「うめき声」はV2、「手を引っ込める」はM4―頭部外傷で迷わないGCS採点術
第109回医師国家試験 C問題 第8問
国試問題にチャレンジ
頭部外傷で救急搬送された患者が,痛み刺激で開眼せず,意味不明の発声があり,疼痛刺激部分からの逃避運動をするとき,Glasgow coma scaleによる評価で正しいのはどれか。
- a.E2
- b.V3
- c.M4
- d.合計点9
- e.合計点11
対話形式の解説
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ドクターまとめ
Glasgow coma scaleは開眼(E1〜4)、最良言語反応(V1〜5)、最良運動反応(M1〜6)の合計3〜15点で意識障害を評価し、点数が低いほど重症です。痛み刺激でも開眼しなければE1、単語にならない意味不明の発声はV2(単語は聞き取れるが会話にならない不適当な言葉はV3)、刺激部位から手足を引っ込める逃避屈曲はM4(刺激部位に手をもっていくのはM5)と評価し、本問はE1V2M4の合計7点となります。頭部外傷では8点以下が重症とされ、気道確保を考慮する目安であり、経過中の2点以上の低下は切迫する意識障害のサインです。GCSは項目別に記録することで経時的変化を追いやすい一方、挿管中や失語症では評価に限界があり、数値の向きが逆のJCSとの違いも押さえておく必要があります。紛らわしい境界を正確に判定できることは、救急現場での的確な申し送りと治療方針決定の基盤となります。
解答・解説
正解はcです
Glasgow coma scale(GCS)は、意識障害の程度を「開眼(Eye opening:E)」「最良言語反応(best Verbal response:V)」「最良運動反応(best Motor response:M)」の3項目で評価し、E1〜4、V1〜5、M1〜6の合計(最低3点〜最高15点)で表す評価法である。点数が低いほど意識障害が重い。 本問の患者の所見を各項目に当てはめる。 ・開眼:痛み刺激を加えても開眼しない → E1 ・言語:意味のある単語にならない発声(うめき声など)のみ → V2 ・運動:痛み刺激を加えた部位から手足を引っ込める逃避運動 → M4 したがって評価はE1V2M4、合計7点となる。 判定で紛らわしいのは次の2点である。第一に言語反応で、「意味不明の発声」(単語として聞き取れない音声)はV2、「不適当な言葉」(単語は聞き取れるが会話として成り立たない)はV3であり、両者を区別する。第二に運動反応で、痛み刺激の部位に手をもっていき払いのけようとする動作はM5(疼痛部位の認識)、刺激から手足を引っ込めるだけの逃避はM4であり、刺激部位を認識して向かってくるかどうかで区別する。
選択肢考察
- ×a. E2
誤り。E2は「痛み刺激で開眼する」状態である。本問の患者は痛み刺激を加えても開眼しないため、開眼の評価はE1となる。
- ×b. V3
誤り。V3は「不適当な言葉(inappropriate words)」で、単語としては聞き取れるが状況や質問に合わず、会話が成立しない状態を指す。本問の患者は単語にならない意味不明の発声のみであり、「理解不能な音声(incomprehensible sounds)」としてV2と評価する。
- ○c. M4
正しい。M4は「逃避屈曲(withdrawal)」で、痛み刺激に対して刺激を受けた部位から手足を引っ込める反応である。本問の「疼痛刺激部分からの逃避運動」はこれに当たる。痛み刺激の場所へ手をもっていき払いのけようとする合目的的な動作であればM5(疼痛部位の認識)、肘を屈曲し手関節を曲げるゆっくりした異常な屈曲(除皮質硬直様)であればM3となるため、これらと区別する。
- ×d. 合計点9
誤り。本患者はE1+V2+M4=7点である。9点になるのは、例えば開眼がE2、言語がV3と評価を誤った場合などである。
- ×e. 合計点11
誤り。本患者の合計は7点である。11点は本問の所見から導かれる点数よりも明らかに高く、意識レベルを過大評価していることになる。
Glasgow coma scale(GCS)
E:開眼(Eye opening) ・E4:自発的に開眼する ・E3:呼びかけにより開眼する ・E2:痛み刺激により開眼する ・E1:痛み刺激でも開眼しない V:最良言語反応(best Verbal response) ・V5:見当識がある(時・場所・人を正しく答えられる) ・V4:混乱した会話(会話は成り立つが見当識障害がある) ・V3:不適当な言葉(単語は出るが会話にならない) ・V2:理解不能な音声(うめき声など、単語にならない) ・V1:発声なし ※気管挿管中などで発語が評価できない場合はVTなどと表記する M:最良運動反応(best Motor response) ・M6:命令に従う ・M5:疼痛部位を認識する(刺激部位に手をもっていく) ・M4:逃避屈曲(刺激から手足を引っ込める) ・M3:異常屈曲(除皮質硬直に相当する肢位) ・M2:伸展反応(除脳硬直に相当する肢位) ・M1:まったく動かない
合計点の目安
・正常は15点、最低は3点 ・頭部外傷の重症度分類では、13〜15点を軽症、9〜12点を中等症、8点以下を重症とするのが一般的である ・GCS 8点以下は気道確保(気管挿管)を考慮する目安となり、「切迫する意識障害」の基準の一つとして、合計8点以下や経過中の2点以上の低下が挙げられる
GCSの特徴
・3項目を別々に記録するため、運動反応など個々の要素の変化を追いやすく、頭部外傷の予後との相関も示されている ・一方で、失語症、四肢麻痺、眼瞼腫脹による開眼困難、気管挿管中など、項目の評価自体ができない状況では正しく使えない ・日本ではJapan coma scale(JCS、3-3-9度方式)も広く用いられ、JCSは数値が大きいほど重症である点がGCSと逆である
POINT
・GCSはE(1〜4)+V(1〜5)+M(1〜6)で3〜15点、低いほど重症 ・痛み刺激で開眼しない=E1、意味不明の発声(単語にならない)=V2、不適当な言葉=V3 ・疼痛部位から手足を引っ込める逃避=M4、疼痛部位に手をもっていく=M5、異常屈曲=M3、伸展=M2 ・本問はE1V2M4=7点 ・GCS 8点以下は重症頭部外傷で、気道確保を考慮する
