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骨導は正常、気導だけが沈む―オージオグラムで見抜く外耳道閉鎖症

第111回医師国家試験 I問題 第40問

国試問題にチャレンジ

第111回 I問題 第40問

難聴疾患の純音聴力検査の結果を別に示す。  外耳道閉鎖症のオージオグラムはどれか。

第111回 I問題 第40問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤
  6. f.⑥
  7. g.⑦

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は7つのオージオグラムから外耳道閉鎖症のものを選ぶ問題だ。カギになるのは、気導と骨導の関係、つまり気骨導差があるかどうか。そして、障害が音の通り道のどこにあるかを考えることだ。まず、気導と骨導の違いを説明できるかな。
医学生医学生
気導はヘッドホンで外耳道から聞かせる音で、骨導は耳の後ろに振動子を当てて頭蓋骨を通して聞かせる音ですよね。
ドクタードクター
その通り。気導は外耳・中耳・内耳・聴神経と全経路を通るから、どこが障害されても下がる。一方、骨導は外耳と中耳をバイパスして直接内耳に届くから、主に内耳から先の機能を反映する。だから、骨導が正常で気導だけが下がっていれば外耳か中耳の問題、つまり伝音難聴。気導も骨導も一緒に下がっていれば感音難聴だ。
医学生医学生
OSCEの練習でWeber試験やRinne試験をやったときも、同じ考え方で伝音か感音かを分けました。
ドクタードクター
いいつながりだね。では外耳道閉鎖症はどちらの難聴になると思う?
医学生医学生
外耳道がふさがって音が鼓膜まで届かないので、伝音難聴ですね。内耳は関係なさそうなので骨導は正常だと思います。
ドクタードクター
正解。外耳道閉鎖症は先天的なものが多く、胎生期の第1鰓溝や第1・第2鰓弓の発生異常で起こる。内耳は耳胞という別の起源から発生するから、多くの場合は正常に保たれる。完全に閉じていれば気導はしっかり下がり、全周波数でほぼ平坦に40〜60dB程度の低下、大きな気骨導差を示すのが典型だ。
医学生医学生
じゃあ、骨導が保たれていて気導だけ下がっているグラフを探せばいいんですね。
ドクタードクター
そう。7つのうち、その伝音難聴の型は2つある。1つは両耳とも骨導がほぼ0〜10dBで、気導が40〜55dBで全周波数にわたり平坦に下がっているもの。もう1つは、気導が低音域ほど強く下がり、さらに2,000Hzだけ骨導が凹んでいるものだ。
医学生医学生
2,000Hzの骨導の凹み……講義で聞いたCarhartの凹みでしょうか。
ドクタードクター
よく覚えていたね。アブミ骨が固着して骨導の伝わり方が変わるために生じる所見で、耳硬化症に特徴的だ。耳硬化症も伝音難聴だけど、低音域で気骨導差が大きいのも特徴になる。だから外耳道閉鎖症に合うのは、平坦な気導低下と大きな気骨導差を示すほうのオージオグラムになる。
医学生医学生
伝音難聴でも、凹みの有無や形で区別できるんですね。ほかのグラフはどう読めばいいですか。
ドクタードクター
残りはすべて気導と骨導が一緒に下がる感音難聴だ。両耳とも4,000Hzだけがぐっと落ち込むものはc5 dipと呼ばれ、騒音性難聴や音響外傷の初期像。右耳だけ低音域が下がるものはMénière病や急性低音障害型感音難聴でみられる型だ。
医学生医学生
耳鼻科を回ったとき、めまい外来でまさに低音だけ落ちたオージオグラムを見ました。
ドクタードクター
典型的だね。両耳とも高音にかけてなだらかに下がっていくのは高音漸傾型で、加齢性難聴の典型像。右耳だけ全周波数で大きく下がっているものは一側性の感音難聴で、急に起こったなら突発性難聴などを考える。両耳とも気導・骨導がほとんどスケールアウトしているのは両側の高度感音難聴で、補聴器の効果が乏しければ人工内耳の検討対象になる。
医学生医学生
まず気骨導差の有無で伝音か感音かを分けて、次に周波数ごとの形で疾患を絞り込む、という順番ですね。
ドクタードクター
その2段階が基本だ。発展知識として、外耳道閉鎖症は小耳症を伴うことが多く、外耳と中耳は同じ鰓器官に由来するので耳小骨奇形などの中耳奇形も合併しやすい。Treacher Collins症候群などに合併することもある。診断は視診と側頭骨CTで、外耳道・鼓室・耳小骨・内耳を評価する。もし内耳奇形があれば骨導も下がって混合性難聴になる。
医学生医学生
両側の場合は、言葉の発達が心配になりますね。
ドクタードクター
大事な視点だ。両側例では言語発達のために早期から骨導補聴器などで聴覚を補う。成長に応じて外耳道形成術や耳介形成術、埋め込み型骨導補聴器などが選択肢になる。それから、外耳や中耳の障害だけで生じる気導低下はおおむね60dB程度が上限で、それを大きく超えるなら感音成分の合併を考える、というのも覚えておくと役に立つ。

まとめ

純音聴力検査では、骨導が正常で気導だけが低下し気骨導差があれば伝音難聴(外耳・中耳の障害)、気導と骨導がともに低下すれば感音難聴(内耳・後迷路の障害)と判断します。外耳道閉鎖症は音が鼓膜に届かない伝音難聴で、内耳は保たれることが多いため、骨導正常のまま気導が全周波数で平坦に40〜60dB程度低下し、大きな気骨導差を示すのが典型です。同じ伝音難聴でも、2,000Hzの骨導低下(Carhartの凹み)を伴えば耳硬化症を考え、感音難聴ではc5 dipなら騒音性難聴、低音障害型ならMénière病など、高音漸傾型なら加齢性難聴と、形から疾患を絞り込めます。外耳道閉鎖症は小耳症や中耳奇形を伴いやすく、両側例では言語発達のため早期の聴覚補償が重要です。「気骨導差の有無→周波数ごとの形」という2段階の読み方は、あらゆるオージオグラム問題と実臨床の聴力評価の土台になります。

解答・解説

正解はgです

オージオグラムの読み方

純音聴力検査では、横軸に周波数(125~8,000Hz)、縦軸に聴力レベル(dB、下へ行くほど難聴が強い)をとる。記号は、右耳の気導が○(赤・実線)、左耳の気導が×(青・破線)、右耳の骨導が「[」、左耳の骨導が「]」である。スケールアウト(最大出力でも聞こえない)は記号に斜め下向きの矢印を付けて示す。 ・気導聴力:外耳道から鼓膜・耳小骨を経て内耳に届く音の聞こえ。外耳から内耳・聴神経までの全経路を反映する。 ・骨導聴力:頭蓋骨の振動で直接内耳に届く音の聞こえ。主に内耳以降(感音系)の機能を反映する。

難聴の型の判定

・伝音難聴:骨導は正常で、気導だけが低下する(気導と骨導の差=気骨導差〈air-bone gap〉がある)。障害部位は外耳・中耳。 ・感音難聴:気導と骨導がともに同程度に低下し、気骨導差がない。障害部位は内耳・後迷路。 ・混合性難聴:骨導が低下し、さらに気導がそれ以上に低下する。

本問の考え方

外耳道閉鎖症は外耳道が先天的(まれに後天的)に閉じている状態で、音が鼓膜に届かないため伝音難聴になる。内耳は通常正常なので骨導は保たれる。外耳道が完全に閉じていると気導の低下は大きく、全周波数にわたって40~60dB程度のほぼ平坦な気導低下と、大きな気骨導差を示すのが典型である。 7つのオージオグラムのうち、骨導がほぼ正常で気導だけが低下している伝音難聴の型は④と⑦である。④は2,000Hzで骨導が選択的に低下し(Carhartの凹み)、低音域ほど気導低下が強いことから耳硬化症の型である。⑦は両耳とも骨導がほぼ0~10dBと正常で、気導が40~55dBで全周波数にわたり平坦に低下し、気骨導差が約40~50dBと大きい。これが外耳道閉鎖症に合致する。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    両耳とも125~2,000Hzおよび8,000Hzはほぼ正常で、4,000Hzだけが40~45dB程度に落ち込んでいる。気導と骨導が一緒に下がっており感音難聴である。4,000Hz付近の限局した谷はc5 dipと呼ばれ、騒音性難聴(職業性の慢性騒音曝露)や音響外傷の初期像に典型的である。

  2. ×b.  ②

    左耳は正常で、右耳のみ125~500Hzの低音域で気導が30~40dB程度に低下し、高音域はほぼ正常である。低音域の骨導も気導とほぼ同じレベルに低下しており、気骨導差のない感音難聴である。低音障害型の一側性感音難聴であり、Ménière病や急性低音障害型感音難聴でみられる型である。

  3. ×c.  ③

    両耳とも気導・骨導がほとんどの周波数でスケールアウト(矢印付きの記号)となっており、気導は90~110dB以上の高度~重度の低下である。両側の高度感音難聴(聾)であり、補聴器の効果が乏しい場合は人工内耳の適応となる。骨導は検査機器の最大出力が低いため、低い値でも反応なしと表示される点に注意する。

  4. ×d.  ④

    両耳とも骨導はおおむね正常で、気導が低音域で45~55dBと低下し、高音域ほど改善する(低音域ほど気骨導差が大きい)伝音難聴である。加えて2,000Hzだけ骨導が25dB程度に下がる凹みがあり、これはCarhartの凹み(Carhart notch)と呼ばれる。アブミ骨の固着により骨導の伝達が変化するために生じ、耳硬化症に特徴的である。伝音難聴ではあるが外耳道閉鎖症の型ではない。

  5. ×e.  ⑤

    両耳とも低音~中音域はほぼ正常で、2,000Hzから高音域にかけて徐々に聴力が低下していく(高音漸傾型)。骨導も気導と同様に低下しており、両側対称性の感音難聴である。加齢性難聴(老人性難聴)の典型像である。

  6. ×f.  ⑥

    左耳は正常で、右耳のみ全周波数にわたって60~80dBに低下している。右耳の骨導も55~60dB程度と気導とほぼ同じレベルに低下しており、気骨導差のない一側性感音難聴である。突発性難聴などでみられる型である(実際の診断には急性発症などの病歴が必要)。

  7. ○g.  ⑦

    両耳とも骨導は0~10dBとほぼ正常であるのに対し、気導は40~55dBで全周波数にわたりほぼ平坦に低下しており、気骨導差は約40~50dBと大きい。内耳機能は保たれ、音の通り道だけが障害された両側の伝音難聴であり、外耳道が閉鎖して音が鼓膜に届かない外耳道閉鎖症の所見に合致する。耳硬化症(④)と異なり、Carhartの凹みはみられず、気導低下も周波数によらず平坦である。

外耳道閉鎖症

先天性外耳道閉鎖症は、胎生期の第1鰓溝・第1・第2鰓弓の発生異常によって生じ、小耳症(耳介奇形)を伴うことが多い。片側例が多いが両側例もある。Treacher Collins症候群などの症候群に合併することもある。外耳と中耳は同じ鰓器官に由来するため耳小骨奇形などの中耳奇形を伴いやすいが、内耳は別の起源(耳胞)から発生するため正常であることが多い。 ・聴力:伝音難聴(気骨導差が大きく、気導は40~60dB程度の平坦型が多い)。内耳奇形を伴えば骨導も低下し混合性難聴となる。 ・診断:視診(耳介・外耳道の観察)と側頭骨CT(外耳道・鼓室・耳小骨・内耳の評価)。 ・対応:両側例では言語発達のため早期から骨導補聴器などで聴覚補償を行う。外耳道形成術や耳介形成術、埋め込み型骨導補聴器(BAHAなど)が選択肢となる。後天性の外耳道閉鎖は外傷・手術・慢性炎症後の瘢痕狭窄などで生じる。

代表的なオージオグラムの型

・c5 dip(4,000Hzの谷):騒音性難聴・音響外傷 ・低音障害型感音難聴:Ménière病、急性低音障害型感音難聴 ・高音漸傾型感音難聴(両側対称):加齢性難聴 ・Carhartの凹み(2,000Hz付近の骨導低下)を伴う伝音難聴:耳硬化症 ・平坦型で気骨導差の大きい伝音難聴:外耳道閉鎖症、耳小骨連鎖離断など ・一側性の感音難聴(急性発症):突発性難聴、ムンプス難聴、聴神経腫瘍など ・両側高度感音難聴(スケールアウト):聾。人工内耳の検討対象

伝音難聴の気骨導差の上限

外耳・中耳の障害だけで生じる気導低下はおおむね60dB程度が上限であり、それを超える場合は感音成分の合併(混合性難聴)を考える。

POINT

・伝音難聴=骨導正常+気導低下(気骨導差あり)、感音難聴=気導・骨導ともに低下(気骨導差なし)。 ・外耳道閉鎖症:骨導正常、気導が平坦に40~60dB低下する大きな気骨導差の伝音難聴。 ・耳硬化症:伝音難聴+2,000Hzの骨導低下(Carhartの凹み)。 ・c5 dip=騒音性難聴、低音障害型=Ménière病など、高音漸傾型=加齢性難聴。 ・外耳道閉鎖症は小耳症・中耳奇形を伴いやすく、内耳は保たれることが多い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。