ。生理学の講義でそう習った気がします。
ドクタードクター
惜しい、そこがまさにこの問題の落とし穴なんだ。国家試験で単に「1秒率」と言った場合、分母は努力性肺活量、つまり最大吸気位から一気に速く強く吐き出したときの呼出量を使う。1秒量はその努力呼出の最初の1秒間に出た量だから、同じ一回の努力呼気の中での比をとるわけだね。
医学生医学生
肺活量と努力性肺活量って、そもそも何が違うんですか。
ドクタードクター
肺活量はゆっくり最後まで吐き出したときの量、努力性肺活量は勢いよく吐き出したときの量だ。健常者ではほぼ同じになるけれど、閉塞性障害では強く吐くと呼気時に気道がつぶれやすく、努力性肺活量のほうが小さくなりやすい。ちなみに肺活量を分母にしたものはTiffeneauの1秒率と呼ばれて区別されるんだ。
医学生医学生
じゃあ1秒量3,200を努力性肺活量4,000で割って、0.8。100をかけて80ですね。割り切れるので四捨五入もいりません。
ドクタードクター
正解。1秒率は80%だ。では、ほかの数字がどうやって作られているかも見ておこう。70という数字には見覚えがあるよね。
医学生医学生
閉塞性換気障害のカットオフですね。70%未満で閉塞性。基準値をそのまま答えに置いたひっかけでしょうか。
ドクタードクター
そう考えられる。基準値と計算結果を混同しないことだね。71は、予測1秒量を実測の肺活量で割ると出てくる数字で、予測値と実測値を取り違えたうえに分母も肺活量にしている。82は実測の1秒量を予測肺活量で割った値だ。1秒率はあくまで実測値同士の比だから、予測値は使わない。
医学生医学生
107は1秒量を予測1秒量で割った値ですよね。これは%1秒量という別の指標だと思います。
ドクタードクター
その通り。%1秒量は、年齢・性別・身長から計算した予測値に対して実測の1秒量が何%あるかを示すもので、COPDの病期分類に使われる。1秒率と名前が似ているから、混同しやすいんだ。
医学生医学生
CBTの勉強のときも、1秒率と%1秒量がごっちゃになって何度も間違えました。
ドクタードクター
よくあることだよ。整理すると、1秒率が70%未満なら閉塞性、%肺活量が80%未満なら拘束性、両方満たせば混合性だ。この症例で%肺活量を計算するとどうなる?
医学生医学生
4,200を3,900で割って約108%。80%以上なので拘束性もなし。1秒率も80%だから、正常な呼吸機能ということですね。
ドクタードクター
よくできました。予測値は%肺活量や%1秒量を出すための材料だった、というわけだ。臨床では、COPDの診断には気管支拡張薬吸入後の1秒率70%未満が前提になる。そのうえで%1秒量が80%以上ならⅠ期、50〜80%未満でⅡ期、30〜50%未満でⅢ期、30%未満でⅣ期と重症度を分ける。
医学生医学生
呼吸器内科の実習で、喘息の患者さんに吸入前後でスパイロを取っていたのはそのためだったんですね。
ドクタードクター
そう、可逆性の評価にも使うし、COPDの診断を確かめるためでもある。もう一つ大事なのは、スパイロは患者さんの努力に左右される検査だということ。十分に吸い込んで一気に吐き切ってもらえないと、数値は正しく出ない。検査技師さんが大きな声で励ましているのはそのためなんだ。
医学生医学生
OSCEの医療面接みたいに、患者さんとのコミュニケーションが結果を左右するんですね。計算問題でも、まず定義式を思い出してから数字を選ぶようにします。

まとめ

1秒率(FEV1%)は1秒量を努力性肺活量で割って100をかけた値で、本問では3,200÷4,000×100=80%となり、基準の70%以上なので閉塞性換気障害はありません。誤答の数値は、閉塞性障害のカットオフ値そのもの(70)、分母に肺活量や予測値を使った計算(71、82)、別の指標である%1秒量(107)に対応しています。%肺活量(実測肺活量÷予測肺活量)が80%未満なら拘束性、1秒率70%未満なら閉塞性と判定し、%1秒量はCOPDの病期分類に用います。計算問題には不要な数値が混ぜられているため、まず定義式を確認してから必要な値を選ぶ習慣が、試験でも臨床での検査結果の解釈でも役に立ちます。

解答・解説

正解はcです

問われていること

呼吸機能検査の数値から1秒率(FEV1%)を算出する問題である。問題文には肺活量、1秒量、努力性肺活量、予測肺活量、予測1秒量と5つの値が並んでいるが、1秒率の計算に使うのはこのうち2つだけである。どの値を分子・分母に置くかを正しく選べるかが問われている。

定義

1秒率(FEV1%)は、努力性肺活量(FVC:forced vital capacity)のうち最初の1秒間に吐き出せた量(1秒量、FEV1:forced expiratory volume in 1 second)が占める割合である。  1秒率(%)= 1秒量 ÷ 努力性肺活量 × 100

計算

1秒量 3,200 mL、努力性肺活量 4,000 mL を代入すると、  3,200 ÷ 4,000 × 100 = 0.8 × 100 = 80(%) 割り切れるので四捨五入は不要で、答えは80である。

解釈

1秒率の基準は70%以上であり、80%は正常範囲である。参考までに、%肺活量(%VC)= 実測肺活量 ÷ 予測肺活量 × 100 = 4,200 ÷ 3,900 × 100 ≒ 108%で80%以上、%1秒量 = 3,200 ÷ 3,000 × 100 ≒ 107%であり、本例は閉塞性障害も拘束性障害もない正常な呼吸機能と判断できる。

誤答の生まれ方

誤った選択肢は、分母に(努力性肺活量ではなく)肺活量や予測値を用いたり、別の指標(%1秒量など)を計算したりすると得られる数値になっている。計算に入る前に、まず定義式を正確に思い出すことが重要である。

選択肢考察

  1. ×a.  70

    70は閉塞性換気障害を判定する1秒率のカットオフ値(70%未満で閉塞性障害)であり、本問の計算結果ではない。基準値と算出値を混同しないこと。本例の1秒率は3,200 ÷ 4,000 × 100 = 80%である。

  2. ×b.  71

    予測1秒量3,000 mLを実測肺活量4,200 mLで割ると 3,000 ÷ 4,200 × 100 ≒ 71.4 となり、四捨五入で71になる。予測値と実測値を取り違え、さらに分母に肺活量を用いた誤りである。1秒率は実測の1秒量を実測の努力性肺活量で割って求める。

  3. ○c.  80

    1秒率は1秒量 ÷ 努力性肺活量 × 100 で求める。3,200 ÷ 4,000 × 100 = 80(%)であり、これが正解である。70%以上なので閉塞性換気障害はないと判定される。

  4. ×d.  82

    1秒量3,200 mLを予測肺活量3,900 mLで割ると 3,200 ÷ 3,900 × 100 ≒ 82.1 となり、82が得られる。分母に予測値を用いており誤りである。1秒率は実測値同士(1秒量と努力性肺活量)の比である。

  5. ×e.  107

    1秒量3,200 mLを予測1秒量3,000 mLで割ると 3,200 ÷ 3,000 × 100 ≒ 106.7 となり、四捨五入で107になる。これは%1秒量(%FEV1:1秒量の予測値に対する割合)であり、1秒率とは別の指標である。%1秒量はCOPDの病期分類(気流閉塞の重症度)に用いられる。

スパイロメトリーの主な指標

・肺活量(VC:vital capacity):最大吸気位から最大呼気位までゆっくり吐き出したときの最大の呼出量。 ・努力性肺活量(FVC):最大吸気位から一気にできるだけ速く強く吐き出したときの最大呼出量。閉塞性障害では呼気時に気道が虚脱しやすく、FVCはVCより小さくなりやすい。 ・1秒量(FEV1):FVCを測定する際、呼出開始から最初の1秒間に吐き出した量。 ・1秒率(FEV1%):FEV1 ÷ FVC × 100(Gaenslerの1秒率)。なお、FEV1 ÷ VC × 100 をTiffeneauの1秒率と呼ぶが、わが国の国家試験で単に「1秒率」という場合はFVCを分母とするのが一般的である。 ・%肺活量(%VC):実測VC ÷ 予測VC × 100。予測値は年齢・性別・身長から算出する。 ・%1秒量(%FEV1):実測FEV1 ÷ 予測FEV1 × 100。

換気障害の分類

・閉塞性換気障害:1秒率 < 70%(例:COPD、気管支喘息) ・拘束性換気障害:%肺活量 < 80%(例:間質性肺炎、肺線維症、胸郭変形、神経筋疾患) ・混合性換気障害:両方を満たす

COPDの病期分類(気管支拡張薬吸入後の1秒率 < 70%が前提)

%1秒量で分類する:Ⅰ期(軽度)≧80%、Ⅱ期(中等度)50〜80%未満、Ⅲ期(高度)30〜50%未満、Ⅳ期(極めて高度)< 30%。

POINT

・1秒率(FEV1%)= 1秒量 ÷ 努力性肺活量 × 100(実測値同士の比) ・1秒率 < 70% → 閉塞性換気障害、%肺活量 < 80% → 拘束性換気障害 ・%1秒量(実測FEV1 ÷ 予測FEV1)はCOPDの重症度(病期)分類に使う別の指標 ・計算問題では不要な数値が混ぜてあるため、定義式を確認してから値を選ぶ

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。