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子どもの皮膚筋炎は大人と別物?―「腫瘍がない」「Jo-1が少ない」若年性皮膚筋炎の素顔

第109回医師国家試験 I問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第109回 I問題 第28問

小児期の皮膚筋炎で正しいのはどれか。

  1. a.男児に多い。
  2. b.悪性腫瘍の合併が多い。
  3. c.死因は横紋筋融解症が多い。
  4. d.診断にはMRIが有用である。
  5. e.抗Jo-1抗体は半数の患者に陽性を示す。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は小児期に発症する皮膚筋炎、いわゆる若年性皮膚筋炎の特徴を問う問題だ。ポイントは、成人の皮膚筋炎と何が同じで何が違うのかを整理できているかどうか。成人の知識をそのまま当てはめると引っかかるようにできているんだ。まず、皮膚筋炎と聞いて思い浮かぶ症状は?
医学生医学生
ヘリオトロープ疹とGottron丘疹、それに近位筋の筋力低下です。膠原病の講義で写真をたくさん見ました。
ドクタードクター
その通り。小児でも皮疹と近位筋の筋力低下が二本柱なのは同じだ。子どもの場合は「階段を上りたがらない」「床から立ち上がるとき手をつく」といった形で親が気づくことが多い。では性差はどうだろう。
医学生医学生
筋疾患というとDuchenne型筋ジストロフィーのイメージがあって、男の子に多い気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。Duchenne型はX連鎖性の遺伝性疾患だから男児に多いけれど、若年性皮膚筋炎は自己免疫が関わる炎症性疾患で、女児に多い。男女比はおよそ1対2とされている。膠原病全般に共通する女性優位の傾向と同じと考えればいい。
医学生医学生
では悪性腫瘍の合併はどうですか。成人の皮膚筋炎では必ず癌を探すように習いました。
ドクタードクター
成人ではそれが鉄則だね。特に高齢者や抗TIF1γ抗体陽性例では、胃癌、肺癌、卵巣癌などの検索が欠かせない。ところが小児では悪性腫瘍の合併はほとんどない。面白いことに、小児でも抗TIF1γ抗体はよく見つかるのに、成人と違って腫瘍とは関連しないんだ。
医学生医学生
同じ抗体でも年齢で意味が変わるんですね。抗Jo-1抗体はどうでしょう。筋炎の抗体といえばまずこれ、という印象です。
ドクタードクター
抗Jo-1抗体は抗ARS抗体の代表で、間質性肺炎や関節炎、機械工の手を伴う抗合成酵素症候群と関係する。ただ、成人でも陽性率は20〜30%程度で、小児ではさらに少なく数%程度。半数というのは明らかに多すぎる。小児で比較的多いのは抗TIF1γ抗体、抗NXP2抗体、抗MDA5抗体などだ。
医学生医学生
死因が横紋筋融解症というのも、筋肉の病気だからありそうに思えたのですが。
ドクタードクター
直感的にはそう感じるよね。でも若年性皮膚筋炎は治療で多くが寛解し、生命予後は比較的良好だ。命に関わりうるのは、抗MDA5抗体陽性例に多い急速進行性間質性肺炎、消化管の血管障害による潰瘍・穿孔、心筋炎や不整脈などの心合併症。横紋筋融解症が主な死因というわけではない。
医学生医学生
そうすると、正解は診断にMRIが有用、ですね。でも筋炎の診断は筋電図と筋生検が基本だと思っていました。
ドクタードクター
成人ではそれらも重要だ。ただ、子どもに針筋電図や筋生検をするのは痛みも侵襲も大きく、鎮静が必要になることもある。MRIなら被曝なしに筋の炎症を評価できる。脂肪抑制T2強調像やSTIR像で、炎症による浮腫が高信号として描出されるんだ。
医学生医学生
炎症の広がりがわかるなら、生検するときにどこを採ればいいかの目安にもなりそうです。
ドクタードクター
まさにそう。生検部位の選択、治療効果の判定にも使える。小児では、CKやアルドラーゼなど筋原性酵素の上昇とMRI所見を組み合わせて筋炎を確認することが多いよ。ちなみにCKが正常でアルドラーゼだけ高い例もあるから、酵素は複数見ておくこと。
医学生医学生
小児科の実習でMRIを撮るとき、小さい子は鎮静の準備が大変そうでしたが、それでも生検よりは負担が少ないということですね。
ドクタードクター
そういうこと。最後に発展知識を押さえよう。小児で特徴的なのが異所性石灰沈着で、皮下や筋膜に生じて皮膚潰瘍や関節拘縮の原因になる。成人より頻度が高く、診断・治療の遅れや抗NXP2抗体との関連が指摘されている。病理では筋束周辺萎縮、perifascicular atrophyが皮膚筋炎の特徴だ。
医学生医学生
治療はステロイドが中心でしょうか。
ドクタードクター
副腎皮質ステロイドの大量療法やパルス療法が基本で、メトトレキサートなどの免疫抑制薬を早期から併用することが多い。難治例や重い間質性肺炎ではシクロホスファミドやカルシニューリン阻害薬、免疫グロブリン大量療法を組み合わせる。紫外線で皮疹が悪化するので遮光も大切だ。そして抗MDA5抗体陽性なら、筋症状が軽くても肺を厳重に見ていく必要がある。
医学生医学生
「子どもは小さな大人ではない」という言葉を、膠原病でも実感しました。

まとめ

若年性皮膚筋炎は女児に多く、ヘリオトロープ疹やGottron丘疹と近位筋の筋力低下を示す点は成人と共通ですが、悪性腫瘍の合併はほとんどなく、抗Jo-1抗体の陽性率も数%と低いことが成人との大きな違いです。小児では抗TIF1γ・抗NXP2・抗MDA5抗体が主体で、抗TIF1γ抗体が陽性でも腫瘍とは関連しません。生命予後は比較的良好ですが、急速進行性間質性肺炎や消化管穿孔、心合併症は致死的となりうるため注意が必要です。診断では、侵襲の大きい筋電図や筋生検に代わり、脂肪抑制T2強調像やSTIR像で筋の浮腫を高信号として捉えるMRIが有用で、生検部位の選択や治療効果判定にも役立ちます。成人との違いを対比して理解することが、小児膠原病を正しく診る第一歩になります。

解答・解説

正解はdです

小児期発症の皮膚筋炎(若年性皮膚筋炎、juvenile dermatomyositis:JDM)の特徴を、成人の皮膚筋炎と対比しながら問う問題である。 若年性皮膚筋炎は小児の炎症性筋疾患の大部分を占め、5〜10歳ごろの発症が多く、女児に多い。病態の中心は小血管の障害(血管炎・血管障害)で、皮膚症状(ヘリオトロープ疹、Gottron丘疹・徴候など)と近位筋優位の筋力低下を来す。 成人の皮膚筋炎と比べた小児例の大きな違いは次の点である。 ・悪性腫瘍の合併はほとんどない(成人では悪性腫瘍の検索が必須)。 ・抗Jo-1抗体などの抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体は少なく、抗TIF1γ抗体・抗NXP2抗体・抗MDA5抗体などが主体である。 ・異所性石灰沈着(皮下・筋膜)が成人より多い。 ・全体としての生命予後は比較的良好だが、急速進行性間質性肺炎や消化管の血管障害による穿孔などは致死的となりうる。 診断は、典型的皮疹、近位筋の筋力低下、血清筋原性酵素(クレアチンキナーゼ〈CK〉、アルドラーゼ、AST、LDHなど)の上昇、筋電図、筋生検などを組み合わせて行う。小児では筋電図や筋生検の侵襲が大きいため、非侵襲的に筋の炎症を捉えられるMRIの価値が高い。これが本問の正解である。

選択肢考察

  1. ×a.  男児に多い。

    若年性皮膚筋炎は女児に多く、男女比はおよそ1:2である。成人の皮膚筋炎・多発性筋炎も女性に多く、膠原病全般にみられる女性優位の傾向と一致する。

  2. ×b.  悪性腫瘍の合併が多い。

    成人の皮膚筋炎では悪性腫瘍(胃癌、肺癌、卵巣癌、乳癌など)の合併が多く、特に高齢者や抗TIF1γ抗体陽性例では腫瘍検索が重要である。一方、小児期発症例では悪性腫瘍の合併はほとんどみられない。小児でも抗TIF1γ抗体は高頻度に検出されるが、成人と異なり悪性腫瘍とは関連しない。

  3. ×c.  死因は横紋筋融解症が多い。

    若年性皮膚筋炎は治療により多くが寛解し、生命予後は比較的良好である。死亡につながりうる重篤な合併症は、間質性肺炎(特に抗MDA5抗体陽性例の急速進行性間質性肺炎)、消化管の血管障害による潰瘍・穿孔、心筋炎・不整脈などの心合併症であり、横紋筋融解症が主な死因となるわけではない。

  4. ○d.  診断にはMRIが有用である。

    筋の炎症部位は、MRIのT2強調像や脂肪抑制T2強調像・STIR像で浮腫を反映した高信号として描出される。MRIは非侵襲的で放射線被曝もなく、小児にも行いやすい。筋炎の有無と広がりの評価、筋生検部位の選択、治療効果判定に役立つ。小児では筋電図や筋生検の負担が大きいため、CKなど筋原性酵素の上昇とMRI所見を組み合わせて筋炎の存在を確認することが多い。

  5. ×e.  抗Jo-1抗体は半数の患者に陽性を示す。

    抗Jo-1抗体(抗ヒスチジルtRNA合成酵素抗体)は抗ARS抗体の代表で、成人の多発性筋炎・皮膚筋炎でも陽性率は20〜30%程度にとどまる。若年性皮膚筋炎では数%程度と少ない。小児で比較的多い筋炎特異的自己抗体は抗TIF1γ抗体、抗NXP2抗体、抗MDA5抗体などである。

若年性皮膚筋炎の臨床像

・皮膚症状:ヘリオトロープ疹(上眼瞼の紫紅色浮腫性紅斑)、Gottron丘疹(手指関節背面の角化性紅斑)、Gottron徴候(肘・膝関節伸側の紅斑)、爪囲紅斑、爪上皮出血点、ショールサイン・Vネックサインなど。 ・筋症状:近位筋優位の筋力低下で、階段昇降や立ち上がりが難しくなる(Gowers徴候様の動作がみられることもある)。嚥下障害・構音障害を伴うこともある。 ・全身症状:発熱、倦怠感、関節痛など。 ・石灰沈着:皮下・筋膜・筋間に生じ、皮膚潰瘍や関節拘縮の原因となる。成人より頻度が高く、診断・治療の遅れや抗NXP2抗体と関連するとされる。

主な筋炎特異的自己抗体と特徴

・抗TIF1γ抗体:小児で最も多い抗体の一つ。成人では悪性腫瘍合併と強く関連するが、小児では関連しない。 ・抗NXP2抗体:小児に比較的多く、石灰沈着や重症筋症状と関連する。 ・抗MDA5抗体:筋症状が軽微でも急速進行性間質性肺炎を来しうる。日本を含むアジアで多く、予後を左右する。 ・抗ARS抗体(抗Jo-1抗体など):間質性肺炎、関節炎、機械工の手、Raynaud現象などを伴う抗合成酵素症候群と関連。小児では少ない。 ・抗Mi-2抗体:典型的皮膚症状を伴い、治療反応性が良い。

検査

・血液:CK、アルドラーゼ、AST、ALT、LDH、ミオグロビンの上昇。CKが正常でもアルドラーゼのみ高値の例がある。 ・MRI:筋の浮腫性変化を脂肪抑制T2強調像・STIR像で高信号として描出。 ・筋電図:筋原性変化(低振幅・短持続の運動単位電位、安静時の線維自発電位など)。 ・筋生検:皮膚筋炎では筋束周辺萎縮(perifascicular atrophy)が特徴的。 ・間質性肺炎の評価に胸部CT、KL-6など。

治療

副腎皮質ステロイド(大量療法やパルス療法)が基本で、メトトレキサートなどの免疫抑制薬を早期から併用することが多い。難治例や重症間質性肺炎では、シクロホスファミド、カルシニューリン阻害薬(タクロリムス・シクロスポリン)、免疫グロブリン大量療法などを組み合わせる。紫外線は皮疹を悪化させるため遮光も重要である。

POINT

・若年性皮膚筋炎は女児に多い(男女比 約1:2)。 ・成人と違い、悪性腫瘍の合併はほとんどない。 ・抗Jo-1抗体陽性は数%と少ない。小児では抗TIF1γ・抗NXP2・抗MDA5抗体が主体。 ・生命予後は比較的良好だが、間質性肺炎(特に抗MDA5抗体陽性例)、消化管穿孔、心合併症は致死的となりうる。 ・MRI(脂肪抑制T2強調像・STIR像の高信号)は非侵襲的に筋炎を捉えられ、診断と生検部位の決定に有用である。 ・石灰沈着が成人より多い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。