StudyMed医師国家試験

「造影します」の前に確かめること―ヨード造影剤の副作用とリスク因子

第107回医師国家試験 C問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第107回 C問題 第3問

水溶性ヨード造影剤の副作用について正しいのはどれか。

  1. a.死亡例は報告されていない。
  2. b.予防に飲水制限が必須である。
  3. c.アナフィラキシー様反応は投与直後には起こらない。
  4. d.腎機能低下は造影剤腎症のリスクファクターでない。
  5. e.気管支喘息はアナフィラキシー様反応のリスクファクターである。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、CTや血管造影で日常的に使われる水溶性ヨード造影剤の副作用がテーマだ。副作用には大きく二つの柱がある。一つは過敏性、いわゆるアナフィラキシー様反応、もう一つは造影剤腎症だ。それぞれについて、いつ起こるのか、誰に起こりやすいのか、どう予防するのかを整理しながら選択肢を見ていこう。
医学生医学生
今は非イオン性の造影剤が主流なので、副作用はかなり少ないと習いました。
ドクタードクター
その通りで、イオン性の時代に比べると頻度は大きく下がった。それでも何らかの副作用は数%程度にみられ、治療を要する重篤な反応は数千人に1人ほど起こる。そして頻度はきわめて低いものの、死亡例も報告されている。国内の大規模調査では、およそ40万人に1人程度と見積もられているんだ。
医学生医学生
思ったよりゼロではないんですね。だから造影CTの前に同意書を取るんですか。
ドクタードクター
そうだね。どんな患者にも起こりうるから、事前の問診と説明・同意、アドレナリンなどの救急薬品や蘇生器具の準備、投与後の観察体制が欠かせない。では次に予防法。飲水制限が必須、という考え方はどうだろう。
医学生医学生
検査前に絶食の指示が出ていたので、水も控えるものだと思っていました。
ドクタードクター
そこはよく混同されるポイントだね。絶食は嘔吐したときの誤嚥対策として行われることがあるけれど、水分まで制限する必要はない。造影剤はほとんどが腎臓から排泄されるから、脱水になると腎血流が減って排泄が遅れ、腎臓への負担が増す。だから予防の基本はむしろ十分な水分補給で、リスクの高い患者では投与前後に生理食塩液などの等張性輸液を行うんだ。
医学生医学生
飲水制限どころか逆なんですね。そうすると腎機能が悪い人ほど注意が必要ということになりますか。
ドクタードクター
その通り。既存の腎機能低下は造影剤腎症の最も重要なリスク因子だ。国内のガイドラインでは、静注の造影CTでeGFR 45未満が発症リスクの高まる目安とされている。ほかに糖尿病性腎症、脱水、心不全、高齢、腎毒性薬剤の併用、大量の造影剤投与もリスクになる。造影剤腎症は投与後おおむね72時間以内のクレアチニン上昇として現れ、多くは一過性だけれど、一部は透析が必要になる。
医学生医学生
放射線科の実習で、造影CTのオーダーの前に必ずクレアチニンとeGFRを確認するように言われました。
ドクタードクター
大事な習慣だね。リスクがある場合は、まず本当に造影が必要か、代替検査はないかを考え、必要なら造影剤量を最小限にして補液を行う。では、アナフィラキシー様反応の起こるタイミングはどうだろう。
医学生医学生
薬疹のように、少し時間がたってから出てくるイメージもあるのですが……。
ドクタードクター
遅発性の皮疹などが投与後1時間から1週間ほどで出ることもあるから、その連想は半分正しい。ただ、アナフィラキシー様反応そのものは即時型で、多くは投与中から投与後5分以内、大部分が30分以内に起こる。だから投与直後こそ最も注意深く観察し、終わってからもしばらく院内で様子を見るんだ。
医学生医学生
そうなると、正しいのは気管支喘息がリスク因子という選択肢ですね。喘息の人は気道が過敏なので、反応が起きたときに重くなりそうです。
ドクタードクター
正解。気管支喘息の患者では過敏性反応の頻度が高く、気管支攣縮を伴う重篤な反応を起こしやすい。添付文書でも特に注意を要する患者とされ、かつては原則禁忌の扱いだった。過敏性反応のリスク因子としては、ヨード造影剤による副作用の既往が最も重要で、それに喘息、アレルギー疾患の既往が続く、と整理しておこう。
医学生医学生
喘息の人にはステロイドを前投与すれば大丈夫、と聞いたことがあります。
ドクタードクター
前投薬が行われることはあるけれど、予防効果は限定的で、前投薬をしていても反応は起こりうる。だから「ステロイドを入れたから安心」ではなく、まず造影剤を使わない検査で代用できないかを検討し、それでも必要なら救急処置の準備を整えて慎重に投与するのが基本だ。
医学生医学生
万が一、重いアナフィラキシー様反応が起きたら、どう対応すればいいですか。
ドクタードクター
すぐに造影剤を止めて人を集め、気道・呼吸・循環を評価する。血圧低下や気管支攣縮があれば、成人ではアドレナリン0.3〜0.5 mgの筋注が第一選択だ。酸素投与と細胞外液の急速輸液も行う。抗ヒスタミン薬やステロイドはあくまで補助的な位置づけだよ。ほかにも、メトホルミン服用中の患者は造影剤腎症で腎機能が落ちると乳酸アシドーシスのおそれがあるので腎機能に応じて一時休薬する、褐色細胞腫や重篤な甲状腺疾患にも注意が要る、といった点も臨床では大切だ。
医学生医学生
造影の前に、副作用歴、喘息やアレルギー、腎機能、内服薬を確認する、という流れで覚えておきます。

まとめ

水溶性ヨード造影剤の副作用は、即時型が中心のアナフィラキシー様(過敏性)反応と、投与後72時間以内に起こる造影剤腎症の二つに大別されます。過敏性反応の多くは投与後数分以内に出現し、まれに死亡例もあるため、投与直後の観察と救急対応の準備が欠かせません。過敏性反応のリスク因子は、ヨード造影剤の副作用歴(最重要)、気管支喘息、アレルギー疾患の既往であり、造影剤腎症の最大のリスク因子は既存の腎機能低下です。予防の基本は飲水制限ではなく十分な補液であり、重症反応にはアドレナリン筋注が第一選択となります。造影検査の前に副作用歴・喘息・腎機能・内服薬を確認する習慣は、安全な画像診断を行ううえでの基本です。

解答・解説

正解はeです

テーマ

水溶性ヨード造影剤は、CTや血管造影、尿路造影などで血管内に投与される造影剤である。現在は浸透圧が低く副作用の少ない非イオン性造影剤が主流であるが、それでも一定の頻度で副作用が生じ、まれに死亡例もある。本問は、造影剤の副作用の種類・発現時期・リスク因子・予防法を整理できているかを問うている。

副作用の大きな2つの柱

1. 過敏性(アナフィラキシー様)反応:悪心・嘔吐、蕁麻疹、瘙痒感、くしゃみなどの軽症例から、血圧低下、気管支攣縮による呼吸困難、喉頭浮腫、意識消失、心停止などの重症例まである。多くは投与中から投与後数分以内に出現する即時型反応である。 2. 造影剤腎症(造影剤投与後の急性腎障害):投与後おおむね72時間以内に血清クレアチニンが上昇する。既存の腎機能低下が最大のリスク因子であり、予防の基本は投与前後の十分な補液(輸液・飲水)である。

考え方

選択肢を「死亡例の有無」「予防法(水分制限か補液か)」「発現時期」「リスク因子」の観点で検討する。気管支喘息はアナフィラキシー様反応の重要なリスク因子であり、e が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  死亡例は報告されていない。

    誤り。頻度はきわめて低いものの死亡例は報告されている。わが国の大規模調査では、造影剤による死亡はおよそ40万件に1件程度と見積もられている。死亡の多くは重篤なアナフィラキシー様反応によるショックや心停止である。どの患者にも起こりうるため、投与前の問診と説明・同意の取得、救急薬品(アドレナリンなど)・蘇生器具の準備、投与後の観察体制が不可欠である。

  2. ×b.  予防に飲水制限が必須である。

    誤り。造影剤はほとんどが腎臓から尿中に排泄される。脱水状態では腎血流が減少し、造影剤の排泄が遅れて腎への負担が増すため、造影剤腎症をはじめとする副作用が起こりやすくなる。したがって飲水制限はむしろ避けるべきで、検査前後の十分な水分摂取が推奨される。腎機能低下例などリスクの高い患者では、投与前後に生理食塩液などの等張性輸液を行う。なお、検査前の絶食は嘔吐時の誤嚥対策として行われることがあるが、水分まで制限する必要はない。

  3. ×c.  アナフィラキシー様反応は投与直後には起こらない。

    誤り。アナフィラキシー様反応は即時型の反応で、多くは投与中から投与後5分以内に出現し、大部分が30分以内に起こる。造影剤が特異的IgE抗体を介さずに肥満細胞や好塩基球を直接刺激し、ヒスタミンなどの化学伝達物質(メディエーター)を放出させることで生じると考えられてきた(一部にIgEを介する真のアレルギー反応も含まれるとされ、現在は過敏性反応と総称されることも多い)。このため投与直後の観察が特に重要であり、投与後もしばらくは院内で経過を観察する。なお、投与後1時間~1週間程度で皮疹などが出現する遅発性副作用もある。

  4. ×d.  腎機能低下は造影剤腎症のリスクファクターでない。

    誤り。既存の腎機能低下(慢性腎臓病)は造影剤腎症の最も重要なリスク因子である。わが国の診療ガイドラインでは、造影CT(静脈内投与)では推算糸球体濾過量(eGFR)45 mL/分/1.73 m2未満が、発症リスクが高まる目安とされている。ほかに糖尿病性腎症、脱水、心不全、高齢、腎毒性のある薬剤の併用、大量の造影剤投与などもリスク因子となる。リスクのある患者では、造影検査の必要性を再検討し、代替検査を考慮したうえで、どうしても必要な場合は造影剤量を必要最小限にし、投与前後に補液を行う。

  5. ○e.  気管支喘息はアナフィラキシー様反応のリスクファクターである。

    正しい。気管支喘息の患者では、造影剤による過敏性反応の発生頻度が高く、気管支攣縮を伴う重篤な反応を起こしやすいことが知られている。そのため造影剤の添付文書でも投与に特に注意を要する患者とされ、かつては原則禁忌として扱われていた。検査の必要性が高い場合は、造影剤を用いない検査への変更を検討したうえで、救急処置の準備を整えて慎重に投与する。副腎皮質ステロイドの前投薬が行われることもあるが、その予防効果は限定的であり、前投薬をしていても反応が起こりうる点に注意する。他の主なリスク因子には、ヨード造影剤による副作用の既往(最も重要)、アレルギー疾患の既往がある。

ヨード造影剤の副作用の頻度(目安)

・何らかの副作用:非イオン性造影剤で約3%(イオン性ではその数倍) ・最も多いのは悪心・嘔吐、熱感、蕁麻疹・瘙痒感などの軽症例 ・治療を要する重篤な副作用:非イオン性造影剤で約0.04%(数千人に1人程度) ・死亡:約40万人に1人 非イオン性造影剤の普及により、イオン性造影剤に比べて副作用の頻度は大きく低下した。

副作用のリスク因子

・ヨード造影剤による副作用の既往(最重要) ・気管支喘息 ・アレルギー疾患の既往(薬剤アレルギー、アトピーなど) ・腎機能低下(主に造影剤腎症のリスク) ・心疾患、脱水、高齢など

投与に注意が必要な主な状態

・ヨードまたはヨード造影剤に過敏症の既往がある患者:禁忌 ・重篤な甲状腺疾患:ヨードの負荷により甲状腺機能が悪化するおそれがある ・褐色細胞腫:血圧上昇発作を誘発するおそれがある ・ビグアナイド系糖尿病薬(メトホルミンなど)服用中:造影剤腎症で腎機能が低下すると薬剤が蓄積し、乳酸アシドーシスを起こすおそれがあるため、腎機能に応じて一時休薬する

造影剤腎症

・定義の一例:造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニンが前値より0.5 mg/dL以上または25%以上上昇したもの ・多くは一過性で数日~2週間程度で回復するが、一部は透析を要する ・予防:投与前後の補液(生理食塩液など)、造影剤量の最小化、腎毒性薬剤の中止

アナフィラキシー様反応が起きたとき

ただちに造影剤投与を中止し、人員を集め、気道・呼吸・循環を評価する。血圧低下や気管支攣縮などの重症例では、アドレナリン0.3~0.5 mg(成人)の筋注が第一選択であり、酸素投与、細胞外液の急速輸液を行う。抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイドは補助的な治療である。

POINT

・ヨード造影剤の副作用で死亡例はある(約40万人に1人)。 ・予防の基本は脱水を避けることで、飲水制限ではなく補液(飲水・輸液)を行う。 ・アナフィラキシー様反応は即時型で、多くは投与後数分以内に起こる。遅発性の皮疹なども存在する。 ・腎機能低下は造影剤腎症の最大のリスク因子である。 ・過敏性反応のリスク因子:ヨード造影剤副作用の既往、気管支喘息、アレルギー疾患の既往。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。