StudyMed医師国家試験

血圧と血糖が同時に上がるとき―「インスリン拮抗」と「ミネラルコルチコイド作用」で読み解く二次性高血圧・二次性糖尿病

第112回医師国家試験 C問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第24問

高血圧と糖代謝異常をきたす疾患はどれか。3つ選べ。

  1. a.肝硬変
  2. b.先端巨大症
  3. c.Cushing症候群
  4. d.偽性Bartter症候群
  5. e.偽性アルドステロン症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、高血圧と糖代謝異常の両方をきたす疾患を選ぶ問題だ。コツは、二次性糖尿病の原因と二次性高血圧の原因をそれぞれ整理して、その重なりを探すこと。まずは糖代謝異常の側から考えてみよう。血糖を上げる原因にはどんなものがあるかな。
医学生医学生
インスリンに拮抗するホルモンが過剰になる病気ですよね。成長ホルモン、コルチゾール、カテコールアミン、グルカゴンあたりを生理学で習いました。
ドクタードクター
その通り。それに加えて、見落とされがちな機序が2つある。1つは低カリウム血症。膵β細胞のインスリン分泌はK⁺の影響を受けるから、低K⁺だとインスリン分泌が落ちて耐糖能が悪化するんだ。もう1つは肝疾患。肝臓は食後の糖を取り込んでグリコーゲンとして蓄える場所だから、そこが傷むと食後高血糖が起きる。
医学生医学生
そう考えると、選択肢の5つとも糖代謝異常は起こしうるように見えてきます。
ドクタードクター
鋭いね。だからこの問題の勝負どころは、もう一方の「高血圧を起こすかどうか」なんだ。まず先端巨大症から見ていこう。
医学生医学生
GHはインスリン拮抗ホルモンなので糖尿病になりますね。高血圧も合併すると内分泌内科の実習で聞いた気がしますが、機序まではあいまいです。
ドクタードクター
GHとIGF-Iには腎でNa⁺再吸収を促す作用があって、体液量が増えて高血圧になる。先端巨大症では高血圧と糖尿病が心血管合併症を通じて生命予後に響くから、とても大事な合併症なんだ。次はCushing症候群。
医学生医学生
コルチゾールは糖新生を促してインスリン抵抗性を上げるので糖尿病、それに高血圧も典型的ですね。満月様顔貌や赤色皮膚線条はCBTでも頻出でした。
ドクタードクター
高血圧の機序も押さえておこう。本来、腎ではコルチゾールを11β-HSD2という酵素で不活性なコルチゾンに変えて、ミネラルコルチコイド受容体に結合しないよう守っている。ところがコルチゾールが大量だと酵素の処理能力を超えて受容体を刺激してしまう。ほかにアンジオテンシノーゲン産生の増加や、血管のカテコールアミン感受性亢進も関わるんだ。
医学生医学生
その11β-HSD2の話、偽性アルドステロン症にもつながりますか。
ドクタードクター
まさにそこがつながる。偽性アルドステロン症の代表的な原因は甘草を含む漢方薬やグリチルリチン製剤だ。その代謝物が11β-HSD2を阻害するから、正常量のコルチゾールでもミネラルコルチコイド受容体が刺激され、Na⁺貯留で高血圧、K⁺排泄増加で低カリウム血症になる。そしてその低K⁺がインスリン分泌を落とし、耐糖能異常をきたすわけだ。
医学生医学生
アルドステロンは増えていないのに、アルドステロン過剰と同じ状態になるから「偽性」なんですね。レニンもアルドステロンも低値になる、と。
ドクタードクター
その理解で完璧。治療は原因薬の中止が基本で、スピロノラクトンも有効だ。では、名前の似ている偽性Bartter症候群はどうだろう。
医学生医学生
こちらも低カリウム血症なので、耐糖能は悪くなりそうです。アルドステロンも上がるなら血圧も高くなるのでは……と迷いました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。偽性Bartter症候群は嘔吐、利尿薬や下剤の乱用、神経性やせ症などでNa⁺と水を失う病態だ。脱水が背景にあるから、レニンやアルドステロンは二次的に上がっても、血圧は正常から低め。高血圧にはならないんだ。
医学生医学生
なるほど、アルドステロンが上がっている理由が「体液が足りないから」なんですね。最後の肝硬変はどうでしょう。
ドクタードクター
肝硬変は肝性糖尿病といって、空腹時血糖はほぼ正常なのに食後に著明な高血糖を示すのが典型だ。ただ血行動態は、一酸化窒素などで内臓や末梢の血管が拡張して有効循環血漿量が減るから、血圧はむしろ低めになる。消化器内科でスピロノラクトンやβ遮断薬が処方されているのを見たことがあるかもしれないけれど、あれは腹水の管理や門脈圧を下げる目的で、降圧のためではないんだ。
医学生医学生
整理すると、正解は先端巨大症、Cushing症候群、偽性アルドステロン症の3つ。肝硬変と偽性Bartter症候群は糖代謝異常はあっても高血圧はない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、低カリウム血症を見たら「血圧が高いか」で二分する癖をつけよう。高血圧+低K⁺なら原発性アルドステロン症、偽性アルドステロン症、Cushing症候群などのミネラルコルチコイド作用過剰を考える。ENaCの機能亢進によるLiddle症候群もこの仲間で、スピロノラクトンは効かずアミロライドやトリアムテレンが有効だ。一方、正常血圧+低K⁺+代謝性アルカローシスならBartter症候群、Gitelman症候群、偽性Bartter症候群を考える。
医学生医学生
臨床では、高齢者が漢方薬を飲んでいて血圧が上がったり、脱力が出たりしたら甘草を疑う、ということですね。
ドクタードクター
そう。芍薬甘草湯などは日常的に処方されるから、薬歴の確認がとても大事だ。低カリウム性ミオパチーや横紋筋融解で見つかることもある。また、褐色細胞腫や原発性アルドステロン症も高血圧と糖代謝異常を合併する代表疾患だから、若年発症の高血圧や治療抵抗性の糖尿病を見たら、二次性の原因を一度は考えるようにしよう。

まとめ

高血圧と糖代謝異常を同時にきたす疾患は、インスリン拮抗ホルモンの過剰やミネラルコルチコイド作用の過剰を軸に整理すると理解しやすく、先端巨大症、Cushing症候群、偽性アルドステロン症が代表です。偽性アルドステロン症は甘草(グリチルリチン)による11β-HSD2阻害でコルチゾールがミネラルコルチコイド受容体を刺激し、高血圧と低カリウム血症をきたし、低K⁺によるインスリン分泌低下が耐糖能異常につながります。一方、偽性Bartter症候群は脱水を背景とした低K⁺・代謝性アルカローシスで血圧は正常〜低め、肝硬変は食後高血糖をきたすものの血管拡張により血圧は低めとなるため、いずれも高血圧はきたしません。低カリウム血症を見たら血圧の有無で鑑別を二分するという考え方は、二次性高血圧や薬剤性の電解質異常を見逃さないための臨床の基本になります。

解答・解説

正解はb, c, eです

本問は、「高血圧」と「糖代謝異常(耐糖能異常・糖尿病)」の両方をきたす疾患を選ぶ問題である。二次性高血圧と二次性糖尿病の原因疾患を重ね合わせて考えるとよい。

考え方

1. 糖代謝異常の原因を整理する。 ・インスリン拮抗ホルモンの過剰:成長ホルモン(先端巨大症)、コルチゾール(Cushing症候群)、カテコールアミン(褐色細胞腫)、グルカゴン(グルカゴノーマ)など。 ・低カリウム血症:膵β細胞からのインスリン分泌はK⁺濃度の影響を受け、低カリウム血症ではインスリン分泌が低下して耐糖能が悪化する。 ・肝疾患:肝硬変では肝での糖取り込み・グリコーゲン貯蔵が低下し、インスリン抵抗性も加わって食後高血糖をきたす(肝性糖尿病)。 2. 高血圧の有無で絞り込む。 ・高血圧をきたすもの:先端巨大症、Cushing症候群、偽性アルドステロン症(ミネラルコルチコイド作用の過剰でNa⁺貯留・循環血漿量増加が起こる)。 ・高血圧をきたさないもの:肝硬変(末梢血管拡張により有効循環血漿量が減少し、血圧はむしろ低めとなる)、偽性Bartter症候群(Na⁺・水分喪失による脱水を背景に、レニン・アルドステロンが二次的に上昇するが血圧は正常〜低め)。

鑑別の鍵

低カリウム血症をきたす病態は「高血圧を伴うか」で大きく分かれる。高血圧+低K⁺ならミネラルコルチコイド作用過剰(原発性アルドステロン症、偽性アルドステロン症、Cushing症候群など)を、正常血圧+低K⁺+代謝性アルカローシスならBartter/Gitelman症候群や偽性Bartter症候群(嘔吐、利尿薬・下剤乱用など)を考える。

選択肢考察

  1. ×a.  肝硬変

    誤り。肝硬変では糖代謝異常はきたすが、高血圧はきたさない。肝細胞数の減少によって肝での糖の取り込みとグリコーゲン貯蔵が低下し、さらに門脈−大循環短絡による高インスリン血症に伴う末梢のインスリン抵抗性も加わる。そのため、早朝空腹時血糖はほぼ正常(むしろ糖新生能低下で低血糖傾向のこともある)であるのに、食後に著明な高血糖を示すのが典型である(肝性糖尿病)。一方、血行動態では一酸化窒素などによる内臓・末梢血管の拡張が起こり、有効循環血漿量が減少して血圧は低めとなる。これを代償してレニン−アンジオテンシン−アルドステロン系が亢進し、低アルブミン血症による膠質浸透圧低下や門脈圧亢進と相まって腹水・浮腫が生じる。抗アルドステロン薬や利尿薬は腹水・浮腫の管理に、非選択的β遮断薬は門脈圧を下げる目的で用いられ、降圧が目的ではない。

  2. ○b.  先端巨大症

    正しい。下垂体の成長ホルモン(GH)産生腺腫などによりGHとインスリン様成長因子-I(IGF-I)が過剰となる疾患である。GHはインスリン拮抗作用(肝での糖新生促進、末梢でのインスリン抵抗性増大)をもつため耐糖能異常・糖尿病をきたす。また、GH/IGF-Iの腎でのNa⁺再吸収促進作用による体液量増加などにより高血圧をきたす。そのほか、眉弓部・下顎の突出、鼻・口唇の肥大などの特有の顔貌、手足の容積増大、巨舌、発汗過多、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群、心肥大などを伴う。高血圧と糖尿病は心血管合併症を通じて生命予後に影響するため、重要な合併症である。

  3. ○c.  Cushing症候群

    正しい。コルチゾールの慢性的な過剰による疾患である。コルチゾールは肝での糖新生を促進し、末梢でのインスリン抵抗性を高めるため、耐糖能異常・糖尿病をきたす。高血圧の機序としては、大量のコルチゾールが腎の11β-水酸化ステロイド脱水素酵素2型(11β-HSD2:コルチゾールを不活性なコルチゾンに変える酵素)の処理能力を超えてミネラルコルチコイド受容体を刺激すること、肝でのアンジオテンシノーゲン産生増加、血管のカテコールアミン感受性亢進などが関与する。中心性肥満、満月様顔貌、野牛肩(buffalo hump)、赤色皮膚線条、皮膚の菲薄化、近位筋の筋力低下、骨粗鬆症、易感染性なども特徴である。

  4. ×d.  偽性Bartter症候群

    誤り。Bartter症候群は、Henleループ太い上行脚のNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体(NKCC2)などの遺伝子異常によって食塩の再吸収が障害され、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、高レニン・高アルドステロン血症を示しながら血圧は正常である疾患である。偽性Bartter症候群は、遺伝子異常がないのに同様の病態を示すもので、神経性やせ症(神経性食思不振症)、習慣性の嘔吐、ループ利尿薬や下剤の乱用などが原因となる。Na⁺・水の喪失による脱水が背景にあるため、二次的にアルドステロンが増えても血圧は正常〜低めであり、浮腫もみられない。低カリウム血症によりインスリン分泌が低下して耐糖能が悪化する可能性はあるが、高血圧はきたさない。

  5. ○e.  偽性アルドステロン症

    正しい。アルドステロンは増えていないのに、原発性アルドステロン症と同様の高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシスを示す病態である。代表的な原因は、甘草(カンゾウ)を含む漢方薬やその主成分グリチルリチン(グリチルリチン酸)製剤の服用である。グリチルリチンの代謝物(グリチルレチン酸)が腎集合管の11β-HSD2を阻害すると、本来はコルチゾンに不活性化されるはずのコルチゾールがミネラルコルチコイド受容体に結合してアルドステロン様に作用し、Na⁺貯留による高血圧とK⁺排泄増加による低カリウム血症が生じる。レニンとアルドステロンはいずれも抑制される。低カリウム血症によってインスリン分泌が低下し耐糖能異常をきたすほか、筋力低下・横紋筋融解(低カリウム性ミオパチー)を起こすこともある。原因薬の中止が治療の基本であり、抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)も有効である。

低カリウム血症と耐糖能異常

膵β細胞では、細胞内K⁺濃度の変化がATP感受性K⁺チャネルを介した脱分極とインスリン分泌に関わる。低カリウム血症ではインスリン分泌が低下し、耐糖能が悪化する。原発性アルドステロン症や偽性アルドステロン症、サイアザイド系利尿薬の長期使用で耐糖能異常がみられるのはこのためである。

ミネラルコルチコイド作用過剰をきたす病態の整理(高血圧+低K⁺)

・原発性アルドステロン症:レニン低値、アルドステロン高値。 ・偽性アルドステロン症(甘草・グリチルリチン):レニン低値、アルドステロン低値。11β-HSD2阻害によりコルチゾールがミネラルコルチコイド受容体を刺激する。 ・AME(apparent mineralocorticoid excess)症候群:11β-HSD2遺伝子の不活性化変異による遺伝性高血圧。レニン低値、アルドステロン低値。 ・Liddle症候群:上皮型Na⁺チャネル(ENaC)の機能亢進型遺伝子変異。レニン低値、アルドステロン低値。スピロノラクトンは無効で、ENaC阻害薬(アミロライド、トリアムテレン)が有効。 ・Cushing症候群、11β-水酸化酵素欠損症・17α-水酸化酵素欠損症(先天性副腎皮質過形成)なども高血圧を伴う。 広義の偽性アルドステロン症には、AME症候群やLiddle症候群などの遺伝性疾患も含められることがある。

血圧が正常で低K⁺・代謝性アルカローシスを示す病態

・Bartter症候群:Henleループ太い上行脚の輸送体(NKCC2、ROMK、ClC-Kbなど)の遺伝子異常。ループ利尿薬を内服した状態に相当する。 ・Gitelman症候群:遠位尿細管のNa⁺-Cl⁻共輸送体(NCC)の遺伝子異常。サイアザイド系利尿薬を内服した状態に相当し、低マグネシウム血症・低カルシウム尿症を伴う。 ・偽性Bartter症候群:嘔吐、利尿薬・下剤の乱用、神経性やせ症など。

二次性糖尿病をきたす内分泌疾患

先端巨大症、Cushing症候群、褐色細胞腫、グルカゴノーマ、原発性アルドステロン症、甲状腺機能亢進症など。このうち褐色細胞腫、原発性アルドステロン症も高血圧を合併する。

POINT

・高血圧と糖代謝異常を併発する代表疾患:先端巨大症、Cushing症候群、褐色細胞腫、原発性アルドステロン症、偽性アルドステロン症。 ・偽性アルドステロン症は甘草(グリチルリチン)による11β-HSD2阻害が原因。高血圧・低K⁺で、レニン・アルドステロンはともに低値。 ・偽性Bartter症候群は低K⁺・代謝性アルカローシスでも血圧は正常(嘔吐・利尿薬・下剤乱用など)。 ・肝硬変は食後高血糖をきたすが、血圧は低めとなる。 ・名称の似た「偽性アルドステロン症」と「偽性Bartter症候群」は血圧の有無で区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。