StudyMed医師国家試験

消えては現れる痒い皮疹―「時間」で見分ける膨疹と原発疹の定義

第112回医師国家試験 C問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第25問

32歳の女性。痒みを伴う皮疹を主訴に来院した。昨日夕食後に皮疹が背部に出現し,消退した後に下肢に同様の皮疹が出現した。下肢の写真を別に示す。  この皮疹の種類はどれか。

第112回 C問題 第25問の問題画像
  1. a.丘疹
  2. b.局面
  3. c.紅斑
  4. d.水疱
  5. e.膨疹

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、写真の皮疹がどの種類の発疹かを答える問題だ。問われているのは診断名ではなく、皮疹の名前。ここでの最大のヒントは見た目よりも経過、つまり「一度消えて、別の場所にまた出た」という時間の情報なんだ。
医学生医学生
写真だと赤くて盛り上がっていて、範囲も広いので、局面か紅斑かで迷ってしまいました。
ドクタードクター
見た目だけで判断すると、そこで迷うのは自然だよ。写真では周囲に発赤を伴った、境界のはっきりした扁平な盛り上がりが地図状・環状に広がっている。でも皮疹の名前は、隆起の有無、大きさ、中身、そして持続時間といった定義で決まるんだ。数時間で跡を残さず消えて、場所を変えて出没する皮疹といえば何だろう。
医学生医学生
蕁麻疹の膨疹ですね。皮膚科の実習で、外来に来たときには消えていて写真を見せてもらった患者さんがいました。
ドクタードクター
まさにそれ。膨疹は真皮上層に起こる限局性・一過性の浮腫で、通常は数十分から数時間、長くても24時間以内に跡を残さず消える。強い痒みを伴うのも特徴だ。だから正解は膨疹になる。
医学生医学生
どうして痒くて、赤くて、盛り上がるんでしょうか。
ドクタードクター
主役は肥満細胞から放出されるヒスタミンなどの化学伝達物質だ。血管が拡張して赤くなり、血管透過性が高まって真皮に浮腫ができて盛り上がり、知覚神経が刺激されて痒くなる。3つの症状が1つの機序で説明できるんだ。
医学生医学生
免疫学の講義で習ったⅠ型アレルギーの話とつながりました。では、ほかの選択肢との違いも確認したいです。丘疹も盛り上がりですよね。
ドクタードクター
丘疹は直径おおむね1cm以下の小さな限局性隆起で、表皮の肥厚や真皮の細胞浸潤でできるから、数時間で消えることはない。今回は面積が広く、しかもすぐ消えるので当てはまらない。
医学生医学生
局面は広い盛り上がりなので、見た目は近い気がします。
ドクタードクター
そう、形だけなら紛らわしい。局面は丘疹が融合したものなどを含む、一定以上の広さをもつ扁平隆起で、乾癬の皮疹が代表だ。ただし持続的な病変を指す言葉だから、数時間で消える浮腫である膨疹は、広くても普通は局面とは呼ばない。
医学生医学生
紅斑は、赤いという点では合っていますよね。
ドクタードクター
紅斑は真皮の血管拡張・充血による赤い斑で、原則として隆起しない。ガラス板で圧迫すると色が消える点で紫斑と区別できるね。膨疹も周りが赤くなるけれど、主体は浮腫による隆起だから紅斑には分類しない。水疱は表皮内や表皮下に漿液がたまった隆起で、写真に液体を含む隆起はないし、すぐ消える経過とも合わない。
医学生医学生
隆起していて赤くて広い、という共通点に惑わされず、「短時間で跡を残さず消える」が決め手なんですね。OSCEの医療面接で「その皮疹はどのくらいで消えますか」と聞く意味がやっとわかりました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。蕁麻疹は受診時に皮疹が消えていることも多いから、問診とスマートフォンの写真がとても役に立つ。ここから発展知識だ。蕁麻疹は発症から6週間以内を急性、6週間を超えて続くものを慢性と呼ぶ。今回は夕食後の発症だから食物などの誘因も考えるけれど、実際には原因を特定できない特発性が多いんだ。
医学生医学生
薬や感染、物理的な刺激でも起こると聞きました。皮膚を擦ると線状に出るのは皮膚描記症でしたっけ。
ドクタードクター
その通り。NSAIDsなどの薬剤、感染、機械的擦過や寒冷、日光なども誘因になる。治療の基本は誘因の回避と第2世代抗ヒスタミン薬の内服だ。そして臨床で絶対に見逃したくないのが、浮腫が真皮深層から皮下組織まで及ぶ血管性浮腫と、アナフィラキシーだよ。
医学生医学生
口唇や眼瞼の腫れに加えて、声がかすれる、息苦しい、血圧が下がるといった症状があれば、すぐにアドレナリンの筋注を考える、ということですね。
ドクタードクター
そう。蕁麻疹を診たら、皮膚だけでなく気道・呼吸・循環・消化器症状がないかを必ず確認しよう。皮疹の種類を正しく言語化できることが、その先の診断と危険の察知につながるんだ。

まとめ

膨疹は真皮上層の限局性・一過性の浮腫による扁平な隆起で、周囲に発赤と強い痒みを伴い、通常は数時間(長くても24時間以内)で跡を残さず消え、場所を変えて出没を繰り返します。肥満細胞から放出されるヒスタミンなどが血管拡張・血管透過性亢進・知覚神経刺激を起こすことで生じ、膨疹を主体とする疾患が蕁麻疹です。丘疹は1cm以下の持続性隆起、局面は面積の広い持続性の扁平隆起、紅斑は隆起しない血管拡張による赤い斑、水疱は漿液を含む隆起であり、皮疹の種類は形だけでなく持続時間や内容物の定義で区別します。蕁麻疹では誘因の検索と抗ヒスタミン薬が治療の基本ですが、血管性浮腫やアナフィラキシーの合併を見逃さないことが重要で、皮疹を正確に言語化する力はその後の診療判断の土台になります。

解答・解説

正解はeです

所見の整理

32歳の女性。主訴は痒みのある皮疹である。前日の夕食後に背部へ皮疹が出現し、それが消えたのちに今度は下肢に同じような皮疹が現れている。つまり「個々の皮疹は短時間で跡を残さず消え、場所を変えて新たに出没する」という経過であり、強い瘙痒を伴う。下肢の写真では、周囲に発赤を伴い、境界のはっきりした扁平な盛り上がりが地図状・環状に広がっている。

診断へのプロセス

短時間(通常は数十分〜数時間、長くても24時間以内)で消退する一過性の隆起性皮疹で、強い痒みを伴い、出没を繰り返す――これは真皮上層に生じる限局性の一過性浮腫、すなわち膨疹の特徴そのものである。膨疹を主体とする疾患は蕁麻疹であり、本症例は急性蕁麻疹と考えられる。夕食後の発症であることから、食物(あるいは食事に関連した要因)による誘発も念頭に置くが、蕁麻疹の多くは原因を特定できない特発性である。

設問の考え方

問われているのは診断名ではなく「皮疹(発疹)の種類」である。皮疹の名称は見た目だけでなく、隆起の有無・大きさ・内容物・持続時間などの定義で区別される。本例は「隆起している」「赤い」「面積が広い」という点だけをみると丘疹・紅斑・局面とも紛らわしいが、決め手は「一過性で、跡を残さず短時間で消退する」という時間経過である。この性質をもつ原発疹は膨疹のみである。

選択肢考察

  1. ×a.  丘疹

    丘疹は皮膚面から半球状や扁平に盛り上がる、直径おおむね1cm以下(5〜10mm程度まで)の小さな限局性隆起である。表皮の肥厚や真皮の細胞浸潤などが原因で生じ、通常は数時間で消えることはない。本例の皮疹は面積が広く、しかも短時間で消退するため丘疹には当たらない。

  2. ×b.  局面

    局面は、扁平に隆起して一定以上の広さをもつ皮膚病変の総称で、丘疹が集まって融合したものなども含まれる(乾癬の皮疹などが代表)。持続的な病変を指す用語であり、数時間で消える一過性の浮腫である膨疹は、広い範囲に及んでいても通常局面とは呼ばない。

  3. ×c.  紅斑

    紅斑は、真皮乳頭層〜乳頭下層の血管拡張・充血によって生じる赤い色調の変化で、原則として隆起を伴わない(平坦な)斑である。硝子圧法(ガラス板で圧迫)で退色する点で紫斑と区別される。膨疹も周囲に発赤を伴うが、主体は真皮の浮腫による隆起であり、紅斑とは分類しない。

  4. ×d.  水疱

    水疱は表皮内または表皮下に透明な液体(漿液)が貯留して生じる限局性の隆起で、直径5mm程度未満の小さいものは小水疱と呼ぶ。内容が膿性なら膿疱である。本例の写真では液体を含む隆起はみられず、短時間で消退する経過とも合わない。

  5. ○e.  膨疹

    膨疹は真皮上層の限局性・一過性の浮腫による扁平な隆起で、周囲に発赤を伴い、強い痒みがあり、通常は数時間(長くとも24時間以内)で跡を残さずに消える。肥満細胞から放出されたヒスタミンなどが、血管拡張(発赤)、血管透過性亢進(浮腫による膨隆)、知覚神経刺激(瘙痒)を起こすことで生じる。背部の皮疹が消えた後に下肢へ同様の皮疹が出現したという出没性の経過と、写真の境界明瞭な地図状の膨隆はまさに膨疹であり、正しい。膨疹を主症状とする疾患が蕁麻疹である。

原発疹と続発疹

皮疹は、皮膚に最初に現れる原発疹と、原発疹に続いて二次的に生じる続発疹に分けられる。 ・原発疹: 斑(紅斑・紫斑・色素斑・白斑)、丘疹、結節、腫瘤、水疱、膿疱、嚢腫、膨疹など ・続発疹: びらん、潰瘍、亀裂、鱗屑、痂皮、胼胝、瘢痕、萎縮など 局面は丘疹などが融合・拡大して一定の面積をもった扁平隆起を指す用語として扱われる。

主な原発疹の定義

・紅斑: 血管拡張による赤い斑。隆起しない。硝子圧で消える。 ・紫斑: 皮内出血による紫〜赤色の斑。硝子圧で消えない。 ・丘疹: 直径おおむね1cm以下の限局性隆起。 ・結節: 丘疹より大きい(1〜3cm程度)隆起。さらに大きいものを腫瘤と呼ぶ。 ・水疱: 漿液を含む隆起。小さいものは小水疱。 ・膿疱: 膿を含む隆起。 ・膨疹: 真皮上層の一過性浮腫。短時間で跡を残さず消える。

蕁麻疹の概要

蕁麻疹は膨疹が出没を繰り返す疾患で、肥満細胞の脱顆粒によるヒスタミンなどの化学伝達物質が主役である。発症から6週間以内のものを急性蕁麻疹、6週間を超えて続くものを慢性蕁麻疹と呼ぶ。原因を特定できない特発性が多いが、食物・薬剤(NSAIDsなど)・感染・物理的刺激(機械的擦過、寒冷、日光など)が誘因となることもある。皮膚を擦ると膨疹が線状に生じる皮膚描記症(人工蕁麻疹)もその一型である。治療の基本は原因・誘因の回避と第2世代抗ヒスタミン薬の内服である。真皮深層〜皮下組織に浮腫が及ぶと血管性浮腫(クインケ浮腫)となり、口唇や眼瞼が腫れ、気道浮腫やアナフィラキシーを伴う場合は緊急対応が必要になる。

POINT

・膨疹=真皮上層の限局性・一過性浮腫。痒みが強く、数時間(24時間以内)で跡を残さず消える。 ・「出現しては消え、場所を変えて再出現する痒い皮疹」は膨疹であり、蕁麻疹を考える。 ・紅斑は隆起しない色調変化、丘疹は1cm以下の持続性隆起、局面は面積の広い扁平隆起、水疱は漿液を含む隆起。 ・皮疹の種類は形だけでなく持続時間・内容物などの定義で区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。