太ければいいわけじゃない―外傷ショックの受け入れで握る「18 G」の理由
第108回医師国家試験 H問題 第20問
国試問題にチャレンジ
成人男性の交通事故で救急患者受入の要請があった。事故現場到着時点での血圧は触診で80 mmHgとのことである。 救急外来で血管確保のために準備しておくべき留置針の太さ(G)で適切なのはどれか。
- a.14 G
- b.18 G
- c.24 G
- d.30 G
- e.34 G
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
外傷患者で血圧が触診で80 mmHgと低下していれば出血性ショックをまず考え、到着直後から急速輸液・輸血ができるよう、太めの留置針で上肢に2本の末梢静脈路を確保する準備をします。ゲージ(G)は数字が大きいほど細く、ポアズイユの法則により流量は内径の4乗に比例するため太く短い針が有利ですが、ショックで虚脱した静脈に14 Gは穿刺が難しく、流量と確実性のバランスから18 G程度が最も適切です。24 Gは新生児・乳児向けで急速輸液や輸血には不向き、30 G・34 Gは皮内注射やインスリン自己注射用の極細針で静脈路には使えません。初期輸液は加温した細胞外液で行い、反応が乏しければ輸血と根本的止血を急ぎ、末梢路が取れなければ骨髄路などに切り替えます。針の太さを用途と患者の状態に合わせて選ぶ判断は、救急に限らずあらゆる臨床現場で求められる基本技能です。
解答・解説
正解はbです
状況の整理
交通事故による外傷の成人男性で、現場到着時の収縮期血圧が触診で80 mmHgと低下している。触診で血圧を測っていることからも、脈が弱く血圧計で聴診しにくいほどの循環不全が疑われる。外傷患者のショックの原因として最も多いのは出血(循環血液量減少性ショック)であり、腹腔内出血・胸腔内出血・骨盤骨折・多発骨折などが想定される。緊張性気胸や心タンポナーデなどの閉塞性ショックも鑑別に挙がるが、いずれにしても到着直後から急速な輸液と、状況によっては大量の輸血が必要になる可能性が高い。
問われていること
受け入れ準備として、どの太さの末梢静脈留置針を用意するかが問われている。外傷初期診療では、上肢の末梢静脈に太めの留置針で2本の静脈路を確保し、加温した細胞外液(乳酸リンゲル液・酢酸リンゲル液など)を急速投与して反応をみるのが基本である。
考え方
針(カテーテル)を流れる液量は、ポアズイユの法則により内径の4乗に比例し、長さに反比例する。したがって急速輸液・輸血には、短くて太いカテーテルほど有利である。一方で、ショック状態では末梢静脈が虚脱して細くなっており、太すぎる針はかえって穿刺に失敗しやすく、確保までに時間を浪費する。流量と穿刺の確実性のバランスから、外傷のショックでは18 G程度(あるいは16 G)以上の留置針を用いるのが標準的であり、選択肢の中では18 Gが最も適切である。1本で足りないと判断すれば、反対側の上肢にもう1本確保すればよい。 なお、G(ゲージ)は数字が大きいほど針が細くなる単位であることに注意する。
選択肢考察
- ×a. 14 G
選択肢中で最も太く、理論上の流量は最大である(外径約2.1 mm、流量はおおむね毎分300 mL前後)。しかし、ショックで虚脱した末梢静脈に14 Gを留置するのは技術的に難しく、失敗すれば貴重な時間を失う。救急外来の末梢静脈路確保用として常備していない施設も多い。14 Gの針は胸腔穿刺による緊張性気胸の脱気、輪状甲状膜穿刺、中心静脈カテーテル挿入時の穿刺などに用いられることが多い。受け入れ準備として最初に用意すべき太さとしては適切でない。
- ○b. 18 G
外径約1.2〜1.3 mmで、流量はおおむね毎分90〜100 mL程度が得られ、急速輸液にも輸血にも使える太さである。ショック状態の末梢静脈でも比較的確実に穿刺・留置でき、流量と手技の確実性のバランスが最もよい。2本確保すれば出血性ショックに対する初期輸液として十分な投与速度が得られるため、本症例の受け入れ準備として最も適切である。
- ×c. 24 G
外径約0.6〜0.7 mmと細く、流量は毎分20 mL前後にとどまる。維持輸液のようなゆっくりとした投与には使えるが、急速輸液や輸血には適さず、陰圧をかけて採血すると溶血を起こしやすい。主に新生児・乳児や血管の非常に細い患者の静脈路確保に用いられる。出血性ショックが疑われる成人に用意する太さではない。
- ×d. 30 G
外径約0.3 mmの極めて細い針で、静脈路確保用の留置針には存在しない太さである。局所麻酔・皮内注射・美容領域の注射など、痛みを最小限にしたい場面の注射針として用いられる。静脈路の確保には使えない。
- ×e. 34 G
外径約0.2 mmの極細針で、インスリン自己注射用のペン型注入器に取り付ける針などに用いられる。反復する皮下注射の痛みを軽減する目的で開発されたものであり、静脈路確保には使えない。
ゲージ(G)とフレンチ(Fr)
・G(ゲージ)は針の太さを表す単位で、数字が大きいほど細くなる。目安として18 Gは外径約1.2〜1.3 mm、20 Gは約0.9〜1.0 mm、22 Gは約0.7〜0.8 mm、24 Gは約0.6〜0.7 mmである。 ・カテーテルやチューブの太さはFr(フレンチ)で表し、1 Fr=1/3 mm(外径)である。こちらは数字が大きいほど太くなる。
静脈留置針の構造
金属製の内針とプラスチック製の外筒(カテーテル)からなる。静脈に刺入して逆血を確認した後、外筒のみを血管内に進めて内針を抜き、輸液回路を接続する。留置したまま持続点滴や薬剤投与に用いるほか、生理食塩液やヘパリン加生理食塩液で満たしてロックしておき、必要時に使用することもある。
用途別の針の太さの目安
・急速輸液・大量輸血(外傷・ショック):16〜18 G以上 ・通常の輸血:20 G前後またはそれより太い針(細すぎると流速が遅く溶血の原因となる) ・一般的な点滴・静脈注射:20〜22 G ・採血:21〜22 G程度(細すぎると溶血しやすい) ・新生児・乳児の静脈路:24 G前後 ・筋肉注射:21〜23 G、皮下注射:23〜25 G、皮内注射:26〜27 G ・インスリン自己注射:32〜34 G程度の極細針
外傷初期診療における循環の評価と蘇生
primary survey(生命を脅かす異常を見つけて処置する初期評価)のC(Circulation)では、ショックの認知と同時に止血と静脈路確保を行う。上肢の末梢静脈に太い留置針で2本の静脈路を確保し、39℃程度に加温した細胞外液を急速投与(成人で1 L程度)して循環の反応をみる。反応が乏しい・一過性であれば、輸血と、手術・血管内治療(IVR)による根本的止血を急ぐ。末梢静脈路の確保が困難な場合は骨髄路や中心静脈路、静脈切開を検討する。
POINT
・出血性ショックが疑われる外傷患者では、太い留置針で末梢静脈路を2本確保する。 ・ゲージは数字が大きいほど細い。急速輸液・輸血には18 G程度(16 G)以上を用いる。 ・流量は内径の4乗に比例(ポアズイユの法則)するため、太く短いカテーテルが有利である。 ・ただし14 Gは虚脱した末梢静脈では穿刺が難しく、最初の準備としては18 Gが現実的である。 ・24 G以下の細い針は輸血・急速輸液に不適で、30 G・34 Gは皮内・皮下注射用である。
