「生きている」ワクチンは間隔を空けて―BCGと水痘ワクチンに見る接種間隔のルール
第114回医師国家試験 C問題 第26問
国試問題にチャレンジ
別の種類の予防接種を行うまでに,27日間以上の間隔をおくべきなのはどれか。2つ選べ。
- a.BCG
- b.水痘ワクチン
- c.B型肝炎ワクチン
- d.肺炎球菌ワクチン
- e.ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
生ワクチンは弱毒化した病原体が体内で増殖するため、接種後の非特異的な抗ウイルス状態による干渉や副反応の判別の問題から、別のワクチンまで一定の間隔をおくことが定められています。出題当時は生ワクチン後27日以上、不活化ワクチン後6日以上とされ、本問ではBCGと水痘ワクチンが生ワクチンに該当し、B型肝炎・肺炎球菌・HPVワクチンは不活化ワクチンです。2020年10月の改正以降は、注射生ワクチンの後に別の注射生ワクチンを接種する場合のみ27日以上が必要となりましたが、BCGと水痘はいずれも注射生ワクチンのため結論は変わりません。医師が必要と認めれば同時接種が可能であり、また生ワクチンは妊婦や免疫不全者には原則禁忌です。生ワクチンと不活化ワクチンの分類を確実に押さえることは、接種スケジュールの立案から禁忌の判断まで、日常診療に直結する重要な知識です。
解答・解説
正解はa, bです
問われていること
異なる種類のワクチンを続けて接種する際の「接種間隔」のルールを、ワクチンの種類(生ワクチンか不活化ワクチンか)と結びつけて理解しているかを問う問題である。
考え方
・生ワクチン:病原性を弱めた生きた病原体を接種し、体内で増殖させて免疫をつける。接種後しばらくの間はインターフェロンなどによる非特異的な抗ウイルス状態が生じ、その期間に別の生ワクチンを接種すると、後のワクチンのウイルス増殖が抑えられて十分な免疫がつかない(干渉)おそれがある。また、副反応が出た場合にどちらのワクチンによるものか判別しにくくなる。このため、生ワクチンの接種後は一定期間(27日以上)空けることが定められている。 ・不活化ワクチン(組換えタンパク・トキソイドなどを含む):体内で増殖しないため干渉の問題は小さく、出題当時の規定では次の接種まで6日以上空ければよいとされていた。 本問の選択肢のうち生ワクチンはBCGと水痘ワクチンの2つであり、これらが27日以上の間隔をおくべきものにあたる。
現行制度について
2020年10月に予防接種実施規則などが改正され、異なるワクチン間の接種間隔の制限は大幅に緩和された。現在は「注射生ワクチンを接種した後に、別の注射生ワクチンを接種する場合」に限り27日以上の間隔が必要で、それ以外の組み合わせ(不活化ワクチンの後に他のワクチン、注射生ワクチンの後に不活化ワクチン、経口生ワクチンであるロタウイルスワクチンの前後など)には間隔の制限がない。BCGと水痘ワクチンはいずれも注射生ワクチンに分類されるため、「後に注射生ワクチンを接種する場合は27日以上空ける」という意味で、現行制度でも正解はa・bと考えてよい。なお、同じ種類のワクチンを複数回接種する場合は、それぞれのワクチンごとに定められた間隔を守る必要がある。
選択肢考察
- ○a. BCG
BCG(Bacille de Calmette et Guérin)はウシ型結核菌を弱毒化した生ワクチンである。管針を用いて上腕に経皮接種するが、制度上は注射生ワクチンとして扱われる。生ワクチンであるため、次に別の(注射)生ワクチンを接種するまで27日以上空ける必要がある。定期接種としては生後1歳に至るまで(標準的には生後5~8か月)に1回接種する。
- ○b. 水痘ワクチン
水痘ワクチンは弱毒化した水痘・帯状疱疹ウイルス(Oka株)を用いた注射生ワクチンである。生ワクチンであるため、次に別の(注射)生ワクチンを接種するまで27日以上の間隔をおく。定期接種では1歳以上3歳未満に2回(標準的には3か月以上空けて)接種する。
- ×c. B型肝炎ワクチン
B型肝炎ワクチンは遺伝子組換え技術で作られたHBs抗原タンパクを用いる不活化ワクチン(組換えワクチン)である。体内で増殖しないため、出題当時の規定でも次の別のワクチンまでは6日以上空ければよく、27日以上の間隔は不要である。現行制度では別のワクチンとの間隔の制限はない。
- ×d. 肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンには、小児に用いる結合型ワクチンと、高齢者などに用いる23価莢膜多糖体ワクチンがあるが、いずれも菌の成分を用いた不活化ワクチンである。27日以上の間隔は不要であり、出題当時は6日以上、現行制度では別のワクチンとの間隔の制限はない。
- ×e. ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン
HPVワクチンはウイルスの殻のタンパク(L1)から作ったウイルス様粒子を用いる不活化ワクチン(組換えワクチン)であり、遺伝子を持たないため感染性はない。27日以上の間隔は不要である(出題当時は6日以上、現行制度では制限なし)。
主なワクチンの分類
・注射生ワクチン:BCG、麻しん風しん混合(MR)、麻しん、風しん、水痘、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)、黄熱など ・経口生ワクチン:ロタウイルスワクチン(なお、ポリオは現在は不活化ワクチンが用いられ、経口生ポリオワクチンの定期接種は2012年に終了した) ・不活化ワクチン(組換え・トキソイドを含む):B型肝炎、肺炎球菌、Hib(インフルエンザ菌b型)、DPT-IPVなどの混合ワクチン、日本脳炎、インフルエンザ、HPVなど
異なるワクチン間の接種間隔の変遷
・2020年9月まで:生ワクチン接種後は27日以上、不活化ワクチン接種後は6日以上の間隔をおいて別のワクチンを接種する。 ・2020年10月以降:注射生ワクチンの後に別の注射生ワクチンを接種する場合のみ27日以上の間隔が必要。その他の組み合わせには制限なし。 改正の背景には、ワクチンの種類が増えて接種スケジュールが過密になったこと、短い間隔での接種が副反応を増やすというエビデンスが乏しいことがある。
同時接種
医師が必要と認めた場合には、複数のワクチンを同じ日に別々の部位に接種する同時接種が可能である。生ワクチン同士でも同時接種であれば干渉の問題は生じにくいとされ、小児の定期接種では広く行われている。
生ワクチンの禁忌
生ワクチンは病原体が体内で増殖するため、妊婦や、免疫不全・免疫抑制療法中の患者には原則として接種しない。
POINT
・生ワクチン:BCG、MR、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルスなど。不活化ワクチン:B型肝炎、肺炎球菌、Hib、HPV、インフルエンザ、日本脳炎など。 ・出題当時:生ワクチン後は27日以上、不活化ワクチン後は6日以上の間隔。 ・2020年10月以降:注射生ワクチン→注射生ワクチンの場合のみ27日以上の間隔が必要で、それ以外は制限なし。 ・同時接種は医師が必要と認めれば可能。
