StudyMed医師国家試験

痛くないのに胆嚢が腫れる―Courvoisier徴候は「どこで詰まったか」を教えてくれる

第108回医師国家試験 G問題 第37問

国試問題にチャレンジ

第108回 G問題 第37問

Courvoisier徴候を示すのはどれか。2つ選べ。

  1. a.胆嚢癌
  2. b.膵頭部癌
  3. c.肝内胆管癌
  4. d.下部胆管癌
  5. e.肝門部胆管癌

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はCourvoisier徴候を示す疾患を選ぶ問題だ。暗記で片づけたくなるけれど、胆道の解剖を頭に描いて「胆汁がどこでせき止められると胆嚢が腫れるのか」を考えれば、迷わず解ける。まず、Courvoisier徴候とはどんな所見だったかな。
医学生医学生
閉塞性黄疸があって、右季肋部に腫れた胆嚢を触れる所見だったと思います。
ドクタードクター
そう、大事なのはそこに「圧痛を伴わない」が加わること。閉塞性黄疸に無痛性の胆嚢腫大がそろったものをCourvoisier徴候と呼ぶんだ。では、なぜ胆嚢が腫れるんだろう。
医学生医学生
胆管が詰まって、行き場を失った胆汁が胆嚢にたまるからですか。
ドクタードクター
その通り。ただし、どこで詰まってもいいわけではない。肝臓で作られた胆汁は肝内胆管から肝門部、総胆管へと下り、途中で胆嚢管が合流して、最後は膵頭部の中を通って十二指腸乳頭に出る。閉塞が胆嚢管合流部より乳頭側にあるときだけ、胆汁は胆嚢管を逆流して胆嚢を膨らませるんだ。
医学生医学生
なるほど、合流部より上で詰まったら、胆汁は胆嚢まで届かないんですね。
ドクタードクター
そういうこと。もう一つの条件は、胆嚢自体が伸びられる状態にあること。悪性腫瘍による閉塞はゆっくり進むので、胆嚢壁は少しずつ引き伸ばされ、炎症もないから痛くない。この2条件で選択肢を見ていこう。まず膵頭部癌はどうかな。
医学生医学生
解剖の講義で、総胆管の下部は膵頭部を貫いて乳頭に開くと習いました。膵頭部癌はそこを外から圧迫するので、合流部より下流の閉塞になります。
ドクタードクター
正解。閉塞性黄疸と無痛性胆嚢腫大の組合せは、膵頭部癌の古典的な身体所見だ。同じ理屈で、下部胆管癌はどうだろう。
医学生医学生
下部胆管は合流部より下、膵内を走る部分なので、そこが詰まれば胆嚢も腫れるはずです。これも当てはまりますね。
ドクタードクター
その通り。ちなみに十二指腸乳頭部癌でも同じ理由でみられる。では残りの3つ。肝門部胆管癌と肝内胆管癌はどう考える?
医学生医学生
どちらも合流部より上流で詰まるので、黄疸は出ても胆嚢は腫れない、ということでしょうか。
ドクタードクター
正しい。むしろ胆嚢は虚脱していることが多い。画像では肝内胆管は拡張しているのに、総胆管や胆嚢は拡張していないのが特徴だ。では、胆嚢癌は?
医学生医学生
胆嚢そのものの病気だから、一番胆嚢が腫れそうな気がしてしまいました。
ドクタードクター
そこがひっかけポイントだね。胆嚢癌では胆嚢が腫瘍に置き換わったり、壁が硬く浸潤されたりしているから、胆汁がたまっても伸展しにくい。それに黄疸を起こすのは、たいてい頸部から肝門部や総胆管上部へ浸潤した場合で、閉塞部位は合流部かそれより肝臓側になる。腫瘍を硬い腫瘤として触れることはあっても、それはCourvoisier徴候とは別物だ。
医学生医学生
閉塞の位置と、胆嚢が伸びられるかどうか、の2つで判断するんですね。
ドクタードクター
その通り。臨床的にも役立つ話をしておこう。もともとCourvoisierの法則は「黄疸患者で胆嚢が腫大していれば、原因は結石より悪性腫瘍の可能性が高い」という経験則なんだ。総胆管結石の場合はどうしてだと思う?
医学生医学生
消化器内科の実習で、総胆管結石の患者さんは強い腹痛で来院していました。急に詰まるから痛いし、胆嚢も腫れにくいということですか。
ドクタードクター
いい観察だね。結石の患者さんは長年の胆石症で慢性胆嚢炎を繰り返し、胆嚢壁が線維化して伸びにくいことが多い。しかも閉塞が急性で疼痛を伴いやすい。だから無痛性の胆嚢腫大は起こりにくいんだ。ただし例外もあり、絶対的な法則ではないことは覚えておこう。
医学生医学生
超音波やCTでも、どこまで胆管が拡張しているかを見れば閉塞部位がわかりそうですね。
ドクタードクター
まさにそれが実臨床の考え方だ。「どこから下の胆管が拡張していないか」を確認すれば、閉塞部位を推定できる。身体所見と画像を同じ解剖の地図の上で読む習慣をつけてほしい。

まとめ

Courvoisier徴候は、閉塞性黄疸に圧痛のない胆嚢腫大を伴う所見で、胆嚢管合流部より十二指腸乳頭側で胆道が緩徐に閉塞したときに生じます。代表は膵頭部癌と下部(遠位)胆管癌で、十二指腸乳頭部癌でもみられます。肝門部胆管癌や肝内胆管癌は閉塞が合流部より上流のため胆嚢は腫大せず、胆嚢癌は胆嚢壁が浸潤されて伸展しにくいため原則として認めません。また総胆管結石では慢性炎症で胆嚢壁が線維化していることや急性の有痛性閉塞であることから起こりにくく、黄疸+無痛性胆嚢腫大は悪性閉塞を示唆する手がかりになります。胆道の解剖に閉塞部位を当てはめて考える姿勢は、身体所見だけでなく超音波・CTでの胆管拡張の読影にもそのまま生きてきます。

解答・解説

正解はb, dです

Courvoisier徴候とは

Courvoisier(クールボアジェ)徴候は、閉塞性黄疸のある患者で、圧痛を伴わない腫大した胆嚢を右季肋部に触知する所見である。胆汁の流れが胆嚢管合流部(胆嚢管が総胆管に合流する部位)より十二指腸乳頭側でせき止められると、肝臓で作られた胆汁は胆嚢管を逆流して胆嚢内にたまり、胆嚢が緊満・腫大する。悪性腫瘍による閉塞は緩徐に進行するため、胆嚢壁が徐々に伸展され、炎症も伴わないことから痛みがない。

解き方

この徴候が出るための条件は、(1)閉塞部位が胆嚢管合流部より下流(乳頭側)であること、(2)胆嚢自体が伸展できる状態にあること、の2点である。したがって、各選択肢の病変が胆道のどこを閉塞するかを、肝内→肝門部→上中部胆管→胆嚢管合流部→下部胆管(膵内胆管)→乳頭部という解剖学的位置関係に当てはめて考えればよい。合流部より下流を閉塞する膵頭部癌と下部胆管癌が該当する。

選択肢考察

  1. ×a.  胆嚢癌

    胆嚢癌では胆嚢そのものが腫瘍に置き換わったり壁が硬く浸潤されたりしており、胆汁がたまっても胆嚢が伸展・腫大しにくい。また黄疸をきたすのは胆嚢頸部から肝門部・総胆管上部への浸潤によることが多く、閉塞部位は胆嚢管合流部かそれより肝臓側になる。胆嚢管自体が閉塞すれば胆汁は胆嚢に流入できない。いずれにしても無痛性の胆嚢腫大(Courvoisier徴候)は通常みられない。腫瘍そのものを硬い腫瘤として触れることはあるが、それはCourvoisier徴候とは異なる。

  2. ○b.  膵頭部癌

    総胆管の下部は膵頭部の中を貫いて十二指腸乳頭に開口する。膵頭部癌はこの膵内胆管を外側から圧迫・浸潤して閉塞させるため、閉塞部位は胆嚢管合流部より乳頭側となる。胆汁は胆嚢内に逆流して貯留し、無痛性の胆嚢腫大をきたす。閉塞性黄疸と無痛性胆嚢腫大の組合せは膵頭部癌の古典的な身体所見である。

  3. ×c.  肝内胆管癌

    肝内胆管癌は肝内の胆管から発生し、多くは肝内の腫瘤として発見される。胆道を閉塞しても閉塞部位は肝内(胆嚢管合流部よりはるかに上流)であり、胆汁は胆嚢に到達できないため胆嚢は腫大せず、むしろ虚脱する。Courvoisier徴候は陰性である。

  4. ○d.  下部胆管癌

    下部胆管は胆嚢管合流部より下流、膵内を走行して乳頭に至る部分である。ここに発生した癌で胆管が閉塞すると、上流の総胆管・肝管とともに胆嚢にも胆汁が貯留し、胆嚢が無痛性に腫大する。したがってCourvoisier徴候を示す。同様の理由で十二指腸乳頭部癌でもみられる。

  5. ×e.  肝門部胆管癌

    肝門部胆管癌は左右肝管の合流部付近を閉塞する。閉塞部位は胆嚢管合流部より上流(肝臓側)なので、閉塞性黄疸は生じても胆汁は胆嚢に流れ込まず、胆嚢は腫大しない(むしろ萎縮・虚脱する)。画像上、肝内胆管は拡張するが胆嚢と下部胆管は拡張しないのが特徴である。

閉塞部位と画像・身体所見の関係

・肝門部より上流の閉塞(肝内胆管癌、肝門部胆管癌など):肝内胆管は拡張、総胆管・胆嚢は拡張しない。Courvoisier徴候陰性。 ・胆嚢管合流部より下流の閉塞(下部胆管癌、膵頭部癌、乳頭部癌など):肝内胆管・総胆管ともに拡張し、胆嚢も腫大する。Courvoisier徴候陽性。 ・腹部超音波やCTで「どこから下の胆管が拡張していないか」を見ることで閉塞部位を推定できる。

Courvoisierの法則

本来は「黄疸患者で胆嚢が腫大していれば、原因は結石より悪性腫瘍の可能性が高い」という経験則である。総胆管結石による閉塞では、それまでの胆石症による慢性胆嚢炎で胆嚢壁が線維化・萎縮して伸展しにくいことが多く、また閉塞が急性で疼痛を伴いやすいため、無痛性の胆嚢腫大は起こりにくい。ただし例外もあり、絶対的な法則ではない。

胆道癌の区分

胆道癌は、肝内胆管癌、肝外胆管癌(肝門部領域胆管癌・遠位胆管癌)、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌に分けられる。遠位胆管は、ほぼ胆嚢管合流部より下流の部分に相当し、従来の下部胆管にあたる。

POINT

・Courvoisier徴候=閉塞性黄疸+無痛性の胆嚢腫大。 ・胆嚢管合流部より乳頭側の閉塞で出現する:膵頭部癌、下部(遠位)胆管癌、十二指腸乳頭部癌。 ・肝内胆管癌、肝門部胆管癌、胆嚢癌では原則みられない。 ・悪性の緩徐な閉塞で出やすく、総胆管結石では出にくい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。