皮膚に浮かぶ網目模様は血管からのサイン―網状皮斑で結節性多発動脈炎を思い出す
第111回医師国家試験 I問題 第2問
国試問題にチャレンジ
網状皮斑から疑うべきなのはどれか。
- a.糖尿病
- b.甲状腺機能低下症
- c.結節性多発動脈炎
- d.サルコイドーシス
- e.全身性アミロイドーシス
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
網状皮斑は、皮膚の細動脈がつくる灌流単位の境界部に脱酸素化血液がうっ滞して網目状に透見される所見で、持続的・不規則な樹枝状のもの(livedo racemosa)は皮膚の中小動脈の循環障害を示す病的なサインです。代表的な原因が中型動脈の壊死性血管炎である結節性多発動脈炎で、発熱・体重減少、多発性単神経炎、高血圧、腹痛に網状皮斑や有痛性皮下結節を伴えば強く疑います。糖尿病の黒色表皮腫やリポイド類壊死症、甲状腺機能低下症の粘液水腫、サルコイドーシスの結節性紅斑や瘢痕浸潤、アミロイドーシスの眼瞼周囲の紫斑など、各疾患の代表的皮膚所見と区別して覚えることが重要です。病的な網状皮斑では抗リン脂質抗体症候群やSLE、コレステロール塞栓症なども鑑別に挙がるため、皮膚所見を全身疾患の入り口として捉える視点が臨床で役立ちます。
解答・解説
正解はcです
網状皮斑(livedo)は、皮膚に紫紅色〜青紫色の網目模様が浮かび上がる所見である。皮膚の血流は、真皮深層から垂直に立ち上がる細動脈を中心に、直径1〜3cmほどの円錐状の灌流単位を形成している。灌流単位の中心部は酸素化された血液で満たされるが、隣り合う単位の境界部(分水嶺)は血流が最も乏しく、静脈叢に脱酸素化された血液がうっ滞しやすい。この境界部が青紫色に透見されることで、網目模様として見えるのである。 網状皮斑には、寒冷刺激で一時的に出現し温めると消える生理的なものと、血管そのものの病変や血液の性状異常によって持続する病的なものがある。病的な網状皮斑を引き起こす代表的な機序は、(1)中小動脈の血管炎による内腔狭窄、(2)血栓・塞栓による閉塞、(3)血液の粘稠度上昇である。 したがって本問では、「網目状の皮斑=皮膚の細動脈〜小動脈レベルの循環障害」と置き換えて考え、選択肢の中から皮膚の中小動脈に病変をきたす疾患を選べばよい。中型の筋性動脈を主座とする壊死性血管炎である結節性多発動脈炎が最もよく当てはまる。他の選択肢はいずれも特徴的な皮膚所見をもつが、それは網状皮斑ではない。
選択肢考察
- ×a. 糖尿病
糖尿病に伴う皮膚病変としては、インスリン抵抗性を背景とする黒色表皮腫(頸部・腋窩などの黒褐色でビロード状の皮膚肥厚)、下腿前面に萎縮性の褐色斑が多発する糖尿病性皮膚症(前脛骨部色素斑)、下腿前面の黄色調で萎縮性の局面であるリポイド類壊死症、項部〜背部の皮膚が硬く厚くなる糖尿病性浮腫性硬化症、水疱、足壊疽・潰瘍などが知られている。網状皮斑は糖尿病の典型的な皮膚所見ではない。
- ×b. 甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症では、真皮にグリコサミノグリカンが沈着して指で押しても圧痕が残らない浮腫(粘液水腫)が生じるほか、代謝低下と発汗減少による皮膚の乾燥・冷感、カロテン血症による黄色調の皮膚、脱毛、眉毛外側1/3の脱落などがみられる。網状皮斑は本症を疑う手がかりとはならない。
- ○c. 結節性多発動脈炎
結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)は、中型の筋性動脈に壊死性血管炎を起こす疾患である。皮膚の真皮深層〜皮下脂肪織にある小〜中動脈が侵されると、その支配領域の血流が低下し、網状皮斑が出現する。病的な網状皮斑は網目の輪が途切れて不規則な樹枝状を呈し(livedo racemosa)、温めても消えない。PANではほかに、動脈に沿った有痛性の皮下結節、皮膚潰瘍、指趾の壊疽などもみられる。皮膚所見に加えて発熱・体重減少、多発性単神経炎、高血圧、腹痛(腸間膜動脈病変)、筋痛などを伴えば、本症を強く疑う。
- ×d. サルコイドーシス
サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が全身にできる疾患である。皮膚病変は、肉芽腫そのものが皮膚にできる特異的病変(皮膚サルコイド:結節型・局面型・びまん浸潤型・皮下型など、古い傷あとに肉芽腫が生じて隆起する瘢痕浸潤)と、肉芽腫を伴わない非特異的病変(下腿前面の有痛性紅斑である結節性紅斑が代表)に分けられる。網状皮斑は本症の特徴的所見ではない。
- ×e. 全身性アミロイドーシス
全身性アミロイドーシス(特にALアミロイドーシス)では、血管壁にアミロイドが沈着して血管がもろくなるため、軽くこすったりつまんだりするだけで紫斑が出る(眼瞼周囲の紫斑が有名)。そのほか、ろう様光沢のある丘疹・結節、強皮症に似た皮膚の硬化・肥厚、巨舌などがみられる。網状皮斑は本症を疑う代表的な所見ではない。
網状皮斑の分類
・大理石様皮膚(cutis marmorata):寒冷時に一時的に出現し、加温で消える生理的な網目模様。乳幼児や若年女性にみられやすい。 ・livedo reticularis:網目の輪が閉じた規則的な網状模様。生理的なものと病的なものの両方がありうる。 ・livedo racemosa(分枝状皮斑):網目の輪が途切れた不規則な樹枝状の模様で、持続性。病的意義が高く、基礎疾患の検索が必要となる。
病的な網状皮斑をきたす主な疾患
・血管炎:結節性多発動脈炎、皮膚動脈炎(皮膚に限局した結節性多発動脈炎)、クリオグロブリン血症性血管炎 など ・膠原病・血栓性疾患:全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、Sneddon症候群(網状皮斑と脳梗塞を合併する) ・塞栓:コレステロール塞栓症(カテーテル操作後などに足趾のチアノーゼ・網状皮斑が出現する) ・その他:リベド様血管症、過粘稠度症候群、寒冷凝集素症 など
結節性多発動脈炎の要点
・中型血管炎に分類される壊死性血管炎で、ANCA(抗好中球細胞質抗体)は通常陰性である。 ・B型肝炎ウイルス感染との関連が知られている。 ・腎では糸球体腎炎ではなく腎動脈の血管炎による腎梗塞・腎血管性高血圧が起こる。 ・血管造影で腎・腸間膜などの動脈に多発する小動脈瘤や狭窄がみられる。 ・診断は皮膚・筋・神経などの生検で中小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎を証明することによる。 ・治療は副腎皮質ステロイドを基本とし、重症例ではシクロホスファミドなどの免疫抑制薬を併用する。
POINT
・網状皮斑は皮膚の細動脈〜小動脈領域の循環障害を反映する所見である。 ・輪が途切れた不規則な網状皮斑(livedo racemosa)は病的であり、血管炎(特に結節性多発動脈炎)、抗リン脂質抗体症候群、SLE、コレステロール塞栓症などを考える。 ・結節性多発動脈炎の皮膚所見:網状皮斑、有痛性皮下結節、皮膚潰瘍、指趾壊疽。 ・他疾患の代表的皮膚所見:糖尿病=黒色表皮腫・リポイド類壊死症、甲状腺機能低下症=粘液水腫、サルコイドーシス=結節性紅斑・瘢痕浸潤、アミロイドーシス=眼瞼周囲の紫斑・巨舌。
