単純写真で白く光る小さな影―尿管結石の成分は「写り方」と「頻度」で見抜く
第107回医師国家試験 I問題 第16問
国試問題にチャレンジ
右尿管結石症の腹部単純エックス線写真を別に示す。 この結石の成分として最も考えられるのはどれか。

- a.尿酸
- b.シスチン
- c.キサンチン
- d.シュウ酸カルシウム
- e.リン酸アンモニウム・マグネシウム
対話形式の解説
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ドクターまとめ
腹部単純エックス線写真で尿管に沿って明瞭に描出される結石は、カルシウムを含むエックス線非透過性結石であり、上部尿路結石の約9割を占めるカルシウム結石のうち最多のシュウ酸カルシウム結石が最も考えられます。尿酸結石やキサンチン結石はエックス線透過性で単純写真には写らずCTで検出され、シスチン結石は淡いすりガラス状、ストルバイト結石は感染を背景に腎盂腎杯内でサンゴ状結石を作りやすいのが特徴です。尿酸結石やシスチン結石は尿のアルカリ化などで溶解を図れますが、カルシウム結石は溶解が難しく、自然排石が困難なら体外衝撃波結石破砕術や経尿道的尿管砕石術を考えます。「写り方」と「頻度」から成分を推定する視点は、画像の読影だけでなく治療方針や再発予防の指導にもつながる重要な基礎知識です。
解答・解説
正解はdです
腹部単純エックス線写真(KUB:kidney, ureter, bladder の撮影)で、右尿管の走行に一致して、骨に近い濃度をもつ小さな結石陰影が明瞭に描出されている。本問は、「エックス線写真に写る結石か、写らない結石か」という結石成分の性質と、結石成分ごとの頻度から、成分を推定させる問題である。 考え方は二つある。 ①エックス線透過性:カルシウムを含む結石(シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム)はエックス線を強く吸収し、単純写真で白く明瞭に写る(エックス線非透過性結石)。一方、尿酸結石やキサンチン結石はエックス線をほとんど吸収せず単純写真に写らない(エックス線透過性結石)。シスチン結石は硫黄を含むため淡くすりガラス状に写る程度である。 ②頻度:日本の上部尿路結石の約 9割はカルシウム結石であり、その大部分はシュウ酸カルシウムを主成分とする。 尿管内の小さな結石が単純写真ではっきり写っていること、そして最も頻度が高いことから、シュウ酸カルシウム結石が最も考えられる。
選択肢考察
- ×a. 尿酸
誤り。尿酸結石は代表的なエックス線透過性結石で、腹部単純写真では写らない。CT では検出でき、超音波検査では音響陰影を伴う高エコー像として描出される。高尿酸血症・痛風のほか、持続する酸性尿(pH 5.5 以下)が形成の要因となる。クエン酸製剤による尿のアルカリ化で溶解が期待でき、尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタットなど)も用いられる。単純写真で明瞭に写っている本問の結石には当てはまらない。
- ×b. シスチン
誤り。シスチン結石は常染色体潜性(劣性)遺伝のシスチン尿症(近位尿細管・小腸でのシスチンおよび二塩基性アミノ酸の再吸収障害)で生じる。硫黄を含むためエックス線をある程度吸収するが、カルシウム結石に比べると淡く、すりガラス状にしか写らない。若年発症・再発・多発・両側性が特徴で、尿沈渣で六角形の結晶がみられる。治療は大量飲水、尿のアルカリ化、チオプロニンなどのチオール製剤である。頻度も低く、本問のように明瞭な陰影を示す結石としては考えにくい。
- ×c. キサンチン
誤り。キサンチン結石はエックス線透過性結石で、単純写真にはほとんど写らない。遺伝性キサンチン尿症(キサンチンオキシダーゼ欠損)や、キサンチンオキシダーゼ阻害薬を用いた高度の高尿酸血症の治療(腫瘍崩壊症候群など)に伴って生じることがあるが、きわめてまれである。
- ○d. シュウ酸カルシウム
正しい。シュウ酸カルシウム結石は上部尿路結石で最も頻度が高く、カルシウムを含むためエックス線を強く吸収し、単純写真で白く明瞭な陰影として写る。尿管内の小結石でも描出できることが多い。危険因子として高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症(シュウ酸を多く含む食品の過剰摂取、脂肪吸収障害による腸管からのシュウ酸吸収増加など)、低クエン酸尿症、水分摂取不足などがある。本問の画像所見と頻度の両面から最も考えられる成分である。
- ×e. リン酸アンモニウム・マグネシウム
誤り。リン酸アンモニウム・マグネシウム(ストルバイト)結石は、ウレアーゼ産生菌(Proteus 属など)による尿路感染で尿素がアンモニアに分解され、尿がアルカリ化することで形成される感染結石である。エックス線非透過性ではあるが、カルシウム結石より濃度は淡いことが多い。腎盂・腎杯内で大きく発育し、腎盂腎杯の形に一致したサンゴ状結石を呈するのが典型であり、尿管内の小結石として発見されることは少ない。女性に比較的多い。頻度・画像所見からみて本問の結石としては考えにくい。
尿路結石の成分とエックス線透過性
・エックス線非透過性(単純写真で明瞭に写る):シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム ・非透過性だがやや淡い:リン酸アンモニウム・マグネシウム(ストルバイト) ・淡く写る(すりガラス状):シスチン ・エックス線透過性(単純写真に写らない):尿酸、キサンチン、2,8-ジヒドロキシアデニン など
画像検査の使い分け
単純 CT はほぼすべての成分の結石を検出でき、尿路結石の診断に最も感度が高い(インジナビルなど一部の薬剤結石を除く)。超音波検査は被曝がなく、結石の音響陰影や水腎症の評価に有用である。単純写真で写らない結石は、尿酸・キサンチンなどの透過性結石を疑うきっかけとなる。
溶解療法
尿酸結石は尿のアルカリ化(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム製剤)で溶解が期待できる。シスチン結石も尿のアルカリ化とチオール製剤で溶解を図る。カルシウム結石は薬物での溶解は困難であり、自然排石が期待できない場合は体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や経尿道的尿管砕石術(TUL)などを行う。
POINT
・上部尿路結石の約 9割はカルシウム結石で、最多はシュウ酸カルシウム ・カルシウム結石は単純エックス線で明瞭に写る ・尿酸・キサンチン結石はエックス線透過性で単純写真に写らない(CT では検出可能) ・シスチン結石は淡く写る程度、ストルバイト結石は感染結石でサンゴ状結石を作りやすい ・尿酸結石・シスチン結石は尿のアルカリ化が治療の柱
