発疹より先に頬が語る―Koplik斑で読み解く麻疹の時間軸
第108回医師国家試験 G問題 第40問
国試問題にチャレンジ
全身倦怠感,発熱および咳嗽を主訴に来院した成人男性の胸部の写真(A)と口腔内の写真(B)とを別に示す。 この疾患での症状の出現順で正しいのはどれか。

- a.カタル症状 → 全身の発疹 → 口腔粘膜疹
- b.カタル症状 → 口腔粘膜疹 → 全身の発疹
- c.全身の発疹 → カタル症状 → 口腔粘膜疹
- d.全身の発疹 → 口腔粘膜疹 → カタル症状
- e.口腔粘膜疹 → 全身の発疹 → カタル症状
- f.口腔粘膜疹 → カタル症状 → 全身の発疹
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
麻疹は、発熱・咳・鼻汁・結膜充血などのカタル症状が3〜4日続いたあと、その終盤に頬粘膜の白色小斑点であるKoplik斑が出現し、続いて二峰性発熱とともに耳後部・顔面から体幹・四肢へ広がる癒合性の発疹が現れる、という定型的な経過をとります。Koplik斑は麻疹にほぼ特異的で発疹に先行するため、発疹が出る前に麻疹を疑う重要な手がかりになります。風疹は発熱と発疹がほぼ同時で癒合しにくく色素沈着を残さない点、手足口病は発疹が手足などに限局する点で区別できます。感染力が最も強いのは発疹前のカタル期であり、肺炎や脳炎、SSPEといった重い合併症もあるため、早期の認識と隔離、五類全数届出、MRワクチン2回接種による予防が臨床上きわめて重要です。
解答・解説
正解はbです
所見の整理
成人男性が全身倦怠感、発熱、咳嗽で受診している。胸部の写真(A)には小さな紅斑(皮膚が赤くなった斑)が多数散在し、一部は互いに癒合して大きな紅斑を形成している。口腔内の写真(B)では、頰の内側の粘膜(臼歯に面した部位)に、周囲が赤みを帯びた直径1〜2mm程度の白色小斑点が集まって見える。これがKoplik斑(コプリック斑)である。
診断
発熱と咳嗽などの気道症状、癒合傾向のある全身性紅斑、Koplik斑の3点がそろえば、麻疹(はしか)と診断してよい。Koplik斑は麻疹にほぼ特異的な粘膜疹であり、この所見を読み取れるかどうかが本問の鍵となる。成人の麻疹は、ワクチン未接種や1回接種のみで免疫が不十分な世代にみられ、小児よりも重症化しやすい。
設問の考え方
麻疹の臨床経過は、潜伏期 → カタル期 → 発疹期 → 回復期と段階的に進む。 ・カタル期(前駆期):発熱、咳嗽、鼻汁、結膜充血・眼脂などのカタル症状(粘膜の炎症による分泌物の多い症状)が3〜4日続く。 ・カタル期の終わり、発疹が出る1〜2日前に、頰粘膜にKoplik斑が出現する。 ・いったん熱がやや下がった後、再び高熱となり(二峰性発熱)、同時に耳後部・顔面から始まる発疹が体幹・四肢へと広がる。Koplik斑は発疹出現後2〜3日以内に消えていく。 したがって出現順は「カタル症状 → 口腔粘膜疹(Koplik斑) → 全身の発疹」となる。
選択肢考察
- ×a. カタル症状 → 全身の発疹 → 口腔粘膜疹
誤り。Koplik斑は発疹期に先立って、カタル期の終わりに出現する粘膜疹である。全身の発疹が出そろう頃にはむしろ消退に向かうため、発疹の後にKoplik斑が現れるという順序にはならない。
- ○b. カタル症状 → 口腔粘膜疹 → 全身の発疹
正しい。麻疹ではまず発熱・咳嗽・鼻汁・結膜充血などのカタル症状が3〜4日続き(カタル期)、その後半、発疹出現の1〜2日前に頰粘膜にKoplik斑が現れる。続いて一時的な解熱の後に再び高熱となり、耳後部・顔面から体幹・四肢へ広がる癒合性の紅斑丘疹が出現する(発疹期)。この順序は麻疹の定型的な経過であり、Koplik斑が発疹に先行するため、発疹が出る前の段階で麻疹を疑う手がかりになる。
- ×c. 全身の発疹 → カタル症状 → 口腔粘膜疹
誤り。麻疹の発疹はカタル期を経た後の発疹期に出現するもので、最初に現れる症状ではない。またKoplik斑が最後に出るという順序も麻疹の経過に合わない。
- ×d. 全身の発疹 → 口腔粘膜疹 → カタル症状
誤り。カタル症状は麻疹の最初の症状(前駆症状)であり、発疹や粘膜疹の後に始まることはない。経過が完全に逆転している。
- ×e. 口腔粘膜疹 → 全身の発疹 → カタル症状
誤り。Koplik斑→発疹の順は合っているが、カタル症状はその両者に先行する。カタル症状が発疹の後に出現するという点が誤りである。
- ×f. 口腔粘膜疹 → カタル症状 → 全身の発疹
誤り。麻疹ではカタル症状が先に始まり、その終盤にKoplik斑が出現するので、粘膜疹が最初に来ることはない。なお、粘膜疹が先行して皮疹が続く経過は手足口病などでみられることがあるが、手足口病のカタル症状は軽く、皮疹も手掌・足底・殿部・膝などに限局し、全身性の発疹とはならない。
麻疹の概要
・病原体:麻疹ウイルス(パラミクソウイルス科)。空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染で広がり、感染力は極めて強い。免疫のない人が感染するとほぼ全員が発症する。 ・潜伏期:約10〜12日。 ・カタル期(3〜4日):38℃前後の発熱、咳嗽、鼻汁、結膜充血・眼脂、羞明。最も感染力が強い時期である。終盤にKoplik斑が出現する。 ・発疹期(4〜5日):一時的に解熱傾向を示した後、39〜40℃の高熱が再燃する(二峰性発熱)。発疹は耳後部・顔面から体幹、四肢へと下行性に広がる。紅斑丘疹は隆起し、癒合傾向を示すが、ところどころに健常皮膚が残る。 ・回復期:解熱とともに発疹は色素沈着を残して消退し、細かい落屑を伴うことがある。 ・感染可能期間:カタル症状出現の1日前ごろから発疹出現後4〜5日ごろまで。
鑑別疾患
・風疹:発疹は小さく淡い紅斑で、癒合しにくく、3日程度で色素沈着を残さず消える。発疹と発熱がほぼ同時に出現し、耳介後部・後頭部・頸部のリンパ節腫脹が特徴的。Koplik斑はみられない。 ・薬疹(紅斑丘疹型):麻疹や風疹と見分けにくいことがある。薬剤使用歴や粘膜病変の性状から鑑別する。 ・突発性発疹:乳児に多く、3〜4日の高熱が下がった後に発疹が出る。 ・手足口病:口腔粘膜疹と手掌・足底・殿部などの水疱性発疹が特徴。
合併症
肺炎(麻疹ウイルス自体による肺炎や細菌の二次感染)、中耳炎、クループ、脳炎(約1,000例に1例)が重要であり、肺炎と脳炎は主な死因となる。感染から数年〜10年程度たってから発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という致死的な遅発性合併症もある。また、麻疹罹患後しばらくは細胞性免疫が低下し、ツベルクリン反応が陰性化したり結核が悪化したりすることがある。
対応・予防
・特異的な抗ウイルス薬はなく、治療は対症療法が中心である。 ・感染症法の五類感染症(全数把握)で、診断後直ちに届け出る。 ・学校保健安全法では第二種感染症で、解熱後3日を経過するまで出席停止。 ・麻疹風疹混合(MR)ワクチンの定期接種:1歳時(第1期)と小学校入学前1年間(第2期)の2回接種。 ・ワクチン接種歴があっても免疫が不十分な人では、症状が軽く非典型的な修飾麻疹となることがある。
POINT
・Koplik斑(頰粘膜の白色小斑点)は麻疹に特異的な所見である。 ・麻疹の経過は「カタル期(発熱・咳・鼻汁・結膜充血)→ Koplik斑(発疹の1〜2日前)→ 発疹期(二峰性発熱と同時に耳後部・顔面から全身へ)→ 色素沈着を残して回復」。 ・発疹は癒合傾向があり色素沈着を残す点で風疹と区別する。 ・合併症は肺炎、中耳炎、脳炎、SSPE。 ・五類全数把握(直ちに届出)、学校は解熱後3日を経過するまで出席停止、MRワクチン2回接種。
