StudyMed医師国家試験

指示書がつなぐ病院と家―訪問看護の仕組みを制度から読み解く

第114回医師国家試験 F問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第114回 F問題 第14問

訪問看護について正しいのはどれか。

  1. a.事業者は医療法人に限られる。
  2. b.医師の指示を受けて業務を行う。
  3. c.人工呼吸器の在宅管理は業務ではない。
  4. d.介護保険による訪問回数は,原則週1回までである。
  5. e.介護保険が適用される場合,訪問看護の自己負担は3割である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は在宅医療の柱である訪問看護について、制度面の基本を問う問題だ。着眼点は、誰が提供するのか、医師とどう連携するのか、どこまでの処置ができるのか、そして保険制度上の回数や自己負担はどうなっているのか、の4つ。ひとつずつ整理していこう。
医学生医学生
在宅医療の講義はあったんですが、介護保険と医療保険の話が入り組んでいて苦手意識があります。
ドクタードクター
大丈夫、骨組みから押さえれば難しくないよ。まず訪問看護とは、看護師や保健師、理学療法士などが利用者の自宅を訪問して、療養上の世話と診療の補助を行うサービスだ。ここで大事なのが、看護師の業務のうち診療の補助は医師の指示のもとで行うと保健師助産師看護師法で定められていること。
医学生医学生
だから訪問看護も、医師の指示を受けて行うということですね。
ドクタードクター
その通り、それが正解だ。主治医が交付する訪問看護指示書に基づいて行われる。指示書には病名や病状、必要な処置、留意事項が書かれていて、有効期間は最長6か月。訪問看護側は計画書と報告書を主治医に提出して、双方向で連携していくんだ。
医学生医学生
地域医療の実習で診療所に行ったとき、先生が指示書を書いているのを見ました。あれが訪問看護の出発点だったんですね。
ドクタードクター
いい経験をしているね。急性増悪や退院直後などで頻回の訪問が必要なときは、特別訪問看護指示書を出す。有効期間は最長14日で、この間は医療保険で毎日の訪問も可能になる。では事業者は医療法人に限られると思うかな。
医学生医学生
医療行為を含むので、医療法人でないといけない気がします。
ドクタードクター
そう考えがちだけれど、実際は違うんだ。訪問看護ステーションの開設には法人格が必要だが、医療法人に限られない。社会福祉法人、地方公共団体、看護協会などの一般社団法人、NPO法人、株式会社も開設できる。今は営利法人が運営するステーションが多いくらいだよ。病院や診療所自体が訪問看護を行うこともできる。
医学生医学生
株式会社でもいいとは意外でした。では人工呼吸器のような高度な管理は、さすがに在宅の看護師さんの業務外でしょうか。
ドクタードクター
いや、人工呼吸器の在宅管理は訪問看護の重要な業務だ。医師の指示のもと、作動確認や回路の管理、気管切開部のケア、喀痰吸引、呼吸状態の観察を行い、家族への指導も担う。ALSなどの神経難病の方では訪問診療と訪問看護の組合せが欠かせない。ほかにも点滴や中心静脈栄養の管理、褥瘡処置、カテーテル管理、緩和ケアや看取りまで幅広く担っているよ。
医学生医学生
神経内科の実習で、在宅で人工呼吸器をつけているALSの患者さんの話を聞きました。訪問看護が支えていたんですね。次に回数ですが、介護保険だと週1回までと制限があるんでしょうか。
ドクタードクター
介護保険の訪問看護には、週あたりの回数の上限はない。ケアマネジャーが作るケアプランに沿って必要な回数を設定できる。実際の制約になるのは、要介護度ごとに決まっている区分支給限度基準額、つまり1か月に保険で使える上限額のほうなんだ。
医学生医学生
回数ではなく金額で枠がある、ということですね。医療保険のほうは制限がないんですか。
ドクタードクター
医療保険は逆に原則週3日までという制限がある。ただし厚生労働大臣が定める疾病等の患者や、特別訪問看護指示書が出ている期間は週4日以上、1日複数回の訪問も認められる。どちらにしても週1回という制限は存在しないよ。
医学生医学生
自己負担はどうでしょう。現役世代の医療保険のイメージで3割かと思いました。
ドクタードクター
介護保険サービスの自己負担は原則1割だ。一定以上の所得がある65歳以上の人は2割、特に所得の高い人は3割になる。3割はあくまで高所得者の例外なんだ。高額になった場合は高額介護サービス費で上限を超えた分が払い戻される仕組みもある。
医学生医学生
介護保険は原則1割、医療保険は年齢や所得で1〜3割、と分けて覚えます。でも要介護認定を受けている人は全部介護保険になるんですか。
ドクタードクター
原則は介護保険が優先だけれど、例外がある。末期の悪性腫瘍、ALSやパーキンソン病関連疾患などの厚生労働大臣が定める疾病等、人工呼吸器を使用している状態、特別訪問看護指示書の期間、精神科訪問看護などは医療保険で行われる。医療依存度が高い人ほど医療保険で手厚く訪問できるように作られている、と考えると覚えやすいよ。
医学生医学生
将来、退院調整や在宅の患者さんを担当したら、自分が指示書を書く立場になるんですね。
ドクタードクター
その通り。病棟の主治医として退院時に訪問看護指示書を書くことは珍しくない。在宅医療は訪問診療、訪問看護、訪問薬剤管理指導、訪問リハビリ、訪問介護など多職種のチームで成り立っている。医師はその起点として、病状や必要な処置を正確に指示書へ書き、報告をきちんと受け止めることが求められるんだ。

まとめ

訪問看護は看護師などが自宅を訪問して療養上の世話と診療の補助を行うサービスで、主治医が交付する訪問看護指示書(有効期間最長6か月)に基づいて行われ、急性増悪時などには最長14日の特別訪問看護指示書が用いられます。事業者は医療法人に限られず、株式会社やNPO法人も開設でき、人工呼吸器管理や点滴、褥瘡処置、看取りなど高度な医療処置も業務に含まれます。介護保険の訪問看護には回数の上限がなく、区分支給限度基準額の範囲でケアプランに沿って利用し、自己負担は原則1割(所得により2割・3割)です。要介護認定者は原則介護保険が優先されますが、末期の悪性腫瘍やALSなど厚生労働大臣が定める疾病等や特別指示期間は医療保険で、原則週3日の制限を超えた訪問が可能です。医師は指示書を通じて在宅チームの起点となるため、制度の仕組みを理解しておくことが患者の在宅療養を支える第一歩になります。

解答・解説

正解はbです

テーマ

在宅医療の柱の一つである訪問看護について、事業者、医師の指示との関係、業務内容、保険制度上の扱い(回数・自己負担)を問う問題である。

訪問看護の要点

訪問看護は、看護師・保健師・准看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者の居宅を訪問し、療養上の世話と診療の補助を行うサービスである。提供するのは訪問看護ステーションか、訪問看護を行う病院・診療所である。看護師の業務のうち診療の補助は医師の指示のもとで行うものと保健師助産師看護師法で定められているため、訪問看護は主治医が交付する訪問看護指示書に基づいて行われる。 費用は介護保険または医療保険から給付される。要介護・要支援の認定を受けた人は原則として介護保険が優先されるが、末期の悪性腫瘍や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの厚生労働大臣が定める疾病等、急性増悪時に特別訪問看護指示書が出た場合、精神科訪問看護の場合などは医療保険で行われる。

正解を導く考え方

事業者は医療法人に限られず、人工呼吸器管理などの高度な医療処置も業務に含まれる。介護保険では訪問回数の上限は定められておらず、自己負担は原則1割である。したがって、医師の指示を受けて業務を行うという記述が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  事業者は医療法人に限られる。

    訪問看護ステーションを開設するには法人格が必要だが、医療法人に限られない。社会福祉法人、地方公共団体、医師会・看護協会などの一般社団法人、NPO法人、株式会社などの営利法人も開設できる。規制緩和により異業種からの参入も進み、現在は営利法人の運営するステーションが多くを占める。指定を受けるには、看護職員を常勤換算で2.5人以上配置し、管理者を常勤の保健師または看護師とするなどの基準を満たす必要がある。また、病院・診療所も訪問看護を提供できる。

  2. ○b.  医師の指示を受けて業務を行う。

    訪問看護は、主治医が作成・交付する訪問看護指示書に基づいて行われる。指示書には病名、病状、必要な処置、留意事項などが記載され、有効期間は最長6か月で、通常は1~6か月ごとに更新される。急性増悪や退院直後などで頻回の訪問が必要な場合には、主治医が特別訪問看護指示書(有効期間は最長14日)を交付し、医療保険で毎日の訪問が可能になる。訪問看護側は訪問看護計画書と報告書を主治医に提出し、医師と連携して療養を支える。

  3. ×c.  人工呼吸器の在宅管理は業務ではない。

    人工呼吸器の在宅管理は訪問看護の重要な業務である。医師の指示のもと、人工呼吸器の作動確認や回路の管理、気管切開部のケア、喀痰吸引、呼吸状態の観察などを行い、家族への指導も担う。ALSなどの神経難病で在宅人工呼吸療法(侵襲的・非侵襲的)を行う患者では、訪問診療と訪問看護の組合せが欠かせず、1日に複数回の訪問や複数の訪問看護ステーションの関与が必要になることもある。このほか、点滴・中心静脈栄養の管理、褥瘡処置、カテーテル管理、緩和ケア・看取り、リハビリテーションなども業務に含まれる。

  4. ×d.  介護保険による訪問回数は,原則週1回までである。

    介護保険による訪問看護には、週あたりの回数の上限は定められていない。ケアマネジャー(介護支援専門員)が作成するケアプランに沿って必要な回数を設定でき、実際の制約となるのは要介護度ごとに決められた区分支給限度基準額(保険で使える1か月あたりの上限額)である。一方、医療保険による訪問看護は原則として週3日までと制限があり、厚生労働大臣が定める疾病等の患者や特別訪問看護指示書が出ている期間は週4日以上・1日複数回の訪問が認められる。週1回という制限はどちらの保険にも存在しない。

  5. ×e.  介護保険が適用される場合,訪問看護の自己負担は3割である。

    介護保険サービスの自己負担は原則1割である。一定以上の所得がある第1号被保険者(65歳以上)は2割、特に所得の高い人は3割となる。3割は高所得者に限った例外であり、一律に3割ではない。また、自己負担が高額になった場合には高額介護サービス費制度により所得に応じた上限額を超えた分が払い戻される。

介護保険と医療保険の訪問看護の比較

対象:介護保険は要介護・要支援認定者。医療保険はそれ以外の人(40歳未満、認定を受けていない人など)と、認定者のうち厚生労働大臣が定める疾病等・特別訪問看護指示書の期間・精神科訪問看護の人。 回数:介護保険は上限なし(区分支給限度基準額内でケアプランに基づく)。医療保険は原則週3日まで、特定の場合は週4日以上・1日複数回が可能。 自己負担:介護保険は原則1割(所得により2割・3割)。医療保険は年齢・所得に応じて1~3割。 調整役:介護保険はケアマネジャーがケアプランで調整する。

厚生労働大臣が定める疾病等の例

末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、ALS、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(一定以上の重症度)、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態などである。これらの患者は要介護認定を受けていても医療保険で訪問看護を受ける。

在宅医療を支える主な職種・サービス

訪問診療(医師が計画的に定期訪問)と往診(患者の求めに応じた臨時の訪問)、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問薬剤管理指導、訪問歯科診療、訪問介護(ホームヘルパー)などがあり、多職種が連携して在宅療養を支える。

POINT

・訪問看護は主治医の訪問看護指示書(有効期間最長6か月)に基づいて行う。特別訪問看護指示書は最長14日。 ・事業者は法人であればよく、医療法人に限られない(株式会社やNPO法人も可)。 ・人工呼吸器管理、点滴、褥瘡処置、看取りなども業務に含まれる。 ・介護保険の訪問看護に回数の上限はない。医療保険は原則週3日まで。 ・介護保険の自己負担は原則1割(所得により2割・3割)。 ・要介護認定者は原則介護保険優先だが、厚生労働大臣が定める疾病等や特別指示期間は医療保険。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。