腎臓は背中で叩く―肋骨脊柱角叩打痛の正しい位置
第107回医師国家試験 H問題 第9問
国試問題にチャレンジ
人体の模式図を別に示す。 打診によって肋骨脊柱角叩打痛を確認する部位はどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
肋骨脊柱角は、背部で第12肋骨の下縁と脊柱とがなす角の部分で、その深部には後腹膜臓器である腎臓が位置します。ここに手掌を当て、反対の手の握りこぶしで間接的に叩打し、左右差のある響く痛みがあれば陽性とします。陽性は尿路結石や急性腎盂腎炎、腎周囲膿瘍など腎被膜の伸展や炎症を示唆し、とくに発熱と叩打痛は通常それらを欠く膀胱炎との鑑別に役立ちます。前面の右季肋部はMurphy徴候(急性胆嚢炎)、右下腹部はMcBurney点(急性虫垂炎)と、部位と徴候を対応させて覚えることが重要です。体表から深部臓器の位置を思い描けることは、身体診察全体の精度を高める基礎になります。
解答・解説
正解はdです
問われていること
肋骨脊柱角(costovertebral angle:CVA)叩打痛を調べる際に、どこを叩くかという身体診察の基本手技の問題である。
肋骨脊柱角の位置
肋骨脊柱角とは、背部で第12肋骨の下縁と脊柱(腰椎の棘突起列)とがなす角の部分を指す。左右に一つずつあり、その深部には腎臓(とくに腎下極〜腎門部に近い部分)が位置する。腎臓は後腹膜臓器で背側寄りにあり、おおよそ第12胸椎〜第3腰椎の高さに存在するため、背中側から叩打すると振動が腎・腎周囲に伝わりやすい。
図の読み取り
図では前面に①(左右の肋骨弓下=季肋部)と②(左右の下腹部)、背面に③(肩甲骨の高さ)、④(下位肋骨の下端と脊柱が交わる高さ、脊柱の両脇)、⑤(腸骨稜〜仙骨付近の高さ)が示されている。第12肋骨下縁と脊柱がつくる角に一致するのは背面の④である。
手技
患者を坐位(または側臥位・腹臥位)とし、検者は一方の手掌を肋骨脊柱角に当て、その手背をもう一方の手の握りこぶしの尺側で軽く叩く(間接叩打法)。左右を比較し、叩いた側に響く痛みがあれば陽性とする。尿路結石(尿管結石・腎結石)や急性腎盂腎炎、腎周囲膿瘍など、腎被膜が伸展・炎症を起こす病態で陽性となる。
選択肢考察
- ×a. ①
①は前面の左右の季肋部(肋骨弓の直下)である。右季肋部は胆嚢の位置に相当し、急性胆嚢炎で陽性となるMurphy徴候(右季肋部を圧迫したまま深吸気させると、痛みのため吸気が途中で止まる)を確認する部位である。肋骨脊柱角は背面にあるため誤りである。
- ×b. ②
②は前面の左右下腹部である。右下腹部は虫垂炎の圧痛点を確認する領域として知られるが、McBurney点は臍と右上前腸骨棘を結ぶ線上で外側1/3の点であり、図の②の右側の点はそれよりも下方に位置するため厳密には一致しない。いずれにせよ前面であり、肋骨脊柱角ではない。
- ×c. ③
③は背面の肩甲骨の高さ(中位胸椎レベル)で脊柱の両脇にあたる。深部には肺が位置し、肋骨もこの高さでは脊柱と角をつくる下縁をもたない。第12肋骨より明らかに頭側であり、腎臓の位置とも合わないため誤りである。
- ○d. ④
④は背面で、最下位の肋骨(第12肋骨)の下縁と脊柱とがなす角に一致する部位である。直下に腎臓があり、ここを叩打して痛みが誘発されれば、尿路結石や腎盂腎炎など腎・腎周囲の病変を示唆する。よって肋骨脊柱角叩打痛を確認する部位として正しい。
- ×e. ⑤
⑤は背面の腸骨稜〜仙骨付近の高さ(下位腰椎〜仙腸関節周囲)にあたる。腰椎疾患や仙腸関節の痛みを評価する際に触れる領域であり、第12肋骨より尾側に大きく外れていて、腎臓の位置とも一致しない。肋骨脊柱角ではないため誤りである。
肋骨脊柱角叩打痛が陽性となる主な疾患
・尿路結石:腰背部〜側腹部の激しい疝痛、血尿、悪心・嘔吐を伴い、鼠径部や外陰部へ痛みが放散することがある。結石が尿管を閉塞して腎盂内圧が上がり、腎被膜が伸展されることで叩打痛が生じる。 ・急性腎盂腎炎:発熱(しばしば悪寒戦慄を伴う高熱)、腰背部痛・側腹部痛に加え、排尿時痛や頻尿などの膀胱刺激症状、膿尿・細菌尿を認める。膀胱炎では通常発熱やCVA叩打痛はみられず、上部尿路感染との鑑別点になる。 ・その他:腎周囲膿瘍、腎梗塞、水腎症など。
腹部診察で問われやすい部位と徴候
・右季肋部:Murphy徴候(急性胆嚢炎)。 ・McBurney点:臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の外側1/3の点(急性虫垂炎の圧痛点)。Lanz点は左右の上前腸骨棘を結ぶ線の右1/3の点。 ・背部の肋骨脊柱角:CVA叩打痛(腎・上部尿路の病変)。
POINT
・肋骨脊柱角は背部で第12肋骨と脊柱がなす角で、深部に腎臓がある。 ・CVA叩打痛陽性は尿路結石・急性腎盂腎炎などを示唆する。 ・発熱+CVA叩打痛は腎盂腎炎を考え、膀胱炎(通常は発熱・叩打痛なし)と区別する。 ・右季肋部のMurphy徴候(胆嚢炎)、McBurney点(虫垂炎)と部位を混同しない。
