重なる指と揺り椅子の足―新生児の外表から読み解く18トリソミー
第107回医師国家試験 D問題 第21問
国試問題にチャレンジ
生後8時間の新生児。妊娠34週で切迫早産のため入院後直ちに経腟分娩となった。出生体重1,850 gで顎が小さい。手指と足底とに特徴的な異常を認める。手指と足の写真(A)(B)を別に示す。 この児で予想される染色体核型はどれか。

- a.45,X
- b.46,XX
- c.47,XXY
- d.47,XY,+18
- e.47,XY,+21
対話形式の解説
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ドクターまとめ
在胎週数に比して小さい出生体重(子宮内胎児発育不全)、小顎、第2指が第3指に・第5指が第4指に重なる握り手、踵が突出した揺り椅子状足底の組み合わせは18トリソミー(Edwards症候群)に特徴的で、本児の核型は47,XY,+18と予想されます。21トリソミーは筋緊張低下・特有の顔貌・単一屈曲線・サンダルギャップ、13トリソミーは口唇口蓋裂・全前脳胞症・小眼球・多指症が手がかりとなり、Turner症候群やKlinefelter症候群は多発外表奇形を示しません。18トリソミーは女児に多く、先天性心疾患を約9割に合併し、生命予後は不良とされてきましたが、近年は積極的治療による長期生存例もあります。主要なトリソミーの外表所見を対比して覚えることは、新生児診療で迅速に染色体異常を疑い、家族支援につなげるための基礎となります。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
・在胎34週で出生、出生体重1,850 g: 34週の標準体重(おおよそ2,200〜2,300 g前後)より明らかに小さく、在胎週数に比べて体格が小さい(SGA: small for gestational age。子宮内胎児発育不全が考えられる)。 ・顎が小さい: 小顎症 ・写真A(手指): 手を握り、第2指が第3指の上に、第5指が第4指の上に重なる特徴的な指の重なり(overlapping fingers) ・写真B(足): 踵が後方へ突き出し、足底が下方に凸に丸くなった揺り椅子状足底(rocker-bottom foot、船底足)
診断の考え方
子宮内胎児発育不全、小顎症に加え、手指の重なりと揺り椅子状足底という組み合わせは、18トリソミー(Edwards症候群)に非常に特徴的である。特に「握った手で指が重なる」所見は18トリソミーを強く示唆する外表所見として知られる。 鑑別として13トリソミー(Patau症候群)も多発奇形・予後不良という点で似るが、13トリソミーでは口唇口蓋裂、小眼球・虹彩欠損などの眼の異常、全前脳胞症、頭皮欠損、尺側(小指側)の多指症が目立つ。揺り椅子状足底は13トリソミーでも見られることがあるが、出生体重は18トリソミーほど小さくないことが多い。本児は小顎と手指の重なりが前面に出ており、18トリソミーと考えるのが妥当である。 したがって、予想される核型は常染色体18番が3本ある標準型トリソミーの47,XY,+18である。
選択肢考察
- ×a. 45,X
X染色体が1本しかないTurner症候群の核型である。新生児期には手背・足背のリンパ浮腫や翼状頸、項部の皮膚のたるみが手がかりとなり、その後は低身長・性腺機能不全・大動脈縮窄症などが問題となる。手指の重なりや揺り椅子状足底は特徴ではない。
- ×b. 46,XX
正常女性の核型である。本児は小顎症、手指の重なり、揺り椅子状足底、子宮内発育不全という複数の奇形・異常をあわせ持っており、染色体の数の異常を強く疑う所見の組み合わせであるため、正常核型は考えにくい。
- ×c. 47,XXY
Klinefelter症候群の核型である。新生児期にはほとんど外見上の異常がなく、思春期以降に高身長、小さく硬い精巣、女性化乳房、無精子症による不妊などで気づかれることが多い。本児のような多発外表奇形は示さない。
- ○d. 47,XY,+18
18番染色体が3本ある18トリソミー(Edwards症候群)の核型である。子宮内胎児発育不全による低出生体重、小顎症、手指の重なり(第2指が第3指に、第5指が第4指に重なる握り手)、揺り椅子状足底はいずれも本症の代表的な所見であり、本児の所見とよく一致する。
- ×e. 47,XY,+21
21トリソミー(Down症候群)の核型である。新生児期には筋緊張低下、つり上がった目(眼瞼裂斜上)、内眼角贅皮、平坦な顔貌、手掌の単一屈曲線(猿線)、第5指の短小・内彎、第1趾と第2趾の間が広く開くサンダルギャップなどが見られる。手指の重なりや揺り椅子状足底、著しい子宮内発育不全は典型的ではない。
18トリソミー(Edwards症候群)の概要
・頻度: 出生3,500〜8,000人に1人程度とされ、女児に多い。母体の高年齢でリスクが上がる。 ・発生機序: 大部分は減数分裂時の染色体不分離による標準型トリソミーで、不分離の多くは母親の卵子形成過程で起こる(18トリソミーでは第二減数分裂での不分離が比較的多いとされる)。ほかにモザイク型や転座型がある。 ・胎児期の所見: 子宮内胎児発育不全、羊水過多、胎動減少、心奇形、単一臍帯動脈、脈絡叢嚢胞など。母体血清マーカーではAFP、hCG、非抱合型エストリオール(uE3)がいずれも低い傾向を示す。 ・外表所見: 低出生体重、小顎症、後頭部の突出、耳介低位・耳介変形、胸骨が短い、手指の重なり(握り手)、爪の低形成、揺り椅子状足底など。 ・合併奇形: 先天性心疾患(心室中隔欠損、動脈管開存、両大血管右室起始など)が約9割にみられ、食道閉鎖、臍帯ヘルニア、鎖肛、横隔膜ヘルニア、腎奇形なども多い。 ・予後: 生命予後は不良で、多くが乳児期までに亡くなるとされてきた。重度の精神運動発達遅滞を伴う。近年は心臓手術などの積極的な治療を選ぶ家族も増え、長期生存例も報告されている。モザイク型は症状が軽く、生存期間が長いことがある。
主な常染色体トリソミーの比較
・21トリソミー(Down症候群): 最も頻度が高い(出生約700〜1,000人に1人)。筋緊張低下、特有の顔貌、単一屈曲線、心内膜床欠損症、十二指腸閉鎖、白血病のリスク上昇。 ・18トリソミー(Edwards症候群): 子宮内発育不全、小顎、手指の重なり、揺り椅子状足底、心奇形。 ・13トリソミー(Patau症候群): 全前脳胞症、口唇口蓋裂、小眼球・虹彩欠損、頭皮欠損、尺側多指症、揺り椅子状足底、心奇形。
性染色体異常
・Turner症候群(45,X): 女性。低身長、翼状頸、外反肘、原発性無月経、大動脈縮窄症。 ・Klinefelter症候群(47,XXY): 男性。高身長、小精巣、女性化乳房、不妊。
POINT
・低出生体重(子宮内発育不全)+小顎+手指の重なり(握り手)+揺り椅子状足底 → 18トリソミー(47,+18)。 ・13トリソミーは口唇口蓋裂、全前脳胞症、小眼球、頭皮欠損、多指症が手がかり。 ・21トリソミーは筋緊張低下、単一屈曲線、サンダルギャップ、心内膜床欠損、十二指腸閉鎖が手がかり。 ・18トリソミーは女児に多く、先天性心疾患の合併が非常に多く、生命予後は不良である。
