高熱が下がったら発疹が出た―突発性発疹とヒトヘルペスウイルスの8兄弟
第109回医師国家試験 F問題 第13問
国試問題にチャレンジ
ヒトヘルペスウイルスによる疾患はどれか。
- a.手足口病
- b.伝染性紅斑
- c.突発性発疹
- d.伝染性軟属腫
- e.尖圭コンジローマ
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
突発性発疹はヒトヘルペスウイルス6(主に6B)および7が原因で、乳幼児に3日前後の高熱が続いた後、解熱とともに体幹中心の発疹が出るのが典型経過であり、有熱期の熱性けいれんに注意が必要です。手足口病はエンテロウイルス属(コクサッキーA16、エンテロウイルスA71など)、伝染性紅斑はパルボウイルスB19、伝染性軟属腫はポックスウイルス、尖圭コンジローマはHPV 6・11型が原因で、いずれもヘルペスウイルスではありません。ヘルペスウイルスは二本鎖DNAウイルスで、潜伏感染と再活性化が共通の特徴であり、HHV-1〜8はHSV-1・2、VZV、EBV、CMV、HHV-6・7、Kaposi肉腫関連ウイルスと対応します。番号・別名・代表疾患を一対一で整理しておくことは、国家試験対策だけでなく、小児の発疹症や免疫不全者の感染症を鑑別する臨床の場面でも大きな助けになります。
解答・解説
正解はcです
小児期に多い発疹性ウイルス感染症と皮膚のウイルス性腫瘤について、それぞれの原因ウイルスを正しく対応づけられるかを問う問題である。 ヒトヘルペスウイルス(human herpesvirus:HHV)はヘルペスウイルス科に属する二本鎖DNAウイルスで、ヒトを宿主とするものは8種類知られている。共通の特徴は、初感染の後も神経細胞やリンパ球などに潜伏感染して生涯体内にとどまり、免疫が低下したときなどに再活性化することである。 選択肢の疾患の原因ウイルスを整理すると、手足口病はエンテロウイルス属(コクサッキーウイルスA群やエンテロウイルスA71など、RNAウイルス)、伝染性紅斑はパルボウイルスB19(一本鎖DNAウイルス)、突発性発疹はHHV-6(主にHHV-6B)およびHHV-7、伝染性軟属腫はポックスウイルス科の伝染性軟属腫ウイルス、尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)である。したがってヘルペスウイルスによるものは突発性発疹である。 8種類のHHVとその代表的疾患(補足欄参照)は国家試験で繰り返し問われるため、番号と別名を一対一で覚えておくとよい。
選択肢考察
- ×a. 手足口病
誤り。手足口病はピコルナウイルス科エンテロウイルス属のRNAウイルスによる疾患で、主な原因はコクサッキーウイルスA16、エンテロウイルスA71(EV71)であり、近年はコクサッキーウイルスA6なども流行の原因となる。夏季に乳幼児の間で飛沫・接触・糞口感染により集団発生し、手掌・足底などの水疱性発疹と口腔内の水疱・潰瘍を特徴とする。EV71感染では無菌性髄膜炎や脳炎などの中枢神経合併症に注意が必要である。ヘルペスウイルスとは無関係である。
- ×b. 伝染性紅斑
誤り。伝染性紅斑(いわゆるりんご病)の原因はパルボウイルスB19(一本鎖DNAウイルス)である。両頬に境界明瞭な紅斑が出現し(平手打ち様)、続いて四肢にレース状・網目状の紅斑がみられる。発疹が出る時期にはすでに感染力はほぼ失われている。成人では関節痛・関節炎や頭痛を伴うことがある。赤芽球系前駆細胞に感染するため、溶血性貧血患者では無形成発作(aplastic crisis)を、妊婦が感染すると胎児水腫を起こしうる点が重要である。
- ○c. 突発性発疹
正しい。突発性発疹の原因はHHV-6(主にHHV-6B)とHHV-7であり、いずれもヘルペスウイルス科に属する。主に生後6か月〜2歳頃の乳幼児に起こり、38〜40℃の高熱が3日前後続いたのち、解熱とほぼ同時に体幹を中心とした小さな紅斑・丘疹が出現するのが典型経過である。熱が高いわりに全身状態は比較的保たれるが、有熱期に熱性けいれんを起こすことがある。HHV-7による突発性発疹はHHV-6によるものよりやや遅い年齢でみられ、2度目の突発性発疹として経験されることがある。
- ×d. 伝染性軟属腫
誤り。伝染性軟属腫(いわゆる水いぼ)は、ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルス(DNAウイルス)による皮膚感染症である。中心に臍窩(へそ状のくぼみ)をもつ光沢のある小丘疹が多発し、内部には白色の粥状物質(軟属腫小体)を含む。小児に多く、皮膚どうしの直接接触や、タオル・ビート板などを介した間接接触で広がる。アトピー性皮膚炎などでバリア機能が低下した皮膚に生じやすい。
- ×e. 尖圭コンジローマ
誤り。尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV、パピローマウイルス科のDNAウイルス)による性感染症で、外陰部・肛門周囲などに乳頭状・鶏冠状のいぼを形成する。原因の大部分は低リスク型のHPV 6型・11型である。HPVは100種類以上の遺伝子型に分けられ、16型・18型などの高リスク型は子宮頸癌の主な原因となる点もあわせて押さえておきたい。
ヒトヘルペスウイルス8種と代表的疾患
HHV-1:単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)…口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、角膜ヘルペス、単純ヘルペス脳炎(成人の散発性脳炎で最多)、Kaposi水痘様発疹症 HHV-2:単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)…性器ヘルペス、新生児ヘルペス HHV-3:水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)…水痘(初感染)、帯状疱疹(知覚神経節に潜伏したウイルスの再活性化)、Ramsay Hunt症候群 HHV-4:Epstein-Barrウイルス(EBV)…伝染性単核球症、Burkittリンパ腫、上咽頭癌、慢性活動性EBウイルス感染症 HHV-5:サイトメガロウイルス(CMV)…先天性サイトメガロウイルス感染症(巨細胞封入体症)、免疫不全者の網膜炎・肺炎・腸炎 HHV-6:突発性発疹(主にHHV-6B)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)での再活性化 HHV-7:突発性発疹 HHV-8:Kaposi肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)…Kaposi肉腫、原発性体腔液リンパ腫、多中心性Castleman病の一部
選択肢に登場した他のウイルスの分類
エンテロウイルス属(コクサッキーウイルス、エンテロウイルスA71):ピコルナウイルス科、一本鎖RNA パルボウイルスB19:パルボウイルス科、一本鎖DNA 伝染性軟属腫ウイルス:ポックスウイルス科、二本鎖DNA ヒトパピローマウイルス:パピローマウイルス科、二本鎖DNA
発疹を伴う小児感染症の原因ウイルス
麻疹:麻疹ウイルス、風疹:風疹ウイルス、水痘:VZV、突発性発疹:HHV-6/7、伝染性紅斑:パルボウイルスB19、手足口病・ヘルパンギーナ:エンテロウイルス属
POINT
・突発性発疹の原因はHHV-6(主に6B)とHHV-7である。 ・手足口病=コクサッキーA16・エンテロウイルスA71など、伝染性紅斑=パルボウイルスB19、伝染性軟属腫=ポックスウイルス、尖圭コンジローマ=HPV 6・11型。 ・HHV-1〜8の番号・別名・代表疾患を対応させて覚える(HHV-4=EBV、HHV-5=CMV、HHV-8=Kaposi肉腫)。 ・ヘルペスウイルスは潜伏感染と再活性化が共通の特徴である。
