「詳しく教えてください」の力―開放型質問を見抜く医療面接の基本
第115回医師国家試験 B問題 第34問
国試問題にチャレンジ
4歳の男児。1週間持続する咳嗽を主訴に母親に連れられて来院した。母親と診察医との会話を示す。 医師:「今日はどうされましたか」 母親:「咳が1週間続いているのできました」 医師:「①症状について詳しく教えてください」 母親:「咳は夜寝ているときと明け方が多いです。日中はあまり出ていません。咳とともに胸のあたりがゼーゼーいっている感じがします」 医師:「②熱や鼻汁はありますか」 母親:「ありません」 医師:「③周囲に同じような症状の人はいますか」 母親:「いません」 医師:「④食べ物や薬のアレルギーはありますか」 母親:「卵アレルギーがあります」 医師:「⑤ご両親にアレルギーはありますか」 母親:「私がアトピー性皮膚炎です」 医師:「それでは診察しましょう」 下線部の質問の中で開放型質問はどれか。
- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
開放型質問は「どうされましたか」「詳しく教えてください」のように答え方を限定せず、患者や家族が自分の言葉で自由に語れる質問であり、閉鎖型質問は「熱はありますか」のように「はい/いいえ」や短い語で答えることを想定した質問です。分類は実際の返答の長さではなく質問がどのような答え方を想定しているかで判断するため、アレルギーの有無を問う質問に具体的な返答があっても閉鎖型に分類されます。医療面接は開放型質問で始めて情報を幅広く集め、焦点を当てた質問や閉鎖型質問で仮説を絞り込むのが基本で、誘導的質問や重複質問は避けます。本問でも、開放型質問から夜間・早朝の咳や喘鳴という小児気管支喘息を疑わせる情報が引き出されており、質問法の使い分けが診断推論の質を左右することがわかります。
解答・解説
正解はaです
問われていること
医療面接における質問の形式を見分ける問題である。下線部①〜⑤のうち、開放型質問(open-ended question)に当たるものを選ぶ。
開放型質問と閉鎖型質問の見分け方
・開放型質問:答え方が限定されず、患者(ここでは母親)が自分の言葉で自由に語れる質問。「どうされましたか」「詳しく教えてください」「どのような感じですか」など。 ・閉鎖型質問(closed question):「はい/いいえ」や単語・数値など、短い答えで済むことを想定した質問。「熱はありますか」「何度でしたか」など。 判定は「実際の答えの長さ」ではなく「質問がどのような答え方を想定しているか」で行う。④や⑤では母親が具体的な内容を付け加えて答えているが、質問自体は「ありますか」という有無を問う形であり、閉鎖型質問に分類される。
面接の流れとしての評価
本例の医師は、まず「今日はどうされましたか」で受診理由を自由に話してもらい、続いて①で症状を詳しく語ってもらっている。そこで得られた「夜間・明け方に多い咳」「胸のゼーゼー」という情報から、②〜⑤の閉鎖型質問で感染症状の有無、周囲の流行、本人のアレルギー歴、家族のアレルギー歴を効率よく確認している。開放型質問から始めて徐々に閉鎖型質問で絞り込む、典型的で望ましい面接の進め方である。
参考:臨床的な推論
4歳児の1週間続く咳嗽で、夜間・明け方に多く、喘鳴を伴い、発熱・鼻汁はなく、周囲に同様の症状の人はいない。本人に卵アレルギー、母親にアトピー性皮膚炎があり、アレルギー素因が濃厚である。かぜ症候群や流行性の気道感染症よりも、小児気管支喘息が強く疑われる経過である(本問では診断は問われていない)。
選択肢考察
- ○a. ①
「症状について詳しく教えてください」は、答えの範囲を限定せず、母親が自分の言葉で症状を自由に説明できるように促す質問であり、開放型質問である。実際に母親は、咳が出る時間帯や喘鳴の様子といった、医師が個別に尋ねていなかった重要な情報まで語っている。開放型質問は、患者の視点から情報を幅広く得られ、医師の先入観による聞き漏らしを防げる利点がある。
- ×b. ②
「熱や鼻汁はありますか」は、発熱・鼻汁という特定の症状の有無を尋ねており、「あります」「ありません」で答えることを想定した閉鎖型質問である。かぜ症候群などの感染症を鑑別するための確認として有用である。
- ×c. ③
「周囲に同じような症状の人はいますか」は、「います」「いません」で答えられる閉鎖型質問である。家庭や保育園などでの流行の有無を確かめ、感染症の可能性を評価する目的がある。
- ×d. ④
「食べ物や薬のアレルギーはありますか」は、アレルギーの有無を尋ねる閉鎖型質問である。母親は「卵アレルギーがあります」と具体的に答えているが、質問の形式は有無を問うものであり、短い答えを想定している点で閉鎖型に分類される。
- ×e. ⑤
「ご両親にアレルギーはありますか」は、家族歴としてのアレルギーの有無を尋ねる閉鎖型質問である。母親は「私がアトピー性皮膚炎です」と内容を補って答えているが、質問の形式としては「ある/ない」の回答を想定している。
医療面接で用いる主な質問法
・開放型質問(open-ended question):自由な語りを促す。例「今日はどうされましたか」「その痛みについてもう少しお話しください」。患者の解釈や心配事も含め多くの情報が得られるが、時間がかかり、話が拡散しやすい。 ・焦点を当てた質問(focused question):テーマを絞りつつ自由に答えてもらう。例「痛みはどのような感じですか」。開放型の一種として扱われることが多い。 ・閉鎖型質問(closed question):はい/いいえや単語で答える質問。例「熱はありますか」「何日前からですか」。短時間で特定の情報を確認できるが、得られる情報は質問した範囲に限られ、多用すると尋問的になる。 ・多項目(選択式)質問:例「痛みはズキズキしますか、それとも締め付けられる感じですか」。選択肢が答えを誘導するおそれがある。 ・中立的質問:氏名、住所、生年月日など、事実を確認する質問。 ・避けるべき質問:誘導的質問(「痛みは楽になりましたよね」など医師の期待する答えを示す質問)、一度に複数のことを尋ねる重複質問。
面接の基本的な進め方
開放型質問で始めて患者に十分語ってもらい、傾聴・促し・要約・共感などの技法を用いながら、必要に応じて焦点を当てた質問、閉鎖型質問で情報を絞り込む(「開放型から閉鎖型へ」の流れ)。
小児気管支喘息を疑う病歴の特徴
夜間・早朝に悪化する咳嗽、反復する喘鳴、運動や冷気・感冒による誘発、本人のアトピー素因(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎)、家族のアレルギー疾患歴など。
POINT
・開放型質問:患者が自分の言葉で自由に答えられる質問(例「どうされましたか」「詳しく教えてください」)。 ・閉鎖型質問:はい/いいえや短い語で答える質問(例「熱はありますか」)。 ・分類は実際の返答の長さではなく、質問がどのような答え方を想定しているかで判断する。 ・医療面接は開放型質問から始め、閉鎖型質問で絞り込むのが基本。誘導的質問は避ける。
