早産児のお腹が張ったら要注意―新生児壊死性腸炎を「誰に・どう見え・どう治すか」で整理する
第107回医師国家試験 I問題 第36問
国試問題にチャレンジ
新生児壊死性腸炎について正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.腹部が膨満する。
- b.人工乳が発症を予防する。
- c.正期産児で発症頻度が高い。
- d.疑った段階で直ちに開腹手術を行う。
- e.腹部エックス線写真で腸管壁の気腫像がみられる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
新生児壊死性腸炎は、腸管の未熟性、虚血、腸内細菌の侵入、人工乳による経腸栄養などが重なって起こり、早産児・低出生体重児の回盲部付近に好発する重篤な疾患です。腹部膨満が代表的な症状で、胃残量の増加や胆汁性嘔吐、血便、無呼吸や徐脈などの非特異的な全身症状も伴い、腹部エックス線での腸管壁内ガス(腸管気腫症)や門脈内ガスが特徴的な所見です。治療はまず絶食・胃管減圧・輸液・抗菌薬による内科的治療で、手術は穿孔例や内科治療抵抗例に行い、母乳栄養は発症予防に働く一方で人工乳は危険因子となります。修正Bell分類による重症度評価や、腸管狭窄・短腸症候群といった後遺症、限局性腸穿孔との鑑別もあわせて理解しておくと、NICUでの早期発見と適切な管理につながります。
解答・解説
正解はa, eです
新生児壊死性腸炎(necrotizing enterocolitis:NEC)は、主に早産・低出生体重児の腸管に炎症と壊死が生じる重篤な疾患である。回腸末端から上行結腸にかけての回盲部付近に好発し、進行すると腸管穿孔や敗血症、播種性血管内凝固(DIC)を来して死亡することもある。 発症には、1)腸管の未熟性(粘膜のバリア機能・消化管運動・局所免疫が未熟)、2)腸管の血流低下による虚血と粘膜障害、3)腸内細菌の異常増殖と粘膜への侵入、4)経腸栄養(特に人工乳)の開始・増量、の複数の要因が重なって関与すると考えられている。 解答にあたっては、次の4点を押さえればよい。 ・誰に起こるか:早産児・低出生体重児(正期産児ではまれ)。 ・症状:腹部膨満、胃内容の停滞(胃残量の増加)、胆汁性嘔吐、血便など。 ・画像:腸管拡張に加え、腸管壁内ガス(腸管気腫症)と門脈内ガスが特徴。 ・治療:まず絶食・胃内減圧・輸液・抗菌薬による内科的治療を行い、穿孔や内科治療抵抗例に手術を行う。予防には母乳栄養が有効。
選択肢考察
- ○a. 腹部が膨満する。
腸管の炎症・壊死により腸の動きが止まり(麻痺性イレウス)、腸管内にガスや内容物がたまるため腹部が膨満する。腹部膨満は最も早期から見られる代表的な症状で、ほかに胃残量の増加、胆汁性嘔吐、血便、腹壁の発赤などを伴う。全身症状として無呼吸発作、徐脈、体温不安定、活気低下など、敗血症に似た非特異的な症状が先行することもある。
- ×b. 人工乳が発症を予防する。
逆である。NECは人工乳で栄養された児に多く、母乳(特に自分の母親の母乳)が発症を減らすことが知られている。母乳には分泌型IgA、ラクトフェリン、オリゴ糖、成長因子などが含まれ、腸管の防御機能を高め、望ましい腸内細菌叢の形成を助けると考えられている。自母乳が得られない場合にはドナーミルク(母乳バンクの母乳)の利用が勧められる。
- ×c. 正期産児で発症頻度が高い。
NECは早産児・低出生体重児、とりわけ極低出生体重児(出生体重1,500 g未満)や超低出生体重児(1,000 g未満)に多く、在胎週数が短いほど頻度が高い。正期産児での発症はまれで、発症した場合はチアノーゼ性先天性心疾患や新生児仮死など、腸管の血流を低下させる基礎疾患を伴うことが多い。
- ×d. 疑った段階で直ちに開腹手術を行う。
NECを疑った段階では、まず内科的治療を行う。具体的には経腸栄養の中止(絶食)、胃管による減圧、輸液・静脈栄養、広域抗菌薬の投与、呼吸・循環の管理であり、腹部X線を繰り返して経過を追う。手術の絶対的な適応は、腹腔内遊離ガスで示される消化管穿孔である。そのほか、内科的治療を行っても全身状態や腹部所見が悪化する場合に手術を考慮する。全身状態の悪い超低出生体重児では、まず腹腔ドレナージを行うこともある。
- ○e. 腹部エックス線写真で腸管壁の気腫像がみられる。
腸管壁内ガス(腸管気腫症)は、細菌が障害された粘膜から腸管壁内に入り込んで産生したガスによるもので、NECに特徴的な所見である。腸管壁に沿った泡状または線状の透亮像として見える。さらに進むとガスが門脈系へ流れ込み、肝臓に枝分かれした透亮像(門脈内ガス)が見られる。穿孔すれば腹腔内遊離ガスが出現する。そのほか腸管拡張、腸管壁の肥厚、位置の変わらない拡張腸管(fixed loop)も見られる。
修正Bell分類(病期分類)
Stage I(疑い):体温不安定、無呼吸、徐脈、胃残量増加、軽い腹部膨満、便潜血陽性など。X線は正常ないし軽度の腸管拡張。 Stage II(確定):上記に加え、腸管壁内ガスや門脈内ガスを認める。腹部の圧痛、代謝性アシドーシス、血小板減少を伴うことがある。 Stage III(進行):全身状態が重篤(低血圧、DIC、腹膜炎)。IIIBは腸管穿孔(腹腔内遊離ガス)。
検査所見
血液検査では白血球の増減、CRP上昇、血小板減少、代謝性アシドーシスがみられ、進行を反映する。腹部超音波では腸管壁の肥厚や血流低下、門脈内ガス、腹水をX線より鋭敏に捉えられることがある。
治療と予後
内科的治療は絶食(通常7〜14日程度)、胃管減圧、輸液・静脈栄養、抗菌薬。穿孔例や内科的治療に反応しない例では開腹して壊死腸管を切除し、腸瘻を造設することが多い。後遺症として腸管狭窄(回復期に通過障害として発症)や、広範切除後の短腸症候群がある。
予防
母乳栄養、経腸栄養の慎重な開始・増量が重要である。プロバイオティクスの予防効果も報告されている。
鑑別
早産児の限局性腸穿孔(spontaneous intestinal perforation)は、腸管壁内ガスを伴わず、生後早期に回腸で突然穿孔するもので、NECとは区別される。
POINT
・NECは早産・低出生体重児に好発し、回盲部付近に多い。 ・症状は腹部膨満、胃残量増加、胆汁性嘔吐、血便。 ・腹部X線で腸管壁内ガス(腸管気腫症)、門脈内ガスが特徴。遊離ガスは穿孔を示す。 ・治療はまず絶食・減圧・輸液・抗菌薬。手術は穿孔例や内科治療抵抗例。 ・母乳栄養が予防的に働き、人工乳は危険因子。
