StudyMed医師国家試験

手・足・口にそろう小さな水疱―幼児の発疹から原因ウイルスを言い当てる

第108回医師国家試験 D問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第108回 D問題 第34問

2歳の男児。早朝から発熱を認め,四肢に皮疹が出現したため母親に連れられて来院した。口腔内に疼痛はあるが,全身状態は良好である。来院時の手の写真を別に示す。  原因ウイルスはどれか。

第108回 D問題 第34問の問題画像
  1. a.ライノウイルス
  2. b.アデノウイルス
  3. c.コクサッキーウイルス
  4. d.ヒトパピローマウイルス
  5. e.パラインフルエンザウイルス

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、小児の発熱と発疹から疾患を特定し、その原因ウイルスまで結びつける問題だ。注目してほしいのは「皮疹の場所」と「口の痛み」の2つ。まず、手の写真で何が見えるかを言葉にしてみよう。
医学生医学生
手のひらや指に小さな楕円形の水疱が散らばっていて、周りが少し赤くなっています。
ドクタードクター
そう、米粒大くらいの楕円形の小水疱で、周囲に紅暈を伴っている。そこに口の痛みが加わっていることが大事で、これは口の中にも水疱やびらんがあることを示唆しているんだ。手・足・口と並べば、ピンとくるかな。
医学生医学生
手足口病ですね。ただ、水疱と聞いて水痘も頭に浮かびました。
ドクタードクター
鑑別に挙げるのは大切だよ。水痘は体幹や頭部から始まって全身に広がり、紅斑・丘疹・水疱・痂皮が同時に混在するのが特徴だ。手掌や足底に目立つ今回の分布とは違う。ヘルペス性歯肉口内炎は歯肉の発赤・腫脹と口腔内の多発潰瘍が主体で、手の水疱は伴わない。伝染性膿痂疹は細菌感染で、ふつう発熱を伴わない。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、ヘルペス性歯肉口内炎の子が歯ぐきが真っ赤に腫れて、よだれが止まらなかったのを覚えています。
ドクタードクター
いい経験だね。歯肉炎が目立つかどうかは大きな手がかりになる。では、手足口病の原因ウイルスは何だろう。
医学生医学生
コクサッキーウイルスですね。エンテロウイルスの仲間だったと思います。
ドクタードクター
正解。ピコルナウイルス科エンテロウイルス属のRNAウイルスで、A16型が古典的な原因、近年はA6型による流行も多い。同じ属のエンテロウイルス71型も原因になる。ほかの選択肢も、対応する疾患とセットで整理しておこう。ライノウイルスはどうかな。
医学生医学生
普通感冒のいちばん多い原因でしたよね。鼻汁や咽頭痛が中心で、水疱はつくらないと思います。
ドクタードクター
その通り。小児では喘息発作の誘因にもなる。次はアデノウイルス。
医学生医学生
夏に流行るので、プール熱と少し迷いました。
ドクタードクター
季節が重なるから迷うのは自然だね。アデノウイルスの代表は咽頭結膜熱で、高熱・咽頭炎・結膜炎がそろうのが典型だ。流行性角結膜炎や出血性膀胱炎、乳幼児の胃腸炎の原因にもなる。高熱が数日続くことが多く、手掌・足底・口腔の小水疱という像とは合わない。
医学生医学生
ヒトパピローマウイルスは、いぼや尖圭コンジローマ、子宮頸癌の原因なので、急性の発熱と発疹には結びつかないですね。
ドクタードクター
そう、上皮に感染して増殖性病変をつくるDNAウイルスだから、今回の経過とは別物だ。パラインフルエンザウイルスは乳幼児のクループ、つまり犬吠様咳嗽や吸気性喘鳴の最も多い原因で、皮疹は主症状ではない。
医学生医学生
疾患とウイルスを1対1で覚えておくと速く解けそうです。CBTの前に表にまとめて覚えました。
ドクタードクター
その表に、ヘルパンギーナはコクサッキーA群、突発性発疹はHHV-6・7、伝染性紅斑はパルボウイルスB19、細気管支炎はRSウイルス、と加えておくといい。コクサッキーウイルスはB群が心筋炎・心膜炎や流行性筋痛症の原因になることも押さえておこう。
医学生医学生
手足口病自体は、軽く済むことが多い病気という理解でいいですか。
ドクタードクター
多くは自然に治り、水疱は痂皮をつくらずに1週間ほどで消える。ただ臨床では注意点がいくつかある。まず、口の痛みで飲食が減り脱水になりやすい。次に、エンテロウイルス71型では無菌性髄膜炎や脳幹脳炎などの中枢神経合併症が起こりうるので、頭痛や嘔吐、ぼんやりしている、手足がぴくつくといった様子があれば要注意だ。さらにA6型では、回復して1〜2か月後に爪が剝がれることがあり、保護者が驚いて受診することもある。
医学生医学生
保育園への登園はどう説明すればいいでしょうか。
ドクタードクター
学校保健安全法では出席停止期間が定められておらず、全身状態が安定していれば登園できるとされている。ただし症状が治まった後も便中には数週間ウイルスが排出されるから、おむつ交換後の手洗いなど接触・糞口感染への対策が大切だ。特異的な抗ウイルス薬はなく、治療は対症療法が中心になる。

まとめ

乳幼児で手掌・足底・口腔粘膜に小水疱が出現し、発熱は軽度で全身状態が良好であれば手足口病を考え、その主な原因はエンテロウイルス属のコクサッキーウイルス(A16型、近年はA6型)とエンテロウイルス71型です。水痘は体幹から始まり各段階の発疹が混在する点、ヘルペス性歯肉口内炎は歯肉炎と口腔内潰瘍が主体である点で区別します。かぜ症候群はライノウイルス、咽頭結膜熱はアデノウイルス、クループはパラインフルエンザウイルス、疣贅や子宮頸癌はヒトパピローマウイルスと、疾患と原因ウイルスを対応させて整理しておくことが重要です。多くは自然軽快しますが、口腔内痛による脱水、エンテロウイルス71型による中枢神経合併症、A6型による爪甲脱落に注意し、症状消失後も続く便中へのウイルス排出を踏まえた手洗い指導が欠かせません。小児の発疹性疾患を「分布」と「随伴症状」から読み解く力は、外来で保護者に適切な説明をするための基本になります。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

・2歳の幼児に、急な発熱とともに四肢の皮疹が出現している。 ・口腔内の痛みがある。口の中にも病変(口内炎様の水疱・びらん)があることを示唆する。 ・全身状態は良好である。 ・手の写真では、手掌・手指に米粒大程度の楕円形の小水疱が散在し、周囲に紅暈(赤いふち取り)を伴っている。

診断へのプロセス

乳幼児で「手(手掌・手指)」「足(足底・足背)」「口(口腔粘膜)」に水疱性の発疹がそろって出現し、発熱は軽度〜中等度で全身状態が良い、という組み合わせは手足口病の典型像である。水疱を来す小児の発疹性疾患として水痘、単純ヘルペスウイルス感染症(歯肉口内炎)、伝染性膿痂疹などが鑑別に挙がる。水痘は体幹・頭部から始まって全身に広がり、紅斑・丘疹・水疱・痂皮が混在するのが特徴で、手掌・足底に限局する分布とは異なる。ヘルペス性歯肉口内炎は歯肉の発赤・腫脹と口腔内の多発潰瘍が主体で、手掌の水疱は伴わない。伝染性膿痂疹は細菌感染で、びらんや痂皮が顔面などに生じ、発熱は通常伴わない。 したがって診断は手足口病であり、その主要な原因ウイルスであるエンテロウイルス属のコクサッキーウイルス(主にA16型、近年はA6型も多い)を選ぶ。

選択肢考察

  1. ×a.  ライノウイルス

    ライノウイルスはピコルナウイルス科のRNAウイルスで、いわゆる普通感冒(かぜ症候群)の原因として最も頻度が高い。鼻汁・鼻閉・咽頭痛などの上気道炎症状を起こし、小児では喘息発作の誘因にもなる。手・足・口の水疱性発疹は起こさない。

  2. ×b.  アデノウイルス

    アデノウイルスはDNAウイルスで、咽頭結膜熱(プール熱:発熱・咽頭炎・結膜炎)、流行性角結膜炎、滲出性扁桃炎、出血性膀胱炎、乳幼児の胃腸炎(40・41型)などの原因となる。高熱が数日続くことが多い。手掌・足底・口腔の小水疱という手足口病の像とは合致しない。

  3. ○c.  コクサッキーウイルス

    コクサッキーウイルスはピコルナウイルス科エンテロウイルス属のRNAウイルスで、手足口病の主要な原因である(A16型が古典的、近年はA6型による流行も多い)。同じエンテロウイルス属のエンテロウイルス71型も原因となり、こちらは無菌性髄膜炎や脳幹脳炎などの中枢神経合併症を起こしやすい。コクサッキーウイルスはほかに、ヘルパンギーナ(軟口蓋の水疱・潰瘍と高熱、主にA群)、無菌性髄膜炎、心筋炎・心膜炎(主にB群)、流行性筋痛症(B群)の原因ともなる。

  4. ×d.  ヒトパピローマウイルス

    ヒトパピローマウイルス(HPV)はDNAウイルスで、皮膚や粘膜の上皮に感染して増殖性病変を作る。尋常性疣贅(いぼ)、尖圭コンジローマ(主に6型・11型)の原因であり、高リスク型(16型・18型など)の持続感染は子宮頸癌や中咽頭癌、肛門癌などの原因となる。HPVワクチンによって子宮頸癌の前癌病変を予防できる。急性の発熱と水疱性発疹は起こさない。

  5. ×e.  パラインフルエンザウイルス

    パラインフルエンザウイルスはパラミクソウイルス科のRNAウイルスで、乳幼児のクループ症候群(急性声門下喉頭炎:犬吠様咳嗽、吸気性喘鳴、嗄声)の最も多い原因である。細気管支炎や肺炎の原因にもなる。皮疹は主症状ではない。

手足口病の概要

・原因:エンテロウイルス属(コクサッキーウイルスA16型・A6型・A10型、エンテロウイルス71型など)。 ・好発:乳幼児(5歳以下が大部分)で、夏季に流行する。 ・感染経路:飛沫感染、接触感染、糞口感染。症状が治まった後も、便中には数週間ウイルスが排出されるため、手洗いが重要である。 ・潜伏期:3〜5日程度。 ・症状:手掌・手指、足底・足背、口腔粘膜(頬粘膜・舌など)に小水疱が出現する。殿部や膝に出ることもある。発熱は約1/3にみられ、多くは軽度である。水疱は痂皮を作らずに数日〜1週間で消える。口腔内の痛みで食事・水分摂取が減り、脱水に注意する。 ・コクサッキーA6型では、水痘様の大きめの水疱が広範囲に出ることがあり、回復後1〜2か月して爪が剝がれる(爪甲脱落)ことがある。 ・合併症:無菌性髄膜炎、脳炎(とくにエンテロウイルス71型)、心筋炎など。まれだが重篤になりうる。 ・治療:特異的な抗ウイルス薬はなく、対症療法を行う。 ・登園:学校保健安全法で出席停止期間は定められておらず、本人の全身状態が安定していれば登園は可能とされる。

小児の主なウイルス感染症と原因ウイルス

・手足口病:コクサッキーウイルスA群、エンテロウイルス71型 ・ヘルパンギーナ:コクサッキーウイルスA群 ・咽頭結膜熱:アデノウイルス ・クループ:パラインフルエンザウイルス ・細気管支炎:RSウイルス ・突発性発疹:ヒトヘルペスウイルス6型・7型 ・伝染性紅斑:パルボウイルスB19 ・水痘:水痘・帯状疱疹ウイルス ・ヘルペス性歯肉口内炎:単純ヘルペスウイルス1型

POINT

・乳幼児の手掌・足底・口腔内の小水疱+軽い発熱、全身状態良好 → 手足口病。 ・手足口病の原因はコクサッキーウイルスA16型・A6型、エンテロウイルス71型(中枢神経合併症に注意)。 ・コクサッキーウイルスはヘルパンギーナ、無菌性髄膜炎、心筋炎(B群)の原因にもなる。 ・水痘は体幹から始まり、各段階の発疹が混在する点で鑑別する。 ・クループ→パラインフルエンザ、咽頭結膜熱→アデノウイルス、かぜ症候群→ライノウイルスと対応させて覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。