虐待対応の司令塔はどこ?―高齢者虐待防止ネットワークと地域包括支援センター
第113回医師国家試験 F問題 第5問
国試問題にチャレンジ
高齢者虐待防止ネットワークの構築に中心的役割を果たす機関はどれか。
- a.保健所
- b.地域医療支援病院
- c.市町村保健センター
- d.地域包括支援センター
- e.医療安全支援センター
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
高齢者虐待防止法では、虐待への対応の第一義的な責任は市町村にあり、その実務と関係機関の連携づくり、つまり高齢者虐待防止ネットワーク構築の中心を担うのが、市町村が設置主体となる地域包括支援センターです。地域包括支援センターは介護保険法に基づき、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員を配置し、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントの4業務を担います。ネットワークは早期発見・見守り、保健医療福祉サービス介入、関係専門機関介入支援の3機能からなり、保健所は専門機関として後方支援にあたります。医療安全支援センターは医療に関する苦情・相談の窓口、地域医療支援病院はかかりつけ医を支える病院であり、虐待対応の中心機関ではありません。医療者は虐待の早期発見者になりやすいため、5つの類型と通報先を知っておくことが臨床でも欠かせません。
解答・解説
正解はdです
高齢者虐待への対応体制の中で、どの機関が中核になるかを問う問題である。 「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法、2006年施行)」は、養護者(家族など)による虐待と、養介護施設従事者等による虐待の両方について、通報の受理、事実確認、保護、養護者への支援を行う第一義的な責任を市町村に負わせている。市町村は、虐待の早期発見から介入、事後の支援までを一貫して行うために、関係機関や民間団体との連携協力体制、いわゆる「高齢者虐待防止ネットワーク」を整備することが求められている。 このネットワークづくりの中心を担うのが、市町村が設置する(または委託する)地域包括支援センターである。地域包括支援センターは介護保険法に基づき、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントを担う機関であり、虐待の防止と早期発見は権利擁護業務の柱の一つである。高齢者虐待防止法でも、市町村は相談・通報受理などの事務を地域包括支援センターに委託できるとされている。したがって正解は地域包括支援センターである。
選択肢考察
- ×a. 保健所
誤り。保健所は地域保健法に基づき都道府県、政令指定都市、中核市、特別区などが設置する広域的・専門的な公衆衛生行政機関である。高齢者虐待防止ネットワークでは、警察や弁護士、精神保健福祉センターなどとともに、専門的な対応が必要な事例を後方から支援する「関係専門機関介入支援ネットワーク」の一員として位置づけられるが、ネットワーク全体を構築する中心的役割ではない。
- ×b. 地域医療支援病院
誤り。地域医療支援病院は医療法に基づき都道府県知事が承認する病院で、紹介患者への医療提供、医療機器の共同利用、救急医療の提供、地域の医療従事者に対する研修などを通じて、かかりつけ医を支援する役割を担う。虐待を受けた高齢者の診療などで医療機関として関わることはある(保健医療福祉サービス介入ネットワークの構成員となりうる)が、虐待防止ネットワークを構築する中心機関ではない。
- ×c. 市町村保健センター
誤り。市町村保健センターは地域保健法に基づき市町村が設置でき、健康相談、保健指導、健康診査など住民に身近な対人保健サービスを提供する施設である。高齢者虐待防止ネットワークでは、介護サービス事業者や医療機関などとともに「保健医療福祉サービス介入ネットワーク」を構成しうるが、中心的な役割を担うのは地域包括支援センターである。
- ○d. 地域包括支援センター
正しい。地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が設置主体となる機関で、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などが配置される。権利擁護業務として高齢者虐待の防止・早期発見と対応、成年後見制度の活用支援などを担う。高齢者虐待防止法の下で市町村から相談・通報の受理や事実確認などの事務を委託されることも多く、市町村とともに関係機関・団体との連携協力体制、すなわち高齢者虐待防止ネットワークを構築する中心となる。
- ×e. 医療安全支援センター
誤り。医療安全支援センターは医療法第6条の13に基づき、都道府県、保健所設置市、特別区が設置する機関である。患者や家族からの医療に関する苦情・心配・相談に対応し、医療機関や住民へ医療安全に関する情報提供や助言を行う。高齢者虐待への対応を担う機関ではない。
高齢者虐待防止法の概要
・対象は65歳以上の者 ・虐待の主体: 養護者(家族、親族、同居人など)と養介護施設従事者等 ・虐待の類型: 身体的虐待、介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5類型 ・通報: 虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は市町村に通報するよう努める。生命・身体に重大な危険が生じている場合は通報義務がある ・市町村は通報を受けたら事実確認を行い、必要に応じて立入調査(警察署長への援助要請が可能)や、老人福祉法に基づく措置による一時保護(分離)を行う
高齢者虐待防止ネットワークの3つの機能
・早期発見・見守りネットワーク: 民生委員、自治会、老人クラブ、家族会など住民が中心となり、虐待の未然防止と早期発見を担う ・保健医療福祉サービス介入ネットワーク: 介護保険サービス事業者、居宅介護支援事業所、医療機関などが、現に発生している虐待事例にどのように対応するかを検討し、具体的な支援を行う ・関係専門機関介入支援ネットワーク: 警察、消防、保健所、精神保健福祉センター、弁護士、家庭裁判所など、保健医療福祉分野以外も含む専門機関が、通常の対応では解決が難しい事例を支援する
地域包括支援センターの4つの業務
総合相談支援、権利擁護(虐待防止・成年後見制度の活用など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントである。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種が原則として配置される。
POINT
・高齢者虐待防止の第一義的な責任主体は市町村 ・高齢者虐待防止ネットワーク構築の中心は地域包括支援センター(市町村が設置主体) ・ネットワークは「早期発見・見守り」「保健医療福祉サービス介入」「関係専門機関介入支援」の3機能からなる ・医療安全支援センターは医療に関する苦情・相談を受ける機関で、虐待対応の中心機関ではない
