StudyMed医師国家試験

吸うときか、吐くときか―ゼーゼーの「タイミング」で読み解く乳幼児の呼吸器疾患

第108回医師国家試験 G問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第108回 G問題 第28問

乳幼児の呼吸器症状について正しいのはどれか。

  1. a.百日咳では無呼吸はみられない。
  2. b.突然の呼吸困難では気道異物を疑う。
  3. c.喉頭軟化症では呼気性喘鳴がみられる。
  4. d.クループ症候群では呼気延長がみられる。
  5. e.急性細気管支炎では吸気性喘鳴がみられる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、乳幼児の代表的な呼吸器症状と疾患の組み合わせを問う問題だ。カギになるのは、喘鳴が吸気と呼気のどちらで目立つか、という視点。それに加えて、小児救急で見逃してはいけない2つの状況も押さえておこう。まず、喘鳴のタイミングは何で決まると思う?
医学生医学生
狭くなっている場所が上気道か下気道か、でしょうか。
ドクタードクター
そう、ポイントは胸郭の外か中かだ。喉頭や声門下などの胸郭外の上気道は、息を吸うと気道内が陰圧になって、狭い部分がさらにつぶれる。だから吸気性喘鳴、いわゆるstridorと吸気延長が目立つ。一方、細気管支などの胸郭内の下気道は、息を吐くときに胸腔内圧が上がって押しつぶされるので、呼気性喘鳴、wheezeと呼気延長が出る。
医学生医学生
呼吸生理の講義で習った、胸腔内圧と気道の関係ですね。それなら喉頭軟化症は喉頭の病気なので、吸気性になるはずです。
ドクタードクター
その通り。喉頭軟化症は喉頭の支持組織が柔らかく、吸気時に喉頭蓋や披裂部が声門側へ引き込まれる病態で、乳児の先天性喘鳴の原因として最も多い。仰臥位や啼泣、哺乳で強くなり、腹臥位で軽くなることが多い。だから呼気性喘鳴とする記述は誤りだ。
医学生医学生
大部分は自然に治るんでしたっけ。
ドクタードクター
そう、多くは1〜2歳頃までに軽快する。ただ哺乳障害や体重増加不良を来す重症例では手術を検討するよ。次はクループ症候群だ。
医学生医学生
小児科の実習で、夜中にケンケンという咳で救急に来た子を見ました。あれも喉の病気だから、呼気延長ではなく吸気延長ですね。
ドクタードクター
正解。パラインフルエンザウイルスなどによる喉頭から声門下の浮腫で、犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴が三徴だ。頸部X線正面像のsteeple signも有名だね。治療はアドレナリン吸入やステロイド。呼気延長は喘息や細気管支炎のような下気道狭窄の所見だから、この記述は誤りになる。
医学生医学生
急性細気管支炎は、RSウイルスで乳児がゼーゼーする病気ですよね。名前の通り細気管支なので、呼気性のはずです。
ドクタードクター
よく整理できているね。細気管支の上皮の壊死や浮腫、粘液栓で細い気道が狭くなる胸郭内の病変だから、呼気性喘鳴と呼気延長、多呼吸、陥没呼吸がみられる。吸気性喘鳴とする記述は誤りだ。早産児や先天性心疾患のある子では重症化しやすく、無呼吸を来すこともある。
医学生医学生
百日咳は、スタッカートとwhoopが特徴なので、無呼吸は関係ないように思っていました。
ドクタードクター
そこが落とし穴なんだ。典型的な咳発作は年長児や成人の話で、生後6か月未満、特にワクチン接種前の乳児では咳発作がはっきりせず、無呼吸やチアノーゼ、けいれんで発症することがある。突然死や脳症の原因にもなるから、無呼吸はみられないという記述は誤りだ。
医学生医学生
ということは、正解は突然の呼吸困難では気道異物を疑う、ですね。
ドクタードクター
そう。乳幼児は何でも口に入れるうえ、咀嚼や嚥下、咳反射が未熟なので、豆類や玩具の部品を誤嚥しやすい。熱などの前ぶれがなく、食事中や遊んでいる最中に突然むせて咳や喘鳴、呼吸困難が出たら、まず気道異物を考える。気管支異物なら片側の呼吸音低下や、チェックバルブ機構による患側の過膨張がみられ、呼気時の胸部X線で分かりやすくなる。診断と除去には気管支鏡を使う。
医学生医学生
問診で「いつから、何をしていたときに」を聞くのが大事なんですね。OSCEの医療面接でも発症様式は必ず聞くよう教わりました。
ドクタードクター
まさにそれが診断の決め手になる。発展知識として、急性喉頭蓋炎も覚えておこう。Hibなどによる細菌感染で、高熱、流涎、嚥下困難、前傾座位が特徴で、頸部側面X線ではthumb signを示す。急速に完全閉塞しうるので、無理に咽頭を診察したり仰臥位にしたりするのは避ける。窒息時の対応は、1歳未満なら背部叩打法と胸部突き上げ法、1歳以上では腹部突き上げ法だ。
医学生医学生
百日咳は、乳児の家族の大人がうつしていることも多いと聞きました。
ドクタードクター
その通り。年長者や成人は咳が長引くだけで見過ごされやすく、免疫のない乳児に感染させてしまう。乳児の無呼吸を見たら、家族の咳の有無も確認するといい。

まとめ

乳幼児の喘鳴は、狭窄部位が胸郭外か胸郭内かで聴こえるタイミングが変わります。喉頭軟化症やクループ症候群、急性喉頭蓋炎などの上気道狭窄では吸気性喘鳴と吸気延長が、急性細気管支炎や気管支喘息などの下気道狭窄では呼気性喘鳴と呼気延長がみられます。乳児の百日咳は典型的な咳発作を欠き、無呼吸やチアノーゼで発症しうる重症疾患であり、前ぶれのない突然の咳込みや呼吸困難では気道異物をまず疑って気管支鏡での評価を考えます。喘鳴の生理学的な成り立ちと発症様式の問診を組み合わせることで、小児の呼吸器疾患を効率よく鑑別でき、救急外来での見逃し防止にもつながります。

解答・解説

正解はbです

乳幼児の代表的な呼吸器症状と、それを起こす疾患の組み合わせを問う問題である。 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)は、気道が狭くなった部位によって聴こえるタイミングが異なる。胸郭の外にある上気道(鼻咽頭・喉頭・声門下・胸郭外気管)が狭い場合、吸気時に気道内が陰圧となって狭窄部がさらに虚脱するため、吸気性喘鳴(stridor)と吸気の延長が目立つ。一方、胸郭内の下気道(細気管支など)が狭い場合は、呼気時に胸腔内圧が上がって気道が押しつぶされるため、呼気性喘鳴(wheeze)と呼気の延長が目立つ。 この原則を当てはめると、喉頭軟化症やクループ症候群は上気道の病変なので「吸気性」、急性細気管支炎や気管支喘息は下気道の病変なので「呼気性」と整理できる。さらに、乳児の百日咳では典型的な咳発作が目立たず無呼吸で発症しうること、元気だった乳幼児が急に呼吸困難に陥ったらまず気道異物を考えることも、小児救急の基本知識として押さえておく。

選択肢考察

  1. ×a.  百日咳では無呼吸はみられない。

    誤り。百日咳は百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染症で、年長児や成人では連続性の咳込み(スタッカート)とそれに続く吸気時の笛声(whoop)が特徴的である。しかし生後6か月未満、特にワクチン未接種の早期乳児では咳発作がはっきりせず、無呼吸発作やチアノーゼ、けいれんで発症することがあり、突然死や脳症の原因にもなる。乳児の百日咳は無呼吸に注意すべき重症疾患である。

  2. ○b.  突然の呼吸困難では気道異物を疑う。

    正しい。乳幼児は手に取った物を口に入れる習性があり、咀嚼・嚥下機能や咳嗽反射も未熟なため、ピーナッツなどの豆類、玩具の部品、硬貨などを誤嚥しやすい。発熱などの前駆症状がないまま、食事中や遊んでいる最中に突然むせ込み、咳・喘鳴・呼吸困難が出現した場合はまず気道異物を疑う。喉頭や気管の異物では窒息に至ることがあり、気管支異物では片側の呼吸音減弱や、チェックバルブ機構による患側肺の過膨張(呼気時胸部X線写真で明瞭になる)がみられる。診断と除去には気管支鏡が用いられる。

  3. ×c.  喉頭軟化症では呼気性喘鳴がみられる。

    誤り。喉頭軟化症は喉頭の軟骨や支持組織が柔らかく、吸気時に喉頭蓋や披裂部が声門側へ引き込まれて気道が狭くなる病態で、乳児の先天性喘鳴の原因として最も多い。胸郭外の上気道病変であるため、みられるのは吸気性喘鳴である。生後数週以内に始まり、仰臥位・啼泣時・哺乳時に増強し、腹臥位で軽減することが多い。大部分は成長とともに1〜2歳頃までに自然軽快するが、重症例では哺乳障害や体重増加不良を来し手術(声門上形成術)が検討される。

  4. ×d.  クループ症候群では呼気延長がみられる。

    誤り。クループ症候群は主にパラインフルエンザウイルスなどによる喉頭・声門下の炎症性浮腫で、生後6か月〜3歳頃に好発する。犬吠様咳嗽(犬が吠えるようなケンケンという咳)、嗄声、吸気性喘鳴が三徴であり、上気道狭窄を反映して延長するのは呼気ではなく吸気である。重症例では陥没呼吸がみられる。頸部X線正面像では声門下の狭小化(steeple sign、尖塔状陰影)がみられる。治療はアドレナリン吸入やステロイド投与である。呼気延長は気管支喘息や細気管支炎など下気道狭窄の所見である。

  5. ×e.  急性細気管支炎では吸気性喘鳴がみられる。

    誤り。急性細気管支炎は2歳未満、特に乳児に多いウイルス性下気道感染症で、原因はRSウイルス(respiratory syncytial virus)が最多である。細気管支の上皮の壊死・浮腫と粘液栓により細い気道が狭窄・閉塞する胸郭内の病変であるため、呼気性喘鳴と呼気延長、多呼吸、陥没呼吸がみられる。胸部X線写真では肺の過膨張を示すことがある。早産児や先天性心疾患児では重症化しやすく、無呼吸を来すこともある。

喘鳴の部位による分類

・吸気性喘鳴(stridor):胸郭外の上気道狭窄。例:喉頭軟化症、クループ症候群、急性喉頭蓋炎、声門下狭窄、喉頭・気管上部の異物。なお、気管の固定性狭窄(血管輪など)では吸気・呼気の両相で喘鳴が聴かれることがある。 ・呼気性喘鳴(wheeze):胸郭内の下気道狭窄。例:気管支喘息、急性細気管支炎、気管支異物。

クループ症候群と急性喉頭蓋炎の違い

どちらも吸気性喘鳴を来すが、急性喉頭蓋炎はインフルエンザ菌b型(Hib)などによる細菌感染で、高熱、流涎、嚥下困難、前傾座位(tripod position)が特徴であり、急速に完全閉塞へ進行しうる。頸部側面X線でthumb signを示す。Hibワクチンの普及で激減した。咽頭の診察や仰臥位は閉塞を誘発しうるため避ける。

乳児の百日咳

定期接種の百日咳を含む混合ワクチンは生後2か月から開始されるため、それ以前の乳児は免疫がなく重症化しやすい。無呼吸・チアノーゼで発症し、白血球数増加(リンパ球優位)が特徴的である。家族内の年長者・成人が感染源となることが多い。

気道異物

好発は1〜3歳。食物(特に豆類)が多い。窒息時は1歳未満なら背部叩打法と胸部突き上げ法、1歳以上では腹部突き上げ法(ハイムリック法)を行う。

POINT

・胸郭外(上気道)狭窄 → 吸気性喘鳴・吸気延長:喉頭軟化症、クループ症候群、急性喉頭蓋炎 ・胸郭内(下気道)狭窄 → 呼気性喘鳴・呼気延長:急性細気管支炎、気管支喘息 ・乳児の百日咳は咳発作より無呼吸・チアノーゼで発症しうる ・前駆症状のない突然の咳込み・呼吸困難は気道異物をまず疑う

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。