麻痺した手足に意識は宿らない―片麻痺患者のGCSは「最良の反応」で採る
第114回医師国家試験 E問題 第31問
国試問題にチャレンジ
48歳の男性。意識障害と右片麻痺のため救急車で搬入された。自発開眼はなく,呼びかけでも開眼しないが,痛み刺激で開眼する。痛み刺激でうなり声をあげるが,意味のある発語はみられない。痛み刺激で右上下肢は全く動きがみられないが,左上下肢は払いのける動作を示す。 Glasgow Coma Scaleによる評価の合計点として正しいのはどれか。
- a.3点
- b.6点
- c.9点
- d.12点
- e.15点
対話形式の解説
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医学生まとめ
GCSは開眼(E1〜4)、言語(V1〜5)、運動(M1〜6)の合計3〜15点で意識レベルを評価し、本例は痛み刺激で開眼(E2)、うなり声のみ(V2)、健側で痛み刺激を払いのける(M5)ため9点となります。運動項目は四肢のうち最良の反応で採点するのがルールであり、片麻痺の麻痺側が動かないのは局所の神経障害によるもので、意識レベルとは区別して巣症状として記録します。逃避(M4)と払いのけ(M5)、異常屈曲(M3)と伸展(M2)、不適当な発語(V3)と理解不能な音声(V2)の区別は特に間違えやすいポイントです。GCS 8点以下は重症で気道確保を考慮する目安となり、内訳を併記して経時的に追うことが急変の早期発見につながります。脳卒中や頭部外傷の初期対応で正確に意識レベルを共有する力は、どの診療科に進んでも必要な基本技能です。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
48歳男性が意識障害と右片麻痺で救急搬送されている。突然の片麻痺を伴う意識障害であり、左大脳半球の脳卒中(脳出血や脳梗塞)がまず疑われる状況である。本問で問われているのは診断そのものではなく、Glasgow Coma Scale(GCS)による意識レベルの採点である。
GCSの3項目を一つずつ評価する
・開眼(E: eye opening):自発的な開眼はなく、呼びかけにも反応しないが、痛み刺激を加えると開眼する。これは「痛み刺激で開眼」に当たり、E2である。 ・言語反応(V: verbal response):痛み刺激に対してうなり声を出すが、意味のある言葉にはならない。これは「理解不能な音声(発音のみ)」に当たり、V2である。 ・運動反応(M: motor response):右上下肢は麻痺のため全く動かないが、左上下肢は痛み刺激の部位へ手を持っていき払いのけようとする。これは「疼痛部位を認識する(localize)」反応であり、M5である。
運動反応は「最良の反応」で採点する
GCSの運動項目では、四肢のうち最も良い反応を採用する。片麻痺のある患者では麻痺側は動かないことが多いが、それは局所の神経障害によるものであり、意識レベルを反映しているわけではない。したがって麻痺側(右)の「全く動かない=M1」ではなく、健側(左)の「払いのける=M5」を採る。
合計
E2+V2+M5=9点となる。GCSは各項目の点数を併記して「GCS 9(E2V2M5)」のように記録するのが望ましい。
選択肢考察
- ×a. 3点
3点はGCSの最低点(E1V1M1)で、痛み刺激を加えても開眼せず、声も出さず、四肢も全く動かない状態である。本例は痛み刺激で開眼し、うなり声を出し、左上下肢で払いのける動作をしているので3点にはならない。仮に麻痺側の「全く動かない」(M1)を誤って運動項目に採用したとしても、E2V2M1で合計5点となり、3点にはならない。
- ×b. 6点
E2V2までは正しいが、運動項目を麻痺側の右上下肢の反応(全く動かない=M1)で採点し、さらに誤ると6点前後の値になりうる(E2V2M1なら5点、E2V2M2なら6点)。運動反応は最も良い反応で評価するので、健側の払いのける動作(M5)を採用すべきであり、6点は誤りである。
- ○c. 9点
痛み刺激で開眼するのでE2、意味のある言葉にならないうなり声のみなのでV2、健側の左上下肢で痛み刺激を払いのける(疼痛部位に手が向かう)のでM5である。運動項目は四肢の最良反応で採点するため麻痺側は考慮しない。E2+V2+M5=9点となり、これが正しい。
- ×d. 12点
12点となるには、例えばE3V4M5(呼びかけで開眼、会話が混乱)のように、より軽い意識障害でなければならない。本例は呼びかけでは開眼せず、意味のある発語もないので、開眼・言語項目の点数を過大に見積もらなければ12点にはならない。
- ×e. 15点
15点はGCSの満点(E4V5M6)で、自発的に開眼し、見当識が保たれ、命令に従って体を動かせる意識清明の状態である。本例は明らかな意識障害があり、該当しない。
Glasgow Coma Scale(GCS)
開眼(E) ・4:自発的に開眼 ・3:呼びかけで開眼 ・2:痛み刺激で開眼 ・1:痛み刺激でも開眼しない 言語反応(V) ・5:見当識あり(時・場所・人を正しく答える) ・4:混乱した会話(見当識障害がある) ・3:不適当な発語(単語は出るが会話にならない) ・2:理解不能な音声(うめき声、うなり声のみ) ・1:発語なし 運動反応(M) ・6:命令に従う ・5:疼痛部位を認識する(痛みの部位へ手を持っていき払いのける) ・4:痛み刺激から逃避する(正常屈曲、四肢を引っ込める) ・3:異常屈曲(除皮質硬直に相当する肢位) ・2:伸展反応(除脳硬直に相当する肢位) ・1:全く動かない 合計は3〜15点で、点数が低いほど重症である。一般にGCS 8点以下は重症の意識障害とされ、気道確保(気管挿管)を検討する目安となる。気管挿管中で発語が評価できない場合はVを「T」と記載するなど、評価不能であることを明示する。
Japan Coma Scale(JCS)との比較
JCSは日本で広く用いられる評価法で、刺激なしで覚醒している(I桁:1・2・3)、刺激で覚醒する(II桁:10・20・30)、刺激しても覚醒しない(III桁:100・200・300)の3段階9区分で表す。数字が大きいほど重症であり、GCSとは向きが逆である。簡便で救急現場でも迅速に使える一方、運動反応を細かく評価できない。GCSは国際的に用いられ、開眼・言語・運動を分けて記録できるため、頭部外傷の重症度評価や経時的な変化の追跡に適している。
片麻痺患者の評価の注意
GCSの運動項目は最良の反応を採るため、片麻痺があっても健側で評価する。麻痺側の反応は意識レベルではなく巣症状(局所神経症状)として別に記録する。
POINT
・GCSは開眼(E1〜4)、言語(V1〜5)、運動(M1〜6)の合計3〜15点で評価する。 ・痛み刺激で開眼=E2、うなり声のみ=V2、痛み刺激を払いのける(疼痛部位へ手が向かう)=M5。 ・運動項目は四肢のうち最良の反応で採点し、片麻痺の麻痺側は採用しない。 ・逃避(M4)と払いのけ(M5)、異常屈曲(M3)と伸展(M2)の区別が頻出。 ・GCS 8点以下は重症で、気道確保を考慮する目安となる。
