「自宅で暮らし続けたい」をかなえる最初の扉―独居高齢者の相談先は地域包括支援センター
第114回医師国家試験 C問題 第50問
国試問題にチャレンジ
78歳の女性。糖尿病で地域基幹病院の外来に月1回通院している。本人が食事の準備や部屋の掃除などに不安を感じている。独居であり,家族は遠方に住んでいるため日常的な協力は難しい。 自宅での日常生活支援を希望している時に,本人が相談する施設として適切なのはどれか。
- a.診療所
- b.保健所
- c.特別養護老人ホーム
- d.地域包括支援センター
- e.訪問看護ステーション
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
高齢者の生活や介護に関する困りごとを最初に相談する窓口は、市町村が設置主体となる地域包括支援センターです。保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員が配置され、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントを担い、要介護認定の申請支援や訪問介護などのサービスへの橋渡しを行います。保健所は広域的・専門的な地域保健を担う行政機関、訪問看護は医師の指示による看護・医療処置、特別養護老人ホームは原則要介護3以上の入所施設であり、在宅での家事支援の相談先とは役割が異なります。家事援助は訪問介護の生活援助が担う点も押さえておきましょう。各機関の役割を区別して理解しておくことは、医師が外来で患者の生活上の困りごとに気づき、適切な支援へつなぐうえで欠かせない知識です。
解答・解説
正解はdです
状況の整理
・78歳の女性で、糖尿病のため地域基幹病院の外来に月1回通っている。医療面では定期的な通院先が確保されている。 ・困っているのは食事の準備や部屋の掃除といった家事、すなわち生活面である。医学的な治療や看護処置を求めているわけではない。 ・独居で、家族は遠方に住んでおり、日常的な手助けは期待できない。 ・施設への入所ではなく、住み慣れた自宅で暮らし続けるための支援を望んでいる。
考え方
本人が必要としているのは、家事援助などの生活支援サービス(介護保険の訪問介護における生活援助、介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービス、配食サービスなど)につながることである。こうしたサービスを利用するには、要介護・要支援認定の申請や、ケアプラン(介護サービス計画・介護予防サービス計画)の作成などの手続きが必要となる。高齢者本人やその家族が、介護・福祉・保健・医療に関する困りごとを最初に相談し、適切な制度やサービスにつないでもらう窓口として設けられているのが地域包括支援センターである。 設問は「本人が相談する施設」を問うており、サービスを直接提供する事業所や入所施設ではなく、総合的な相談窓口を選ぶことがポイントである。
選択肢考察
- ×a. 診療所
診療所は、医師または歯科医師が医業を行う場所のうち、入院用の病床をもたないもの、または19床以下のものをいう(医療法)。病気の診察・治療を提供する医療機関であり、家事に関する生活支援の相談やサービス調整を担う場ではない。本人はすでに基幹病院に通院しており、医療の提供先を新たに探しているわけでもない。なお、かかりつけ医が生活上の困りごとに気づいて地域包括支援センターへつなぐことは望ましいが、相談先そのものとしては適切でない。
- ×b. 保健所
保健所は地域保健法に基づき、都道府県、政令指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区が設置する行政機関である。感染症対策、精神保健、難病対策、食品衛生・環境衛生、医療監視など、広域的・専門的・技術的な地域保健業務を担う。個々の高齢者の家事支援や介護サービス利用の相談窓口ではない。なお、住民に身近な健康相談・健康診査・保健指導などは市町村保健センターが担当する。
- ×c. 特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは老人福祉法上の名称で、介護保険法上は介護老人福祉施設と呼ばれる。常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者が入所して、入浴・排泄・食事などの介護を受ける生活施設である。2015年度以降、新規入所は原則として要介護3以上の者に限られている。本人は自宅での生活継続を希望しており、また家事に不安がある程度で常時介護が必要な状態とは読み取れないため、相談先として適切でない。
- ○d. 地域包括支援センター
地域包括支援センターは、2005年の介護保険法改正により創設された(2006年度から設置)、高齢者の暮らしを地域で支えるための総合相談窓口である。設置主体は市町村で、社会福祉法人などに運営を委託することもできる。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)が配置され、多職種で対応する。主な業務は、(1)総合相談支援業務、(2)権利擁護業務(高齢者虐待の防止・対応、成年後見制度の利用支援など)、(3)包括的・継続的ケアマネジメント支援業務(地域のケアマネジャーへの支援など)、(4)介護予防ケアマネジメント業務であり、要支援者の介護予防支援(ケアプラン作成)も行う。本例のように、独居高齢者が家事に不安を抱え自宅での生活支援を希望する場合、総合相談支援業務として相談を受け、要介護認定の申請支援や、訪問介護(生活援助)・総合事業の訪問型サービスなどの適切なサービスへつなぐ役割を担う。
- ×e. 訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、主治医の指示書(訪問看護指示書)に基づいて看護師などが自宅を訪問し、病状の観察、血糖測定やインスリン注射などの医療処置、服薬管理、療養上の世話などを行う事業所である。食事の準備や掃除といった家事の援助は訪問看護の役割ではなく、訪問介護(ホームヘルプ)の生活援助などが担う。また、サービスを提供する事業所であり、どの支援が必要かを総合的に相談する窓口ではない。
地域包括ケアシステム
高齢者が、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制をいう。おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(中学校区程度)を単位として想定しており、その中核機関が地域包括支援センターである。地域包括支援センターは高齢者に関するワンストップの相談窓口であり、介護保険サービスに限らず、医療、保健、福祉、権利擁護など幅広い相談に対応する。
介護保険サービス利用までの流れ
市町村への要介護認定の申請(地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が代行可能)→訪問調査・主治医意見書→介護認定審査会での判定(要支援1・2、要介護1〜5、非該当)→ケアプランの作成(要支援者は主に地域包括支援センター、要介護者は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成)→サービス利用。 介護保険の第1号被保険者は65歳以上で、原因を問わず要介護・要支援状態であれば給付を受けられる。第2号被保険者は40〜64歳の医療保険加入者で、特定疾病(16疾病。糖尿病性神経障害・腎症・網膜症を含む)による場合に給付対象となる。
関連施設・事業所の役割
・診療所・病院: 医療の提供 ・保健所: 広域的・専門的な地域保健(感染症、精神保健、難病、食品衛生など) ・市町村保健センター: 住民に身近な健康相談・健診・保健指導 ・地域包括支援センター: 高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防ケアマネジメント ・居宅介護支援事業所: 要介護者のケアプラン作成(ケアマネジャー) ・訪問介護事業所: ホームヘルパーによる身体介護・生活援助(調理、掃除、洗濯、買い物など) ・訪問看護ステーション: 医師の指示に基づく看護・医療処置 ・特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設): 常時介護が必要な人の生活施設(新規入所は原則要介護3以上) ・介護老人保健施設: 在宅復帰を目指すリハビリテーション中心の施設
POINT
・高齢者の生活・介護に関する困りごとの最初の相談窓口は地域包括支援センターである。 ・地域包括支援センターは市町村が設置主体で、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員が配置される。 ・主な業務は総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメント。 ・家事援助は訪問介護(生活援助)の役割であり、訪問看護の役割ではない。 ・特別養護老人ホームは入所施設で、新規入所は原則要介護3以上。
