StudyMed医師国家試験

腎臓は背中で叩く―肋骨脊柱角叩打痛の正しい位置

第107回医師国家試験 H問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第107回 H問題 第9問

人体の模式図を別に示す。  打診によって肋骨脊柱角叩打痛を確認する部位はどれか。

第107回 H問題 第9問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、肋骨脊柱角叩打痛、いわゆるCVA叩打痛をどこで確認するかという、身体診察の基本手技の問題だ。名前に答えのヒントが詰まっているから、まずは「肋骨脊柱角」とはどこのことか考えてみよう。
医学生医学生
肋骨と脊柱がつくる角、ということですよね。でも肋骨はたくさんあるので、どの肋骨か迷います。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。ここでいう肋骨は一番下の第12肋骨だ。背中側で、第12肋骨の下縁と腰椎の棘突起の列とがなす角の部分を指す。左右に1つずつあるよ。
医学生医学生
そこを叩くのは、深いところに腎臓があるからでしょうか。
ドクタードクター
その通り。腎臓は後腹膜臓器で背中寄りにあり、おおよそ第12胸椎から第3腰椎の高さにある。だから背中側から叩くと振動が腎臓や腎周囲に伝わりやすい。腎被膜が引き伸ばされたり炎症を起こしたりしていると、叩いたときに響くような痛みが出るんだ。
医学生医学生
解剖実習で腎臓を取り出したとき、思ったより背中側の高い位置にあって驚いた覚えがあります。
ドクタードクター
その感覚は大事だよ。では図を見てみよう。背面には、肩甲骨の高さで脊柱の両脇にある部位、一番下の肋骨の端が脊柱と交わる高さの部位、腸骨稜から仙骨付近の部位が示されている。どれが当てはまるかな。
医学生医学生
肩甲骨の高さは上すぎるし、腸骨稜のあたりは下すぎるので、第12肋骨と脊柱が交わる高さの部位が正解ですね。
ドクタードクター
正解。肩甲骨の高さは中位胸椎のレベルで、深部にあるのは肺だ。腸骨稜から仙骨付近は下位腰椎や仙腸関節の評価で触れる場所で、腎臓からは大きく外れている。
医学生医学生
前面の、肋骨弓のすぐ下の部位も腎臓に近いように思えますが、違うんでしょうか。
ドクタードクター
そこは季肋部で、前から触る場所だね。右季肋部は胆嚢の位置にあたり、急性胆嚢炎のMurphy徴候を確認するところだ。右季肋部を押さえたまま深く息を吸ってもらうと、痛みで吸気が途中で止まる。腎臓は後腹膜臓器だから、前からではなく背中から叩くのが基本になる。
医学生医学生
前面の下腹部の部位は、虫垂炎のMcBurney点でしょうか。
ドクタードクター
右下腹部は虫垂炎の圧痛を調べる領域ではあるね。McBurney点は臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の外側3分の1の点だ。ただ図の点はそれよりやや下にあって厳密には一致しないし、いずれにしても前面だから肋骨脊柱角ではない。
医学生医学生
叩き方にも決まりはありますか。OSCEの腹部診察で練習した気がするのですが、うろ覚えです。
ドクタードクター
患者さんに座ってもらうか、横向きやうつ伏せになってもらう。片方の手のひらを肋骨脊柱角に当て、その手の甲をもう一方の握りこぶしの小指側で軽く叩く。間接叩打法というやり方だ。必ず左右を比べて、叩いた側に響く痛みがあれば陽性とする。「軽く叩きますね」と予告するのも忘れずに。
医学生医学生
陽性になったら、どんな病気を考えればいいですか。
ドクタードクター
代表は尿路結石と急性腎盂腎炎だ。結石が尿管を塞ぐと腎盂の圧が上がって腎被膜が伸ばされ、叩打痛が出る。激しい疝痛や血尿、鼠径部への放散痛を伴うことが多い。腎盂腎炎では悪寒戦慄を伴う高熱に腰背部痛、頻尿や排尿時痛、膿尿がそろう。ほかに腎周囲膿瘍や腎梗塞、水腎症でも陽性になりうる。
医学生医学生
泌尿器科の実習で、膀胱炎と腎盂腎炎を分けるには熱とCVA叩打痛を見なさいと言われました。
ドクタードクター
そう、それが臨床で一番役立つ使い方だ。膀胱炎は通常、発熱もCVA叩打痛もない。排尿時痛の患者さんで熱があって背中を叩くと響くなら、上部尿路まで感染が及んでいると考えて、治療の強さも変わってくる。ただし叩打痛だけで診断を決めず、尿検査や画像と合わせて判断することも覚えておこう。

まとめ

肋骨脊柱角は、背部で第12肋骨の下縁と脊柱とがなす角の部分で、その深部には後腹膜臓器である腎臓が位置します。ここに手掌を当て、反対の手の握りこぶしで間接的に叩打し、左右差のある響く痛みがあれば陽性とします。陽性は尿路結石や急性腎盂腎炎、腎周囲膿瘍など腎被膜の伸展や炎症を示唆し、とくに発熱と叩打痛は通常それらを欠く膀胱炎との鑑別に役立ちます。前面の右季肋部はMurphy徴候(急性胆嚢炎)、右下腹部はMcBurney点(急性虫垂炎)と、部位と徴候を対応させて覚えることが重要です。体表から深部臓器の位置を思い描けることは、身体診察全体の精度を高める基礎になります。

解答・解説

正解はdです

問われていること

肋骨脊柱角(costovertebral angle:CVA)叩打痛を調べる際に、どこを叩くかという身体診察の基本手技の問題である。

肋骨脊柱角の位置

肋骨脊柱角とは、背部で第12肋骨の下縁と脊柱(腰椎の棘突起列)とがなす角の部分を指す。左右に一つずつあり、その深部には腎臓(とくに腎下極〜腎門部に近い部分)が位置する。腎臓は後腹膜臓器で背側寄りにあり、おおよそ第12胸椎〜第3腰椎の高さに存在するため、背中側から叩打すると振動が腎・腎周囲に伝わりやすい。

図の読み取り

図では前面に①(左右の肋骨弓下=季肋部)と②(左右の下腹部)、背面に③(肩甲骨の高さ)、④(下位肋骨の下端と脊柱が交わる高さ、脊柱の両脇)、⑤(腸骨稜〜仙骨付近の高さ)が示されている。第12肋骨下縁と脊柱がつくる角に一致するのは背面の④である。

手技

患者を坐位(または側臥位・腹臥位)とし、検者は一方の手掌を肋骨脊柱角に当て、その手背をもう一方の手の握りこぶしの尺側で軽く叩く(間接叩打法)。左右を比較し、叩いた側に響く痛みがあれば陽性とする。尿路結石(尿管結石・腎結石)や急性腎盂腎炎、腎周囲膿瘍など、腎被膜が伸展・炎症を起こす病態で陽性となる。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は前面の左右の季肋部(肋骨弓の直下)である。右季肋部は胆嚢の位置に相当し、急性胆嚢炎で陽性となるMurphy徴候(右季肋部を圧迫したまま深吸気させると、痛みのため吸気が途中で止まる)を確認する部位である。肋骨脊柱角は背面にあるため誤りである。

  2. ×b.  ②

    ②は前面の左右下腹部である。右下腹部は虫垂炎の圧痛点を確認する領域として知られるが、McBurney点は臍と右上前腸骨棘を結ぶ線上で外側1/3の点であり、図の②の右側の点はそれよりも下方に位置するため厳密には一致しない。いずれにせよ前面であり、肋骨脊柱角ではない。

  3. ×c.  ③

    ③は背面の肩甲骨の高さ(中位胸椎レベル)で脊柱の両脇にあたる。深部には肺が位置し、肋骨もこの高さでは脊柱と角をつくる下縁をもたない。第12肋骨より明らかに頭側であり、腎臓の位置とも合わないため誤りである。

  4. ○d.  ④

    ④は背面で、最下位の肋骨(第12肋骨)の下縁と脊柱とがなす角に一致する部位である。直下に腎臓があり、ここを叩打して痛みが誘発されれば、尿路結石や腎盂腎炎など腎・腎周囲の病変を示唆する。よって肋骨脊柱角叩打痛を確認する部位として正しい。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は背面の腸骨稜〜仙骨付近の高さ(下位腰椎〜仙腸関節周囲)にあたる。腰椎疾患や仙腸関節の痛みを評価する際に触れる領域であり、第12肋骨より尾側に大きく外れていて、腎臓の位置とも一致しない。肋骨脊柱角ではないため誤りである。

肋骨脊柱角叩打痛が陽性となる主な疾患

・尿路結石:腰背部〜側腹部の激しい疝痛、血尿、悪心・嘔吐を伴い、鼠径部や外陰部へ痛みが放散することがある。結石が尿管を閉塞して腎盂内圧が上がり、腎被膜が伸展されることで叩打痛が生じる。 ・急性腎盂腎炎:発熱(しばしば悪寒戦慄を伴う高熱)、腰背部痛・側腹部痛に加え、排尿時痛や頻尿などの膀胱刺激症状、膿尿・細菌尿を認める。膀胱炎では通常発熱やCVA叩打痛はみられず、上部尿路感染との鑑別点になる。 ・その他:腎周囲膿瘍、腎梗塞、水腎症など。

腹部診察で問われやすい部位と徴候

・右季肋部:Murphy徴候(急性胆嚢炎)。 ・McBurney点:臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の外側1/3の点(急性虫垂炎の圧痛点)。Lanz点は左右の上前腸骨棘を結ぶ線の右1/3の点。 ・背部の肋骨脊柱角:CVA叩打痛(腎・上部尿路の病変)。

POINT

・肋骨脊柱角は背部で第12肋骨と脊柱がなす角で、深部に腎臓がある。 ・CVA叩打痛陽性は尿路結石・急性腎盂腎炎などを示唆する。 ・発熱+CVA叩打痛は腎盂腎炎を考え、膀胱炎(通常は発熱・叩打痛なし)と区別する。 ・右季肋部のMurphy徴候(胆嚢炎)、McBurney点(虫垂炎)と部位を混同しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。