StudyMed医師国家試験

γ-GTPだけが上がるとき―ALPが黙っている理由から読む脂肪肝

第110回医師国家試験 I問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第110回 I問題 第6問

血中γ-GTPが高値で,ALPが基準範囲内に留まるのはどれか。

  1. a.胆管癌
  2. b.総胆管結石
  3. c.原発性硬化性胆管炎
  4. d.原発性胆汁性肝硬変〈原発性胆汁性胆管炎〉
  5. e.非アルコール性脂肪性肝炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は肝機能検査の読み方の問題だ。γ-GTPとALPはどちらも「胆道系酵素」とまとめて呼ばれるけれど、実は上がる理由が少し違う。その違いに気づけるかどうかがポイントになるよ。まず、この2つの酵素が一緒に上がるのはどんな状態だと思う?
医学生医学生
胆汁の流れが悪くなったとき、つまり胆汁うっ滞ですよね。CBTの勉強で「胆道系酵素は胆汁うっ滞で上がる」と覚えました。
ドクタードクター
その通り。γ-GTPもALPも胆管上皮や肝細胞の毛細胆管側の膜に多く存在していて、胆汁がうっ滞すると胆汁酸の作用で膜から遊離したり、合成が増えたりして、両者がそろって血中で上昇する。では選択肢を、胆汁うっ滞を起こすかどうかで分けてみよう。
医学生医学生
胆管癌と総胆管結石は、太い胆管が詰まる閉塞性黄疸の代表なので、γ-GTPもALPも両方上がりそうです。
ドクタードクター
正解。どちらも肝臓の外の胆管が物理的にふさがれるタイプだね。総胆管結石が嵌頓して急性胆管炎を起こすと、発熱・黄疸・右上腹部痛のCharcot三徴がそろい、胆管内圧の急上昇でASTやALTが一過性に著明に上がることもある。胆管癌ではCA19-9が上がることがある。では、肝臓の中の細い胆管が障害される疾患はどうかな。
医学生医学生
原発性胆汁性胆管炎と原発性硬化性胆管炎ですね。肝内なら閉塞の程度が軽くて、ALPはあまり上がらないのかなと少し迷いました。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだね。胆汁うっ滞は肝外でも肝内でも起こり、どちらでもγ-GTPとALPは同時に上がる。原発性胆汁性胆管炎は中年女性に多く、小葉間胆管が自己免疫的に壊される病気で、抗ミトコンドリア抗体陽性とIgM高値、皮膚瘙痒感が特徴。むしろALP上昇は診断の手がかりになるくらいなんだ。
医学生医学生
原発性硬化性胆管炎は、消化器内科の講義で潰瘍性大腸炎との合併を強調されていました。
ドクタードクター
よく覚えているね。肝内外の胆管に線維性の狭窄が多発して、胆管造影では数珠状の狭窄と拡張がみられる。慢性の胆汁うっ滞なので、やはりALPは上がるし、胆管癌の発生リスクも高い。ここまでの4つはすべて胆汁うっ滞の仲間というわけだ。
医学生医学生
ということは、残る非アルコール性脂肪性肝炎が答えですね。でも、胆汁うっ滞がないのにγ-GTPが上がるのはなぜですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。γ-GTPはALPと違って、胆汁うっ滞がなくても上がりやすい酵素なんだ。肝細胞での合成が誘導されやすく、飲酒や抗てんかん薬などの薬物、そして脂肪肝で上昇する。非アルコール性脂肪性肝炎は肥満や2型糖尿病、脂質異常症を背景に肝細胞に脂肪が沈着し、炎症や線維化が起こる病態で、ALT優位のトランスアミナーゼ上昇とγ-GTP上昇がみられる一方、胆汁うっ滞は起こさないのでALPは基準範囲にとどまることが多い。
医学生医学生
健診でγ-GTPだけ高い人に「お酒を控えてください」と言うのも、同じ理屈なんですね。
ドクタードクター
そうだね。アルコールによるγ-GTP上昇は飲酒量をよく反映し、禁酒すると数週間で下がってくるから、飲酒の指標にも使われる。ただし飲まない人でもγ-GTPが高ければ、脂肪肝や薬剤を考えることが大切だ。
医学生医学生
逆に、γ-GTPが正常でALPだけが高い場合はどう考えればいいでしょうか。
ドクタードクター
それは肝胆道以外の由来を疑う場面だ。ALPは骨や胎盤、小腸にも存在するから、成長期の小児、妊娠後期、骨転移や副甲状腺機能亢進症、骨Paget病などでALPだけが上がる。γ-GTPが一緒に上がっているか、ALPアイソザイムを調べることで由来を判断するんだ。
医学生医学生
肝細胞障害型はAST・ALT優位、胆汁うっ滞型はALP・γ-GTP優位、そしてγ-GTPとALPのずれから原因を絞る、という流れで整理できそうです。
ドクタードクター
その整理で十分だよ。最後に補足すると、非アルコール性脂肪性肝炎は2023年に国際的な名称の見直しがあり、今は代謝機能障害関連脂肪性肝炎、MASHと呼ばれるようになっている。メタボリックシンドロームとの関係を意識した名前だね。また、脂肪性肝炎でもALPが軽度上がる例はあるから、数値は単独ではなく背景とあわせて判断しよう。

まとめ

γ-GTPとALPはともに胆道系酵素で、胆管癌や総胆管結石のような肝外胆管閉塞でも、原発性胆汁性胆管炎や原発性硬化性胆管炎のような肝内胆汁うっ滞でも、両者がそろって上昇します。一方、γ-GTPは胆汁うっ滞がなくても飲酒・抗てんかん薬などの薬物・脂肪肝で合成が誘導されて上昇し、この場合ALPは基準範囲にとどまることが多いのが特徴です。非アルコール性脂肪性肝炎(現在の名称はMASH)はALT優位のトランスアミナーゼ上昇とγ-GTP上昇を示しますが、胆汁うっ滞を伴わないためALPは上がりにくく、本問の正解となります。反対にγ-GTP正常でALPだけ高ければ、骨や胎盤由来を考えます。2つの酵素の「上がり方のずれ」に注目する視点は、健診や外来で肝機能異常の原因を絞り込むうえで役立ちます。

解答・解説

正解はeです

γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)と ALP(アルカリホスファターゼ)は、どちらも胆管上皮や肝細胞の毛細胆管側の膜に多い酵素で、「胆道系酵素」と呼ばれる。胆汁の流れが妨げられる状態(胆汁うっ滞)では、胆汁酸の作用で膜から遊離したり、合成が増えたりして、両者がそろって血中で上昇する。胆汁うっ滞の原因が肝臓の外の太い胆管の閉塞(胆管癌、総胆管結石など)でも、肝臓内の細い胆管の障害(原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎など)でも、この「γ-GTP と ALP の同時上昇」がみられる。 一方、γ-GTP は ALP とは異なり、胆汁うっ滞がなくても上昇しやすい酵素である。γ-GTP は飲酒や一部の薬物(抗てんかん薬など)によって肝細胞での合成が誘導され、また脂肪肝でも上昇する。こうした状態では胆汁うっ滞を伴わないため、ALP は基準範囲にとどまることが多い。 したがって本問は、選択肢の疾患を「胆汁うっ滞を起こす疾患(γ-GTP・ALP がともに上昇)」と「胆汁うっ滞を伴わずに γ-GTP が上がる状態」に分けて考えればよい。後者に当たるのは非アルコール性脂肪性肝炎だけである。

選択肢考察

  1. ×a.  胆管癌

    誤り。胆管癌は胆管上皮から発生する悪性腫瘍で、腫瘍が胆管を狭窄・閉塞させるため閉塞性黄疸を来しやすい。胆汁うっ滞により γ-GTP と ALP がともに上昇し、直接ビリルビンも上昇する。腫瘍マーカーとして CA19-9 や CEA の上昇もみられることがある。

  2. ×b.  総胆管結石

    誤り。総胆管結石は肝外胆管の閉塞を起こし、胆汁うっ滞によって γ-GTP と ALP がともに上昇する。結石が嵌頓して急性胆管炎を併発すると、発熱・黄疸・右上腹部痛(Charcot 三徴)がそろい、直接ビリルビン高値に加えて、急な胆管内圧上昇を反映して AST・ALT が一過性に著明に上がることもある。

  3. ×c.  原発性硬化性胆管炎

    誤り。原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)は、肝内外の胆管に原因不明の線維性狭窄が多発し、慢性の胆汁うっ滞を来す疾患である。γ-GTP と ALP の上昇が特徴で、胆管造影では数珠状の狭窄・拡張像(beaded appearance)がみられる。潰瘍性大腸炎の合併が多く、胆管癌の発生リスクも高い。

  4. ×d.  原発性胆汁性肝硬変〈原発性胆汁性胆管炎〉

    誤り。原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis:PBC、旧称は原発性胆汁性肝硬変)は、肝内の小葉間胆管が自己免疫的に破壊される慢性の胆汁うっ滞性肝疾患である。中年女性に多く、γ-GTP と ALP の上昇、抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性、IgM 高値が特徴で、皮膚瘙痒感を伴いやすい。胆汁うっ滞が主体であるため ALP は上昇する。

  5. ○e.  非アルコール性脂肪性肝炎

    正しい。非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)は、明らかな飲酒歴がないのに肝細胞に脂肪が沈着し、炎症や肝細胞障害、線維化を伴う病態である。肥満、2 型糖尿病、脂質異常症などメタボリックシンドロームを背景に起こる。肝細胞障害を反映して ALT(多くは AST より優位)が上昇し、γ-GTP も脂肪肝に伴って上昇しやすい。しかし胆汁うっ滞は生じないため、ALP は基準範囲にとどまることが多い。なお、近年は名称が見直され、代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH)と呼ばれるようになっている。

γ-GTP が上昇する主な原因

1)胆汁うっ滞:肝外胆管閉塞(総胆管結石、胆管癌、膵頭部癌など)、肝内胆汁うっ滞(PBC、PSC、薬物性肝障害の胆汁うっ滞型など)。ALP も同時に上昇する。 2)アルコール:飲酒により肝での γ-GTP 合成が誘導される。飲酒量をよく反映し、禁酒すると数週間で低下してくるため、飲酒の指標として利用される。 3)薬物:フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタールなどの抗てんかん薬や向精神薬などによる酵素誘導。 4)脂肪肝:アルコール性・非アルコール性を問わず、脂肪肝では γ-GTP が上昇しやすい。 2)〜4)では胆汁うっ滞を伴わないことが多く、ALP は基準範囲内にとどまりやすい。

ALP が単独で上昇する場合

ALP は肝・胆道のほか、骨、胎盤、小腸にも由来する。骨の新生が盛んな小児・成長期、妊娠後期(胎盤由来)、骨疾患(骨転移、副甲状腺機能亢進症、骨Paget病など)では、γ-GTP が正常で ALP だけが上昇する。ALP の上昇がどの臓器由来かは、γ-GTP が同時に上昇しているか、あるいは ALP アイソザイムを調べることで判断する。

肝機能検査の見方の基本

・肝細胞障害型:AST・ALT が優位に上昇(ウイルス性肝炎、脂肪性肝炎など) ・胆汁うっ滞型:ALP・γ-GTP が優位に上昇(胆道閉塞、PBC、PSC など)

NAFLD/NASH の名称変更

2023 年に国際的な名称の見直しが行われ、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、NASH は代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH)と呼ばれるようになった。本問は名称変更前の出題である。

POINT

・胆汁うっ滞(肝内・肝外を問わない)では γ-GTP と ALP がともに上昇する。胆管癌、総胆管結石、PSC、PBC はいずれもこれに当たる。 ・γ-GTP は胆汁うっ滞以外に、飲酒・薬物(抗てんかん薬など)・脂肪肝でも上昇し、この場合 ALP は正常のことが多い。 ・NASH(現在の名称は MASH)では ALT 優位のトランスアミナーゼ上昇と γ-GTP 上昇がみられるが、ALP は基準範囲内にとどまりやすい。 ・ALP 単独高値(γ-GTP 正常)なら骨由来・胎盤由来を考える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。