炎症なのに白血球が少ない―「減る」疾患の代表SLEを見抜く
第107回医師国家試験 H問題 第11問
国試問題にチャレンジ
白血球減少をきたすのはどれか。
- a.Sweet病
- b.成人Still病
- c.Sézary症候群
- d.Weber-Christian病
- e.全身性エリテマトーデス〈SLE〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
多くの炎症性疾患では炎症性サイトカインの作用で好中球優位に白血球が増加しますが、SLEは自己抗体による末梢での破壊や骨髄抑制により、白血球減少(特にリンパ球減少)、血小板減少、自己免疫性溶血性貧血をきたす代表的疾患です。Sweet病と成人Still病は好中球増多が特徴で、成人Still病ではフェリチンの著増も手がかりになり、Sézary症候群は腫瘍細胞が末梢血に出るため白血球は正常〜増加します。Weber-Christian病も白血球減少を特徴とする疾患ではありません。SLEはCRPが上がりにくいことも特徴であり、「炎症性なのに白血球が少ない」という所見の組み合わせから膠原病を想起できることは、発熱患者の鑑別で大きな武器になります。
解答・解説
正解はeです
テーマ
発熱や皮疹を伴う全身性炎症性疾患・皮膚疾患のうち、末梢血の白血球が「減る」ものを選ぶ問題である。
考え方
多くの炎症性疾患では、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、G-CSFなど)の作用で骨髄から好中球が動員され、白血球は増加する。選択肢のSweet病、成人Still病はその典型で、好中球優位の著明な白血球増多が診断の手がかりになる。Sézary症候群は腫瘍細胞が末梢血中に出現する白血化したリンパ腫であり、やはり白血球数は減らない。 これに対し、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は、血球に対する自己抗体や免疫複合体による末梢での破壊、骨髄抑制などにより、白血球減少(特にリンパ球減少)、血小板減少、溶血性貧血といった血球減少をきたす代表的疾患である。「炎症性疾患なのに白血球が少ない」「CRPが上がりにくい」という点はSLEを疑う重要な手がかりである。
選択肢考察
- ×a. Sweet病
Sweet病(急性熱性好中球性皮膚症)は、発熱、末梢血の好中球増多、顔面・頸部・四肢に生じる有痛性の隆起性紅斑を特徴とし、病理組織では真皮に密な好中球浸潤を認める(血管炎は伴わない)。上気道感染後や骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病などの血液悪性腫瘍に合併することがあり、HLA-B54との関連も知られる。副腎皮質ステロイドがよく効く。白血球は増加するため誤りである。
- ×b. 成人Still病
成人Still病は、弛張熱(スパイク熱)、関節痛・関節炎、発熱に伴って出没するサーモンピンク色の皮疹を三主徴とする全身性炎症性疾患である。咽頭痛、リンパ節腫脹、肝脾腫もみられる。検査では好中球優位の白血球増多(10,000/μL以上がよくみられる)、CRP高値、血清フェリチンの著明な上昇が特徴で、リウマトイド因子と抗核抗体は通常陰性である。白血球は増加するため誤りである(ただし合併症として血球貪食症候群を起こすと血球減少に転じることがある)。
- ×c. Sézary症候群
Sézary症候群は皮膚T細胞リンパ腫の一型で、菌状息肉症と近縁の疾患である。紅皮症(全身の皮膚のびまん性紅斑)、全身のリンパ節腫大、末梢血中への異型リンパ球(Sézary細胞:脳回状にくびれた核をもつCD4陽性T細胞)の出現を三主徴とする。強い瘙痒を伴うことが多い。腫瘍細胞が末梢血に出るため白血球数は正常〜増加し、白血球減少はきたさないので誤りである。
- ×d. Weber-Christian病
Weber-Christian病は、発熱を伴い、四肢や体幹の皮下に有痛性の結節が再発を繰り返す原因不明の非化膿性脂肪織炎である。病理では脂肪細胞の変性・壊死とそれに続く泡沫細胞の出現、肉芽腫性変化・線維化がみられる。検査所見は一定せず、炎症を反映して白血球増多を示すことが多いが、減少を示す例もあり、白血球減少を特徴とする疾患ではない。なお現在では、かつて本症とされた症例の多くがループス脂肪織炎、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、膵性脂肪織炎、α1-アンチトリプシン欠損症などに再分類されうると考えられ、独立疾患としての位置づけには疑問も呈されている。
- ○e. 全身性エリテマトーデス〈SLE〉
SLEは若年女性に好発する全身性自己免疫疾患で、抗核抗体・抗dsDNA抗体・抗Sm抗体などが陽性となり、血清補体価が低下する。血液学的異常として、白血球減少(4,000/μL未満)、リンパ球減少、血小板減少、自己免疫性溶血性貧血がみられ、分類基準の項目にも含まれている。血球に対する自己抗体による末梢での破壊や、骨髄抑制が機序と考えられている。炎症性疾患でありながら白血球が減少するのが特徴で、正しい。
SLEの分類基準における血液学的項目
・1997年改訂ACR(米国リウマチ学会)分類基準:溶血性貧血、白血球減少(<4,000/μLが2回以上)、リンパ球減少(<1,500/μLが2回以上)、血小板減少(<100,000/μL)のいずれか。11項目中4項目以上でSLEと分類する。 ・2012年SLICC分類基準:白血球減少(<4,000/μL)またはリンパ球減少(<1,000/μL)、血小板減少(<100,000/μL)、溶血性貧血をそれぞれ独立した項目として扱う。 ・2019年EULAR/ACR分類基準(現在広く用いられる):抗核抗体80倍以上を必須条件とし、臨床・免疫学的項目の重み付け点数の合計が10点以上(臨床項目1つ以上を含む)でSLEと分類する。血液領域では白血球減少(<4,000/μL)3点、血小板減少(<100,000/μL)4点、自己免疫性溶血4点が配点されている。
白血球が増える疾患・減る疾患の整理
・増加(好中球優位):細菌感染症、成人Still病、Sweet病、Behçet病、結節性多発動脈炎、副腎皮質ステロイド投与、慢性骨髄性白血病など。 ・減少:SLE、Felty症候群(関節リウマチ+脾腫+好中球減少)、Sjögren症候群、腸チフス、ウイルス感染症(麻疹・インフルエンザなど)、再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血、薬剤性(抗甲状腺薬、抗癌薬など)、脾機能亢進症。
SLEでCRPが上がりにくいこと
SLEでは疾患活動性が高くてもCRPは軽度上昇にとどまることが多い。発熱とともにCRPが著明に上昇した場合は、感染症や漿膜炎の合併を考える。
POINT
・炎症性疾患の多くは白血球が増加するが、SLEは白血球減少(特にリンパ球減少)をきたす。 ・SLEの血液学的異常:白血球減少、リンパ球減少、血小板減少、自己免疫性溶血性貧血。 ・Sweet病・成人Still病は好中球増多、成人Still病ではフェリチン著増。 ・Sézary症候群:紅皮症+リンパ節腫大+末梢血Sézary細胞(CD4陽性T細胞)。
