レバーは控えて、コーヒーは大丈夫?―「細胞の数」で見抜く痛風の食事指導
第110回医師国家試験 E問題 第25問
国試問題にチャレンジ
痛風で制限すべきなのはどれか。
- a.胡椒
- b.食塩
- c.レバー
- d.コーヒー
- e.マーガリン
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
痛風は高尿酸血症を背景に尿酸ナトリウム結晶が関節炎を起こす疾患で、尿酸はプリン体の最終代謝産物です。プリン体は核酸やATPとして細胞内に存在するため、レバーなどの内臓、白子、干物のように細胞が密な食品に多く、痛風・高尿酸血症ではこれらの高プリン食品を控えます。一方、食塩は高血圧・心不全・慢性腎臓病、マーガリン(トランス脂肪酸)は脂質異常症で問題となる食品であり、胡椒やコーヒーは痛風で制限する必要はなく、鶏卵や乳製品も低プリンです。体内の尿酸の多くは内因性であるため、アルコールや果糖の制限、水分摂取、肥満の是正も生活指導の重要な柱となります。「プリン体=細胞の数」という原理で考える習慣は、未知の食品に関する質問への対応や、患者さんへの納得感のある説明に役立ちます。
解答・解説
正解はcです
痛風は、血清尿酸値が高い状態(高尿酸血症:血清尿酸値 7.0 mg/dL 超)が続き、関節内に析出した尿酸ナトリウム結晶が急性関節炎(痛風発作)を起こす疾患である。尿酸はプリン体(アデニン、グアニンなどのプリン塩基を含む化合物)がヒポキサンチン → キサンチン → 尿酸と代謝されてできる最終産物であり、ヒトは尿酸をさらに分解する酵素(ウリカーゼ)をもたないため、プリン体の摂取量が尿酸値に影響する。 プリン体は主に核酸(DNA・RNA)や ATP の構成成分として細胞内に存在する。したがって、重さあたりの細胞数(核の数)が多い食品、あるいは代謝が活発でエネルギー物質を多く含む組織ほどプリン体を多く含む。代表は動物の内臓(レバーなど)、魚の干物、白子、エビ・カツオ・イワシなどである。逆に、一つの卵が一つの細胞である鶏卵や、細胞をほとんど含まない乳製品・油脂・調味料はプリン体が少ない。 本問では、選択肢のなかから「プリン体を多く含む食品」を選べばよい。食塩やマーガリンは他の疾患で制限が問題になる食品だが、痛風の食事療法で制限の中心となるものではない。
選択肢考察
- ×a. 胡椒
胡椒は香辛料であり、使用量もごく少ないため、尿酸値に影響するほどのプリン体をとることはない。香辛料は一部の食物アレルギーなどで避ける対象となる程度で、痛風で制限する食品ではない。
- ×b. 食塩
食塩(塩化ナトリウム)はプリン体を含まず、尿酸の生成には直接関与しない。減塩が治療の柱となるのは高血圧、心不全、慢性腎臓病などである。痛風患者は高血圧などの生活習慣病を合併しやすいため、合併症対策として減塩を勧めることはあるが、痛風そのものに対して制限すべき食品とはいえない。
- ○c. レバー
レバー(肝臓)は細胞密度が高く、核酸や ATP を多く含むため、プリン体含有量が食品のなかでも特に多い(鶏・豚・牛レバーはいずれも 100 g あたり 200 mg を大きく超える高プリン食品に分類される)。摂取したプリン体は体内で尿酸に代謝されて血清尿酸値を上げるので、痛風・高尿酸血症では内臓類をはじめとする高プリン食品を控えるよう指導する。
- ×d. コーヒー
コーヒーのプリン体含有量はわずかである。むしろ疫学研究では、コーヒーを習慣的に飲む人ほど血清尿酸値や痛風の発症リスクが低い傾向が報告されている。カフェイン過剰に注意すべき状況を除けば、通常量の飲用を痛風のために制限する必要はない。
- ×e. マーガリン
マーガリンは植物油を原料とする油脂食品で、細胞成分をほとんど含まずプリン体は少ない。製法によってはトランス脂肪酸を含み、LDL コレステロールを上げて動脈硬化を促すため、脂質異常症などで摂取を控えるよう指導されることがあるが、痛風で制限すべき食品ではない。
尿酸の産生経路
核酸(DNA・RNA)や ATP に含まれるプリン塩基(アデニン、グアニン)は、ヒポキサンチン → キサンチン → 尿酸と代謝される。後半の 2 段階を担うのがキサンチンオキシダーゼ(キサンチン酸化還元酵素)であり、尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタット)はこの酵素を阻害する。体内の尿酸の大部分は体内で合成・分解される核酸に由来し、食事由来は一部にとどまるが、高プリン食の過剰摂取は尿酸値上昇の一因となる。
痛風・高尿酸血症の生活指導
・高プリン食品(目安として 100 g あたりプリン体 200 mg 以上)を控える:鶏・豚・牛のレバー、白子、あんこう肝、カツオ節・煮干し・干し椎茸などの乾物、イワシ・エビなど。1 日のプリン体摂取量は 400 mg 程度を目安とする。 ・アルコールを控える:アルコールは代謝の過程で尿酸産生を増やし、乳酸が尿酸の腎排泄を妨げる。ビールはプリン体自体も含む。 ・果糖(ショ糖、果糖を多く含む清涼飲料水など)を控える:果糖の代謝で ATP が分解され、尿酸産生が増える。 ・十分な水分をとり尿量を確保する(尿路結石の予防)。 ・肥満の是正、適度な有酸素運動(激しい無酸素運動は尿酸値を上げる)。
低プリン体の食品
鶏卵、牛乳・チーズなどの乳製品、穀類、野菜、海藻、油脂類などはプリン体が少ない。鶏卵は 1 個が 1 つの細胞であるため、大きさの割に核酸が少ない。
POINT
・痛風の原因である尿酸はプリン体の最終代謝産物である。 ・プリン体は核酸・ATP として細胞内に存在し、細胞の多い食品(内臓、魚卵・白子、干物・乾物)に多い。 ・レバーは代表的な高プリン食品であり、痛風・高尿酸血症で制限する。 ・食塩は高血圧・心不全・腎不全、マーガリン(トランス脂肪酸)は脂質異常症で制限が問題となる食品である。 ・コーヒーは痛風で制限する必要はない。
