StudyMed医師国家試験

「生きている」ワクチンは間隔を空けて―BCGと水痘ワクチンに見る接種間隔のルール

第114回医師国家試験 C問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第114回 C問題 第26問

別の種類の予防接種を行うまでに,27日間以上の間隔をおくべきなのはどれか。2つ選べ。

  1. a.BCG
  2. b.水痘ワクチン
  3. c.B型肝炎ワクチン
  4. d.肺炎球菌ワクチン
  5. e.ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は予防接種の接種間隔の問題だ。カギは、各ワクチンが生ワクチンか不活化ワクチンかを見分けられるかどうか。27日以上という数字が、どの種類のワクチンに関係するルールだったか思い出せるかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、生ワクチンは27日、不活化ワクチンは6日空けると習った気がします。
ドクタードクター
出題当時の規定はまさにそれ。生ワクチンの接種後は27日以上、不活化ワクチンの接種後は6日以上空けて次の別のワクチンを接種する、というルールだった。では、なぜ生ワクチンの後は長く空ける必要があったと思う?
医学生医学生
副反応が出たときに、どちらのワクチンのせいか分からなくなるからでしょうか。
ドクタードクター
それも理由の1つだね。もう1つ大事なのが「干渉」だ。生ワクチンは弱毒化した病原体が体内で増殖して免疫をつける。接種後しばらくはインターフェロンなどで非特異的な抗ウイルス状態になるから、その間に別の生ワクチンを打つと、後のワクチンのウイルスが十分増えず、免疫がつきにくくなるおそれがあるんだ。
医学生医学生
なるほど、体の中で増えるからこそ起こる問題なんですね。では選択肢の中から生ワクチンを探せばいいと。
ドクタードクター
その通り。まずBCGはどうかな。
医学生医学生
BCGはウシ型結核菌を弱毒化したものなので生ワクチンです。でも管針でスタンプみたいに押すので、注射とは違う気がします。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。BCGは経皮接種だけど、制度上は注射生ワクチンとして扱われる。定期接種では1歳までに1回、標準的には生後5~8か月に接種する。次に水痘ワクチンは?
医学生医学生
弱毒化した水痘・帯状疱疹ウイルスのOka株を使う生ワクチンですね。小児科実習で、1歳のお子さんがMRと水痘を同じ日に打っていました。
ドクタードクター
よく見ているね。水痘ワクチンは1歳以上3歳未満に2回接種する注射生ワクチンだ。だからBCGと水痘ワクチンの2つが正解になる。残りの3つも確認しておこう。B型肝炎ワクチンは?
医学生医学生
遺伝子組換えで作ったHBs抗原タンパクなので、不活化ワクチンだと思います。
ドクタードクター
正解。いわゆる組換えワクチンで、体内で増殖しないから干渉の問題は小さい。肺炎球菌ワクチンも、小児の結合型ワクチン、高齢者の23価莢膜多糖体ワクチンのどちらも菌の成分を使った不活化ワクチンだ。
医学生医学生
HPVワクチンも、ウイルスの殻のタンパクから作ったウイルス様粒子なので、遺伝子がなく感染性はないんですよね。
ドクタードクター
その通り。HPVワクチンも不活化に分類される。だからこの3つは出題当時の規定でも6日以上空ければよく、27日の間隔は不要だった。ここで1つ注意してほしいのが、制度の改正だ。
医学生医学生
改正があったんですか。古い知識のまま覚えていました。
ドクタードクター
2020年10月に規則が改正されて、異なるワクチン間の間隔制限は大幅に緩和された。現在は「注射生ワクチンの後に、別の注射生ワクチンを接種する場合」に限り27日以上空ける。それ以外、たとえば不活化ワクチンの後や、注射生ワクチンの後に不活化ワクチンを打つ場合、経口生ワクチンのロタウイルスワクチンの前後などは制限がない。BCGも水痘も注射生ワクチンだから、この問題の答えは今でも変わらないと考えていい。
医学生医学生
同じ日にまとめて打つ同時接種は、生ワクチン同士でも大丈夫なんですか。
ドクタードクター
医師が必要と認めれば、別々の部位に同時接種できる。同時接種なら干渉の問題は生じにくいとされていて、過密な小児のスケジュールでは広く行われているよ。それから臨床で必ず押さえてほしいのが、生ワクチンの禁忌だ。病原体が体内で増殖するから、妊婦や免疫不全、免疫抑制療法中の患者には原則として接種しない。
医学生医学生
膠原病でステロイドを飲んでいる患者さんや、妊娠中の方には生ワクチンを避ける、ということですね。生か不活化かの区別は、間隔だけでなく禁忌の判断にもつながるんだと分かりました。
ドクタードクター
その通り。MR、水痘、おたふくかぜ、BCG、ロタが生ワクチンという分類を軸にして、接種間隔、同時接種、禁忌まで一連で整理しておこう。

まとめ

生ワクチンは弱毒化した病原体が体内で増殖するため、接種後の非特異的な抗ウイルス状態による干渉や副反応の判別の問題から、別のワクチンまで一定の間隔をおくことが定められています。出題当時は生ワクチン後27日以上、不活化ワクチン後6日以上とされ、本問ではBCGと水痘ワクチンが生ワクチンに該当し、B型肝炎・肺炎球菌・HPVワクチンは不活化ワクチンです。2020年10月の改正以降は、注射生ワクチンの後に別の注射生ワクチンを接種する場合のみ27日以上が必要となりましたが、BCGと水痘はいずれも注射生ワクチンのため結論は変わりません。医師が必要と認めれば同時接種が可能であり、また生ワクチンは妊婦や免疫不全者には原則禁忌です。生ワクチンと不活化ワクチンの分類を確実に押さえることは、接種スケジュールの立案から禁忌の判断まで、日常診療に直結する重要な知識です。

解答・解説

正解はa, bです

問われていること

異なる種類のワクチンを続けて接種する際の「接種間隔」のルールを、ワクチンの種類(生ワクチンか不活化ワクチンか)と結びつけて理解しているかを問う問題である。

考え方

・生ワクチン:病原性を弱めた生きた病原体を接種し、体内で増殖させて免疫をつける。接種後しばらくの間はインターフェロンなどによる非特異的な抗ウイルス状態が生じ、その期間に別の生ワクチンを接種すると、後のワクチンのウイルス増殖が抑えられて十分な免疫がつかない(干渉)おそれがある。また、副反応が出た場合にどちらのワクチンによるものか判別しにくくなる。このため、生ワクチンの接種後は一定期間(27日以上)空けることが定められている。 ・不活化ワクチン(組換えタンパク・トキソイドなどを含む):体内で増殖しないため干渉の問題は小さく、出題当時の規定では次の接種まで6日以上空ければよいとされていた。 本問の選択肢のうち生ワクチンはBCGと水痘ワクチンの2つであり、これらが27日以上の間隔をおくべきものにあたる。

現行制度について

2020年10月に予防接種実施規則などが改正され、異なるワクチン間の接種間隔の制限は大幅に緩和された。現在は「注射生ワクチンを接種した後に、別の注射生ワクチンを接種する場合」に限り27日以上の間隔が必要で、それ以外の組み合わせ(不活化ワクチンの後に他のワクチン、注射生ワクチンの後に不活化ワクチン、経口生ワクチンであるロタウイルスワクチンの前後など)には間隔の制限がない。BCGと水痘ワクチンはいずれも注射生ワクチンに分類されるため、「後に注射生ワクチンを接種する場合は27日以上空ける」という意味で、現行制度でも正解はa・bと考えてよい。なお、同じ種類のワクチンを複数回接種する場合は、それぞれのワクチンごとに定められた間隔を守る必要がある。

選択肢考察

  1. ○a.  BCG

    BCG(Bacille de Calmette et Guérin)はウシ型結核菌を弱毒化した生ワクチンである。管針を用いて上腕に経皮接種するが、制度上は注射生ワクチンとして扱われる。生ワクチンであるため、次に別の(注射)生ワクチンを接種するまで27日以上空ける必要がある。定期接種としては生後1歳に至るまで(標準的には生後5~8か月)に1回接種する。

  2. ○b.  水痘ワクチン

    水痘ワクチンは弱毒化した水痘・帯状疱疹ウイルス(Oka株)を用いた注射生ワクチンである。生ワクチンであるため、次に別の(注射)生ワクチンを接種するまで27日以上の間隔をおく。定期接種では1歳以上3歳未満に2回(標準的には3か月以上空けて)接種する。

  3. ×c.  B型肝炎ワクチン

    B型肝炎ワクチンは遺伝子組換え技術で作られたHBs抗原タンパクを用いる不活化ワクチン(組換えワクチン)である。体内で増殖しないため、出題当時の規定でも次の別のワクチンまでは6日以上空ければよく、27日以上の間隔は不要である。現行制度では別のワクチンとの間隔の制限はない。

  4. ×d.  肺炎球菌ワクチン

    肺炎球菌ワクチンには、小児に用いる結合型ワクチンと、高齢者などに用いる23価莢膜多糖体ワクチンがあるが、いずれも菌の成分を用いた不活化ワクチンである。27日以上の間隔は不要であり、出題当時は6日以上、現行制度では別のワクチンとの間隔の制限はない。

  5. ×e.  ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン

    HPVワクチンはウイルスの殻のタンパク(L1)から作ったウイルス様粒子を用いる不活化ワクチン(組換えワクチン)であり、遺伝子を持たないため感染性はない。27日以上の間隔は不要である(出題当時は6日以上、現行制度では制限なし)。

主なワクチンの分類

・注射生ワクチン:BCG、麻しん風しん混合(MR)、麻しん、風しん、水痘、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)、黄熱など ・経口生ワクチン:ロタウイルスワクチン(なお、ポリオは現在は不活化ワクチンが用いられ、経口生ポリオワクチンの定期接種は2012年に終了した) ・不活化ワクチン(組換え・トキソイドを含む):B型肝炎、肺炎球菌、Hib(インフルエンザ菌b型)、DPT-IPVなどの混合ワクチン、日本脳炎、インフルエンザ、HPVなど

異なるワクチン間の接種間隔の変遷

・2020年9月まで:生ワクチン接種後は27日以上、不活化ワクチン接種後は6日以上の間隔をおいて別のワクチンを接種する。 ・2020年10月以降:注射生ワクチンの後に別の注射生ワクチンを接種する場合のみ27日以上の間隔が必要。その他の組み合わせには制限なし。 改正の背景には、ワクチンの種類が増えて接種スケジュールが過密になったこと、短い間隔での接種が副反応を増やすというエビデンスが乏しいことがある。

同時接種

医師が必要と認めた場合には、複数のワクチンを同じ日に別々の部位に接種する同時接種が可能である。生ワクチン同士でも同時接種であれば干渉の問題は生じにくいとされ、小児の定期接種では広く行われている。

生ワクチンの禁忌

生ワクチンは病原体が体内で増殖するため、妊婦や、免疫不全・免疫抑制療法中の患者には原則として接種しない。

POINT

・生ワクチン:BCG、MR、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルスなど。不活化ワクチン:B型肝炎、肺炎球菌、Hib、HPV、インフルエンザ、日本脳炎など。 ・出題当時:生ワクチン後は27日以上、不活化ワクチン後は6日以上の間隔。 ・2020年10月以降:注射生ワクチン→注射生ワクチンの場合のみ27日以上の間隔が必要で、それ以外は制限なし。 ・同時接種は医師が必要と認めれば可能。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。